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Wedding~消えた花嫁~
第10話
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「また白猫~?」
がっくりとしながら自分の前足を見つめる。
まさかまたこの姿になるとは思ってもみなかった。
「ユウキっ」
すぐ近くでアリスの声がした。
ハッとして声がした方を見ると、そこにはまるで自分と色違いのような黒猫がいた。
艶々とした黒い毛に大きな金色の瞳。
「黒猫っ?」
そしてそのすぐ横には白くて大きな犬もいる。ふさふさした尻尾を振っているあの白い犬には見覚えがあった。
「え? もしかしてアリスとジェイクっ?」
目をぱちぱちと瞬きさせ声を上げる。
ふたりも動物の姿に変わってしまっていたのだ。
初めて見るアリスの黒猫姿を思わずまじまじと見つめてしまった。
「うん、そうだよ。僕がちゃんと猫の姿になるのは初めてだね」
黒猫の姿に変わったアリスが溜め息交じりに答える。
「アリス、可愛いよ」
なんとも呑気なジェイクの言葉が返ってきた。相変わらずだな、と優希も溜め息が出る。
「ってことは、カイトも?」
ふとアリスの言葉に優希はハッとした。
そうだ。自分もアリスもジェイクも変わっているということは、他の人も動物になっているのではないか?
海斗はホワイトキャットなのだから、自分と同じ白猫だろう、そう思って振り返った。
「えっ!?」
振り返った瞬間、全身の毛が逆立ってしまった。
目の前にいたのは黒い毛の大きな犬、いや、狼だった。
「そんなに怯えるな。……俺だ」
その大きな狼から聞こえた声に更に驚いてしまった。海斗の声だったのだ。
「ええっ! 海斗っ!?」
よく見ると、黒だけでなく少し銀色の毛も混じっている。
大きな金色の瞳でじっと優希を見つめている。
「えー! カイト? なんで狼? ホワイトキャットなのに狼なのぉ?」
後ろからアリスの声が聞こえてきた。驚いたように声を上げているが、どこか揶揄っているようにも聞こえる。
「どういう意味だ?」
狼になった海斗がじろりと黒猫になったアリスを睨み付けている。
「わっ、こっわーい。えー、だって、ホワイトキャットだったらユウキと同じ白猫にならないとおかしいのに、やっぱり狼なんだ?」
わざとらしく怖がってみせた後、ふふっと面白そうに笑っているアリス。
尻尾がふるふるっと揺れている。
「なんだとっ」
「ダメっ、海斗っ」
飛び掛かってしまいそうな勢いで怒鳴る海斗の前に、白猫になった優希が慌てて止めに入った。とはいえ、小さな体である。危うく踏まれそうになっていた。
「っとっ……優希っ、危ないだろう……。急に俺の前に出るな」
慌てて止まると、海斗は優希に顔を寄せる。
しかし大きな狼の顔が近付き、優希は思わずびくっと体を震わせる。
その様子に狼になった海斗は耳を垂らし、しゅんと落ち込んでしまった。
自分で望んで変わった姿ではない。狼ではなく白い猫になっていたのなら、優希をこんなに怯えさせることはなかったと、ゆっくり伏せの姿勢を取った。
「海斗っ。ごめんっ。あの、ちょっとびっくりしただけだからっ」
伏せをしても自分より大きい海斗を見上げながら、必死になって優希は弁解した。
以前、虎の姿のライアンでもそうだった。きっと慣れれば平気になるはずだと。
すると、狼の姿になった海斗はそっと前足の上に顎を乗せる。
「本当か?」
そしてじっと請うように優希を見つめている。
その姿がちょっと可愛く見えた。
「うん。大丈夫、怖くないよ」
顔の近くに寄ると、優希は海斗をじっと見つめながらちょこんと首を傾げてみせる。
「そうか……」
そう呟くと、海斗は目の前の優希をぺろりと大きな舌で舐める。
「ひゃっ!」
