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Destiny~君は私の運命の人~【スピンオフ】
第22話
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ホワイトキャット、つまりユウキがワンダーランドの王家の子孫だということか?
驚きすぎてイアンは少し眩暈を感じていた。
グレースの話は全てが驚くことばかりで頭がついていかない。
関係図と詳細を何かに記して説明してもらわないと理解できそうにないだろう。
「なるほどな。あの子はただ選ばれたわけではなかったのだな。王家の子孫がユウキたちの世界で生き続けていたわけか。……不思議なものだな。黒の魔女に関係した者の子孫たちが、今この時代でワンダーランドを救ったのか」
ふっとグスターヴァルは笑いながら話した。
「…………」
混乱していた頭の中は少し落ち着いたものの、グスターヴァルの言葉を聞いてますます彼らとの強い繋がりを感じた。
グスターヴァルはいつも優しくしてくれて、自分のことを『大事な人』とまで言ってもらったとはいえ、やはりユウキたちとの絆の方が強いように思える。
叶わない、そう思ったらなんだか悲しくなってしまった。
「イアン?」
急にグスターヴァルに顔を覗き込まれた。
「っ!」
目の前に大きなドラゴンの顔がぬっと近付き、イアンは驚いて体をびくっと震わせる。
「すまんっ。……その、驚かすつもりはなかったんだ。顔色が良くないから気分でも悪いのかと……」
慌てたようにイアンから離れると、グスターヴァルは申し訳なさそうな顔でじっと見つめている。
「え、あ……大丈夫。なんともないよっ」
ハッとすると、首を振りながらグスターヴァルに向かって笑顔を向けた。
すぐに顔に出てしまうらしい。だからフェイにもすぐに気持ちを読まれてしまうのだ。
でも、そんなに気を遣わなくてもいいのに、と思いながら首を傾げる。
「そうか……」
しかし、グスターヴァルはまだ心配そうにじっとイアンを見つめている。
「さて、私からの話は以上だ。さっきの話に戻ろうか」
ふたりを見ながらグレースが溜め息を付く。
そして再び笑顔になると先程の話をし始めた。
「グスターヴァルを人間に戻す方法なんだが――」
「あっ!」
グレースが話し始めたところで思わず声を上げてしまい、慌てて両手で口を押さえる。
驚く話の連続ですっかり忘れてしまっていた。本来の目的を。
「ふっ、なるほど。ドラゴンが気に入るわけだ」
顔を赤くしながら慌てるイアンを、面白そうに見つめてグレースが呟いた。
「え?」
どういう意味かと首を傾げたが、それには答えることなくグレースはじっとグスターヴァルを見上げて再び話し始める。
「イライザが死んだ時点で、本来であればお前の呪いは解けていたはずだ。解けていないということは、お前が人間になることを望んでいないということになる」
「なっ!……そんなはずはないっ! 私はちゃんと、人間になることを望んでいるっ!」
カッと怒ったようにグスターヴァルがグレースに向かって怒鳴った。
「そう怒るな。本来であれば……ということだ。通常呪いというのは、呪詛した者が死ねば、その効力はなくなるはずなんだ。しかし、それが解けないということは、複雑に呪いをかけている、ということだ。そこで思い当たるのが、『真実の愛』というものだ」
溜め息を付いた後、グレースは先程言った言葉を繰り返し、にやりと笑う。
「さっきも言っていたが、それはどういう意味だ」
まだ怒りが冷めないのか、グスターヴァルは苛ついた様子でじろりとグレースを睨むように見ている。
「あいつがかけた呪いだからな。今でも解けていないところを見る限り、呪いをかけた者が死んでも呪いが解けない、より強く複雑なものだと思われる。これは推測でしかないが、恐らくは最上級と言われる1番強固な呪い、それが我々の中で語られている『真実の愛』でしか解けない呪いだ」
淡々とグレースは話しているが、その言葉にぞくっと寒気を感じてしまった。
