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Black & White~そして運命の扉が開かれる~
第3話
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海斗がシャワー室から出てくると、何ともタイミング良く橘がお茶とお菓子を運んできた。
(見てたのっ!?)
優希は心の中で叫んでいた。
もしやどこかに監視カメラでもあるのかと思わずきょろきょろとしてしまった。
「優希様、どうかされたのですか?」
橘が優希の行動を不思議そうに見ている。
「えっ!? あ、何でもないよっ!」
橘の問い掛けにどきどきとしてしまった。
悪いことをしているわけでもないのに挙動不審になっている。
しかし、もし本当に監視カメラでもあれば、自分達のことを全て見られていたことになる。
そう思った途端、再び優希は顔が熱くなるのを感じた。
「大丈夫ですか? 顔が少し赤いですね。まだ夜は冷えますし、風邪でもひかれていなければ良いのですが……」
優希が考えていることに気付く訳もなく、赤い顔をした優希を見て、橘は心配そうに問い掛ける。
「だ、大丈夫っ。た、たぶん、シャワーで、のぼせたんだと思うっ!」
頭が飛んでしまいそうな程、ふるふると勢いよく頭を横に振る。
しかし、激しく頭を振ったせいか、優希は少し目が回ってくらくらとしていた。
「優希、何やってんだよ」
座布団に座ったまま目を回している優希を見下ろし、海斗は呆れたようにぼそりと呟きながらソファーに座る。
シャワー室から出てきた時はまだバスローブ姿であった海斗だが、いつの間にか黒いシャツにブルージーンズを穿いていた。
「大丈夫ですか?」
橘も心配そうに優希を覗き込む。
「う、うん……。あ、今日のおやつは何?」
ちょっと恥ずかしくなりながら慌てて話題を変える。
「今日は海斗様からのリクエストで……盛り合わせです」
少し苦笑いしながら答える橘。
優希は不思議そうに首を傾げる。
しかし、テーブルに置かれた皿を見て愕然とした。
そこには大皿いっぱいに沢山の種類と量のお菓子が積まれている。
クッキー、バームクーヘン、マドレーヌにフィナンシェ。
チョコレート、マシュマロ、マカロン、プチケーキ……。
ありえない程のお菓子である。今までに見たことのない量だった。
「えええっ!!」
思わず叫んでしまった。
こんなに沢山、誰が食べると言うのだろう……。
海斗は甘い物は苦手である。
いくら自分が甘い物が好きだと言ってもありすぎである。
優希は少しげっそりとした顔になっていた。
「それでは私は失礼いたします」
いつの間にか優希には紅茶、海斗にコーヒーを淹れていた橘はそう言って海斗の部屋を出て行った。
「ちょ、ちょっと海斗っ! こんなにどうすんだよっ!」
海斗のリクエストということで優希は海斗を振り返り、怒鳴りつける。
橘が悪いわけでない。それくらいは分かる。
「だって優希、甘い物好きだろ? 昨日はいっぱい歩いたし、最高のプレゼント貰ったから、ご褒美だ」
海斗は嬉しそうに答えるだけである。悪いとは全く思っていない様子であった。
「あのなぁっ! いくら好きでもこんなに食えるかっ! 勿体ないじゃんかっ!」
悪びれた様子もない海斗に更に怒鳴りつける。
出されたお菓子のほとんどが橘の手作りである。買ったもので、袋に入っているものならともかく、手作りの物は日持ちがしない。
そういったことを分かっている優希は心底海斗に腹が立っていた。
「じゃあ俺も食べる」
しかし、平然とそんなことを言い出した。
「はぁ? 海斗、甘い物食べられないじゃんっ!」
何を言っているんだと、思い切り海斗を睨み付けた。
「大丈夫。優希が口移しで食べさせてくれたら、何だって食べられる」
「アホかっ! 俺は雛に餌をやる親鳥かっ!」
嬉しそうに笑う海斗に真っ赤な顔で怒鳴り散らす。
「うまいこと言うなぁ、優希」
本当にそう思っているのか、優希がそんなことを言ったことに驚いたのか、ひどく感動した様子で優希を見つめる海斗。
「バカにしてんのかよっ!」
「そんなことないよ」
真っ赤な顔で怒鳴る優希に優しく否定をすると、海斗はソファーから下り優希の横に座る。そして、優希の頬にそっと手で触れた。
「ちょっ……っ!?」
驚く間もなく唇が重なる。
深く口づけされ、そのまま床に押し倒される。が、
「バカッ!」
優希は思い切り海斗を突き飛ばした。
「海斗の大バカっ! 変態っ! もうっ、海斗なんて大っ嫌いだっ!!」
なぜだか物凄く悔しくなってしまった優希は涙目になりながら、大声で叫ぶとすぐそばにあった自分のショルダーバッグを掴み、そのまま海斗の部屋を飛び出した。
「急にどうしたんだ?」
突き飛ばされた状態のまま唖然としていた海斗は、優希の言動が分からずそのまま動けずにいた。
不思議そうに首を傾げ、優希が飛び出したドアの方向をじっと見つめていた。
「ふむ、これはさすがに食えないな。……どうするかな……」
そして体を起こし、お菓子の山を見つめると深く溜め息を付く。
――その時だった。
突然部屋が暗くなった気がした。
何かの気配を感じ、海斗はハッとして振り返る。
振り返った先には楕円形の鏡があった。
そして、一瞬鏡が歪んだように見えた。
ドクンッ
次の瞬間、まるで鼓動のような音が聞こえた気がした。
『やばい!』とそう思った瞬間、目の前が真っ黒になった――。
(見てたのっ!?)