再びびくっと体が震えた。今度は恐怖ではなく恥ずかしさであった。
「もうっ!」
毛と尻尾を逆立て怒る優希。
しかし、その姿はいつも見ている優希の怒る姿に見えて、海斗は大きな尻尾をゆらゆらと揺らしていた。
「お前らも変わってたのか……」
どうやらライアンも動物に変わってしまったようで、溜め息交じりの声が聞こえてきた。
声の方を見ると、以前に見たあの大きな虎の姿があった。
分かっているとはいえ、優希は思わず海斗の後ろに隠れていた。
「へぇ、お前は狼なのか」
海斗がホワイトキャットだということを知らないのか、ライアンは特に疑問には思っていない反応だった。
「あっ! そういえば、瑠依さん達はっ?」
自分たちがこの姿になっているということは、他の3人も同様のはずである。
「こちらですよ」
すぐ後ろの方からルイの声が聞こえ、ハッとして優希は振り返った。
そこには海斗とよく似た大きな銀色の毛の狼がいた。
「狼っ! え? まさか瑠依さんっ?」
見た瞬間、耳と尻尾がぴんと立ってしまった。
「えぇ、そのようですね。《私も》狼になってしまったようですね」
先程の自分たちの会話を聞いていたのか、どこか棘のある言い方でルイが答える。
人間の姿の時と同じ、エメラルドグリーンの瞳でじっとこちらを見ている。
「うわぁ……ルイも狼なんだぁ。なんか分かる気がするぅ」
「どういう意味ですか? アリス?」
どこか馬鹿にしたかのようなアリスの言葉に、厳しい口調でルイが問い質す。
「別にぃ」
「アリスっ。変なこと言わないで」
ぷいっと横を向くアリスにジェイクが慌てて間に入った。
「やれやれ……一体何が起こったんですかね。まさか、自分も動物に変わるとは思ってもみませんでしたよ」
大きく溜め息を付くとルイはゆっくりとおすわりの姿勢を取った。
「そうだな。まさかまたこの姿になるとは思わなかった」
そう言って会話に入ってきたのは大きな黒い梟の姿のセバスチャンだ。
やはり以前と同じ姿に変わったようだ。
ということはイーサンは? と優希はきょろきょろとイーサンの姿を探した。
「あっ」
梟の姿のセバスチャンの隣に、同じくらいのサイズの黒っぽい鳥がいた。
きっとあれがイーサンだろう。黒の番人の姿の時にも背中に大きな黒い翼があったことを思い出した。
「鷲?」
「鷹だ」
きょとんと首を傾げながら呟いた優希の疑問にイーサン本人が答える。
「あ、鷹なんだね」
黒い大きな羽を広げ、鋭い金色の瞳でじろりと優希を見ていたが、優希は怖がることなく納得していたのだった。
「で、和んでるところ悪いが、これからどうするんだ? キティを探してる場合じゃなくなったぞ?」
伏せの姿勢のまま、海斗が切り出した言葉に全員が一斉に注目した。
まさに前途多難である。
がっくりとしながら自分の前足を見つめる。
まさかまたこの姿になるとは思ってもみなかった。
「ユウキっ」
すぐ近くでアリスの声がした。
ハッとして声がした方を見ると、そこにはまるで自分と色違いのような黒猫がいた。
艶々とした黒い毛に大きな金色の瞳。
「黒猫っ?」
そしてそのすぐ横には白くて大きな犬もいる。ふさふさした尻尾を振っているあの白い犬には見覚えがあった。
「え? もしかしてアリスとジェイクっ?」
目をぱちぱちと瞬きさせ声を上げる。
ふたりも動物の姿に変わってしまっていたのだ。
初めて見るアリスの黒猫姿を思わずまじまじと見つめてしまった。
「うん、そうだよ。僕がちゃんと猫の姿になるのは初めてだね」
黒猫の姿に変わったアリスが溜め息交じりに答える。
「アリス、可愛いよ」
なんとも呑気なジェイクの言葉が返ってきた。相変わらずだな、と優希も溜め息が出る。
「ってことは、カイトも?」
ふとアリスの言葉に優希はハッとした。
そうだ。自分もアリスもジェイクも変わっているということは、他の人も動物になっているのではないか?
