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Destiny~君は私の運命の人~【スピンオフ】
第5話
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『グスターヴァルが辛い思いをしている』
一体、どういうことなのか。
グスターヴァルの身に、何かあったのか。
思わず持っていた箒から手を離してぱたんと倒してしまった。
「どういうことですかっ? グスターヴァルに何かっ……」
真っ青な顔になり、そのままルイのすぐそばまで駆け寄った。
「大丈夫ですよ。グスターヴァルに何かあった訳ではないですから」
一瞬驚いた表情をしたが、ルイはすぐににこりと笑って答えた。
その答えとルイの笑った顔にほっと胸を撫で下ろす。
「良かった……」
ドラゴンなのだから余程のことはないと思っていたが、一瞬ひやりとしてしまった。
「……ただ」
しかし、ルイは再び少し悲しげな表情になり話し続ける。
「えっ?」
安心したのも束の間、再びどきんと心臓が大きく鳴った。
「少し、深刻な病に罹っています……」
「ええっ! そんなっ!」
まさかの答えに先程よりも更に顔が真っ青になってしまった。
深刻な病とは、グスターヴァルの命に係わるということだろうか。
先程大丈夫だと言われたばかりなのに、心配で居ても立っても居られなくなっていた。
「そこで、彼に会いに行こうと思っているのですが、イアンくんも一緒に行きませんか?」
深刻な病と言った割には、ルイはにこりと笑ってイアンを見つめている。
一体この人は何を考えているのか。
大丈夫なのか深刻なのか、さっぱり分からない。
思わずぽかんとしたままイアンは固まってしまった。
「これから少し、私に時間をくれませんか?」
ふふっと笑いながら、ルイはもう一度イアンに問い掛けた。
「えっ? これからですかっ?」
今さっき訓練が終わったばかりで、この後は夕食の時間である。
まさか今からグスターヴァルに会いに行くと言うのだろうか?
「えぇ。これからです。できるだけ早く行った方がいいと思いますので」
相変わらずルイはにこやかに笑っている。
「えっと……その、どうやって会いに行くんですか? 西の森って遠いんじゃ……」
訳が分からず混乱しつつも、なぜか冷静にルイに質問している自分がいた。
つい先程考えていたことだ。西の森までの行き方もどれだけ離れているのかも分からない。
「心配ないですよ。グスターヴァルに会いに行く方法は簡単ですから。では、行きましょうか」
まだ行くとは答えていないが、ルイは満面の笑みを浮かべ、くるりと方向変換し、城の方へと歩いて行ってしまった。
「あっ……」
しかし、断る理由もなければ、すぐに会えるのであればグスターヴァルに会いに行きたい。
深刻な病というのも気になる。
先を歩くルイの後を慌てて追い掛けた。
☆☆☆
着いた場所は、つい先日入ったルイの部屋であった。
なぜここに来たのかと、イアンは不思議そうに首を傾げる。
「急にお連れしてしまい申し訳ありません」
部屋の中に入ると、ルイはくるりとイアンの方へと向き直り、ゆっくりと頭を下げた。
「えっ! いやっ、そんなっ!」
慌てて手を振りながら声を上げる。
そして王子に頭を下げられるなんてとんでもない、と自分もなぜか頭を下げてしまった。
「ふふっ。ほんとにイアンくんは良い子ですね」
頭を上げると、慌てたように頭を下げているイアンに向かってルイが微笑する。
「あ、あの……」
そぉっと頭を上げ、ちらりとルイを見る。
「まだ明るいとはいえ、そろそろ日が暮れてしまいますからね。行きましょうか」
にこりと微笑みながらルイがそう話した。
本当に今からグスターヴァルに会いに行くと言うのだろうか……。
そう考えた瞬間、ぐいっとルイに腕を掴まれた。
「えっ?」
驚いて声を上げた次の瞬間、目の前が真っ白な光に包まれ思わず目を瞑った。
一瞬のことであった。
ふわりと頬に風を感じてゆっくりと目を開ける。
「え……?」
ぱちぱちと何度も瞬きさせる。
いつの間にか光はなくなっている。
しかも、今までルイの部屋の中にいたはずなのに、目の前に広がるのは空と少し下に見える木々だった。
「イアンくんはここで少しお待ちください。すぐお呼びしますので」
横からルイの声が聞こえ、ぱっと振り返ると、イアンの腕を離したルイが歩いて行く姿が見えた。
そして、その向こう――。
「え…………」
そのまま呆然と立ち尽くす。
大きな岩が沢山ごろごろとした広い場所に、更に大きな黒い岩の塊のようなもの。
あれは……。
「グスターヴァル……」
大きな黒い岩の塊のように見えたのは、蹲っている1匹のドラゴンの姿だった。
一瞬でグスターヴァルの所に来た驚きよりも、その姿を見たショックでイアンは体が固まってしまった。
もしかして本当にどこか悪いのだろうか。
深刻な病とは一体なんなのか。
ハッとして、すぐにでも駆け寄りたい気持ちでいっぱいになったが、ルイに待つように言われたことを思い出す。
しかし、グスターヴァルはぴくりとも動かない。
