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Destiny~君は私の運命の人~【スピンオフ】
第8話
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言われた言葉がすぐには理解できず、イアンは混乱していた。
自分なりに必死に考えてみる。
つまり、初めて会った時のように、魔法でグスターヴァルを一時的に人の姿に変えるのではなく、ドラゴンからずっと人間に変える方法があるということ?
そんなことができるのだろうか。
しかし、もしもグスターヴァルが人間になったとしたら、これからずっとそばにいられるし、いつでも会えるようになるということだ。
もしかしたら恋人にだって……。
ふとそんなことが頭の中をよぎり、思わず口元が緩んでしまった。
「人間に変えるだと?」
頭上から声が聞こえ、考え事をしていたイアンはハッとしてグスターヴァルを見上げた。
じっと疑うような目付きでルイを見下ろしている。
「えぇ。一時的な魔法ではなく、永久的に人間に変える方法があるのではないかと考えました」
相変わらずルイはにこりと笑っている。
一体なぜそのようなことを思い付いたのだろうか。
「できるとは思うけど……グスターヴァルはどうしたいの?」
ふわふわと今度はグスターヴァルの近くに飛んでいくと、フェイはじっと見つめながら問い掛けた。
「……私は……」
問い掛けられた言葉に、グスターヴァルは困ったような顔をしている。
それはそうだろう。
グスターヴァル自身は人間に変わることなど望んでいないはずだ。
先程はつい期待をしてしまったが、伝説のドラゴンとして生まれたグスターヴァルが人間になってしまったら、力も長い寿命も失うことになるのだ。
「グスターヴァル、迷うことはないですよ。あなたの役目は終わったのですから。ワンダーランドはもう心配はありません。これからは、あなた自身の為に生きてください」
じっと黙って見つめていたルイが突然そんなことを言い出した。
「…………」
しかし、グスターヴァルは黙ったままである。
まさか本当に迷っているのだろうか。
少しだけ期待を感じ、イアンの鼓動が速くなっていく。
「何か、気になることでもあるのですか?」
返事をしないグスターヴァルに、ルイが再び問い掛ける。
「……そうだな。フェイ、本当に叶うのか?」
じっとルイを見つめた後、グスターヴァルはフェイを見てそう尋ねた。
「うん、グスターヴァルが望むなら」
にこりとフェイは笑って答える。
「そうか……」
そう言ってグスターヴァルは再び黙り込んだ。
悩んでいる様子のグスターヴァルをじっと見上げながら、イアンは気持ちが高ぶっていた。
本当に人間に変われるのかもしれないという期待で胸がいっぱいになっていたのだ。
ぎゅっとグスターヴァルの前足を掴む手に力を入れる。
「っ!」
強く掴まれたことが分かったのか、驚いたように目を大きくさせてグスターヴァルはじっとイアンを見つめた。
「分かった……ただ、その前に、一言ユウキに伝えておきたい。あの子は私の主だからな」
そして目を細め、グスターヴァルは再びルイの方を見るとそう話した。
ふと思い出した。
ユウキ――王女の結婚式の時にいた、あの人間の少年だ。
彼もまた、伝説の『ホワイトキャット』だと聞いた。そしてグスターヴァルの主だと。
彼との間に強い絆がある気がして、急に胸が苦しくなった。
そもそも自分とグスターヴァルの間に絆があるのかも分からない。
もしかして、グスターヴァルの『恋の病』の相手というのは――。
イアンが考え込んでいる間にも話は進んでいく。
「そうですね。ドラゴンの姿はこれで最後になるかもしれませんし……。ところで、白の魔女の所へはいつ行きますか?」
ふむ、と顎に手を当てながら頷くと、ルイはグスターヴァルを見上げ、問い掛ける。
「私はいつでも構わない」
はっきりとした口調でグスターヴァルが答える。
先程のような迷いは一切感じられない。
グスターヴァルの答えを聞いて、イアンは苦しくなっていた胸がふわりと軽くなっていった。
彼の言動ひとつで気持ちがこんなにも浮き沈みするのだ。
真剣な表情をしているグスターヴァルをじっと見上げる。
「分かりました。優希くんには私から話をしておきますね。それに、優希くんをお連れするにも彼の都合もあるでしょうし。……あ、そうだ。イアンくん、君にもグスターヴァルと一緒に、白の魔女の所へ行っていただきたいのですが、ご都合はいかがですか?」
「えっ!」
「なんだとっ!」
にこりと笑顔で問い掛けたルイの言葉に、再びイアンとグスターヴァルが同時に声を上げる。
「ダメだっ、危険すぎるっ。イアンはダメだっ!」
怒ったようにグスターヴァルが声を荒げた。
「どうしてダメなんですか? あなたが守ってあげれば良いだけのことでしょう? それに、恐らく『人間に変わる』理由の為にも、イアンくんが一緒にいた方がきっと上手くいくと思いますよ。ね、フェイもそう思いませんか?」
こてんと首を傾げながらルイがグスターヴァルに話す。そしてすぐ隣を飛んでいたフェイにも問い掛ける。
「うん、そうだね。イアンが一緒の方がいいと思うよ。それに僕もいるし、大丈夫だよ」
うんうんと頷きながらフェイが答える。
「しかしっ――」
「決まりですね! ではイアンくん、日にちはまた追って連絡しますので、イーサンに休暇をもらってくださいね」
言い掛けたグスターヴァルを制止すようにぱんと両手を叩き、にこりと笑いながらルイはイアンに向かってそう話した。
もちろん王子に言われて断れるはずがない。
「……はい、分かりました」
しかし一体全体なぜこうなったのか……イアンは全く理解できなかった。
自分なりに必死に考えてみる。
つまり、初めて会った時のように、魔法でグスターヴァルを一時的に人の姿に変えるのではなく、ドラゴンからずっと人間に変える方法があるということ?
