White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Black & White~そして運命の扉が開かれる~

第19話

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 目が覚めると辺りが少し明るくなっていた。夜が明けたのだろうが今の時間が分からない。そこまで長く寝ていた訳ではないと思うが……。
 そして自分が洞窟の中にいたことを思い出した。
「そっか、昨日……」
 ぼそりと独り言を呟くと、優希はゆっくりと体を起こす。
 伸びをしようと腕を伸ばそうとした時、無意識に四つ足で立ち、前の足を伸ばしていた。
 その瞬間、ハッと自分が猫になっていたことも思い出した。
「うわっ、そうだったっ!」
 思わず叫んでしまったがジェイクが起きる様子はない。
 優希はジェイクのことも思い出し、ふと見てみると、どうやらジェイクは優希を守るかのように優希の周りにぐるっと体を丸くさせて寝ていたようだ。すぐ横に顔がある。そしてまだぐっすり眠っているようだった。
 寝る時は背中合わせだったはずなのに、と優希はムスッとする。
「ジェイク、ねぇジェイク起きてっ」
 前足でジェイクの前足をぐいぐいと押さえる。
「んんー……」
 しかしジェイクは起きようとしない。優希は「もうっ」と呟くと更に大きな声でジェイクを呼ぶ。
「ジェイクっ!」
「何っ? 敵か?」
 優希の声でやっと目が覚めたジェイクは、慌てて起き上がり周りをきょろきょろと見回している。
「敵じゃないよ……でも、最悪な事態だ……」
 優希は呆れながらジェイクを見上げるが、溜め息まじりにそう答えた。
「え? 最悪な事態って?」
 ジェイクは敵が襲ってきた訳ではないことを聞きほっとしたのも束の間、優希の言葉に首を傾げながら振り返った。
「俺、猫になっちゃった……」
「うん、そうだね?」
 うな垂れる優希を見下ろしながら、ジェイクはおすわりをすると反対側に首を傾げ聞き返す。
「だからっ! グスターヴァルの所に行かなきゃなんないのに、猫になっちゃったって言ってんのっ! これじゃ剣だって奪えないじゃんっ」
 ムッとして優希は声を荒げながらジェイクを見上げる。
 やっと優希が言わんとしたことを理解し、ジェイクは「なんだ」と続けた。
「そんなことか。心配ないよ」
「はぁ?」
 傾げた首を戻すと、ジェイクは明るい口調で答える。
 そしてそんなジェイクを見て優希は不機嫌に聞き返した。
「簡単だよ。人間の姿に戻ればいいんだよ」
「はぁっ?」
 ジェイクの回答にますます意味が分からないと優希は声を上げるが、ジェイクはうんうんと頷くだけであった。
「ちょっと待って。人間に戻れるの? だってアンさんやセバスチャンは動物の姿だったじゃん。それにジェイクだって。皆動物の姿なのに人間に戻れるって……」
 優希は訳が分からなくて早口でジェイクに詰め寄る。そして再び不安な気持ちが襲い、耳をたらんと下げたのだった。
「まぁね。人間の姿に戻ったら魔女に見つかっちゃうから。でも戻れない訳じゃないんだよ」
「えっ?」
 ジェイクの言葉に優希はハッと顔を上げる。
「俺も都合に合わせて変わるようにするよ。今人間に戻ったら君を襲っちゃいそうだけど。なんてね」
「えっ! ダメっ!」
 ふふっと笑いながら答えるジェイクに優希は毛を逆立て飛び上がる。
「そんな全力拒否しなくても……。昨日も言ったけど、君のことは好きだけど大好きな相手がいるから変なことはしないって。……まぁキスくらいはするかもだけど?」
「だからっ!」
 ショックを受けたようでうな垂れながら優希を見ていたジェイクだったが、すぐに立ち直ると優希を揶揄うように話す。
 そんなジェイクに優希は再び警戒姿勢を取る。
「ははっ、ごめんごめん。冗談だって。でも、戻るには――」
 そう言い掛けたジェイクは突然そのまま優希に顔を近付けてきた。そして優希が逃げる間もなくふっと口が触れたのが分かった。
「ちょっ!」
 優希はぶわっと毛が逆立つのを感じた。ぞくぞくと何とも言えない痺れを体に感じ、思わず自分の手で自分を抱き締めようとした。
「あ、あれ?」
 ぎゅっと腕を掴んだ優希はハッとして自分の体を見る。2本の足で立っている。
 なんと人間の姿に戻っていたのだ。
 先程感じた体の痺れ、あの瞬間に猫から人間に戻ったのかもしれないと優希は考えた。
 猫になったのも一瞬だったが戻るのも一瞬だった。そしてちゃんと服も着ている。ショルダーバッグもある。
 優希は内心ほっとしていた。人間に戻った際に裸だったらどうしようと思っていたのだ。しかし、猫になっている間、服やショルダーバッグはどこにいってしまっているんだろう? はて、と首を傾げる。
 すると、すぐ横から声がした。
 
「ね? 簡単でしょ?」

 声のした方を見た瞬間、優希は唖然として固まってしまった。
 そこには白い犬ではなく、金髪碧眼の若い男性がにっこりと微笑みながら座っていたのだ。
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