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Black & White『Later story』
~執事と聖騎士~
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~執事、そして聖騎士の話~
「はぁ……」
大きく溜め息を付く。ワンダーランドが元に戻って4日目の午後。
魔女によって変えられた真っ黒で不気味な城は真っ白で美しい城へと戻っていた。ワンダーランドに相応しい綺麗で豪華な城である。
しかし、全てが戻ったという訳ではなく、部屋の片づけや調度品の整理などが日々城の住人たちで行われていた。
その整理の中心となっているのが執事であるセバスチャンである。
物を運んでいる最中に壊した物が数十点。間違えて運んでしまい、しかも戻せなくなってしまった家具が十数点。毎日何かしら問題が起こっていた。
きちんと整理し、指示しているのになぜ間違うのかと、本日10回目の溜め息を付いていたのだった。
「セバスチャン」
すると、後ろから声を掛けられた。低い男性の声だ。
ぴくんと片方の眉を上げる。見なくても誰だか分かっている。
「おい、セバスチャン。聞こえないのか?」
少し苛立ったような声で再び呼ばれる。
大きく溜め息を付き、仕方なさそうにゆっくりと振り返った。
セバスチャンは銀髪にエメラルドグリーンの瞳をしており、柔らかい長髪を後ろで1つに束ねている。その顔はルイによく似ている。
ルイに似ているのは彼が従兄弟だからだ。しかし、中性的なその顔立ちは美青年というよりも、まるで美しい女性のようであった。
緑の瞳を細め、不機嫌な顔で自分を呼んだイーサンを見る。
イーサンは黒い騎士の服装ではなく、紺色と深い紅色の騎士の格好をしている。元々がこの格好なのだ。そしてイーサンは城の聖騎士であった。
今はマスクもなく、素顔でセバスチャンを見つめている。
黒く切れ長の瞳、筋の通った高い鼻、そして色気のある唇。どこから見ても美青年である。目はどちらかというと上がり目ではあるが、どこか雰囲気が海斗に似ていた。
「なんだ、イーサン。俺は忙しいんだ」
そう言って身を翻して歩き出そうとした、その時――。
「っ!」
突然セバスチャンの腕を掴み、イーサンがどこかへと歩き出した。そして、1つの部屋の前に来ると、ガチャリと開け、セバスチャンを中へと連れ込んだ。左手で扉の鍵を閉める。
「おいっ、イーサンっ」
「いつまで待たせる気だ」
怒るセバスチャンを無視し、そう言ってセバスチャンの唇に自分の唇を重ねた。
「んんっ……」
そして、イーサンは無理矢理セバスチャンの口の中へ舌を入れ、上顎を中から舐める。
「んっ!」
びくんとセバスチャンの体が震える。
唇を重ねたまま、イーサンはセバスチャンの両腕を両手で掴み、扉に背中を押し付けるようにして立たせる。そして右足をセバスチャンの脚の間へと入れる。ぐっと力を入れ、体を押さえつけている。
深く、そしてしつこく舌を絡ませる。
この3日間、ずっと放っておかれた仕返しであった。
そして唇を離し、首筋に舌を這わせ、セバスチャンの耳を軽く噛む。
「やめっ――」
「やめない」
セバスチャンの両手を上に上げさせ、右手で扉に押さえつける。そして左手でシャツのボタンを外していく。するりと服の中に左手が入る。
「おいっ! やめろってっ! 執務中だぞっ」
真っ赤な顔でセバスチャンが抵抗する。
「そうか。じゃあ、時間外であればいいんだな? 今夜、行くからな」
イーサンは左手でぐいっとセバスチャンの顎を掴む。そして触れるだけのキスをした。
「ふっ、俺の前だけ素で話すお前が好きだ、セビー」
唇を離した後、にやりと口の端を上げ、イーサンがじっとセバスチャンを見下ろしながら話す。
「っ!」
黒く光のある瞳と目が合い、セバスチャンの心臓が激しく動いている。
顔が熱い。そして悔しそうに睨み付ける。
この男にだけは勝てない……。
☆☆☆
『そうそう、セバスチャンについてちゃんと話してなかったよね。彼は城の執事でルイの従兄弟なんだよ』