そんなことができるのだろうか。
しかし、もしもグスターヴァルが人間になったとしたら、これからずっとそばにいられるし、いつでも会えるようになるということだ。
もしかしたら恋人にだって……。
ふとそんなことが頭の中をよぎり、思わず口元が緩んでしまった。
「人間に変えるだと?」
頭上から声が聞こえ、考え事をしていたイアンはハッとしてグスターヴァルを見上げた。
じっと疑うような目付きでルイを見下ろしている。
「えぇ。一時的な魔法ではなく、永久的に人間に変える方法があるのではないかと考えました」
相変わらずルイはにこりと笑っている。
一体なぜそのようなことを思い付いたのだろうか。
「できるとは思うけど……グスターヴァルはどうしたいの?」
ふわふわと今度はグスターヴァルの近くに飛んでいくと、フェイはじっと見つめながら問い掛けた。
「……私は……」
問い掛けられた言葉に、グスターヴァルは困ったような顔をしている。
それはそうだろう。
グスターヴァル自身は人間に変わることなど望んでいないはずだ。
先程はつい期待をしてしまったが、伝説のドラゴンとして生まれたグスターヴァルが人間になってしまったら、力も長い寿命も失うことになるのだ。
「グスターヴァル、迷うことはないですよ。あなたの役目は終わったのですから。ワンダーランドはもう心配はありません。これからは、あなた自身の為に生きてください」
じっと黙って見つめていたルイが突然そんなことを言い出した。
「…………」
しかし、グスターヴァルは黙ったままである。
まさか本当に迷っているのだろうか。
少しだけ期待を感じ、イアンの鼓動が速くなっていく。
「何か、気になることでもあるのですか?」
返事をしないグスターヴァルに、ルイが再び問い掛ける。
「……そうだな。フェイ、本当に叶うのか?」
じっとルイを見つめた後、グスターヴァルはフェイを見てそう尋ねた。
「うん、グスターヴァルが望むなら」
にこりとフェイは笑って答える。
「そうか……」
そう言ってグスターヴァルは再び黙り込んだ。
悩んでいる様子のグスターヴァルをじっと見上げながら、イアンは気持ちが高ぶっていた。
本当に人間に変われるのかもしれないという期待で胸がいっぱいになっていたのだ。
ぎゅっとグスターヴァルの前足を掴む手に力を入れる。
「っ!」
強く掴まれたことが分かったのか、驚いたように目を大きくさせてグスターヴァルはじっとイアンを見つめた。
「分かった……ただ、その前に、一言ユウキに伝えておきたい。あの子は私の主だからな」
そして目を細め、グスターヴァルは再びルイの方を見るとそう話した。
ふと思い出した。
ユウキ――王女の結婚式の時にいた、あの人間の少年だ。
彼もまた、伝説の『ホワイトキャット』だと聞いた。そしてグスターヴァルの主だと。
彼との間に強い絆がある気がして、急に胸が苦しくなった。
そもそも自分とグスターヴァルの間に絆があるのかも分からない。
もしかして、グスターヴァルの『恋の病』の相手というのは――。
イアンが考え込んでいる間にも話は進んでいく。
「そうですね。ドラゴンの姿はこれで最後になるかもしれませんし……。ところで、白の魔女の所へはいつ行きますか?」
ふむ、と顎に手を当てながら頷くと、ルイはグスターヴァルを見上げ、問い掛ける。
「私はいつでも構わない」
はっきりとした口調でグスターヴァルが答える。
先程のような迷いは一切感じられない。
グスターヴァルの答えを聞いて、イアンは苦しくなっていた胸がふわりと軽くなっていった。
彼の言動ひとつで気持ちがこんなにも浮き沈みするのだ。
真剣な表情をしているグスターヴァルをじっと見上げる。
「分かりました。優希くんには私から話をしておきますね。それに、優希くんをお連れするにも彼の都合もあるでしょうし。……あ、そうだ。イアンくん、君にもグスターヴァルと一緒に、白の魔女の所へ行っていただきたいのですが、ご都合はいかがですか?」
「えっ!」
「なんだとっ!」
にこりと笑顔で問い掛けたルイの言葉に、再びイアンとグスターヴァルが同時に声を上げる。
「ダメだっ、危険すぎるっ。イアンはダメだっ!」
怒ったようにグスターヴァルが声を荒げた。
「どうしてダメなんですか? あなたが守ってあげれば良いだけのことでしょう? それに、恐らく『人間に変わる』理由の為にも、イアンくんが一緒にいた方がきっと上手くいくと思いますよ。ね、フェイもそう思いませんか?」
こてんと首を傾げながらルイがグスターヴァルに話す。そしてすぐ隣を飛んでいたフェイにも問い掛ける。
「うん、そうだね。イアンが一緒の方がいいと思うよ。それに僕もいるし、大丈夫だよ」
うんうんと頷きながらフェイが答える。
「しかしっ――」
「決まりですね! ではイアンくん、日にちはまた追って連絡しますので、イーサンに休暇をもらってくださいね」
言い掛けたグスターヴァルを制止すようにぱんと両手を叩き、にこりと笑いながらルイはイアンに向かってそう話した。
もちろん王子に言われて断れるはずがない。
「……はい、分かりました」
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