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Wedding~消えた花嫁~
第2話
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事件発生当日の朝。
優希は海斗と一緒にワンダーランドへ向かう為、海斗の家に来ていた。
土曜日に制服で出掛けるのは不審に思われるかもしれないと、家族には『友達の家族の結婚式に出席する』と言って制服で家を出た。間違ったことは言っていない。
「ねぇ海斗。そういえば、こういう時って何かお祝い用意するんだよね? 俺、全然忘れてた。どうしよ……」
部屋のソファーに座る海斗の横にすとんと座ると、優希は困った顔でじっと海斗を見つめる。
「ん?……あぁ、そうだな。普通はご祝儀とかなんだろうけど、こっちの金は向こうじゃ使えないだろうし。菓子か花でも用意するか。まだ時間もあるし、橘に車を用意してもらおう」
ちらりと時計を見ると、今は午前9時。式は午後1時となっていたから、11時くらいに行けば間に合うだろうと海斗は考えた。
そして優希に答えると、そのまま立ち上がって内線電話があるベッド横のサイドテーブルへと移動した。
「うん、ありがとっ。何がいいかなぁ。やっぱりお花? お花屋さんだったら今くらいの時間でも開いてるよね、きっと」
ソファーに座ったまま、移動した海斗を見ながら優希が声を掛ける。
朝出掛ける時は妙に緊張していたが、海斗と話をしているうちに段々楽しみになってきていた。
友達の誕生日会に行っていた小学生の頃を思い出す。プレゼントを何にしようかといつも悩みつつも楽しみにしていた。
「優希、すぐに橘が車を出してくれるから、俺たちもガレージへ移動しよう」
内線電話を置くと、海斗は優希に向かって声を掛けた。
「うん」
返事をすると、優希もすぐに立ち上がって既にドアへと向かった海斗に続いた。
ふたりは近所の花屋へと来ていた。車で10分もかからない場所にある。
大きくはないが9時から開店しており、店頭には色とりどりの沢山の花が並んでいる。
「凄い色々あるねっ。どんなのがいいのかな」
店頭に並ぶ花を見ながら優希は目をキラキラと輝かせていた。
「そうだな。鉢植えでもいいし、花束か、アレンジメントか……ふむ。店の人に聞いてみるか」
海斗も優希の隣に並びながらじっと花や鉢植えにされている植物を見つめる。顎に手を当てながら少し考え、こういうことはプロに聞くのがいいかと提案したのだった。
「うん、そうだねっ。俺聞いてみるね」
ぱっと顔を上げると海斗を満面な笑みで見つめた。
「あ、あぁ」
思わずどきっとして顔を赤らめてしまった海斗であったが、すぐに慌てて返事をした。
「すみませんっ」
そんな海斗に気が付くことなく優希はレジカウンターで作業をしていた店員に声を掛けていた。
「はい、何かお探しでしたか?」
優しそうな20代くらいの女性がにこりと笑って返事をした。
しかし、声を掛けてきた優希と店先にいる海斗を見ながら不思議そうに首を傾げている。
ふたりは制服で来ていたので男子高校生なのは一目瞭然であった。
花屋に何しに来たのかと思われているのだろう。
「えっと……実は、友達の家族の結婚式で。プレゼントをしたいんですけど、どんなのがいいのか分からなくて……」
「それはおめでとうございますっ。お友達のご家族は女性の方ですか?」
困った顔で尋ねる優希を見ながら店員はぱぁっと顔を綻ばせた。そしてちらりと海斗の方を見つつ、再び優希に尋ねる。
見られた海斗は気が付くことなく、店先にある花をじっと見ていた。
「あ、はい」
自分の家族にも『友達の家族』とは言ったものの、キティもライアンも友達である。しかし、高校生の自分の友達と言うと誤解をされそうなので、敢えてそう説明していた。ただ、ルイも友達なので間違ってはいない。
店員に聞かれた内容に少しだけ戸惑いを感じながらも、『まぁいっか』と返事をしていたのだった。
「じゃあ花嫁さんねっ。その人はどんな人? 可愛い? 綺麗?」
店員は相手が高校生だからなのか、話し方がフレンドリーなものに変わってきていた。
「えっと……可愛い、かな」
思わず優希も店員につられて普通に返してしまった。
「なるほど。予算はどれくらい?」
「あっ!」
予算のことなど全く考えていなかった。
優希は声を上げると、海斗を振り返り、声を掛ける。