驚きの事実である。執事はなんとなく納得はできるものの、まさかセバスチャンとルイが従兄弟同士だったとは……。
「えー、セバスチャン、人間の姿で会いたかったなー。絶対イケメンだよね。ルイさんイケメンだし」
優希が驚きながらも残念そうな顔をする。
「こら優希、浮気は許さんからな」
相変わらず優希の腰をぎゅっと抱きかかえたまま、肩の上に顎を乗せている海斗が口を尖らせる。
「だからっ、なんで浮気なんだよっ! 別に俺、イケメン好きとかじゃないからっ」
顔を赤くしながら優希が怒る。
「そうなのか? 俺のこと顔が好きって言ってたじゃねぇか」
「それはっ! うぅっ、まぁ海斗の顔は好きだけど……」
海斗に反論され、優希はごにょごにょと誤魔化す。しかし、優希の言葉をしっかりと聞き取っていた海斗はまんざらでもない顔をしていたのだった。
「もうっ、続き読むねっ」
にやりとしている海斗を見て顔を赤らめると、再び手紙へと視線を戻す。
『あと、イーサン。彼は城の聖騎士で本当に強いんだ。魔女の魔法で言いなりになってるみたいに見えてたけど、本当は魔法にかかってる振りをしていたみたい。そのことはセバスチャンもルイも知ってたみたいで。ズルいよね。僕たちにも教えてくれてたら良かったのに……って、城でイーサンに見つかった時に教えてもらってたんだけどね、実は』
なんと、あの時アリスとジェイクはイーサンに捕まった訳ではなく、振りをしていたのだ。皆ちゃんと教えてほしいと思う優希だった。
『それから、実はそのセバスチャンとイーサンも恋人同士で、内緒にしてるみたいだけど、バレバレなんだよね。イーサンはセバスチャンにべったりだし、セバスチャンはイーサンにだけ態度が違うっていうか。結構セバスチャンってユウキに似てる気がする。普段はあんなにクールなのにさ』
ふたりが恋人同士なのは、優希も知っていた。というか、そうじゃないかと思っていた。あの晩聞こえてきたのはやはり……。ちょっと恥ずかしくなった。大人の恋人というのがなんかちょっとエッチな感じがしたのだ。
「優希、どうかしたのか?」
急に顔を赤らめている優希を不思議そうに覗き込む。
「べ、別にっ! てか、俺とセバスチャンが似てるってどういうことだろ? 1ミリも似てないと思うけどっ」
慌てて誤魔化す優希。しかし、相変わらず顔が赤らんでいる。
「さぁ? ツンデレ? 恥ずかしがり屋? まぁその辺だろ」
首を傾げながらしれっと海斗が優希の言葉に返答する。
「ちょっ! 何それっ! 違うしっ!」
再び真っ赤な顔で反論する。頬がリスのように膨らんでいる。
「自覚ないなぁ優希。まぁそんなところも可愛いんだけどな」
そう言って膨らんだ頬に人差し指を当てる。
「ちょっ!」
優希が怒って海斗の指を手で払い除けた。
しかし怒りながらも手紙の続きを読む。
『あ、それからジャックなんだけど、元敵とは言え、ユウキが心配してるといけないから。ちょっとだけ。ジャックは元々騎士だったんだけど、ほんとなんていうか調子いいんだよね。イライザに操られてた訳じゃないのに忠誠誓ったりしてさ。なのに今じゃセバスチャンとイーサンにすっかりごますってる。ほんと嫌な奴。ユウキには悪いけど、あの時ほんとにやられちゃってれば良かったのにって思う。まぁセバスチャンがしっかりこき使ってるみたいだから、いい気味だけどね笑』
なんと、ジャックは無事だったのだ。あの時、海斗が死んでないと言っていたが、エーテルの剣に刺された後、全く動いていなかったので本当は死んでしまったのかも、と少し心配していた。嫌な奴とは言っても、自分と海斗の手で殺してしまったとしたら、いい気はしない。
「良かった……死んでなかった」
ほっとしている優希を覗き込むようにして見ると、海斗はふっと笑顔を見せる。
「魔女は死んだが、誰も死ななくて良かったな」
「っ!」
海斗の言葉に思わず振り返る。その瞬間、顔を近付けていた海斗の顔にぶつかりそうになってしまった。
「び、びっくりした……」
思わず心臓が飛び出そうな程どきどきと速くそして大きく動いている。
心臓の音が聞こえてしまいそうになり優希は緊張で顔を赤くさせる。
「ふっ、なんだよ。そのままキスしても良かったんだぞ?」
