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Destiny~君は私の運命の人~【スピンオフ】
第17話
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美しい金色の絹のような滑らかで腰よりも長い髪。
瞳の色はイアンと同じ紫色をしている。
上品な猫のような少し目尻の上がった大きく強い瞳で、じっとイアンを見つめている。
「あ、あの……」
今まで出会った中で恐らく1番と言っていい程の美人だった。
目の前のその美しい女性にイアンは緊張して言葉が出てこなかった。
「なんだ?」
すると、その女性はなんとも不機嫌そうに片目を細めてじろりとイアンを睨み付けてきた。
そして顔の美しさとは逆に、なぜだか言い方がとても乱暴そうである。
「イアン、この人が白の魔女だよ」
にこにこと微笑みながらフェイがイアンにそう説明した。
「し、白の……魔女っ!?」
もしかしたらそうかもしれないとは思ったが、フェイの言葉にぎょっとしてしまった。
とても魔女には見えない。どちらかというと貴族かどこかの王族のように見える。
「お前が白の魔女か」
今まで黙っていたグスターヴァルがぬっと顔をこちらに寄せて、白の魔女を睨むように見ている。
「ちょっ、グスターヴァルっ!」
魔女にそんな言い方したら、と真っ青な顔で叫んだ。
「……そうだが? ドラゴンが私になんの用だ?」
しかし、負けじと白の魔女もグスターヴァルを睨み返している。
まさに一触即発の状況である。
確か、人間に変わる方法を聞く為にここまで来たはずなのでは? と、イアンはおろおろとしていた。
「グレース、今日は聞きたいことがあって会いに来たんだよ」
すると、イアンの肩に乗っていたフェイがにこりと笑って白の魔女に向かって話し掛けた。
「グレース?」
きょとんとして首を傾げる。
「白の魔女の名前だよ」
にこにこと笑いながらフェイが答える。
もしかしたら、怖い魔女ではないのかもしれない。
フェイを見ていてなぜかそう思った。
「えっと、あの……実は、グスターヴァルを人間に変える方法を探しているんです。あの、何か知っていますか?」
おずおずとイアンはグレースに向かって問い掛ける。
イアンの声でグレースはじろりと今度はこちらを見つめてきた。
思わず体がびくりとした。
怖いというよりも迫力ある美人に気後れしている状況だ。
「人間に?」
もう一度グスターヴァルを見上げた後、再びイアンを見ながらグレースは首を傾げる。
「あぁ、そうだ。何か方法はあるのか?」
じっとグレースを見つめながらグスターヴァルも尋ねる。
平民の自分にはよく分からないが、位の高い人同士の会話はこんな感じなのだろうか。
いや、そもそもグスターヴァルはドラゴンなのだから、相手が誰であろうと変わらないのだろう。
そういえばルイに対してもそうだったことを思い出した。
「ふんっ。そんなもの、私が教えなくてもお前が知っているだろう? 妖精」
じろりと今度はイアンの肩に乗るフェイを睨み付けながらグレースが答える。
「えっ?」
まさかの回答に目をぱちぱちと瞬きさせる。
白の魔女が知っていると教えてくれたのはフェイなのだ。
それが、フェイ自身がグスターヴァルを人間に変える方法を知っていた?