言葉だけ聞くと美しく聞こえるが、そんな強い呪いを愛する人にかけたなんて、一体黒の魔女は何を考えていたのだろう。
「うん、僕もそう思うよ。イライザはグスターヴァルを誰にも渡したくないんだろうね」
するとテーブルに座っているフェイが、グレースに出してもらったと思われる小さなカップを持ちながら、じっとグスターヴァルを見上げてそう話した。
フェイの言葉に、黒の魔女のこれ以上ない程の強い執着と独占欲を感じた気がした。
再びぞくっと背筋が凍りつく。
「その、『真実の愛』というのはどうすればいい?」
何を考えているのか分からないような表情で、じっとグスターヴァルはグレースを見つめている。
「うむ……そう簡単ではないだろうな。ただお互いに想い合っているだけでは無理だろう。中には愛する者の心臓の血を飲むことで解ける呪いもある」
「心臓っ!?」
驚いて声を上げてしまった。
そんな呪いもあるなんて……しかも愛する者の。残酷すぎる。
「そうだ。その呪いは強く解けないと言われるもので、呪いをかけた本人もその場で命を落とすほどのものだ。イライザはその場では死んでいないから恐らく違うだろう。とすると……」
顎に手を当てながらグレースが考え込んでいる。
魔女でも分からないような呪いがあるとは思ってもみなかった。
一体どんな複雑な呪いなのだろう。
じっとグレースの次の言葉を待った。
「ふむ……やはりあれだろうな」
「うん、僕もそう思うよ」
難しい顔で話すグレースの言葉にフェイがにこりと笑って頷いた。
「『あれ』?」
きょとんとした顔でイアンはふたりを見つめる。
フェイの様子を見る限り怖いものではないとは思うのだが……。
「あぁ、そうだ。愛の証として代表されるものさ」
今度はグレースも笑っている。
なんだろう、何か面白がっているようにも見えるのは。
「なんだ。早く言え」
苛ついたのか、グスターヴァルがふたりに顔を近付け睨み付けている。
「ふっ、『愛の口付け』だよ」
「っ!」
「えっ!」
にやりと笑って答えるグレースの言葉に、声もなく驚くグスターヴァルと沸騰しそうな程に顔が熱く真っ赤になってしまったイアンであった。
驚きすぎてイアンは少し眩暈を感じていた。
グレースの話は全てが驚くことばかりで頭がついていかない。
関係図と詳細を何かに記して説明してもらわないと理解できそうにないだろう。
「なるほどな。あの子はただ選ばれたわけではなかったのだな。王家の子孫がユウキたちの世界で生き続けていたわけか。……不思議なものだな。黒の魔女に関係した者の子孫たちが、今この時代でワンダーランドを救ったのか」
ふっとグスターヴァルは笑いながら話した。
「…………」
混乱していた頭の中は少し落ち着いたものの、グスターヴァルの言葉を聞いてますます彼らとの強い繋がりを感じた。
グスターヴァルはいつも優しくしてくれて、自分のことを『大事な人』とまで言ってもらったとはいえ、やはりユウキたちとの絆の方が強いように思える。
叶わない、そう思ったらなんだか悲しくなってしまった。
「イアン?」
急にグスターヴァルに顔を覗き込まれた。
「っ!」
目の前に大きなドラゴンの顔がぬっと近付き、イアンは驚いて体をびくっと震わせる。
「すまんっ。……その、驚かすつもりはなかったんだ。顔色が良くないから気分でも悪いのかと……」
慌てたようにイアンから離れると、グスターヴァルは申し訳なさそうな顔でじっと見つめている。
「え、あ……大丈夫。なんともないよっ」
ハッとすると、首を振りながらグスターヴァルに向かって笑顔を向けた。
すぐに顔に出てしまうらしい。だからフェイにもすぐに気持ちを読まれてしまうのだ。
でも、そんなに気を遣わなくてもいいのに、と思いながら首を傾げる。
「そうか……」
しかし、グスターヴァルはまだ心配そうにじっとイアンを見つめている。
「さて、私からの話は以上だ。さっきの話に戻ろうか」
ふたりを見ながらグレースが溜め息を付く。
そして再び笑顔になると先程の話をし始めた。
「グスターヴァルを人間に戻す方法なんだが――」
