White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Black & White~そして運命の扉が開かれる~

第7話

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 彼はあの時と同じ綺麗な銀色の髪、透き通った緑の瞳で優希を優しく見つめていた。

「あのっ!!」
 優希は必死な顔で声を上げながら青年に近付いた。
「来ると思っていましたよ」
 落ち着いた声で青年は話す。
「まさかっ! やっぱりあの鏡と関係あるんですかっ!?」
 青年の言葉に優希は声を荒げる。
 自分が来ることを知っていた……。
 優希の脳裏にあの鏡が浮かんだ。
「……彼に、何かあったのですね……」
 優しい顔から一転、青年は厳しい顔で優希をじっと見つめた。
「海斗がっ! 海斗がっ!!」
 優希は青年に掴みかかるようにして声を上げる。顔は今にも泣きそうになっていた。
「落ち着いて下さい。何があったのか話して頂けませんか?」
 青年は今度は優しく落ち着いた声で話し、優希の両肩にそっと手を乗せる。
「……海斗が……息してないんだ。心臓も……死んじゃうよっ! どうしたらいいのっ?」
 ふと力が抜けてしまったのか、目から涙が溢れてきた。
 優希は泣きながら必死に青年を見上げる。
「……それはいつですか?」
 じっと真剣な眼差しを優希に向ける青年。
「さっき……まだそんなに経ってないと思うけど……」
 優希は少しだけ落ち着きを取り戻し、涙を袖で拭うと青年の問いにぼそりと答えた。
「そうですか……。何か他には?」
 青年は優希の言葉に何か考え込むように口元に手を持っていく。
「あっ! これがっ! これが落ちてたってっ!」
 青年の言葉にふと思い出し、優希は声を上げ、例の黒い羽根を彼に見せた。
「これはっ!!」
 ハッとする青年。顔色が少し悪くなっているように見える。
「何か、分かった?」
 優希は心配そうにじっと青年を見上げる。
「……彼は……連れて行かれてしまったようですね……」
「連れて行かれたってっ!?」
 青年は眉を顰め、思いつめた様にぼそりと答える。
 その様子と言葉に、優希は真っ青な顔で青年に詰め寄った。
「鏡の国の番人ですよ……」
 青年は優希を見下ろし、静かな声で答えた。
「えっ?」
 一体何の話をしているのか分からない。
 優希は青年の顔をじっと見つめたまま聞き返した。
「彼は……罪を犯しました。私にも責任があります……」
「罪ってっ!!」
 青年は優希の問いに答えることなく話を続ける。
 そして、優希は話が見えないまま、青年の言葉に更に頭が混乱する。
 一体何の罪があるというのだ?
「あなたを助ける為に、彼は鏡の国の規律に背く行為を行いました。他人の『欲望』の中に入ってしまった。あの時は見つからずに済みましたが……。ただ、彼はあの後、あの鏡を割ってしまった。私が上手く誤魔化そうとしたのですが……バレてしまったようですね。彼の魂は『黒の番人』に連れ去られたのです」
「黒の番人っ!?」
 青年は優希が不思議に思っていたことの全てを説明する。
 しかし、彼の話は優希には少し難しかったのか、理解できずにいた。
 ただ、最後の言葉に何かを感じた優希。
 怖ろしい言葉を聞いた気がしたのだ。
「はい。鏡の国の番人です。彼は、規律を乱すものを処罰するのが役目」
「処罰ってっ!? まさか海斗はっ!!」
 青年は相変わらず静かに、そして真剣な表情で淡々と話す。
 まるで物語でも聞いているようであった。
 しかし、その言葉は怖ろしいものばかりで……。
 優希は更に青ざめながら声を上げる。
 信じたくない。そうであってほしくない気持ちでいっぱいになっていた。
「いえ……すぐには処罰されないでしょう。鏡の国の魔女によって判断されます」
 青年はそう言いながらも少し複雑そうな表情をしている。
 彼にも確信はないのかもしれない。
「鏡の国の魔女?」
 優希は青年の言葉に不思議そうに首を傾げる。
 怖ろしい気持ちは消えてはいないのだが、あまりに彼の話が突飛過ぎて段々訳が分からなくなってきている。
「はい。今、鏡の国は『黒の魔女』によって支配されています」
「黒の魔女……」
 青年の話を聞きながら優希がぼそりと呟く。先程も『黒の番人』という言葉もあり、何か色に関係しているのだろうか?
 俯き考え事をしている優希をちらりと見た後、青年は話を続けた。
「元々、鏡の国とこちらの世界とは一切関わりはありませんでした。王と王妃と、そして1人の王子によって世界の均衡が保たれていました。しかし、魔女が王と王妃を殺し、王子を魔法である物に変え、ある場所へと追放させたのです。鏡の国は魔女に乗っ取られ、それから世界は変わってしまいました……」
 青年は俯き加減で少し寂しげに話す。
 彼も鏡の国の住人なのだろうか?
 一体彼は何者なのだろう?
 優希は沢山の疑問を感じながらも、青年にひとつの問いを投げかける。
「どうなったの?」
「こちらの世界との扉を開け、人間の欲望を利用し、魔女は人間の魂を食っているんです」
 首を傾げる優希に、青年はふと顔を上げ、厳しい顔で答えた。
「なっ!?」
 青年の言葉に唖然としてしまう優希。

 人間の魂を食べる? 魔女が?
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