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Because there was you~2人の本当の出逢い~
第1話
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「散歩に出掛ける」
海斗の家に行くと、なぜか突然そう言って2匹の犬を連れて家を出た。
3月最初の土曜の午後のこと――。
ちょっと海斗さぁーん。ものすごく目立ってるんだけどぉ……。
俺は海斗の少し後ろを歩きながら、ひとり恥ずかしくなっていた。
犬の散歩するのに、なんでその格好なんだっ!
今日の海斗の服装は――まぁいつもこんな感じなんだけど。
中はTシャツにジーンズ。うん普通。ちょっと微妙に寒そうだけど。
3月になったとはいえ、まだ微妙に空気が冷たい。
で、上になぜか豹柄のジャケットと黒い帽子――あれなんて言うヤツだっけ?
なんとかハット……うー分からん。今度、海斗に聞いてみよう……。
じゃなくって、なんなんだっ! あの格好はっ!
これでサングラスとかかけてたらどっかの芸能人か外タレだろっ!
はぁ……。目立ってるよ。ただでさえ目立つのに。自覚ないのかなぁ?
背も高くって、足も長い。顔も良くって……ほら、通り過ぎる女の人、女子……みんな振り返ってんじゃんっ。
海斗はなんで俺なんて――ってっ!
うわぁうわぁっ!
なんだか急に顔が熱くなる。
そうか、俺たち……今、付き合ってる……んだよな?
俺はドキドキしながら前を歩く海斗を見上げた。
こんな人が俺の――恋人?
って……男同士なんだけどね……。なんか落ち込む……。
堂々と付き合えないのも、自分じゃ釣り合わないのも――両方だ。
俺なんて、パーカーにジーンズだし。ジーンズだって海斗が穿いてるみたいなどっかのブランドとかじゃなく、やっすいやつ。どうせうちは平凡家庭ですよ。
ほんとなんで海斗は俺がいいんだろう。ほんとに俺でいいのかな?
――ん?
海斗を見ながら再び周りの状況に目がいった。
もうひとつ目立つ理由。
それは――連れている犬2匹。
いや、奴らは散歩の必要あるのか?
毎日でかい庭で走り回ってんじゃん?
こんなでかいドーベルマン2匹も連れて散歩してる人、他にいないぞ?
ほら、ちびっこが……おばちゃんが……みんなビビってんじゃんっ。
大丈夫かよ……。
海斗は2匹のドーベルマンを黙って連れている。
家を出てから一言も喋っていない。
それを感じているのか、更に前を歩くドーベルマン2匹も飼い主を引っ張ることなく大人しく歩いている。
まぁ、躾がしっかりしているんだろうけど……。
家を出てから20分程歩いた所で公園が見えてきた。
あれ? あの公園って……。
見覚えのある公園に俺は首を傾げる。
なんだ? よく分からない。でも不思議な感覚がする。何か引っかかるような……。
海斗はそのまま真っ直ぐその公園の中へと入っていった。
俺も慌ててついていく。
公園に入って、隅にあるベンチまで行き、そこでやっと海斗は止まった。
「座ろう」
そう言って海斗はベンチに座った。
犬2匹もその横にストンと大人しく伏せている。
賢いなぁ……。
俺はちらっとロディとテディを感心しながら見つめると、自分も海斗の横に座る。
「ここ、俺の好きな場所なんだ」
俺が座ったのを確認すると、公園を眺めながら海斗が口を開いた。
へぇ、そうなんだ?
俺はきょとんとしながら海斗を見上げる。
「よく来るの?」
「いや……久し振りだ」
俺の問いに、ふと表情が変わった。険しい表情をしてる。
あれ? なんか泣きそう? 海斗が? まさかっ……。
「ここは……中学以来だ。昔はよく来てた……。っていうか優希、何も覚えてないのか? わざわざ来たのに」
そして今度は懐かしそうな表情で公園を眺めたと思ったら、ちらりと俺を見て眉間に皺を寄せる。
「へ? 何が?」
言われた意味が分からなくて首を傾げる。
「お前さ、俺に聞いただろ? 優希のこと、いつ好きになったのかって」
海斗は不機嫌そうに俺をじっと見つめながらそう答えた。
うわぁっ! そうだったっ!