海斗はホワイトキャットなのだから、自分と同じ白猫だろう、そう思って振り返った。
「えっ!?」
振り返った瞬間、全身の毛が逆立ってしまった。
目の前にいたのは黒い毛の大きな犬、いや、狼だった。
「そんなに怯えるな。……俺だ」
その大きな狼から聞こえた声に更に驚いてしまった。海斗の声だったのだ。
「ええっ! 海斗っ!?」
よく見ると、黒だけでなく少し銀色の毛も混じっている。
大きな金色の瞳でじっと優希を見つめている。
「えー! カイト? なんで狼? ホワイトキャットなのに狼なのぉ?」
後ろからアリスの声が聞こえてきた。驚いたように声を上げているが、どこか揶揄っているようにも聞こえる。
「どういう意味だ?」
狼になった海斗がじろりと黒猫になったアリスを睨み付けている。
「わっ、こっわーい。えー、だって、ホワイトキャットだったらユウキと同じ白猫にならないとおかしいのに、やっぱり狼なんだ?」
わざとらしく怖がってみせた後、ふふっと面白そうに笑っているアリス。
尻尾がふるふるっと揺れている。
「なんだとっ」
「ダメっ、海斗っ」
飛び掛かってしまいそうな勢いで怒鳴る海斗の前に、白猫になった優希が慌てて止めに入った。とはいえ、小さな体である。危うく踏まれそうになっていた。
「っとっ……優希っ、危ないだろう……。急に俺の前に出るな」
慌てて止まると、海斗は優希に顔を寄せる。
しかし大きな狼の顔が近付き、優希は思わずびくっと体を震わせる。
その様子に狼になった海斗は耳を垂らし、しゅんと落ち込んでしまった。
自分で望んで変わった姿ではない。狼ではなく白い猫になっていたのなら、優希をこんなに怯えさせることはなかったと、ゆっくり伏せの姿勢を取った。
「海斗っ。ごめんっ。あの、ちょっとびっくりしただけだからっ」
伏せをしても自分より大きい海斗を見上げながら、必死になって優希は弁解した。
以前、虎の姿のライアンでもそうだった。きっと慣れれば平気になるはずだと。
すると、狼の姿になった海斗はそっと前足の上に顎を乗せる。
「本当か?」
そしてじっと請うように優希を見つめている。
その姿がちょっと可愛く見えた。
「うん。大丈夫、怖くないよ」
顔の近くに寄ると、優希は海斗をじっと見つめながらちょこんと首を傾げてみせる。
「そうか……」
そう呟くと、海斗は目の前の優希をぺろりと大きな舌で舐める。
「ひゃっ!」
再びびくっと体が震えた。今度は恐怖ではなく恥ずかしさであった。
「もうっ!」
毛と尻尾を逆立て怒る優希。
しかし、その姿はいつも見ている優希の怒る姿に見えて、海斗は大きな尻尾をゆらゆらと揺らしていた。
「お前らも変わってたのか……」
どうやらライアンも動物に変わってしまったようで、溜め息交じりの声が聞こえてきた。
声の方を見ると、以前に見たあの大きな虎の姿があった。
分かっているとはいえ、優希は思わず海斗の後ろに隠れていた。
「へぇ、お前は狼なのか」
海斗がホワイトキャットだということを知らないのか、ライアンは特に疑問には思っていない反応だった。
「あっ! そういえば、瑠依さん達はっ?」
自分たちがこの姿になっているということは、他の3人も同様のはずである。
「こちらですよ」
すぐ後ろの方からルイの声が聞こえ、ハッとして優希は振り返った。
そこには海斗とよく似た大きな銀色の毛の狼がいた。
「狼っ! え? まさか瑠依さんっ?」
見た瞬間、耳と尻尾がぴんと立ってしまった。
「えぇ、そのようですね。《私も》狼になってしまったようですね」
先程の自分たちの会話を聞いていたのか、どこか棘のある言い方でルイが答える。
人間の姿の時と同じ、エメラルドグリーンの瞳でじっとこちらを見ている。
「うわぁ……ルイも狼なんだぁ。なんか分かる気がするぅ」
「どういう意味ですか? アリス?」
どこか馬鹿にしたかのようなアリスの言葉に、厳しい口調でルイが問い質す。
「別にぃ」
「アリスっ。変なこと言わないで」
ぷいっと横を向くアリスにジェイクが慌てて間に入った。
「やれやれ……一体何が起こったんですかね。まさか、自分も動物に変わるとは思ってもみませんでしたよ」
大きく溜め息を付くとルイはゆっくりとおすわりの姿勢を取った。
「そうだな。まさかまたこの姿になるとは思わなかった」
そう言って会話に入ってきたのは大きな黒い梟の姿のセバスチャンだ。
やはり以前と同じ姿に変わったようだ。
ということはイーサンは? と優希はきょろきょろとイーサンの姿を探した。
「あっ」
梟の姿のセバスチャンの隣に、同じくらいのサイズの黒っぽい鳥がいた。
きっとあれがイーサンだろう。黒の番人の姿の時にも背中に大きな黒い翼があったことを思い出した。
「鷲?」
「鷹だ」
きょとんと首を傾げながら呟いた優希の疑問にイーサン本人が答える。
「あ、鷹なんだね」
黒い大きな羽を広げ、鋭い金色の瞳でじろりと優希を見ていたが、優希は怖がることなく納得していたのだった。
「で、和んでるところ悪いが、これからどうするんだ? キティを探してる場合じゃなくなったぞ?」
伏せの姿勢のまま、海斗が切り出した言葉に全員が一斉に注目した。
まさに前途多難である。
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