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Destiny~君は私の運命の人~【スピンオフ】
第12話
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(俺とホワイトキャットが似てる?)
まさかと思い、思わずイアンはユウキの方を見た。
するとユウキもまた、こちらを見つめ返したためドキッとしてしまった。
「あ、あの……」
「おい、優希にはさっきのやるなよ」
何か話さなければと声を発した瞬間、ユウキを後ろから彼の恋人がぎゅっと抱き締めていた。更にグスターヴァルを睨み付けて言い聞かせていたのだった。
「ちょっと海斗っ!」
真っ赤な顔で怒ると、ユウキは慌てて彼の腕から逃れていた。
ふたりのやり取りにイアンはぽかんとしてしまった。
「何がだ?」
睨まれたグスターヴァルは不思議そうに首を傾げている。
「さっきこいつにすりすりしてただろう。猫か犬みたいに」
離れたユウキを左手で掴んでもう一度抱き締めると、イアンを指差しながらカイトが答える。
するとカイトが発した言葉に、近くにいたルイが吹き出していた。
「…………」
言われた言葉とルイの反応に、グスターヴァルはなんとも不服そうな顔をした。
しかしそんなグスターヴァルを見て、イアンは彼の色々な表情を見られて少しだけ嬉しく思っていた。
「でもさー、飼い主だったらユウキにもしそうだよねぇ」
くすっと笑いながらアリスが口を挟んできた。
その瞬間、カイトが思い切りアリスを睨み付ける。
「私はペットではない」
アリスの言葉に溜め息を付くと、グスターヴァルはその場から離れてしまった。
どうやらまた機嫌を損ねてしまったようだ。
せっかくそばに来てくれたのに、とイアンは残念な気持ちになっていた。
「さて、そろそろ行かないと遅くなってしまいますよ、グスターヴァル。皆さんと話はできましたか?」
両手をぱんと叩くと、ルイがにこりと微笑みながらグスターヴァルに話し掛ける。
「あぁ……大丈夫だ。皆を呼んでくれてありがとう。まさかユウキ以外にも来るとは思っていなかったからな」
少し離れた場所から、グスターヴァルはじっとその場に集まった人たちを見つめながら答えた。
いつも通りのグスターヴァルに戻ったようだ。
ふと、先程のは一体なんだったのだろうと急に恥ずかしくなった。
猫であれば甘えているみたいで可愛いなと思えるが、相手はドラゴンだ。
一体どういうつもりだったのだろうか。
もしかしたら、大した意味はないのかもしれないが、甘えやマーキングのようなものなら嬉しい。
イアンはドキドキと緊張と喜びで、胸を高鳴らせながらグスターヴァルを見つめた。
「なんか寂しいね。お別れする訳じゃないけど……。もう一度、グスターヴァルの背中に乗りたかったな」
ぼそりと突然ユウキが呟いた。
ふと見ると、いつの間にかカイトの腕から離れていた。
先日見た時も思ったが、ユウキは結構恥ずかしがり屋なのかもしれない。
自分も人のことは言えないが、もしグスターヴァルが抱き締めてくれたら離れたりしないだろうな、などとイアンは考えていた。
「俺は一度も乗ったことないけどな」
すると、ユウキの横で不機嫌そうにカイトがぼやいた。
きょとんとしてイアンは首を傾げる。
「俺だって乗ったことないんだからな」
今度はライアンが文句を言い出した。
「私も乗りたいっ」
なぜかキティが目を輝かせながら声を上げる。
(あれ? 乗るって話になったんだっけ?)