「海斗っ」
「ん?」
店先で花を眺めていた海斗は呼ばれて初めてこちらを見た。
その様子に今まで優希と話していた店員は思わず顔を赤らめていた。
「あのさ、予算……俺、なんにも考えてなかった。いくらくらいがいいのかな」
再び困った顔で海斗をじっと見つめる優希。すぐ近くで海斗をうっとりと見つめている店員には気が付いていない。
「あぁ」
海斗は返事をしつつ、店員の様子に気が付いてはいたが、優希を見ながら近付いてきた。そして優希の隣に並ぶと顎に手を置き考える。
「そうだな……あまり高すぎてもな。5000円くらいでいいんじゃないか?」
正直、花を贈る相場がよく分からなかった。誰かに花を贈ったこともない。ただ、なんとなくで海斗は答えていたのだが、優希はその答えに頷いていた。
「そうだねっ。すみません、じゃあ5000円で」
そう言って店員に向き直ると優希は満面の笑みで答えた。
「あ……はい。分かりました。じゃあ、色の指定とか形とか、何かご希望はありますか?」
先程まで優希と普通に話し始めていた店員だったが、海斗が近くに来た途端、急に畏まった態度に変わっていた。
「うーん、海斗、どうかな?」
優希も口元に手を置きながら考える。そしてじっと訴えるように海斗を見上げる。
「そうだな……色はピンクとかオレンジとか明るめの色で。形はなんでもいいんじゃないか?」
じっと周りの花を見ながら海斗は考えた。
ふとキティの姿を思い浮かべてみるが、そもそもリスの姿しか見たことがなかった。可愛らしいリスと花を浮かべながら答えていたのだった。
「うんうん、いいね。じゃあ、ピンクとオレンジでお願いできますか? えっと、形はよく分かんないのでお任せで」
海斗の答えを嬉しそうに聞いていた優希は、再び満面の笑みを浮かべながら店員に話をする。
「分かりました。アレンジメントはいかがですか? 飾るにも持ち運びも楽ですし」
「あ、じゃあそれで」
「分かりました。ではお待ちください。お花をいくつか見繕いますので後程お伺いしますね」
そう言って店員は花が入っているガラスケースを開けると花を選び始めていた。
「可愛いのできるといいね」
優希は嬉しそうにじっと海斗を見上げる。
「そうだな」
そう答えながらも、出来上がる花よりも優希の方が可愛いと思っていた海斗であった。
優希は海斗と一緒にワンダーランドへ向かう為、海斗の家に来ていた。
土曜日に制服で出掛けるのは不審に思われるかもしれないと、家族には『友達の家族の結婚式に出席する』と言って制服で家を出た。間違ったことは言っていない。
「ねぇ海斗。そういえば、こういう時って何かお祝い用意するんだよね? 俺、全然忘れてた。どうしよ……」
部屋のソファーに座る海斗の横にすとんと座ると、優希は困った顔でじっと海斗を見つめる。
「ん?……あぁ、そうだな。普通はご祝儀とかなんだろうけど、こっちの金は向こうじゃ使えないだろうし。菓子か花でも用意するか。まだ時間もあるし、橘に車を用意してもらおう」
ちらりと時計を見ると、今は午前9時。式は午後1時となっていたから、11時くらいに行けば間に合うだろうと海斗は考えた。
そして優希に答えると、そのまま立ち上がって内線電話があるベッド横のサイドテーブルへと移動した。
「うん、ありがとっ。何がいいかなぁ。やっぱりお花? お花屋さんだったら今くらいの時間でも開いてるよね、きっと」
ソファーに座ったまま、移動した海斗を見ながら優希が声を掛ける。
朝出掛ける時は妙に緊張していたが、海斗と話をしているうちに段々楽しみになってきていた。
友達の誕生日会に行っていた小学生の頃を思い出す。プレゼントを何にしようかといつも悩みつつも楽しみにしていた。
「優希、すぐに橘が車を出してくれるから、俺たちもガレージへ移動しよう」
内線電話を置くと、海斗は優希に向かって声を掛けた。
「うん」
返事をすると、優希もすぐに立ち上がって既にドアへと向かった海斗に続いた。
ふたりは近所の花屋へと来ていた。車で10分もかからない場所にある。
大きくはないが9時から開店しており、店頭には色とりどりの沢山の花が並んでいる。
「凄い色々あるねっ。どんなのがいいのかな」
店頭に並ぶ花を見ながら優希は目をキラキラと輝かせていた。
「そうだな。鉢植えでもいいし、花束か、アレンジメントか……ふむ。店の人に聞いてみるか」
