White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Black & White~そして運命の扉が開かれる~

第21話

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 ふるふると体を震わせ毛を逆立てる。
「もうっ! 信じられないっ!」
 横でしれっと澄ましている犬の姿のジェイクを、猫の姿に変わった優希は4本足で立ち上がると声を荒げて抗議する。
「何怒ってるんだよ?」
 相変わらず澄ました顔のままジェイクは首を傾げる。
「なっ! 勝手にキスするなんてっ。せめて言ってからっ」
「言ったらどうせ嫌がるでしょ? ユウキ」
 怒り続ける優希に首を傾げたままジェイクが問い返す。
「うぅっ……」
 ジェイクの言葉にぐうの音も出ない優希だった。
「じゃあ、時間もないし、行くよっ! ほら、乗って」
 そう言ってジェイクは伏せの姿勢になり、優希に自分の背中に乗るように促した。
「う、うん……」
 優希は恐る恐るジェイクの背中に乗る。しかし上手く掴まることができずちょっと怖い。
「大丈夫? 咥えていこうか?」
 背中に乗った優希を心配そうにジェイクが首だけ振り返る。背中に乗っている優希はふるふると体を震わせていた。
「う、上手く掴まれない……爪立てちゃいそうだし……」
「うーん……それは困るね。じゃあ、やっぱり俺がユウキを咥えていくよ。来る時もそうしていたし。首の後ろであれば痛くないと思うから」
 相変わらず背中の上でふるふるとしている優希を見かね、そして爪を立てられては堪ったもんじゃないと、ジェイクは自分が咥えて運ぶことを提案した。
「よく親猫が子猫を運んでるみたいに?」
「そうそう」
「ほんとに痛くない?」
 優希はすとんとジェイクの背中から下りると、じっと窺うようにしてジェイクを見る。
「じゃあ、咥えてみるからそれで判断してよ」
 そう言ってジェイクは4本足で立ち上がると、優希の後ろへと回る。そして優希の返事を待つことなくかぷりと優希の首の後ろを咥えた。
「うっ!」
 そのまま持ち上げられて優希はぷらんとジェイクの口元にぶら下がった状態になる。
「んあん?」
 優希を咥えたままジェイクが何かを言った。
「えっ?」
 と聞き返すが、すぐに『痛い?』と言ったのだと思いつくと、
「だ、大丈夫……だと思う」
 と答えたのだった。ひとまず今のところ痛みはない。
「おひ」
 相変わらず何て言ったのか分からないが、恐らく『よし』だろうか。
「だあ――」
「ジェイク、もう喋んなくていいよ」
 何か言いかけたジェイクを遮って優希が話した。
 それに応えるようにゆっくり頷くと、ジェイクはゆっくりと歩き出す。
 優希はジェイクの口元でぶらぶらと体が動いていたが、なぜだか不安はなかった。まるで自分が子猫にでもなった気分のようであった。

 洞窟の入り口まで辿り着く。薄暗かった場所から急に明るい場所へと移動する。
 太陽はまだそれほど高い位置にはない。恐らく8時か9時くらいといった時間だろう。
 優希はぱちぱちと目を瞬きさせた。そしてゆっくり周りを見回してみると、そこは枯れた草花が一面に広がった場所であった。少し離れたところに木が生えているのも見えるが、葉は1つもなく枯れてしまっている。
 アリスが言っていた言葉を思い出した。ワンダーランドが壊れていく……。
 あんなに素晴らしいと感動した森の景色が少しずつ壊れていっている。その現実をまざまざと感じていた。
「ひどい……」
 思わず口に出していた。そんな優希をジェイクは心配そうな表情で目だけ動かしていた。
「ひふほ」
 ジェイクは優希を咥えたまま、恐らく『行くよ』と言って大きく足を動かし走り始めた。
「っ!?」
 突然走り出したジェイクに、咥えられた状態の優希は更にぐらぐらと体が動くが掴まることもできず、ただじっと耐えるしかなかった。が、やはり怖い。痛くはないが振り飛ばされたり、ジェイクの牙が自分の体に食い込んだらと思ったら恐怖で顔が強張った。
「ジェ、ジェイクっ!」
 思わずジェイクの名前を呼んだ。
「ふ?」
 声に反応してジェイクはゆっくり速度を緩め、そして立ち止まった。
 止まった瞬間、優希がぶるぶると体を震わせていることに気が付き、そっと地面に優希を下ろし、口から離す。
「大丈夫?」
 ジェイクはおすわりの状態になり、首を傾げながら優希を見つめる。
「む、無理……」
 優希は下ろされた瞬間、体の力が抜けてそのまま伏せの状態になってしまった。
「うーん……困ったね。どうしようかな……」
 ジェイクは反対側に首を傾げ、考え込む。どうにか上手く運ぶことはできないかと――。
「仕方ないなぁ」
 そう言ってジェイクは、ぐったりと伏せの状態のまま動けなくなっている優希の口元をぺろりと舐める。
「っ!?」
 突然口を舐められて全身の毛がぶわっと逆立った――と思ったら、先程よりも地面が遠く感じて優希は驚いて体を起こす。
「あれ?」
 体を起こした瞬間に気が付いた。体が人間に戻っていたのだ。
 自分の両手をまじまじと見つめた後、ジェイクに口を舐められたことを思い出して再びぞくりと体が震えた。
「ジェイクっ!」
 顔を赤らめながらジェイクを振り返ると――、
「あれ?」
 そこにいたのは金髪碧眼の美男子……ではなく、虎やライオンくらいの大きさの白い犬なのか狼なのか、初めて見た時の、そして先程までと変わらないジェイクの姿に優希は唖然としてしまった。
「な、なんで!?」
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