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Black & White~そして運命の扉が開かれる~
第6話
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黒い羽根。カラスか何か?
もう少し大きいような……。一体これは何?
優希は必死に考える。この羽根が何を意味するのか。
部屋の中に鳥が?
窓は開いていない。とすると、どこから入ってきたというのだ。
羽根を右手に持ったまま頭を抱える。
「優希様。実は同じ羽根がもうひとつ、あちらに……」
考え込む優希に橘が窺うように声を掛けてきた。
ふと優希は顔を上げ、じっと橘を見上げた。
そして橘が指差す方向を見る。
「え?」
部屋の東側の中央辺り。
ベッドは南側の窓際にある為、少し入り口に戻るくらいの位置。
(あそこは確か……)
ふと何かが引っ掛かるような感覚があったが、優希はじっとその場所を見つめ、ゆっくりと近付いた。
橘に言われた通り、床に同じ黒い羽根が落ちている。
近付き、そっとその黒い羽根を拾い上げる。
その瞬間、どくんと心臓が大きく鳴った。
何かに見られているような気がして、優希は緊張しながら振り返った。
そこにはこの部屋にある楕円形の鏡があった。
「鏡……」
再び心臓が大きく鳴る。
優希の中である情景が浮かんだ。
あの事件。あの店、あの鏡……。
気が付くと、優希はそのまま海斗の部屋を飛び出していた。
後ろから橘の自分を呼び止める声が聞こえてきたが、優希は立ち止まらなかった。
なぜだか分からない。でも行かなければならない……そう感じたのだった。
海斗の家を出たちょうどその時、ショルダーバッグの中の携帯電話のバイブが振動していることに気が付き、優希はやっと足を止める。
急いで携帯電話を掴み、開く。
着信だった。相手は『海斗』きっと橘からであろう。
何の迷いもなく受話ボタンを押した。
「優希様っ、今どちらですかっ? どうされたのですかっ?」
困惑しているような橘の声が聞こえる。
「ごめん、橘さん。事情はまたちゃんと話すから。分かんないけど……俺が海斗を絶対に助けるから。お願い、待っててっ!」
優希はそれだけ言うと、橘からの返事を待たずに携帯電話を切った。
「海斗っ。嫌だよ。だって……俺、あんなヒドイこと言って……このままなんて……イヤだよっ、海斗っ!!」
再び涙が出てくる。
ぎゅっと右手に持っている黒い羽根を掴む。
羽根を見つめ、袖で涙を拭うと、優希はある場所へ向かう為、再び走り出した。
☆☆☆
走りながら考える。
あの日以来、まるで幻だったかのように、あの店は忽然と姿を消してしまった。
そしてそこは空き地となっていた。初めから何も無かったかのように。
あれは幻だったのかもしれない。しかし、自分に起こったことは全て事実だった。
海斗がその証拠だ。
あの事件があったから、今、自分は海斗といる。
優希は確信していた。
もしかしたら、今回のこともあの店が、あの鏡が関係しているかもしれないと。
きっとあの店は再び現れる。そう思いながら必死にあの店へと急いだ。
足がもつれそうになりながらも必死に動かす。
もうすぐ目的の場所である。
(お願いっ!)
祈るように必死にあの店のことを思い出していた。
鏡のこと、そしてあの青年のことを。
彼なら助けてくれるかもしれない。
そう考えながら角を曲がる。その先にあの店があった場所がある。
「あっ!!」
思わず声が漏れた。
その場所には、まるで中世ヨーロッパにでも来たかのような、この街には似つかわしくない、あの店が建っていた。
少し古びた骨董屋のような建物。
やはり何かあるのだ。この店と、あの鏡。そしてあの青年。
優希は店の前に立ち止まると、ゆっくりと深呼吸をする。
そして、なんの躊躇いもなくそっと店のドアを開けた。
ガランガラン
鈍い鐘の音がする。
以前に見た同じ風景。薄暗い店内。そして、猫の置物……。
ぐるっと見回すが……鏡はない。
あの鏡は海斗が割ってしまった。もうないのであろうか?
