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Lovers~晴れのち曇り、時々雨~【スピンオフ】
第3話
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なぜこんなことになってしまったのだろう。
誰かを好きになることがこんなに苦しいことだとは思わなかった。
両思いになって、この先にあるのは幸せだけかと思っていたのに、そこからが試練の始まりだった……。
☆☆☆
部屋の中に入った瞬間、ぐいっと腰を掴まれて強引に口付けをされた。
「っん、うん……っ」
唇が重なるだけの軽いものではない。
顔を斜めにして、更に反対の手でぐっと口を開けさせられる。
そしてそのまま口が少し開いたところから舌を入れられた。
こんなまるで飢えた獣のようなグスターヴァルは初めてだった。
キスを交わしながら、イアンは恥ずかしさと一緒に動揺を隠し切れずにいた。
両手でグスターヴァルのシャツを掴み、崩れそうになる足を必死に踏ん張る。
しかし、噛み付くようなグスターヴァルのキスに頭が段々ぼんやりとしていく。
「んっ、う、ん……んんぅ……」
キスをしながらも声が漏れる。
息継ぎもできない程に激しく舌を絡められて、唾液の音が部屋に響いているようだった。
「はぁ……んっ、はっ」
なんとか息をしながら顔を離そうとするが、すぐにまた手で引き寄せグスターヴァルは深く舌を絡めてきた。
以前も深いキスはしているが、こんなのは初めてだった。
キス自体、グスターヴァルが初めてなのだ。
どうしたら良いかと必死に考えようとするものの、気持ちが良くて結局されるがままになっていた。
「……イアン」
どれだけの時間が経ったか分からないが、漸く口を離したグスターヴァルが名前を呼んだ。
お互いの唇が離れ、混ざり合っていた唾液が糸を引き、そして切れる。
「……グスターヴァル……」
そう呼び返した瞬間、ふわりと体を抱き上げられる。
「えっ! ちょっ……待ってっ!」
ぎょっとして慌てて叫ぶが、グスターヴァルはイアンを抱き上げたままベッドへと向かう。
何をしようとしているのかは聞かなくても分かる。
この状況でただ眠るだけ、ではないだろう。
「ね、ちょっと……」
ベッドの上に仰向けで寝かされ、恥ずかしさで顔が熱くなる。
困った顔でじっと見上げると、グスターヴァルは熱い息をしたままイアンの体を膝で挟むようにして馬乗りになる。
そして着ていたパジャマのシャツを脱ぎ、イアンのパジャマのシャツのボタンに手を掛ける。
「ま、待ってっ!」
慌ててグスターヴァルの手を掴む。
「イアン」
しかし、じっと睨むような強い瞳で見つめた後、グスターヴァルはそのままイアンのシャツのボタンを外していく。
「ね、待ってってば! ちょっとグスターヴァルっ!」
必死に止めようとしても全く効かない。
気が付けば全てのボタンが外されイアンの上半身が露となった。
「んっ……」
ぺろりと首筋を舐められ、ぞくっとして声が漏れる。
そのままちゅっと音をさせながら、グスターヴァルが首にキスをし始めた。
首筋から鎖骨、そして胸へと唇が移動する。
「やっ、ちょっと待って、お願いっ」
こんなつもりはなかった。
ただ会いたいという気持ちだけでグスターヴァルの部屋に来たのだが、グスターヴァルはそうではないようだった。
前にも思ったが、本当にグスターヴァルなのだろうか?