大丈夫だとも深刻な病だとも言っていたルイの言葉が、頭の中でぐるぐると回っている。
一体、どういうことなのか。
グスターヴァルの身に、何かあったのか。
思わず持っていた箒から手を離してぱたんと倒してしまった。
「どういうことですかっ? グスターヴァルに何かっ……」
真っ青な顔になり、そのままルイのすぐそばまで駆け寄った。
「大丈夫ですよ。グスターヴァルに何かあった訳ではないですから」
一瞬驚いた表情をしたが、ルイはすぐににこりと笑って答えた。
その答えとルイの笑った顔にほっと胸を撫で下ろす。
「良かった……」
ドラゴンなのだから余程のことはないと思っていたが、一瞬ひやりとしてしまった。
「……ただ」
しかし、ルイは再び少し悲しげな表情になり話し続ける。
「えっ?」
安心したのも束の間、再びどきんと心臓が大きく鳴った。
「少し、深刻な病に罹っています……」
「ええっ! そんなっ!」
まさかの答えに先程よりも更に顔が真っ青になってしまった。
深刻な病とは、グスターヴァルの命に係わるということだろうか。
先程大丈夫だと言われたばかりなのに、心配で居ても立っても居られなくなっていた。
「そこで、彼に会いに行こうと思っているのですが、イアンくんも一緒に行きませんか?」
深刻な病と言った割には、ルイはにこりと笑ってイアンを見つめている。
一体この人は何を考えているのか。
大丈夫なのか深刻なのか、さっぱり分からない。
思わずぽかんとしたままイアンは固まってしまった。
「これから少し、私に時間をくれませんか?」
ふふっと笑いながら、ルイはもう一度イアンに問い掛けた。
「えっ? これからですかっ?」
今さっき訓練が終わったばかりで、この後は夕食の時間である。
まさか今からグスターヴァルに会いに行くと言うのだろうか?
「えぇ。これからです。できるだけ早く行った方がいいと思いますので」
相変わらずルイはにこやかに笑っている。
「えっと……その、どうやって会いに行くんですか? 西の森って遠いんじゃ……」
訳が分からず混乱しつつも、なぜか冷静にルイに質問している自分がいた。
つい先程考えていたことだ。西の森までの行き方もどれだけ離れているのかも分からない。
「心配ないですよ。グスターヴァルに会いに行く方法は簡単ですから。では、行きましょうか」
まだ行くとは答えていないが、ルイは満面の笑みを浮かべ、くるりと方向変換し、城の方へと歩いて行ってしまった。
「あっ……」
しかし、断る理由もなければ、すぐに会えるのであればグスターヴァルに会いに行きたい。
深刻な病というのも気になる。
先を歩くルイの後を慌てて追い掛けた。
☆☆☆
着いた場所は、つい先日入ったルイの部屋であった。
なぜここに来たのかと、イアンは不思議そうに首を傾げる。
「急にお連れしてしまい申し訳ありません」
部屋の中に入ると、ルイはくるりとイアンの方へと向き直り、ゆっくりと頭を下げた。
「えっ! いやっ、そんなっ!」
慌てて手を振りながら声を上げる。
そして王子に頭を下げられるなんてとんでもない、と自分もなぜか頭を下げてしまった。
「ふふっ。ほんとにイアンくんは良い子ですね」
頭を上げると、慌てたように頭を下げているイアンに向かってルイが微笑する。
「あ、あの……」
そぉっと頭を上げ、ちらりとルイを見る。
「まだ明るいとはいえ、そろそろ日が暮れてしまいますからね。行きましょうか」
にこりと微笑みながらルイがそう話した。
本当に今からグスターヴァルに会いに行くと言うのだろうか……。
そう考えた瞬間、ぐいっとルイに腕を掴まれた。
「えっ?」
驚いて声を上げた次の瞬間、目の前が真っ白な光に包まれ思わず目を瞑った。
一瞬のことであった。
ふわりと頬に風を感じてゆっくりと目を開ける。
「え……?」
ぱちぱちと何度も瞬きさせる。
いつの間にか光はなくなっている。
しかも、今までルイの部屋の中にいたはずなのに、目の前に広がるのは空と少し下に見える木々だった。
「イアンくんはここで少しお待ちください。すぐお呼びしますので」
横からルイの声が聞こえ、ぱっと振り返ると、イアンの腕を離したルイが歩いて行く姿が見えた。
そして、その向こう――。
「え…………」
そのまま呆然と立ち尽くす。
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あれは……。
「グスターヴァル……」
大きな黒い岩の塊のように見えたのは、蹲っている1匹のドラゴンの姿だった。
一瞬でグスターヴァルの所に来た驚きよりも、その姿を見たショックでイアンは体が固まってしまった。
もしかして本当にどこか悪いのだろうか。
深刻な病とは一体なんなのか。
ハッとして、すぐにでも駆け寄りたい気持ちでいっぱいになったが、ルイに待つように言われたことを思い出す。
しかし、グスターヴァルはぴくりとも動かない。
大丈夫だとも深刻な病だとも言っていたルイの言葉が、頭の中でぐるぐると回っている。
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