☆☆☆
それは――昨日のこと。
帰りに海斗の家に寄った時、ふと俺は今まで疑問に思っていたことを聞いたんだ。
「なぁ……海斗ってさ、いつから俺のこと……その……好きだったんだ? 最近?」
ドキドキしながら俺の横に座る海斗に尋ねた。
ソファにどかっと座り、足を組んでテレビを見ていた海斗は俺の質問にテレビから俺に視線を移動させた。そして俺の肩に手を回してきた。
おい、なぜそうなる?
睨み付ける俺を無視して、海斗はそのまま俺の頬にキスをしてきた。
「ちょっ、そうじゃなくってっ!」
俺がぐいぐいと海斗を押すと、仕方なさそうに俺から離れてくれたけど、
「可愛い顔でそんなこと聞くから、イチャつきたいのかと思ったぞ?」
って、ニヤリと意地悪な顔になる。
そうじゃなくてー……。
俺が困った顔をすると、海斗はくすりと微笑した。
「いつだと思う?」
「え? えっと……俺が鏡の中に入った時?」
上目遣いでおずおずと問い返す。
「違う。もっと前」
「えっと、じゃあ……夏くらいとか?」
「違う。もっともっと前」
えーっと意外そうな顔でまじまじと海斗の顔を眺めた。
「あんまり見つめるとキスするぞ?」
わーっ!
慌てて海斗から離れる。
「ウソだよ。で、いつだと思う?」
また楽しそうに笑って問い掛ける。
絶対俺で遊んでるよ……。
「うー……じゃあ、高1の時とかぁ……」
困った顔で答える。
「ブー。ハズレ。じゃあ、答えは明日教えてやるよ」
そう言って海斗はウインクしてみせた。
☆☆☆
昨日のことを思い出しながら、なんでここに来たんだろう? とまた分からなくなる。
「ここで初めて優希と逢ったんだよ。その時に俺は、優希が好きになったんだ」
海斗は優しく俺を見つめると、俺との出逢い――そして自分の過去を話してくれた。
海斗の家に行くと、なぜか突然そう言って2匹の犬を連れて家を出た。
3月最初の土曜の午後のこと――。
ちょっと海斗さぁーん。ものすごく目立ってるんだけどぉ……。
俺は海斗の少し後ろを歩きながら、ひとり恥ずかしくなっていた。
犬の散歩するのに、なんでその格好なんだっ!
今日の海斗の服装は――まぁいつもこんな感じなんだけど。
中はTシャツにジーンズ。うん普通。ちょっと微妙に寒そうだけど。
3月になったとはいえ、まだ微妙に空気が冷たい。
で、上になぜか豹柄のジャケットと黒い帽子――あれなんて言うヤツだっけ?
なんとかハット……うー分からん。今度、海斗に聞いてみよう……。
じゃなくって、なんなんだっ! あの格好はっ!
これでサングラスとかかけてたらどっかの芸能人か外タレだろっ!
はぁ……。目立ってるよ。ただでさえ目立つのに。自覚ないのかなぁ?
背も高くって、足も長い。顔も良くって……ほら、通り過ぎる女の人、女子……みんな振り返ってんじゃんっ。
海斗はなんで俺なんて――ってっ!
うわぁうわぁっ!
なんだか急に顔が熱くなる。
そうか、俺たち……今、付き合ってる……んだよな?
俺はドキドキしながら前を歩く海斗を見上げた。
こんな人が俺の――恋人?
って……男同士なんだけどね……。なんか落ち込む……。
堂々と付き合えないのも、自分じゃ釣り合わないのも――両方だ。
俺なんて、パーカーにジーンズだし。ジーンズだって海斗が穿いてるみたいなどっかのブランドとかじゃなく、やっすいやつ。どうせうちは平凡家庭ですよ。
ほんとなんで海斗は俺がいいんだろう。ほんとに俺でいいのかな?
――ん?
海斗を見ながら再び周りの状況に目がいった。
もうひとつ目立つ理由。
それは――連れている犬2匹。
いや、奴らは散歩の必要あるのか?
