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Black & White~そして運命の扉が開かれる~
第27話
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手に触れるふわふわとした感触。そしてくすぐったい……これは。
「なんで~??」
なんと優希の頭には猫耳、そしてお尻からは尻尾が出ているのだ。思わず尻尾を掴んで自分の目で確かめてみる。白く細長い尻尾が見える。
「ありえない……」
先程『アリスとお揃い』と言われた意味を漸く理解する。そして優希はぼそりと呟くと真っ青な顔になって固まってしまった。
「ユウキ可愛いっ」
アリスが嬉しそうに優希に近付いてきた。
「ほんとに僕とお揃いみたいっ。しかも色違いだねっ」
耳をぴんと立て、尻尾をゆらゆらと揺らし、大きな目を輝かせながら優希を見つめる。今まではそんなアリスを『可愛い』と思っていたのに、まさか自分が同じになってしまうとは……。
「はぁ……こんな姿、絶対誰にも見せられない……」
優希はがっくりとうな垂れる。まるでコスプレだ。最初にアリスを見た時の印象が蘇る。可愛らしいアリスならともかく、自分にアリスと同じように猫耳と尻尾が生えているかと思うとゾッとする。
「似合ってると思うよ」
ジェイクも優希の近くまで歩いてきていた。先程ライアンに噛まれた所が痛むのか、ゆっくり、そして少しよろけながら。
「あんまり嬉しくない……」
優希はムスッと口を尖らす。
「ふぅん。さっきはちゃんと見てなかったけど、なかなか可愛いじゃん?」
いつの間にかライアンがすぐそばまで来ていた。優希をまるで品定めでもするかのように全身をじろじろと眺めながら呟いている。
「なっ!?」
恥ずかしくて思わず顔が赤くなる。優希は2人と1匹を見回した後、「見ないでっ」と言って猫耳を両手で隠す。
「えー、なんでぇ? 僕と同じなのにぃ。隠さなくてもいいじゃん」
アリスが悪戯っぽく優希を覗き込むようにして見る。優希はハッとした顔をすると更に赤くなる。
「なんか、ユウキって、虐めたくなるタイプだねぇ?」
嬉しそうにアリスはにんまりとして優希の顔を更に覗き込む。
「や、やめろよっ!」
ぷいっと横を見ると優希は今度は猫耳ではなく顔を隠す。首まで真っ赤になっているのが分かる。
「確かにそうだな」
そう言ってライアンが優希の首元をすっと人差し指で撫でる。
「ひっ!」
思わずびくんと両肩が上がる。ぞくぞくと全身に寒気を感じ、優希は声を上げた後、じろりと後ろを振り返って睨み付ける。
振り返った先には、にやりと口の端を上げているライアンの姿があった。優希は思わず海斗を思い出してしまった。恐らくライアンも海斗と同じタイプなのだろう。意地悪そうな顔で優希を見下ろしている。先程は気が付かなかったが、身長も恐らく海斗と変わらないくらいあるのだろう。優希が見上げる程の高さがある。長身で足も長く、そして色気のある美形である。意地悪そうなその顔も、思わず見惚れてしまいそうであった。
そういえばジェイクもかなり背が高かった。海斗よりは低そうだったが、それでも恐らく180センチ近くはあるのだろう。ただ、今は犬の姿ではあったが。
思わずアリスがいて良かったと思ってしまった優希であった。
優希がそんなことを考えているとは気が付いているのかいないのか、
「恥ずかしがってる姿も可愛くていいな。お前、俺のものにならないか?」
と、ライアンはくすりと笑って優希の顎をくいっと右手で押し上げる。
見惚れてしまった自分を恨めしく思った。瞬時にさぁっと再び青ざめ、優希はライアンの手を払い除ける。
「触んないでっ」
そして頭の上にある白い猫耳を後ろに倒し、キッとライアンを睨み付ける。
「気が強いのも堪らないな。女王に渡すのは勿体ない」
自分の顎に手を当て、ライアンはにやりと優希を見下ろしている。嫌がる優希を益々気に入ってしまったようであった。
「ダメだよっ。ユウキはちゃんと恋人がいるんだからっ!」
突然横からアリスが割って入ってきた。両手を広げ、優希とライアンを引き離し、ライアンを睨み付ける。
「えっ!?」
アリスの発言に優希が思わず声を上げる。『恋人がいる』なんて言っただろうか?
