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Wedding~消えた花嫁~
第33話
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主役ふたりの『誓いの言葉』が終わり、会場は再び大勢の人の話し声や笑い声、食事をする音で溢れ返っている。
「なんか、思ったより簡素だった……」
つい先程まで感動していたものの、なんとなく日本での披露宴を思い浮かべていた優希はあっさりと終わってしまったことに唖然としていた。
「ユウキたちの世界では違うの?」
すっかり涙が止まったアリスは優希の言葉にことんと首を傾げた。
「うーん、行ったことはないけど、偉い人とかいろんな人が話したりとか、出し物があったりとか、そういう感じ? あ、でも指輪は贈るんだね」
腕を組みながら悩み、自分が思う披露宴のイメージを答える。そして思い出したように指輪のことを話した。
「うん。指輪は男性から女性に誓いの証として贈るんだよ」
にこりと微笑みながらジェイクが教えてくれた。
なんともロマンチックな話である。
「へぇ、そうなんだ。俺たちの世界では『指輪の交換』っていうのがあって、それぞれ指輪をつけ合うんだよ」
なるほどと頷きながら、優希は自分たちの世界の話をした。
「お互いに?」
するとそれを聞いたエリスが驚いたような顔で問い掛けてきた。
「あぁ、俺たちの世界では、誓いの証として指輪をそれぞれお互いにつけ合うっていう風習があるんだ。基本的にはお揃いの指輪を購入して、結婚後はずっとそれをつけてるな」
付け加えるように海斗が説明した。
「それも素敵だね。アリス、俺たちの時はお互いに指輪を交換しようか」
目をぱちぱちとさせながら聞いていたジェイクは、思い付いたようにアリスに話す。
「うん、いいよっ」
にこりと笑ってアリスが答える。
もしかしたら、次の結婚式はこのふたりなのかもしれない。
いや、ワンダーランドが何歳から結婚できるかにもよるのだろうが。
笑顔で見つめ合うふたりを見ながら優希はぼんやりとそんなことを考えていた。
「盛り上がっているところすまないが……私は食事をしないから、イアンに代わりに食べてもらいたいのだが。誰かイアンを見ていないか?」
すると、ずっと黙ったまま話を聞いていただけであったグスターヴァルが突然口を開いた。
先程からきょろきょろと周りを見ていたようだったが、どうやらイアンを探していたようだ。
「え? イアンに?」
きょとんとした顔でエリスが問い返した。
「あぁ……彼にはこのスーツを選んでもらって、着せてもらった恩があるからな」
こくりと頷くとグスターヴァルが答える。
「そのスーツ、凄くグスターヴァルに似合ってるよね。かっこいいよっ」
じっとグスターヴァルを見ていた優希はにこりと笑って話し掛ける。
「おい優希。俺は?」
むっとした海斗がすぐに割って入ってきた。
「え? 海斗もかっこいいってば」
何を言ってるんだろうと優希はことんと首を傾げる。
「なんか、さっきグスターヴァルに言ったのと違うな」
不機嫌そうに海斗が文句を言う。
「ほんとグスターヴァル、かっこいいよね」
にこにこと笑いながら今度はアリスが会話に入ってきた。
「ええっ! アリス、俺はっ?」
ぎょっとした顔で慌てたようにジェイクがアリスの肩を掴んで声を上げる。
「うんうん、ジェイクもかっこいいよ」
「ちょっとっ、適当に言わないでっ」
泣きそうな顔でジェイクが訴える。
相変わらずこの男たちは自分の恋人が取られそうで必死になっている。
「えっと……グスターヴァル、多分イアンは仕事で会場の警備をしているから、食事するのは無理だと思うよ?」
4人の会話を苦笑いしながら聞いていたエリスは、ふとグスターヴァルを見ながら話を戻した。
「そうか……イアンはどこを警備しているんだ?」
明らかに残念そうな顔をしたグスターヴァルは再び会場をきょろきょろと見回した。
「どうだったかな……この会場にはいないみたいだから、会場の外か、別の場所かもね」
広い会場ではあるが、客は席に座っていることもあり、立って警備している騎士たちの姿はよく見える。
会場全体を見回した後、エリスはじっとグスターヴァルを見ながら答えた。
「そのようだな……少し周りを見てくる」
そう言うと席を立ち、グスターヴァルはすたすたと広間の入口の方へと行ってしまった。
「うーん……」
口元に手を当てながらエリスが首を捻る。
「エリス、どうかしたの?」
騒いでいたジェイクを宥め終わったアリスがきょとんとした顔で問い掛けた。
「うん、なんか様子が変だったんだよね」
「様子が変?」
ふたりの会話を聞いて優希も首を傾げる。
「さっき、グスターヴァルの着替えをイアンにお願いして、俺は仕事で部屋にいなかったんだけど……イーサンに頼まれてイアンを呼びに行った時、なんかふたりとも様子が変だったんだよね。イアンは顔真っ赤だったし、慌ててた感じだった。グスターヴァルもなんかおかしいっていうか……」
先程のことを思い出すようにしてエリスが答える。
「えっ! それって、もしかして……」
顔をぱぁっと輝かせながらアリスが腰を浮かせる。
「もしかして?」
漸く落ち着いたジェイクはアリスを見ながら首を傾げる。
「あれでしょ?」
ふふっと言葉を濁しながら楽しそうにアリスが答える。
「あれ?」