頭が混乱して眩暈がしそうだった。
「なんだと?」
同じようにグスターヴァルも疑うような目付きでフェイを見つめている。
「だって、僕が言うよりも、グレースが話した方がいいと思ったんだよ。それに、グスターヴァルはグレースと会った方がいいとも思ったしね」
困ったような顔をしながらも、フェイはしれっと答える。
「どういう意味だ?」
「いらぬことを……」
じろりと睨み付けるグスターヴァルと肩を竦めるグレース。
一体どういうことなのだろうかとイアンは首を傾げた。
「いいでしょ。ね、グレース。教えてあげて」
今度はにこりといつものように笑顔になると、フェイはじっとグレースを見上げる。
「ふんっ。まったく……ちょっと待っていろ」
不機嫌そうに鼻を鳴らし、そう言ってグレースはくるりと後ろを向くと両手を広げる。
ぱぁっと辺りが白く光ったかと思うと、突然グレースの前にテーブルと椅子が現れたのだった。
「ええっ!」
驚いて思わず声を上げてしまった。
以前、王女の結婚式でフェイがソファーを出した時のことを思い出した。
「そこの少年。突っ立ってないでこっちに来て座れ」
じろりとイアンを見ると、グレースは手招きして呼び寄せた。
やはり、見た目に反してまるで男性のようである。
なんだかイーサンとでも話しているような気分だった。
見た目は美人なのに……と少し残念に思ってしまう。
こくりと頷くと、イアンはゆっくりとグレースの方へと歩き出した。
「イアンっ!」
魔女の近くへ行こうとしたことを心配したのか、グスターヴァルが声を上げる。
「大丈夫だよ、グスターヴァル」
「そうそう」
焦ったような顔をしているグスターヴァルを見上げながら答えると、肩に乗るフェイもにこにこと微笑みながら頷いていた。
きっと大丈夫だろう。思ったよりも怖くない人のようだ。
そう思いながら勧められるままに椅子へと腰掛ける。
椅子に座った瞬間、目の前にカップと菓子が現れた。
「わっ!」
再び驚いて声を上げる。
「まぁ、久しぶりの来客だからな。茶くらい出す」
そう言ってグレースはひとり先にカップを掴んで飲み始めた。
「あ、ありがとうございます……」
なんだか拍子抜けというか、予想外のことばかりで混乱していた。
しかし、せっかく出されたのだからとイアンもカップをそっと掴む。
ふわりと紅茶のいい香りが漂ってきた。
「わぁ……」
紅茶なんていつ振りだろうかと、なんだか心が温かくなった気がした。
そういえば、北の森は極寒の地かと思っていたが、全く寒くないことに気が付いた。
これも魔法なのだろうか。
こてんと首を傾げながらもカップを口に運び、温かい紅茶を一口ごくりと飲んだ。
「おいし……」
香りといい味といい、果実のような甘さを感じた。
「ふむ……ドラゴンを人間に変える話だったな」
いつの間にかすっかり飲み終わってしまっているグレースは、カップをソーサーに置き、じっとイアンを見つめながら話した。
「っ! あ、はいっ!」
ごくんと紅茶を飲み込むと、慌ててカップをソーサーに置き、イアンは両手を膝の上に置いて姿勢を正した。
「さて、どこから話そうか」
ふぅっと溜め息を付くと、グレースはちらりとグスターヴァルを見上げた。
瞳の色はイアンと同じ紫色をしている。
上品な猫のような少し目尻の上がった大きく強い瞳で、じっとイアンを見つめている。
「あ、あの……」
今まで出会った中で恐らく1番と言っていい程の美人だった。
目の前のその美しい女性にイアンは緊張して言葉が出てこなかった。
「なんだ?」
すると、その女性はなんとも不機嫌そうに片目を細めてじろりとイアンを睨み付けてきた。
そして顔の美しさとは逆に、なぜだか言い方がとても乱暴そうである。
「イアン、この人が白の魔女だよ」
にこにこと微笑みながらフェイがイアンにそう説明した。
「し、白の……魔女っ!?」
もしかしたらそうかもしれないとは思ったが、フェイの言葉にぎょっとしてしまった。
とても魔女には見えない。どちらかというと貴族かどこかの王族のように見える。
「お前が白の魔女か」
今まで黙っていたグスターヴァルがぬっと顔をこちらに寄せて、白の魔女を睨むように見ている。
「ちょっ、グスターヴァルっ!」
魔女にそんな言い方したら、と真っ青な顔で叫んだ。
「……そうだが? ドラゴンが私になんの用だ?」
しかし、負けじと白の魔女もグスターヴァルを睨み返している。
まさに一触即発の状況である。
確か、人間に変わる方法を聞く為にここまで来たはずなのでは? と、イアンはおろおろとしていた。
「グレース、今日は聞きたいことがあって会いに来たんだよ」
すると、イアンの肩に乗っていたフェイがにこりと笑って白の魔女に向かって話し掛けた。
「グレース?」
きょとんとして首を傾げる。
「白の魔女の名前だよ」
にこにこと笑いながらフェイが答える。
もしかしたら、怖い魔女ではないのかもしれない。
フェイを見ていてなぜかそう思った。
「えっと、あの……実は、グスターヴァルを人間に変える方法を探しているんです。あの、何か知っていますか?」
おずおずとイアンはグレースに向かって問い掛ける。
イアンの声でグレースはじろりと今度はこちらを見つめてきた。
思わず体がびくりとした。
怖いというよりも迫力ある美人に気後れしている状況だ。
「人間に?」
もう一度グスターヴァルを見上げた後、再びイアンを見ながらグレースは首を傾げる。
「あぁ、そうだ。何か方法はあるのか?」
じっとグレースを見つめながらグスターヴァルも尋ねる。
平民の自分にはよく分からないが、位の高い人同士の会話はこんな感じなのだろうか。
いや、そもそもグスターヴァルはドラゴンなのだから、相手が誰であろうと変わらないのだろう。
そういえばルイに対してもそうだったことを思い出した。
「ふんっ。そんなもの、私が教えなくてもお前が知っているだろう? 妖精」
じろりと今度はイアンの肩に乗るフェイを睨み付けながらグレースが答える。
「えっ?」
まさかの回答に目をぱちぱちと瞬きさせる。
白の魔女が知っていると教えてくれたのはフェイなのだ。
それが、フェイ自身がグスターヴァルを人間に変える方法を知っていた?
