White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Black & White~そして運命の扉が開かれる~

第56話

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 なんだか悔しくて涙目になりながら食事を進める。
 はぁ……なんでこんなことに……。
 溜め息が出る。

「優希? どうしたんだ?」
 手を止めて溜め息をつく俺に気がついたのか、藤條が心配そうな顔で覗き込んできた。
 いや、原因はお前だから。
 藤條を見て、再び溜め息が出る。
「?……さて、そろそろ行かないとな。ちょっと今日は遅くなった」
 首を傾げる藤條だったが、急に立ち上がるとそう言って俺に手を差し出す。
 遅くなったのもお前のせいだろがーっ!
 頭にきて、俺は藤條を無視して席を立つ。
「あ……ごちそう様でした……」
 席を立ってから思い出して、橘さんに声をかける。
 あれ? そういえば、他にメイドとか――コイツの家族は?
 ふと気になって周りを見たが、俺達3人しかいない。
 なんだろう……この感じ。
「優希、ほら、用意しなきゃ」
 ぼんやりしている俺に藤條が話し掛けてくる。
「あ……うん」
 生返事をしながら俺は藤條の後に続いた。



 ☆☆☆



「どうぞ」
 橘さんが車のドアを開け、にこやかに俺を見ている。
「…………」

 なんだこれ。
 いや、なんとなく想像はしたけど……これなんだっけ? ベンツ?
 車で送り迎えかー!
 この坊ちゃんがっ!
 目の前の、シルバーの高級車に俺はなんだか腹が立っていた。
 いや、車で送ってもらえるなんて体験したことないし、ちょっとした感動でもあるんだけどさ。
 なんとなく、ムカつく。

「優希」
 俺がむくれていると、藤條が俺の手を掴んで車に乗り込む。
 俺は歩いてく……って言おうかとも思ったけど、コイツの家から学校までどれだけあるか分からない。
 まぁ、今日は乗ってやろうじゃねぇか。

 ゆっくりと車は進む。
 ここどこなんだろう。
 俺は車の窓からじっと外を眺めていた。
 あまり見たことないような景色。
 いや、知ってるかもしれない。
 不思議な感覚だ。

 車に乗って10分。
 俺はずっと外を眺めていた。
 藤條も特に話し掛けてもこなかった。

「優希」
 しかし、ぼんやりと外を眺めていたら、急に声を掛けられて横を見る。

「んんっ!?」

 ぬわーっ!
 バカーっ!
 横を見た瞬間にキスされた。
 ちょっと待てーっ!
 バシバシと藤條の胸を叩く。
「いたっ、痛いって、優希っ」
 数秒間ほどくっついていた藤條の唇がやっと離れて、顔をしかめながら声を上げる。
「うるせぇっ! 何すんだっ! このっ、変態っ!」
 俺は涙目になりながら思い切り睨み付けた。
「……変態って……」
 藤條はがっくりとうな垂れていた。
 当たり前だ。お前なんか変態以外の何者でもないわっ。
 落ち込んでいる藤條を無視して再び窓の外を眺めた。
「あっ!」
 気が付くと、もう学校の校門近くまで来ていた。
 校門の100メートルくらい手前に車は止まる。
 そして、橘さんは車から降りると後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
 俺はすぐに車外へと降りる。
「橘さんっ、ありがとうっ」
 橘さんにお礼を言うと、藤條が降りてくる前に俺は走り出した。
 コイツと一緒に登校だなんてごめんだっ。
 後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視だ無視。
 あんな変態野郎。

 必死に校門まで走り続ける。
「はぁ……はぁ……」
 大した距離じゃなかったけど、妙に息切れした。
 目の前の見慣れた学校。
 ここは俺の知ってる学校なんだろうか……。
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