「あっ!」
グレースが話し始めたところで思わず声を上げてしまい、慌てて両手で口を押さえる。
驚く話の連続ですっかり忘れてしまっていた。本来の目的を。
「ふっ、なるほど。ドラゴンが気に入るわけだ」
顔を赤くしながら慌てるイアンを、面白そうに見つめてグレースが呟いた。
「え?」
どういう意味かと首を傾げたが、それには答えることなくグレースはじっとグスターヴァルを見上げて再び話し始める。
「イライザが死んだ時点で、本来であればお前の呪いは解けていたはずだ。解けていないということは、お前が人間になることを望んでいないということになる」
「なっ!……そんなはずはないっ! 私はちゃんと、人間になることを望んでいるっ!」
カッと怒ったようにグスターヴァルがグレースに向かって怒鳴った。
「そう怒るな。本来であれば……ということだ。通常呪いというのは、呪詛した者が死ねば、その効力はなくなるはずなんだ。しかし、それが解けないということは、複雑に呪いをかけている、ということだ。そこで思い当たるのが、『真実の愛』というものだ」
溜め息を付いた後、グレースは先程言った言葉を繰り返し、にやりと笑う。
「さっきも言っていたが、それはどういう意味だ」
まだ怒りが冷めないのか、グスターヴァルは苛ついた様子でじろりとグレースを睨むように見ている。
「あいつがかけた呪いだからな。今でも解けていないところを見る限り、呪いをかけた者が死んでも呪いが解けない、より強く複雑なものだと思われる。これは推測でしかないが、恐らくは最上級と言われる1番強固な呪い、それが我々の中で語られている『真実の愛』でしか解けない呪いだ」
淡々とグレースは話しているが、その言葉にぞくっと寒気を感じてしまった。
言葉だけ聞くと美しく聞こえるが、そんな強い呪いを愛する人にかけたなんて、一体黒の魔女は何を考えていたのだろう。
「うん、僕もそう思うよ。イライザはグスターヴァルを誰にも渡したくないんだろうね」
するとテーブルに座っているフェイが、グレースに出してもらったと思われる小さなカップを持ちながら、じっとグスターヴァルを見上げてそう話した。
フェイの言葉に、黒の魔女のこれ以上ない程の強い執着と独占欲を感じた気がした。
再びぞくっと背筋が凍りつく。
「その、『真実の愛』というのはどうすればいい?」
何を考えているのか分からないような表情で、じっとグスターヴァルはグレースを見つめている。
「うむ……そう簡単ではないだろうな。ただお互いに想い合っているだけでは無理だろう。中には愛する者の心臓の血を飲むことで解ける呪いもある」
「心臓っ!?」
驚いて声を上げてしまった。
そんな呪いもあるなんて……しかも愛する者の。残酷すぎる。
「そうだ。その呪いは強く解けないと言われるもので、呪いをかけた本人もその場で命を落とすほどのものだ。イライザはその場では死んでいないから恐らく違うだろう。とすると……」
顎に手を当てながらグレースが考え込んでいる。
魔女でも分からないような呪いがあるとは思ってもみなかった。
一体どんな複雑な呪いなのだろう。
じっとグレースの次の言葉を待った。
「ふむ……やはりあれだろうな」
「うん、僕もそう思うよ」
難しい顔で話すグレースの言葉にフェイがにこりと笑って頷いた。
「『あれ』?」
きょとんとした顔でイアンはふたりを見つめる。
フェイの様子を見る限り怖いものではないとは思うのだが……。
「あぁ、そうだ。愛の証として代表されるものさ」
今度はグレースも笑っている。
なんだろう、何か面白がっているようにも見えるのは。
「なんだ。早く言え」
苛ついたのか、グスターヴァルがふたりに顔を近付け睨み付けている。
「ふっ、『愛の口付け』だよ」
「っ!」
「えっ!」
にやりと笑って答えるグレースの言葉に、声もなく驚くグスターヴァルと沸騰しそうな程に顔が熱く真っ赤になってしまったイアンであった。
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