真面目で優しい彼が、なぜこんなにも……。
「待ってって言ってるでしょっ! もうっ、がっつかないでよっ!」
自分の上半身をこれでもかとキスを続けているグスターヴァルに向かって思わず怒鳴ってしまった。
「がっつく? そんな言い方はないだろう? イアン。1週間我慢したんだ」
顔を少し離すと、グスターヴァルはなんとも恨めしそうな顔で見つめてきた。
「が、我慢ってっ。だから、こういうことはゆっくりって」
かぁっと顔を赤らめるとグスターヴァルの言葉に反論する。
「なぜだ。イアンは私としたくないのか?」
ムッとした顔で今度はグスターヴァルが反論する。
「なっ! 違うよっ! そうじゃなくてっ。俺が言いたいのは、初めてはもっと大切にしたいっていうか、雰囲気とか、こんな強引なのはやだっ!」
やはり何か違うと思い、強い口調で言い返した。
「雰囲気とはなんだ。イアンを欲して何が悪い?」
金色の強い瞳で睨まれる。
自分を欲してくれるのは嬉しいが、そんな目で睨まれて更に腹が立った。
「グスターヴァルには俺の気持ちなんて分かんないよっ!」
「なんだと? では、イアンは私の気持ちが分かるというのか?」
怒鳴ったイアンにグスターヴァルが強い瞳で睨み付けたまま問い掛ける。
「っ! わ、分かんないよっ。なんで? 俺はっ、グスターヴァルと一緒にいられれば、話したりくっついたりできるだけでいいもん。こういうのはなんか違うっ! こんなっ、こんな強引なグスターヴァルはやだっ!」
大好きな人に睨まれたことと、なぜこんなことになったのかと涙が出てきた。
「っ! もういいっ」
イアンの涙と言葉にハッとした顔をしたグスターヴァルは、いつになく不機嫌な顔で横を向き、イアンの上からどくと、そのまま向こう側を向いて布団に入ってしまった。
「え、ちょっと、グスターヴァル?」
その様子にぴたりと涙が止まった。
慌ててグスターヴァルの背中をそっと触るが返事はない。
こちらを見向きもしないグスターヴァルに再び泣きそうになってしまった。
ぐすっと鼻をすすると、イアンもそっと布団を捲ってグスターヴァルの横に入る。
しかし、反応はない。
あのグスターヴァルが子供の様に拗ねてしまっている。
せっかく1週間振りに会えたというのに、最悪な夜になってしまった。
涙を堪えながらイアンはそっとグスターヴァルの背中に顔を埋めて目を閉じた。
誰かを好きになることがこんなに苦しいことだとは思わなかった。
両思いになって、この先にあるのは幸せだけかと思っていたのに、そこからが試練の始まりだった……。
☆☆☆
部屋の中に入った瞬間、ぐいっと腰を掴まれて強引に口付けをされた。
「っん、うん……っ」
唇が重なるだけの軽いものではない。
顔を斜めにして、更に反対の手でぐっと口を開けさせられる。
そしてそのまま口が少し開いたところから舌を入れられた。
こんなまるで飢えた獣のようなグスターヴァルは初めてだった。
キスを交わしながら、イアンは恥ずかしさと一緒に動揺を隠し切れずにいた。
両手でグスターヴァルのシャツを掴み、崩れそうになる足を必死に踏ん張る。
しかし、噛み付くようなグスターヴァルのキスに頭が段々ぼんやりとしていく。
「んっ、う、ん……んんぅ……」
キスをしながらも声が漏れる。
息継ぎもできない程に激しく舌を絡められて、唾液の音が部屋に響いているようだった。
「はぁ……んっ、はっ」
なんとか息をしながら顔を離そうとするが、すぐにまた手で引き寄せグスターヴァルは深く舌を絡めてきた。
以前も深いキスはしているが、こんなのは初めてだった。
キス自体、グスターヴァルが初めてなのだ。
どうしたら良いかと必死に考えようとするものの、気持ちが良くて結局されるがままになっていた。
「……イアン」
どれだけの時間が経ったか分からないが、漸く口を離したグスターヴァルが名前を呼んだ。
お互いの唇が離れ、混ざり合っていた唾液が糸を引き、そして切れる。
「……グスターヴァル……」