はて、と考えながらイアンは反対側に首を傾げる。
「ダメだよ、キティ。もう時間がないんだから」
大きく溜め息を付きながらルイがキティに言い聞かせた。
「ええー。でも、グスターヴァルは人間になるんでしょ? これが最後じゃない。ね、私乗ったことないの、お願いっ!」
胸の前でぎゅっと両手を握り締め、更にじっと大きな瞳を潤ませながらキティはルイに懇願する。
再び深い溜め息を付くと、ルイはグスターヴァルを見上げて問い掛けた。
「……グスターヴァル、どうでしょうか?」
ルイはキティには甘いのかもしれない。そしてきっとそのことをキティは分かっているのだろう、とふたりを見ながらイアンはふと思っていた。
なぜならイアンのところにも同じような妹がいるからだ。
「問題ない」
しかしあっさりとグスターヴァルは了承したのだった。
「やったぁっ!」
キティは両手をばっと上げて万歳をしながら大喜びしている。
そしてそのままライアンとハイタッチをしていた。
「やれやれ……すみません、グスターヴァル。それではお願いできますか?」
大きく溜め息を付きながら肩を竦めると、ルイは申し訳なさそうな顔でグスターヴァルをじっと見上げる。
「あぁ」
そう言うと、グスターヴァルはゆっくりと体をできるだけ低く屈めた。
「俺が先に乗る」
すぐにライアンがそう言ってグスターヴァルの背中に飛び乗った。
そこからグスターヴァルの脚に右足を乗せると、キティに向かってぐっと手を伸ばす。
「ありがとう、ライアン」
にこりと微笑むとキティも右手を精一杯伸ばした。
その右手を掴むとライアンは片手でキティを引っ張り上げ、すぐに両手で抱き締める。
「大丈夫か?」
「うん」
心配そうな顔で覗き込むライアンにキティは笑顔で答える。
仲の良い新婚ふたりの様子を見上げながら、イアンは羨ましく感じていた。
グスターヴァルが人間になったら、あんな風にぎゅっと抱き締められたら……と、思わず想像してしまい、顔を真っ赤にしながら慌てて頭に浮かんだものを打ち消した。
「では、行くぞ」
いつの間にかグスターヴァルの背中の上に並んで座っている。
グスターヴァルの背中は広く、ふたり並んでも全く問題なさそうだ。
「うん、お願いっ」
キティの声を合図にグスターヴァルがゆっくりと立ち上がる。
そして少し歩いた後、ばさりと翼を広げた。
少し離れた所から見ていたイアンは、そんなグスターヴァルの姿もかっこいいと感じていた。
以前見た時とは違う感情だった。
今日は別れではない。これから始まるのだ。
まさかと思い、思わずイアンはユウキの方を見た。
するとユウキもまた、こちらを見つめ返したためドキッとしてしまった。
「あ、あの……」
「おい、優希にはさっきのやるなよ」
何か話さなければと声を発した瞬間、ユウキを後ろから彼の恋人がぎゅっと抱き締めていた。更にグスターヴァルを睨み付けて言い聞かせていたのだった。
「ちょっと海斗っ!」
真っ赤な顔で怒ると、ユウキは慌てて彼の腕から逃れていた。
ふたりのやり取りにイアンはぽかんとしてしまった。
「何がだ?」
睨まれたグスターヴァルは不思議そうに首を傾げている。
「さっきこいつにすりすりしてただろう。猫か犬みたいに」
離れたユウキを左手で掴んでもう一度抱き締めると、イアンを指差しながらカイトが答える。
するとカイトが発した言葉に、近くにいたルイが吹き出していた。
「…………」
言われた言葉とルイの反応に、グスターヴァルはなんとも不服そうな顔をした。
しかしそんなグスターヴァルを見て、イアンは彼の色々な表情を見られて少しだけ嬉しく思っていた。
「でもさー、飼い主だったらユウキにもしそうだよねぇ」
くすっと笑いながらアリスが口を挟んできた。
その瞬間、カイトが思い切りアリスを睨み付ける。
「私はペットではない」
アリスの言葉に溜め息を付くと、グスターヴァルはその場から離れてしまった。
どうやらまた機嫌を損ねてしまったようだ。
せっかくそばに来てくれたのに、とイアンは残念な気持ちになっていた。
「さて、そろそろ行かないと遅くなってしまいますよ、グスターヴァル。皆さんと話はできましたか?」