海斗も優希の隣に並びながらじっと花や鉢植えにされている植物を見つめる。顎に手を当てながら少し考え、こういうことはプロに聞くのがいいかと提案したのだった。
「うん、そうだねっ。俺聞いてみるね」
ぱっと顔を上げると海斗を満面な笑みで見つめた。
「あ、あぁ」
思わずどきっとして顔を赤らめてしまった海斗であったが、すぐに慌てて返事をした。
「すみませんっ」
そんな海斗に気が付くことなく優希はレジカウンターで作業をしていた店員に声を掛けていた。
「はい、何かお探しでしたか?」
優しそうな20代くらいの女性がにこりと笑って返事をした。
しかし、声を掛けてきた優希と店先にいる海斗を見ながら不思議そうに首を傾げている。
ふたりは制服で来ていたので男子高校生なのは一目瞭然であった。
花屋に何しに来たのかと思われているのだろう。
「えっと……実は、友達の家族の結婚式で。プレゼントをしたいんですけど、どんなのがいいのか分からなくて……」
「それはおめでとうございますっ。お友達のご家族は女性の方ですか?」
困った顔で尋ねる優希を見ながら店員はぱぁっと顔を綻ばせた。そしてちらりと海斗の方を見つつ、再び優希に尋ねる。
見られた海斗は気が付くことなく、店先にある花をじっと見ていた。
「あ、はい」
自分の家族にも『友達の家族』とは言ったものの、キティもライアンも友達である。しかし、高校生の自分の友達と言うと誤解をされそうなので、敢えてそう説明していた。ただ、ルイも友達なので間違ってはいない。
店員に聞かれた内容に少しだけ戸惑いを感じながらも、『まぁいっか』と返事をしていたのだった。
「じゃあ花嫁さんねっ。その人はどんな人? 可愛い? 綺麗?」
店員は相手が高校生だからなのか、話し方がフレンドリーなものに変わってきていた。
「えっと……可愛い、かな」
思わず優希も店員につられて普通に返してしまった。
「なるほど。予算はどれくらい?」
「あっ!」
予算のことなど全く考えていなかった。
優希は声を上げると、海斗を振り返り、声を掛ける。
「海斗っ」
「ん?」
店先で花を眺めていた海斗は呼ばれて初めてこちらを見た。
その様子に今まで優希と話していた店員は思わず顔を赤らめていた。
「あのさ、予算……俺、なんにも考えてなかった。いくらくらいがいいのかな」
再び困った顔で海斗をじっと見つめる優希。すぐ近くで海斗をうっとりと見つめている店員には気が付いていない。
「あぁ」
海斗は返事をしつつ、店員の様子に気が付いてはいたが、優希を見ながら近付いてきた。そして優希の隣に並ぶと顎に手を置き考える。
「そうだな……あまり高すぎてもな。5000円くらいでいいんじゃないか?」
正直、花を贈る相場がよく分からなかった。誰かに花を贈ったこともない。ただ、なんとなくで海斗は答えていたのだが、優希はその答えに頷いていた。
「そうだねっ。すみません、じゃあ5000円で」
そう言って店員に向き直ると優希は満面の笑みで答えた。
「あ……はい。分かりました。じゃあ、色の指定とか形とか、何かご希望はありますか?」
先程まで優希と普通に話し始めていた店員だったが、海斗が近くに来た途端、急に畏まった態度に変わっていた。
「うーん、海斗、どうかな?」
優希も口元に手を置きながら考える。そしてじっと訴えるように海斗を見上げる。
「そうだな……色はピンクとかオレンジとか明るめの色で。形はなんでもいいんじゃないか?」
じっと周りの花を見ながら海斗は考えた。
ふとキティの姿を思い浮かべてみるが、そもそもリスの姿しか見たことがなかった。可愛らしいリスと花を浮かべながら答えていたのだった。
「うんうん、いいね。じゃあ、ピンクとオレンジでお願いできますか? えっと、形はよく分かんないのでお任せで」
海斗の答えを嬉しそうに聞いていた優希は、再び満面の笑みを浮かべながら店員に話をする。
「分かりました。アレンジメントはいかがですか? 飾るにも持ち運びも楽ですし」
「あ、じゃあそれで」
「分かりました。ではお待ちください。お花をいくつか見繕いますので後程お伺いしますね」
そう言って店員は花が入っているガラスケースを開けると花を選び始めていた。
「可愛いのできるといいね」
優希は嬉しそうにじっと海斗を見上げる。
「そうだな」
そう答えながらも、出来上がる花よりも優希の方が可愛いと思っていた海斗であった。
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