頭が混乱して眩暈がしそうだった。
「なんだと?」
同じようにグスターヴァルも疑うような目付きでフェイを見つめている。
「だって、僕が言うよりも、グレースが話した方がいいと思ったんだよ。それに、グスターヴァルはグレースと会った方がいいとも思ったしね」
困ったような顔をしながらも、フェイはしれっと答える。
「どういう意味だ?」
「いらぬことを……」
じろりと睨み付けるグスターヴァルと肩を竦めるグレース。
一体どういうことなのだろうかとイアンは首を傾げた。
「いいでしょ。ね、グレース。教えてあげて」
今度はにこりといつものように笑顔になると、フェイはじっとグレースを見上げる。
「ふんっ。まったく……ちょっと待っていろ」
不機嫌そうに鼻を鳴らし、そう言ってグレースはくるりと後ろを向くと両手を広げる。
ぱぁっと辺りが白く光ったかと思うと、突然グレースの前にテーブルと椅子が現れたのだった。
「ええっ!」
驚いて思わず声を上げてしまった。
以前、王女の結婚式でフェイがソファーを出した時のことを思い出した。
「そこの少年。突っ立ってないでこっちに来て座れ」
じろりとイアンを見ると、グレースは手招きして呼び寄せた。
やはり、見た目に反してまるで男性のようである。
なんだかイーサンとでも話しているような気分だった。
見た目は美人なのに……と少し残念に思ってしまう。
こくりと頷くと、イアンはゆっくりとグレースの方へと歩き出した。
「イアンっ!」
魔女の近くへ行こうとしたことを心配したのか、グスターヴァルが声を上げる。
「大丈夫だよ、グスターヴァル」
「そうそう」
焦ったような顔をしているグスターヴァルを見上げながら答えると、肩に乗るフェイもにこにこと微笑みながら頷いていた。
きっと大丈夫だろう。思ったよりも怖くない人のようだ。
そう思いながら勧められるままに椅子へと腰掛ける。
椅子に座った瞬間、目の前にカップと菓子が現れた。
「わっ!」
再び驚いて声を上げる。
「まぁ、久しぶりの来客だからな。茶くらい出す」
そう言ってグレースはひとり先にカップを掴んで飲み始めた。
「あ、ありがとうございます……」
なんだか拍子抜けというか、予想外のことばかりで混乱していた。
しかし、せっかく出されたのだからとイアンもカップをそっと掴む。
ふわりと紅茶のいい香りが漂ってきた。
「わぁ……」
紅茶なんていつ振りだろうかと、なんだか心が温かくなった気がした。
そういえば、北の森は極寒の地かと思っていたが、全く寒くないことに気が付いた。
これも魔法なのだろうか。
こてんと首を傾げながらもカップを口に運び、温かい紅茶を一口ごくりと飲んだ。
「おいし……」
香りといい味といい、果実のような甘さを感じた。
「ふむ……ドラゴンを人間に変える話だったな」
いつの間にかすっかり飲み終わってしまっているグレースは、カップをソーサーに置き、じっとイアンを見つめながら話した。
「っ! あ、はいっ!」
ごくんと紅茶を飲み込むと、慌ててカップをソーサーに置き、イアンは両手を膝の上に置いて姿勢を正した。
「さて、どこから話そうか」
ふぅっと溜め息を付くと、グレースはちらりとグスターヴァルを見上げた。
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