両手をぱんと叩くと、ルイがにこりと微笑みながらグスターヴァルに話し掛ける。
「あぁ……大丈夫だ。皆を呼んでくれてありがとう。まさかユウキ以外にも来るとは思っていなかったからな」
少し離れた場所から、グスターヴァルはじっとその場に集まった人たちを見つめながら答えた。
いつも通りのグスターヴァルに戻ったようだ。
ふと、先程のは一体なんだったのだろうと急に恥ずかしくなった。
猫であれば甘えているみたいで可愛いなと思えるが、相手はドラゴンだ。
一体どういうつもりだったのだろうか。
もしかしたら、大した意味はないのかもしれないが、甘えやマーキングのようなものなら嬉しい。
イアンはドキドキと緊張と喜びで、胸を高鳴らせながらグスターヴァルを見つめた。
「なんか寂しいね。お別れする訳じゃないけど……。もう一度、グスターヴァルの背中に乗りたかったな」
ぼそりと突然ユウキが呟いた。
ふと見ると、いつの間にかカイトの腕から離れていた。
先日見た時も思ったが、ユウキは結構恥ずかしがり屋なのかもしれない。
自分も人のことは言えないが、もしグスターヴァルが抱き締めてくれたら離れたりしないだろうな、などとイアンは考えていた。
「俺は一度も乗ったことないけどな」
すると、ユウキの横で不機嫌そうにカイトがぼやいた。
きょとんとしてイアンは首を傾げる。
「俺だって乗ったことないんだからな」
今度はライアンが文句を言い出した。
「私も乗りたいっ」
なぜかキティが目を輝かせながら声を上げる。
(あれ? 乗るって話になったんだっけ?)
はて、と考えながらイアンは反対側に首を傾げる。
「ダメだよ、キティ。もう時間がないんだから」
大きく溜め息を付きながらルイがキティに言い聞かせた。
「ええー。でも、グスターヴァルは人間になるんでしょ? これが最後じゃない。ね、私乗ったことないの、お願いっ!」
胸の前でぎゅっと両手を握り締め、更にじっと大きな瞳を潤ませながらキティはルイに懇願する。
再び深い溜め息を付くと、ルイはグスターヴァルを見上げて問い掛けた。
「……グスターヴァル、どうでしょうか?」
ルイはキティには甘いのかもしれない。そしてきっとそのことをキティは分かっているのだろう、とふたりを見ながらイアンはふと思っていた。
なぜならイアンのところにも同じような妹がいるからだ。
「問題ない」
しかしあっさりとグスターヴァルは了承したのだった。
「やったぁっ!」
キティは両手をばっと上げて万歳をしながら大喜びしている。
そしてそのままライアンとハイタッチをしていた。
「やれやれ……すみません、グスターヴァル。それではお願いできますか?」
大きく溜め息を付きながら肩を竦めると、ルイは申し訳なさそうな顔でグスターヴァルをじっと見上げる。
「あぁ」
そう言うと、グスターヴァルはゆっくりと体をできるだけ低く屈めた。
「俺が先に乗る」
すぐにライアンがそう言ってグスターヴァルの背中に飛び乗った。
そこからグスターヴァルの脚に右足を乗せると、キティに向かってぐっと手を伸ばす。
「ありがとう、ライアン」
にこりと微笑むとキティも右手を精一杯伸ばした。
その右手を掴むとライアンは片手でキティを引っ張り上げ、すぐに両手で抱き締める。
「大丈夫か?」
「うん」
心配そうな顔で覗き込むライアンにキティは笑顔で答える。
仲の良い新婚ふたりの様子を見上げながら、イアンは羨ましく感じていた。
グスターヴァルが人間になったら、あんな風にぎゅっと抱き締められたら……と、思わず想像してしまい、顔を真っ赤にしながら慌てて頭に浮かんだものを打ち消した。
「では、行くぞ」
いつの間にかグスターヴァルの背中の上に並んで座っている。
グスターヴァルの背中は広く、ふたり並んでも全く問題なさそうだ。
「うん、お願いっ」
キティの声を合図にグスターヴァルがゆっくりと立ち上がる。
そして少し歩いた後、ばさりと翼を広げた。
少し離れた所から見ていたイアンは、そんなグスターヴァルの姿もかっこいいと感じていた。
以前見た時とは違う感情だった。
今日は別れではない。これから始まるのだ。
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