なんとなく恥ずかしくて再び顔が赤くなる。
「へぇ、恋人がいるのか。でも、俺はそんなものは気にしない。俺と付き合おう」
突然の告白。優希は目をぱちぱちとさせる。猫耳もぴんと立ち上がっている。
「いっ……つ、付き合わないよっ!」
間に入ったアリスをどかし、先程までの意地悪そうな顔から一転、優しげに優希を覗き込むようにして囁いたライアンに、思わず驚いてしまった優希であったが、すぐにハッとすると慌てて断ったのだった。
「俺のが絶対いい男だろう?」
しかしライアンは首を少し傾けながらにやりと笑う。
「そんなことないっ!」
思わず否定してしまった。相手が男だとは一言も言っていなかったのに、これではバレバレである。優希は『しまった』といった顔をする。
しかし、ワンダーランドでは男同士での恋愛は珍しくないのか特に誰も何も突っ込まない。そういえば、ジェイクとアリスも付き合っているんだった、と優希は少しだけホッとしていた。自分達の世界では異常なことでも、ここでは何も不思議ではないのだ。恥ずかしがることも隠すこともない。そんな風に感じられた。
「へぇ……でも、今は近くにいないんだろう? だったらいいじゃねぇか」
「違うよっ。これから助けに行くんだからっ」
髪の毛をかき上げるような仕草をしながら見つめるライアンに、優希は声を上げて反論する。
「助けに?」
ふと怪訝な顔をしてライアンは首を傾げる。
「魔女の所に助けに行くんだよっ」
再びアリスが間に割って入る。
「ほ~お。魔女の所に、ねぇ?」
ライアンは面白そうに、そして意地悪そうににやりと口の端を上げた。
「なんで~??」
なんと優希の頭には猫耳、そしてお尻からは尻尾が出ているのだ。思わず尻尾を掴んで自分の目で確かめてみる。白く細長い尻尾が見える。
「ありえない……」
先程『アリスとお揃い』と言われた意味を漸く理解する。そして優希はぼそりと呟くと真っ青な顔になって固まってしまった。
「ユウキ可愛いっ」
アリスが嬉しそうに優希に近付いてきた。
「ほんとに僕とお揃いみたいっ。しかも色違いだねっ」
耳をぴんと立て、尻尾をゆらゆらと揺らし、大きな目を輝かせながら優希を見つめる。今まではそんなアリスを『可愛い』と思っていたのに、まさか自分が同じになってしまうとは……。
「はぁ……こんな姿、絶対誰にも見せられない……」
優希はがっくりとうな垂れる。まるでコスプレだ。最初にアリスを見た時の印象が蘇る。可愛らしいアリスならともかく、自分にアリスと同じように猫耳と尻尾が生えているかと思うとゾッとする。
「似合ってると思うよ」
ジェイクも優希の近くまで歩いてきていた。先程ライアンに噛まれた所が痛むのか、ゆっくり、そして少しよろけながら。
「あんまり嬉しくない……」
優希はムスッと口を尖らす。
「ふぅん。さっきはちゃんと見てなかったけど、なかなか可愛いじゃん?」
いつの間にかライアンがすぐそばまで来ていた。優希をまるで品定めでもするかのように全身をじろじろと眺めながら呟いている。
「なっ!?」
恥ずかしくて思わず顔が赤くなる。優希は2人と1匹を見回した後、「見ないでっ」と言って猫耳を両手で隠す。
「えー、なんでぇ? 僕と同じなのにぃ。隠さなくてもいいじゃん」
アリスが悪戯っぽく優希を覗き込むようにして見る。優希はハッとした顔をすると更に赤くなる。
「なんか、ユウキって、虐めたくなるタイプだねぇ?」
嬉しそうにアリスはにんまりとして優希の顔を更に覗き込む。
「や、やめろよっ!」
ぷいっと横を見ると優希は今度は猫耳ではなく顔を隠す。首まで真っ赤になっているのが分かる。
「確かにそうだな」