毎日でかい庭で走り回ってんじゃん?
こんなでかいドーベルマン2匹も連れて散歩してる人、他にいないぞ?
ほら、ちびっこが……おばちゃんが……みんなビビってんじゃんっ。
大丈夫かよ……。
海斗は2匹のドーベルマンを黙って連れている。
家を出てから一言も喋っていない。
それを感じているのか、更に前を歩くドーベルマン2匹も飼い主を引っ張ることなく大人しく歩いている。
まぁ、躾がしっかりしているんだろうけど……。
家を出てから20分程歩いた所で公園が見えてきた。
あれ? あの公園って……。
見覚えのある公園に俺は首を傾げる。
なんだ? よく分からない。でも不思議な感覚がする。何か引っかかるような……。
海斗はそのまま真っ直ぐその公園の中へと入っていった。
俺も慌ててついていく。
公園に入って、隅にあるベンチまで行き、そこでやっと海斗は止まった。
「座ろう」
そう言って海斗はベンチに座った。
犬2匹もその横にストンと大人しく伏せている。
賢いなぁ……。
俺はちらっとロディとテディを感心しながら見つめると、自分も海斗の横に座る。
「ここ、俺の好きな場所なんだ」
俺が座ったのを確認すると、公園を眺めながら海斗が口を開いた。
へぇ、そうなんだ?
俺はきょとんとしながら海斗を見上げる。
「よく来るの?」
「いや……久し振りだ」
俺の問いに、ふと表情が変わった。険しい表情をしてる。
あれ? なんか泣きそう? 海斗が? まさかっ……。
「ここは……中学以来だ。昔はよく来てた……。っていうか優希、何も覚えてないのか? わざわざ来たのに」
そして今度は懐かしそうな表情で公園を眺めたと思ったら、ちらりと俺を見て眉間に皺を寄せる。
「へ? 何が?」
言われた意味が分からなくて首を傾げる。
「お前さ、俺に聞いただろ? 優希のこと、いつ好きになったのかって」
海斗は不機嫌そうに俺をじっと見つめながらそう答えた。
うわぁっ! そうだったっ!
☆☆☆
それは――昨日のこと。
帰りに海斗の家に寄った時、ふと俺は今まで疑問に思っていたことを聞いたんだ。
「なぁ……海斗ってさ、いつから俺のこと……その……好きだったんだ? 最近?」
ドキドキしながら俺の横に座る海斗に尋ねた。
ソファにどかっと座り、足を組んでテレビを見ていた海斗は俺の質問にテレビから俺に視線を移動させた。そして俺の肩に手を回してきた。
おい、なぜそうなる?
睨み付ける俺を無視して、海斗はそのまま俺の頬にキスをしてきた。
「ちょっ、そうじゃなくってっ!」
俺がぐいぐいと海斗を押すと、仕方なさそうに俺から離れてくれたけど、
「可愛い顔でそんなこと聞くから、イチャつきたいのかと思ったぞ?」
って、ニヤリと意地悪な顔になる。
そうじゃなくてー……。
俺が困った顔をすると、海斗はくすりと微笑した。
「いつだと思う?」
「え? えっと……俺が鏡の中に入った時?」
上目遣いでおずおずと問い返す。
「違う。もっと前」
「えっと、じゃあ……夏くらいとか?」
「違う。もっともっと前」
えーっと意外そうな顔でまじまじと海斗の顔を眺めた。
「あんまり見つめるとキスするぞ?」
わーっ!
慌てて海斗から離れる。
「ウソだよ。で、いつだと思う?」
また楽しそうに笑って問い掛ける。
絶対俺で遊んでるよ……。
「うー……じゃあ、高1の時とかぁ……」
困った顔で答える。
「ブー。ハズレ。じゃあ、答えは明日教えてやるよ」
そう言って海斗はウインクしてみせた。
☆☆☆
昨日のことを思い出しながら、なんでここに来たんだろう? とまた分からなくなる。
「ここで初めて優希と逢ったんだよ。その時に俺は、優希が好きになったんだ」
海斗は優しく俺を見つめると、俺との出逢い――そして自分の過去を話してくれた。
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