そう呼び返した瞬間、ふわりと体を抱き上げられる。
「えっ! ちょっ……待ってっ!」
ぎょっとして慌てて叫ぶが、グスターヴァルはイアンを抱き上げたままベッドへと向かう。
何をしようとしているのかは聞かなくても分かる。
この状況でただ眠るだけ、ではないだろう。
「ね、ちょっと……」
ベッドの上に仰向けで寝かされ、恥ずかしさで顔が熱くなる。
困った顔でじっと見上げると、グスターヴァルは熱い息をしたままイアンの体を膝で挟むようにして馬乗りになる。
そして着ていたパジャマのシャツを脱ぎ、イアンのパジャマのシャツのボタンに手を掛ける。
「ま、待ってっ!」
慌ててグスターヴァルの手を掴む。
「イアン」
しかし、じっと睨むような強い瞳で見つめた後、グスターヴァルはそのままイアンのシャツのボタンを外していく。
「ね、待ってってば! ちょっとグスターヴァルっ!」
必死に止めようとしても全く効かない。
気が付けば全てのボタンが外されイアンの上半身が露となった。
「んっ……」
ぺろりと首筋を舐められ、ぞくっとして声が漏れる。
そのままちゅっと音をさせながら、グスターヴァルが首にキスをし始めた。
首筋から鎖骨、そして胸へと唇が移動する。
「やっ、ちょっと待って、お願いっ」
こんなつもりはなかった。
ただ会いたいという気持ちだけでグスターヴァルの部屋に来たのだが、グスターヴァルはそうではないようだった。
前にも思ったが、本当にグスターヴァルなのだろうか?
真面目で優しい彼が、なぜこんなにも……。
「待ってって言ってるでしょっ! もうっ、がっつかないでよっ!」
自分の上半身をこれでもかとキスを続けているグスターヴァルに向かって思わず怒鳴ってしまった。
「がっつく? そんな言い方はないだろう? イアン。1週間我慢したんだ」
顔を少し離すと、グスターヴァルはなんとも恨めしそうな顔で見つめてきた。
「が、我慢ってっ。だから、こういうことはゆっくりって」
かぁっと顔を赤らめるとグスターヴァルの言葉に反論する。
「なぜだ。イアンは私としたくないのか?」
ムッとした顔で今度はグスターヴァルが反論する。
「なっ! 違うよっ! そうじゃなくてっ。俺が言いたいのは、初めてはもっと大切にしたいっていうか、雰囲気とか、こんな強引なのはやだっ!」
やはり何か違うと思い、強い口調で言い返した。
「雰囲気とはなんだ。イアンを欲して何が悪い?」
金色の強い瞳で睨まれる。
自分を欲してくれるのは嬉しいが、そんな目で睨まれて更に腹が立った。
「グスターヴァルには俺の気持ちなんて分かんないよっ!」
「なんだと? では、イアンは私の気持ちが分かるというのか?」
怒鳴ったイアンにグスターヴァルが強い瞳で睨み付けたまま問い掛ける。
「っ! わ、分かんないよっ。なんで? 俺はっ、グスターヴァルと一緒にいられれば、話したりくっついたりできるだけでいいもん。こういうのはなんか違うっ! こんなっ、こんな強引なグスターヴァルはやだっ!」
大好きな人に睨まれたことと、なぜこんなことになったのかと涙が出てきた。
「っ! もういいっ」
イアンの涙と言葉にハッとした顔をしたグスターヴァルは、いつになく不機嫌な顔で横を向き、イアンの上からどくと、そのまま向こう側を向いて布団に入ってしまった。
「え、ちょっと、グスターヴァル?」
その様子にぴたりと涙が止まった。
慌ててグスターヴァルの背中をそっと触るが返事はない。
こちらを見向きもしないグスターヴァルに再び泣きそうになってしまった。
ぐすっと鼻をすすると、イアンもそっと布団を捲ってグスターヴァルの横に入る。
しかし、反応はない。
あのグスターヴァルが子供の様に拗ねてしまっている。
せっかく1週間振りに会えたというのに、最悪な夜になってしまった。
涙を堪えながらイアンはそっとグスターヴァルの背中に顔を埋めて目を閉じた。
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