アリス以外の4人が同時に声を発した。
そしてじっとアリスの次の言葉を待つ。
「ふふ……『恋』、だよ」
にっと笑いながらアリスが答えた。
「なんか、思ったより簡素だった……」
つい先程まで感動していたものの、なんとなく日本での披露宴を思い浮かべていた優希はあっさりと終わってしまったことに唖然としていた。
「ユウキたちの世界では違うの?」
すっかり涙が止まったアリスは優希の言葉にことんと首を傾げた。
「うーん、行ったことはないけど、偉い人とかいろんな人が話したりとか、出し物があったりとか、そういう感じ? あ、でも指輪は贈るんだね」
腕を組みながら悩み、自分が思う披露宴のイメージを答える。そして思い出したように指輪のことを話した。
「うん。指輪は男性から女性に誓いの証として贈るんだよ」
にこりと微笑みながらジェイクが教えてくれた。
なんともロマンチックな話である。
「へぇ、そうなんだ。俺たちの世界では『指輪の交換』っていうのがあって、それぞれ指輪をつけ合うんだよ」
なるほどと頷きながら、優希は自分たちの世界の話をした。
「お互いに?」
するとそれを聞いたエリスが驚いたような顔で問い掛けてきた。
「あぁ、俺たちの世界では、誓いの証として指輪をそれぞれお互いにつけ合うっていう風習があるんだ。基本的にはお揃いの指輪を購入して、結婚後はずっとそれをつけてるな」
付け加えるように海斗が説明した。
「それも素敵だね。アリス、俺たちの時はお互いに指輪を交換しようか」
目をぱちぱちとさせながら聞いていたジェイクは、思い付いたようにアリスに話す。
「うん、いいよっ」
にこりと笑ってアリスが答える。
もしかしたら、次の結婚式はこのふたりなのかもしれない。
いや、ワンダーランドが何歳から結婚できるかにもよるのだろうが。
笑顔で見つめ合うふたりを見ながら優希はぼんやりとそんなことを考えていた。
「盛り上がっているところすまないが……私は食事をしないから、イアンに代わりに食べてもらいたいのだが。誰かイアンを見ていないか?」
すると、ずっと黙ったまま話を聞いていただけであったグスターヴァルが突然口を開いた。
先程からきょろきょろと周りを見ていたようだったが、どうやらイアンを探していたようだ。
「え? イアンに?」
きょとんとした顔でエリスが問い返した。
「あぁ……彼にはこのスーツを選んでもらって、着せてもらった恩があるからな」
こくりと頷くとグスターヴァルが答える。
「そのスーツ、凄くグスターヴァルに似合ってるよね。かっこいいよっ」
じっとグスターヴァルを見ていた優希はにこりと笑って話し掛ける。
「おい優希。俺は?」
むっとした海斗がすぐに割って入ってきた。
「え? 海斗もかっこいいってば」
何を言ってるんだろうと優希はことんと首を傾げる。
「なんか、さっきグスターヴァルに言ったのと違うな」
不機嫌そうに海斗が文句を言う。
「ほんとグスターヴァル、かっこいいよね」
にこにこと笑いながら今度はアリスが会話に入ってきた。
「ええっ! アリス、俺はっ?」
ぎょっとした顔で慌てたようにジェイクがアリスの肩を掴んで声を上げる。
「うんうん、ジェイクもかっこいいよ」
「ちょっとっ、適当に言わないでっ」
泣きそうな顔でジェイクが訴える。
相変わらずこの男たちは自分の恋人が取られそうで必死になっている。
「えっと……グスターヴァル、多分イアンは仕事で会場の警備をしているから、食事するのは無理だと思うよ?」
4人の会話を苦笑いしながら聞いていたエリスは、ふとグスターヴァルを見ながら話を戻した。
「そうか……イアンはどこを警備しているんだ?」
明らかに残念そうな顔をしたグスターヴァルは再び会場をきょろきょろと見回した。
「どうだったかな……この会場にはいないみたいだから、会場の外か、別の場所かもね」
広い会場ではあるが、客は席に座っていることもあり、立って警備している騎士たちの姿はよく見える。
会場全体を見回した後、エリスはじっとグスターヴァルを見ながら答えた。
「そのようだな……少し周りを見てくる」
そう言うと席を立ち、グスターヴァルはすたすたと広間の入口の方へと行ってしまった。
「うーん……」
口元に手を当てながらエリスが首を捻る。
「エリス、どうかしたの?」
騒いでいたジェイクを宥め終わったアリスがきょとんとした顔で問い掛けた。
「うん、なんか様子が変だったんだよね」
「様子が変?」
ふたりの会話を聞いて優希も首を傾げる。
「さっき、グスターヴァルの着替えをイアンにお願いして、俺は仕事で部屋にいなかったんだけど……イーサンに頼まれてイアンを呼びに行った時、なんかふたりとも様子が変だったんだよね。イアンは顔真っ赤だったし、慌ててた感じだった。グスターヴァルもなんかおかしいっていうか……」
先程のことを思い出すようにしてエリスが答える。
「えっ! それって、もしかして……」
顔をぱぁっと輝かせながらアリスが腰を浮かせる。
「もしかして?」
漸く落ち着いたジェイクはアリスを見ながら首を傾げる。
「あれでしょ?」
ふふっと言葉を濁しながら楽しそうにアリスが答える。
「あれ?」
アリス以外の4人が同時に声を発した。
そしてじっとアリスの次の言葉を待つ。
「ふふ……『恋』、だよ」
にっと笑いながらアリスが答えた。
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