White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Black & White~そして運命の扉が開かれる~

第1話

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 朝の柔らかい日差しがカーテンの隙間から漏れる。そして、どこか遠くから小鳥の囀りが聞こえていた。
 体のだるさと痛みを感じながら、ゆっくりと手を動かす。
 普段、携帯電話は寝る時に枕元に置いている。しかし、だいたいが移動してしまっているのだが。
 時間を確認する為、もそもそと布団の中で手を動かしながら携帯電話を探す。
「っ!?」
 動かしていた右手の手首を突然掴まれた。
 掴まれたまま、誘導されるかのようにある場所まで右手を移動させられる。
 そして『何か』をぎゅっと掴まされた――。
「っ!?……ぎゃあっ!!」
 思わず優希はパッと手を離し、大声で叫んでしまった。
 手に感じた感触で『それ』が何かがすぐに分かった。そして自分のものではない。
 沸騰してしまいそうなほど真っ赤な顔で布団から顔を出す。
「何するんだよっ!」
 半分涙目になりながら、隣で横になっている海斗を思い切り睨み付けた。
「いや、何かを探してるみたいだったから、『俺が』欲しかったのかなーって」
「アホかっ! エロっ! 変態っ! オヤジっ!」
 にっこりと微笑する海斗に優希は相変わらず真っ赤な顔で怒鳴り散らす。
 優希が掴まされたのは……海斗の、つまり『あそこ』である。
「オヤジはないだろう、17歳のいたいけな少年に向かって」
 優希の言葉にショックを受けたような顔をしながら、眉間に皺を寄せ海斗はぼそりと言い返す。
「誰がいたいけだ……」

(エロと変態はありなのか……)

 心底呆れた顔で海斗を眺めると、優希は深く溜め息をつく。
 しかし、先程の感触を思い出して再び恥ずかしくなった。
(ううっ……くそっ、触っちゃったじゃんか。てか、俺のと全然違うっ、昨日もちらっと見えちゃったけど……)
 そして、昨夜のことも思い出してしまった。
 体を這うように触れる指先、手の平、唇、舌先。服の上からでは分からなかった逞しい体。体の中に入ってくる異物感の痛み、そして快感……。
 一度は感じたはずのあの経験がまるで夢だったかのように体中が熱くなる。初めて経験したかのように。
 あの世界で、同じ人に愛されたはずなのに、まるで違っていた。なぜだろう?
 思い出しながら、ぞくりと体が震える。
(昨日……やっちゃったんだよな……)
 再び顔が赤くなっているのを感じていた。顔だけじゃなく全身が熱い。
「優希、可愛い」
 ぼそりと耳元で囁くようにして呟き、海斗は優しく微笑すると、そっと優希の髪を撫でる。
「だっ、だから、可愛いとか言うなよっ!」
 真っ赤な顔のまま、優希はぐいっと海斗の胸の辺りを両手で押すと、そのまま海斗に背中を向ける。
「……優希、体大丈夫か?」
 優希の態度に表情を変えることなく、海斗は後ろからぎゅっと抱き締める。
「ちょっ! 触るなよっ! だ、大丈夫なわけないだろっ! 俺、初めてなのに、あんなっ――」
 優希はぎょっとすると赤い顔のまま海斗を振り返る。
「初めてって……鏡の中で――」
「うるさいっ!」
 海斗が言いかけた言葉を遮るように優希は大声で怒鳴ると、そのまま海斗の腕から離れ、ベッドを下りる。
「優希、シャワーに入っておいで。そこの奥にシャワー室あるから。処置はしておいたけど」
「なっ!? しょ、処置ってっ……変態っ!」
 優しく話しかける海斗の言葉に再びぎょっとした顔で振り返ると、真っ赤な顔で声を上げ、優希は海斗が指差したシャワー室へと躓きそうになりながらも逃げるように駆け込んだ。

 ドアを開けると2畳分くらいの脱衣室があり、その奥にすりガラスのドアが見える。
 慌てていた為、優希は全裸のままであった。着替えもない。
 しかし、今更戻るわけにもいかず、ゆっくりとシャワー室のドアを開けた。
 中はシャワーだけできるくらいのスペースだった。浴槽もなく、小さなスペースにシャンプー、リンス、ボディシャンプーだけが置かれている。
 シャワーヘッドを掴み、そっとシャワーのハンドルを回す。
 温度設定なども簡単にできるタイプであった。
 優希は40度くらいに温度を合わせると、ゆっくりとシャワーのレバーを回し、お湯を出す。
 暫くシャワー室の床を濡らし、温度を手で確かめた後、そっと自分の体にシャワーを当てる。
 軽い音を立てながら、シャワーから流れるお湯が体を跳ねている。

(熱い……)

 シャワーヘッドを持ったままぼんやりとする。
 体中が熱い。シャワーのせいではない。体が熱を帯びているのだ。
 昨夜のことが再び優希の頭の中を支配していた。
 ゆっくりとシャワーヘッドを元の位置に掛けると、頭からシャワーを浴びる。
 頭の中の考え、そして思い出される光景と感覚を消すようにシャワーを浴び続ける。ぎゅっと抱き締めるように両手で自分の体を包む。

(消えない……どうしよう……)

 消えるどころか体は益々熱くなるようであった。
 俯くと、パタパタと髪から雫が床に滴り落ちるのが見える。

 なぜ、ここまで恥ずかしいのだろう。
 鏡の世界の海斗は本当の海斗ではなかったから?
 優希の頭の中で色んな想いが駆け巡っていた。

「優希? どうした? 大丈夫か?」
 急に海斗の声が聞こえ、ハッとして顔を上げる。
 どうやら暫くの間考え事をしすぎたようだった。
 心配した海斗が様子を見に来たのだった。すりガラスの向こう側から心配そうな声がする。
「だっ、大丈夫だよっ。すぐ出るから、あっち行っててっ!」
 再び恥ずかしさで顔を真っ赤にさせると、大声で海斗に返事をする。
 ドアを開けられるのではないかと必死になる。
 そしてパタンとドアが閉まる音を聞き、優希は少しだけほっとしていた。
 本当になぜここまで恥ずかしいのだろう?
 男に体を見られることなど何とも思わないはずが、海斗に見られるのはなぜだか物凄く恥ずかしく感じたのだ。
 昨日のことがあったから?
 海斗を好きだから……?
 ふと、優希の中で何かが弾けたような感覚があった。
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