「バカっ。もう次読むからねっ」
にやりと笑う海斗を睨み付け、優希は続きを読み始めた。
「はぁ……」
大きく溜め息を付く。ワンダーランドが元に戻って4日目の午後。
魔女によって変えられた真っ黒で不気味な城は真っ白で美しい城へと戻っていた。ワンダーランドに相応しい綺麗で豪華な城である。
しかし、全てが戻ったという訳ではなく、部屋の片づけや調度品の整理などが日々城の住人たちで行われていた。
その整理の中心となっているのが執事であるセバスチャンである。
物を運んでいる最中に壊した物が数十点。間違えて運んでしまい、しかも戻せなくなってしまった家具が十数点。毎日何かしら問題が起こっていた。
きちんと整理し、指示しているのになぜ間違うのかと、本日10回目の溜め息を付いていたのだった。
「セバスチャン」
すると、後ろから声を掛けられた。低い男性の声だ。
ぴくんと片方の眉を上げる。見なくても誰だか分かっている。
「おい、セバスチャン。聞こえないのか?」
少し苛立ったような声で再び呼ばれる。
大きく溜め息を付き、仕方なさそうにゆっくりと振り返った。
セバスチャンは銀髪にエメラルドグリーンの瞳をしており、柔らかい長髪を後ろで1つに束ねている。その顔はルイによく似ている。
ルイに似ているのは彼が従兄弟だからだ。しかし、中性的なその顔立ちは美青年というよりも、まるで美しい女性のようであった。
緑の瞳を細め、不機嫌な顔で自分を呼んだイーサンを見る。
イーサンは黒い騎士の服装ではなく、紺色と深い紅色の騎士の格好をしている。元々がこの格好なのだ。そしてイーサンは城の聖騎士であった。
今はマスクもなく、素顔でセバスチャンを見つめている。
黒く切れ長の瞳、筋の通った高い鼻、そして色気のある唇。どこから見ても美青年である。目はどちらかというと上がり目ではあるが、どこか雰囲気が海斗に似ていた。
「なんだ、イーサン。俺は忙しいんだ」
そう言って身を翻して歩き出そうとした、その時――。
「っ!」
突然セバスチャンの腕を掴み、イーサンがどこかへと歩き出した。そして、1つの部屋の前に来ると、ガチャリと開け、セバスチャンを中へと連れ込んだ。左手で扉の鍵を閉める。
「おいっ、イーサンっ」
「いつまで待たせる気だ」
怒るセバスチャンを無視し、そう言ってセバスチャンの唇に自分の唇を重ねた。
「んんっ……」
そして、イーサンは無理矢理セバスチャンの口の中へ舌を入れ、上顎を中から舐める。
「んっ!」
びくんとセバスチャンの体が震える。
唇を重ねたまま、イーサンはセバスチャンの両腕を両手で掴み、扉に背中を押し付けるようにして立たせる。そして右足をセバスチャンの脚の間へと入れる。ぐっと力を入れ、体を押さえつけている。
深く、そしてしつこく舌を絡ませる。
この3日間、ずっと放っておかれた仕返しであった。
そして唇を離し、首筋に舌を這わせ、セバスチャンの耳を軽く噛む。
「やめっ――」
「やめない」
セバスチャンの両手を上に上げさせ、右手で扉に押さえつける。そして左手でシャツのボタンを外していく。するりと服の中に左手が入る。
「おいっ! やめろってっ! 執務中だぞっ」
真っ赤な顔でセバスチャンが抵抗する。
「そうか。じゃあ、時間外であればいいんだな? 今夜、行くからな」
イーサンは左手でぐいっとセバスチャンの顎を掴む。そして触れるだけのキスをした。
「ふっ、俺の前だけ素で話すお前が好きだ、セビー」
唇を離した後、にやりと口の端を上げ、イーサンがじっとセバスチャンを見下ろしながら話す。
「っ!」
黒く光のある瞳と目が合い、セバスチャンの心臓が激しく動いている。
顔が熱い。そして悔しそうに睨み付ける。
この男にだけは勝てない……。
☆☆☆
『そうそう、セバスチャンについてちゃんと話してなかったよね。彼は城の執事でルイの従兄弟なんだよ』
驚きの事実である。執事はなんとなく納得はできるものの、まさかセバスチャンとルイが従兄弟同士だったとは……。
「えー、セバスチャン、人間の姿で会いたかったなー。絶対イケメンだよね。ルイさんイケメンだし」
優希が驚きながらも残念そうな顔をする。