優希は心の中で叫んでいた。
もしやどこかに監視カメラでもあるのかと思わずきょろきょろとしてしまった。
「優希様、どうかされたのですか?」
橘が優希の行動を不思議そうに見ている。
「えっ!? あ、何でもないよっ!」
橘の問い掛けにどきどきとしてしまった。
悪いことをしているわけでもないのに挙動不審になっている。
しかし、もし本当に監視カメラでもあれば、自分達のことを全て見られていたことになる。
そう思った途端、再び優希は顔が熱くなるのを感じた。
「大丈夫ですか? 顔が少し赤いですね。まだ夜は冷えますし、風邪でもひかれていなければ良いのですが……」
優希が考えていることに気付く訳もなく、赤い顔をした優希を見て、橘は心配そうに問い掛ける。
「だ、大丈夫っ。た、たぶん、シャワーで、のぼせたんだと思うっ!」
頭が飛んでしまいそうな程、ふるふると勢いよく頭を横に振る。
しかし、激しく頭を振ったせいか、優希は少し目が回ってくらくらとしていた。
「優希、何やってんだよ」
座布団に座ったまま目を回している優希を見下ろし、海斗は呆れたようにぼそりと呟きながらソファーに座る。
シャワー室から出てきた時はまだバスローブ姿であった海斗だが、いつの間にか黒いシャツにブルージーンズを穿いていた。
「大丈夫ですか?」
橘も心配そうに優希を覗き込む。
「う、うん……。あ、今日のおやつは何?」
ちょっと恥ずかしくなりながら慌てて話題を変える。
「今日は海斗様からのリクエストで……盛り合わせです」
少し苦笑いしながら答える橘。
優希は不思議そうに首を傾げる。
しかし、テーブルに置かれた皿を見て愕然とした。
そこには大皿いっぱいに沢山の種類と量のお菓子が積まれている。
クッキー、バームクーヘン、マドレーヌにフィナンシェ。
チョコレート、マシュマロ、マカロン、プチケーキ……。
ありえない程のお菓子である。今までに見たことのない量だった。
「えええっ!!」
思わず叫んでしまった。
こんなに沢山、誰が食べると言うのだろう……。
海斗は甘い物は苦手である。
いくら自分が甘い物が好きだと言ってもありすぎである。
優希は少しげっそりとした顔になっていた。
「それでは私は失礼いたします」
いつの間にか優希には紅茶、海斗にコーヒーを淹れていた橘はそう言って海斗の部屋を出て行った。
「ちょ、ちょっと海斗っ! こんなにどうすんだよっ!」
海斗のリクエストということで優希は海斗を振り返り、怒鳴りつける。
橘が悪いわけでない。それくらいは分かる。
「だって優希、甘い物好きだろ? 昨日はいっぱい歩いたし、最高のプレゼント貰ったから、ご褒美だ」
海斗は嬉しそうに答えるだけである。悪いとは全く思っていない様子であった。
「あのなぁっ! いくら好きでもこんなに食えるかっ! 勿体ないじゃんかっ!」
悪びれた様子もない海斗に更に怒鳴りつける。
出されたお菓子のほとんどが橘の手作りである。買ったもので、袋に入っているものならともかく、手作りの物は日持ちがしない。
そういったことを分かっている優希は心底海斗に腹が立っていた。
「じゃあ俺も食べる」
しかし、平然とそんなことを言い出した。
「はぁ? 海斗、甘い物食べられないじゃんっ!」
何を言っているんだと、思い切り海斗を睨み付けた。
「大丈夫。優希が口移しで食べさせてくれたら、何だって食べられる」
「アホかっ! 俺は雛に餌をやる親鳥かっ!」
嬉しそうに笑う海斗に真っ赤な顔で怒鳴り散らす。
「うまいこと言うなぁ、優希」
本当にそう思っているのか、優希がそんなことを言ったことに驚いたのか、ひどく感動した様子で優希を見つめる海斗。
「バカにしてんのかよっ!」
「そんなことないよ」
真っ赤な顔で怒鳴る優希に優しく否定をすると、海斗はソファーから下り優希の横に座る。そして、優希の頬にそっと手で触れた。
「ちょっ……っ!?」
驚く間もなく唇が重なる。
深く口づけされ、そのまま床に押し倒される。が、
「バカッ!」
優希は思い切り海斗を突き飛ばした。
「海斗の大バカっ! 変態っ! もうっ、海斗なんて大っ嫌いだっ!!」
なぜだか物凄く悔しくなってしまった優希は涙目になりながら、大声で叫ぶとすぐそばにあった自分のショルダーバッグを掴み、そのまま海斗の部屋を飛び出した。
「急にどうしたんだ?」
突き飛ばされた状態のまま唖然としていた海斗は、優希の言動が分からずそのまま動けずにいた。
不思議そうに首を傾げ、優希が飛び出したドアの方向をじっと見つめていた。
「ふむ、これはさすがに食えないな。……どうするかな……」
そして体を起こし、お菓子の山を見つめると深く溜め息を付く。
――その時だった。
突然部屋が暗くなった気がした。
何かの気配を感じ、海斗はハッとして振り返る。
振り返った先には楕円形の鏡があった。
そして、一瞬鏡が歪んだように見えた。
ドクンッ
次の瞬間、まるで鼓動のような音が聞こえた気がした。
『やばい!』とそう思った瞬間、目の前が真っ黒になった――。
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