何かあると思って来たのに――。そう思った時であった。
コツンコツン
後ろから靴音が聞こえてきた。
ハッとして振り返る。
「何かお探しですか?」
そこには、にっこりと微笑むあの青年が立っていた。
もう少し大きいような……。一体これは何?
優希は必死に考える。この羽根が何を意味するのか。
部屋の中に鳥が?
窓は開いていない。とすると、どこから入ってきたというのだ。
羽根を右手に持ったまま頭を抱える。
「優希様。実は同じ羽根がもうひとつ、あちらに……」
考え込む優希に橘が窺うように声を掛けてきた。
ふと優希は顔を上げ、じっと橘を見上げた。
そして橘が指差す方向を見る。
「え?」
部屋の東側の中央辺り。
ベッドは南側の窓際にある為、少し入り口に戻るくらいの位置。
(あそこは確か……)
ふと何かが引っ掛かるような感覚があったが、優希はじっとその場所を見つめ、ゆっくりと近付いた。
橘に言われた通り、床に同じ黒い羽根が落ちている。
近付き、そっとその黒い羽根を拾い上げる。
その瞬間、どくんと心臓が大きく鳴った。
何かに見られているような気がして、優希は緊張しながら振り返った。
そこにはこの部屋にある楕円形の鏡があった。
「鏡……」
再び心臓が大きく鳴る。
優希の中である情景が浮かんだ。
あの事件。あの店、あの鏡……。
気が付くと、優希はそのまま海斗の部屋を飛び出していた。
後ろから橘の自分を呼び止める声が聞こえてきたが、優希は立ち止まらなかった。
なぜだか分からない。でも行かなければならない……そう感じたのだった。
海斗の家を出たちょうどその時、ショルダーバッグの中の携帯電話のバイブが振動していることに気が付き、優希はやっと足を止める。
急いで携帯電話を掴み、開く。
着信だった。相手は『海斗』きっと橘からであろう。
何の迷いもなく受話ボタンを押した。
「優希様っ、今どちらですかっ? どうされたのですかっ?」
困惑しているような橘の声が聞こえる。
「ごめん、橘さん。事情はまたちゃんと話すから。分かんないけど……俺が海斗を絶対に助けるから。お願い、待っててっ!」
優希はそれだけ言うと、橘からの返事を待たずに携帯電話を切った。
「海斗っ。嫌だよ。だって……俺、あんなヒドイこと言って……このままなんて……イヤだよっ、海斗っ!!」
再び涙が出てくる。
ぎゅっと右手に持っている黒い羽根を掴む。
羽根を見つめ、袖で涙を拭うと、優希はある場所へ向かう為、再び走り出した。
☆☆☆
走りながら考える。
あの日以来、まるで幻だったかのように、あの店は忽然と姿を消してしまった。
そしてそこは空き地となっていた。初めから何も無かったかのように。
あれは幻だったのかもしれない。しかし、自分に起こったことは全て事実だった。
海斗がその証拠だ。
あの事件があったから、今、自分は海斗といる。
優希は確信していた。
もしかしたら、今回のこともあの店が、あの鏡が関係しているかもしれないと。
きっとあの店は再び現れる。そう思いながら必死にあの店へと急いだ。
足がもつれそうになりながらも必死に動かす。
もうすぐ目的の場所である。
(お願いっ!)
祈るように必死にあの店のことを思い出していた。
鏡のこと、そしてあの青年のことを。
彼なら助けてくれるかもしれない。
そう考えながら角を曲がる。その先にあの店があった場所がある。
「あっ!!」
思わず声が漏れた。
その場所には、まるで中世ヨーロッパにでも来たかのような、この街には似つかわしくない、あの店が建っていた。
少し古びた骨董屋のような建物。
やはり何かあるのだ。この店と、あの鏡。そしてあの青年。
優希は店の前に立ち止まると、ゆっくりと深呼吸をする。
そして、なんの躊躇いもなくそっと店のドアを開けた。
ガランガラン
鈍い鐘の音がする。
以前に見た同じ風景。薄暗い店内。そして、猫の置物……。
ぐるっと見回すが……鏡はない。
あの鏡は海斗が割ってしまった。もうないのであろうか?
何かあると思って来たのに――。そう思った時であった。
コツンコツン
後ろから靴音が聞こえてきた。
ハッとして振り返る。
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