「こら優希、浮気は許さんからな」
相変わらず優希の腰をぎゅっと抱きかかえたまま、肩の上に顎を乗せている海斗が口を尖らせる。
「だからっ、なんで浮気なんだよっ! 別に俺、イケメン好きとかじゃないからっ」
顔を赤くしながら優希が怒る。
「そうなのか? 俺のこと顔が好きって言ってたじゃねぇか」
「それはっ! うぅっ、まぁ海斗の顔は好きだけど……」
海斗に反論され、優希はごにょごにょと誤魔化す。しかし、優希の言葉をしっかりと聞き取っていた海斗はまんざらでもない顔をしていたのだった。
「もうっ、続き読むねっ」
にやりとしている海斗を見て顔を赤らめると、再び手紙へと視線を戻す。
『あと、イーサン。彼は城の聖騎士で本当に強いんだ。魔女の魔法で言いなりになってるみたいに見えてたけど、本当は魔法にかかってる振りをしていたみたい。そのことはセバスチャンもルイも知ってたみたいで。ズルいよね。僕たちにも教えてくれてたら良かったのに……って、城でイーサンに見つかった時に教えてもらってたんだけどね、実は』
なんと、あの時アリスとジェイクはイーサンに捕まった訳ではなく、振りをしていたのだ。皆ちゃんと教えてほしいと思う優希だった。
『それから、実はそのセバスチャンとイーサンも恋人同士で、内緒にしてるみたいだけど、バレバレなんだよね。イーサンはセバスチャンにべったりだし、セバスチャンはイーサンにだけ態度が違うっていうか。結構セバスチャンってユウキに似てる気がする。普段はあんなにクールなのにさ』
ふたりが恋人同士なのは、優希も知っていた。というか、そうじゃないかと思っていた。あの晩聞こえてきたのはやはり……。ちょっと恥ずかしくなった。大人の恋人というのがなんかちょっとエッチな感じがしたのだ。
「優希、どうかしたのか?」
急に顔を赤らめている優希を不思議そうに覗き込む。
「べ、別にっ! てか、俺とセバスチャンが似てるってどういうことだろ? 1ミリも似てないと思うけどっ」
慌てて誤魔化す優希。しかし、相変わらず顔が赤らんでいる。
「さぁ? ツンデレ? 恥ずかしがり屋? まぁその辺だろ」
首を傾げながらしれっと海斗が優希の言葉に返答する。
「ちょっ! 何それっ! 違うしっ!」
再び真っ赤な顔で反論する。頬がリスのように膨らんでいる。
「自覚ないなぁ優希。まぁそんなところも可愛いんだけどな」
そう言って膨らんだ頬に人差し指を当てる。
「ちょっ!」
優希が怒って海斗の指を手で払い除けた。
しかし怒りながらも手紙の続きを読む。
『あ、それからジャックなんだけど、元敵とは言え、ユウキが心配してるといけないから。ちょっとだけ。ジャックは元々騎士だったんだけど、ほんとなんていうか調子いいんだよね。イライザに操られてた訳じゃないのに忠誠誓ったりしてさ。なのに今じゃセバスチャンとイーサンにすっかりごますってる。ほんと嫌な奴。ユウキには悪いけど、あの時ほんとにやられちゃってれば良かったのにって思う。まぁセバスチャンがしっかりこき使ってるみたいだから、いい気味だけどね笑』
なんと、ジャックは無事だったのだ。あの時、海斗が死んでないと言っていたが、エーテルの剣に刺された後、全く動いていなかったので本当は死んでしまったのかも、と少し心配していた。嫌な奴とは言っても、自分と海斗の手で殺してしまったとしたら、いい気はしない。
「良かった……死んでなかった」
ほっとしている優希を覗き込むようにして見ると、海斗はふっと笑顔を見せる。
「魔女は死んだが、誰も死ななくて良かったな」
「っ!」
海斗の言葉に思わず振り返る。その瞬間、顔を近付けていた海斗の顔にぶつかりそうになってしまった。
「び、びっくりした……」
思わず心臓が飛び出そうな程どきどきと速くそして大きく動いている。
心臓の音が聞こえてしまいそうになり優希は緊張で顔を赤くさせる。
「ふっ、なんだよ。そのままキスしても良かったんだぞ?」
「バカっ。もう次読むからねっ」
にやりと笑う海斗を睨み付け、優希は続きを読み始めた。
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