そう言ってライアンが優希の首元をすっと人差し指で撫でる。
「ひっ!」
思わずびくんと両肩が上がる。ぞくぞくと全身に寒気を感じ、優希は声を上げた後、じろりと後ろを振り返って睨み付ける。
振り返った先には、にやりと口の端を上げているライアンの姿があった。優希は思わず海斗を思い出してしまった。恐らくライアンも海斗と同じタイプなのだろう。意地悪そうな顔で優希を見下ろしている。先程は気が付かなかったが、身長も恐らく海斗と変わらないくらいあるのだろう。優希が見上げる程の高さがある。長身で足も長く、そして色気のある美形である。意地悪そうなその顔も、思わず見惚れてしまいそうであった。
そういえばジェイクもかなり背が高かった。海斗よりは低そうだったが、それでも恐らく180センチ近くはあるのだろう。ただ、今は犬の姿ではあったが。
思わずアリスがいて良かったと思ってしまった優希であった。
優希がそんなことを考えているとは気が付いているのかいないのか、
「恥ずかしがってる姿も可愛くていいな。お前、俺のものにならないか?」
と、ライアンはくすりと笑って優希の顎をくいっと右手で押し上げる。
見惚れてしまった自分を恨めしく思った。瞬時にさぁっと再び青ざめ、優希はライアンの手を払い除ける。
「触んないでっ」
そして頭の上にある白い猫耳を後ろに倒し、キッとライアンを睨み付ける。
「気が強いのも堪らないな。女王に渡すのは勿体ない」
自分の顎に手を当て、ライアンはにやりと優希を見下ろしている。嫌がる優希を益々気に入ってしまったようであった。
「ダメだよっ。ユウキはちゃんと恋人がいるんだからっ!」
突然横からアリスが割って入ってきた。両手を広げ、優希とライアンを引き離し、ライアンを睨み付ける。
「えっ!?」
アリスの発言に優希が思わず声を上げる。『恋人がいる』なんて言っただろうか?
なんとなく恥ずかしくて再び顔が赤くなる。
「へぇ、恋人がいるのか。でも、俺はそんなものは気にしない。俺と付き合おう」
突然の告白。優希は目をぱちぱちとさせる。猫耳もぴんと立ち上がっている。
「いっ……つ、付き合わないよっ!」
間に入ったアリスをどかし、先程までの意地悪そうな顔から一転、優しげに優希を覗き込むようにして囁いたライアンに、思わず驚いてしまった優希であったが、すぐにハッとすると慌てて断ったのだった。
「俺のが絶対いい男だろう?」
しかしライアンは首を少し傾けながらにやりと笑う。
「そんなことないっ!」
思わず否定してしまった。相手が男だとは一言も言っていなかったのに、これではバレバレである。優希は『しまった』といった顔をする。
しかし、ワンダーランドでは男同士での恋愛は珍しくないのか特に誰も何も突っ込まない。そういえば、ジェイクとアリスも付き合っているんだった、と優希は少しだけホッとしていた。自分達の世界では異常なことでも、ここでは何も不思議ではないのだ。恥ずかしがることも隠すこともない。そんな風に感じられた。
「へぇ……でも、今は近くにいないんだろう? だったらいいじゃねぇか」
「違うよっ。これから助けに行くんだからっ」
髪の毛をかき上げるような仕草をしながら見つめるライアンに、優希は声を上げて反論する。
「助けに?」
ふと怪訝な顔をしてライアンは首を傾げる。
「魔女の所に助けに行くんだよっ」
再びアリスが間に割って入る。
「ほ~お。魔女の所に、ねぇ?」
ライアンは面白そうに、そして意地悪そうににやりと口の端を上げた。
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