White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Special★X'mas~初めてのクリスマスイブには~【特別編】

特別編※R18

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 12月24日。世間で言う、今日はクリスマスイブだ。
 今までクリスマスって言ったら、家族とか友達とかと遊んだり騒いだりしてたけど……。今年はちょっと違う。ちょっとっていうのは……海斗の家に呼ばれてる。いや、海斗の家に行くって言っても、きっと普段と変わんないんだけど……クリスマスだし、なんかな……。しかも、初めての恋人とのクリスマスイブ……。

(恋人っ!?)

 自分で思いながら恥ずかしくなってしまった。
 だいたい俺達って本当に付き合ってんのかな? そういうのってなかったんだけど……。ただ、なんとなく一緒にいて、遊んだり海斗の家に行ったりメールしたり電話したり。あ、これが付き合ってるっていうのかな? でも、何か言われた訳じゃない。俺からも『好き』って言葉は伝えたけど、付き合うとかそういう話はしてない。

(どうなんだろな……)

 俺はいろんなことを考えながら海斗の家へと向かっていた。迎えに行くって言ってくれたけど、なんとなく今日は歩いて行きたい気分だったから。自転車でも良かったんだけど。
 街中を歩きながら街路樹に飾られたイルミネーションを見上げた。

(うわぁ……)

 すっかりクリスマスムード。つか、クリスマスイブだし、当たり前か。そういえば、海斗の家とかってどんな飾り付けとかされてんだろう? 海斗が飾るとは思えないけど、橘さん、変なこだわりとかありそうだし。きっとすっごい大きなツリーとかあるんだろうな。

 海斗の家に近付くにつれて、段々ワクワクした気持ちになってきた。今にも雪が降りそうなくらいに寒いのに、なんだか体がポカポカしてる感じ。それに料理とかいつも凄いけど、今日は一段と豪勢だったりして……。
「へへっ」
 1人で笑いながらちょっとスキップ気味になる。きっと今の俺は周りから見たら変な人なんだろうな……。
 頭の中でいろいろと想像しているうちに海斗の家へと着いた。
「ふぅ」
 正面玄関の前に立ち、ゆっくり息を吐くと呼び鈴を押す。『ピンポーン』と軽いベルの音がした。
 すぐに聞き慣れた声で返答があった。
「お待ち致しておりました。すぐに伺います」
 橘さんの声だ。向こう側からこちらの映像が見えるのだろう。自分の家とは違い、いつもこうして返事をくれる。

(うちもこういうの付ければいいのに)

 なんとなく思う。普段、親がいない時に訪問者が来ると、誰なのか分からない為、出るのに不安になる時がある。こういうシステムがあれば安心できるのに。
 数分もしないうちに横に設置されている通用口の小さな扉が開いた。正面の大きな扉は車が入る時などに開くらしい。あとはきっとお偉いさんとかが訪問された時とかかな?
 普段、車で海斗の家に来る時でも裏に車を回す為、この大きな正面扉が開くのを見たことはなかった。ちょっと見てみたい気もするけど、自分が入るだけの為に開けられるのもちょっと抵抗がある。
 横の通用口を入るといつものように騒がしい犬達の声が聞こえてきた。
「テディ、ロディっ! メリークリスマス! ……ってお前たちじゃ分かんないか」
 喜んでじゃれてくる2匹を撫でながら再びクリスマスのことを思い出す。キョロキョロと周りを見てみるけど、それらしい飾りなどはない。まぁ、広い敷地だし、庭とかまで飾りつけされてるとは思ってなかったけど。
 ちょっとだけ、たまに聞く庭にイルミネーションの飾りをしている家のような景色を想像していた。庭だけでうちが2軒くらい建ちそうなこの家の庭いっぱいにクリスマス飾りがあったら、ある意味ちょっとしたテーマパークになりそうなんだけどな。
 無理か……と思いながらもちょっとだけ見てみたい気もしていた。
「優希様、お体が冷えますよ。どうぞ中へ」
 橘さんが声を掛けてくれた。いつの間にか2匹のドーベルマンは俺の横にちょこんとおすわりしていた。ほんとに賢いなぁ……。
「じゃあな、テディ、ロディ」
 俺はもう一度2匹の頭を撫でると橘さんに続いて家の玄関へと向かった。



 ☆☆☆



 いつものように海斗の部屋へと通された。
 途中通ってきた廊下も普段と何も変わらない。もしかしたら海斗の部屋にはツリーくらいあるかなと思いながら部屋へと入った。
「あれ?」
 俺は首を傾げた。残念なことに海斗の部屋もいつも通りだ。おかしいな。ちょっと期待したのにな。海斗がやらないにしても橘さんが飾り付けとかすると思ったのに……。
「どうした?」
 ソファに座っていた海斗が不思議そうな顔で話し掛けてきた。
「え? いや……なんでもないよ」
 俺はそう答えながらもちょっと納得いかないような顔のまま、海斗の部屋を見回していた。
「なんだ? そんなそわそわして」
 海斗は相変わらずキョロキョロしている俺にもう一度声を掛ける。
「う、うん。あのさ、海斗」
 俺は思いきって聞いてみることにした。
「海斗の家ってクリスマスの飾りとかツリーとかないの?」
 ソファに座ったままの海斗を振り返り、首を傾げる。
「あぁ。ないよ。うちはクリスチャンじゃないし」
 海斗は「なんだ」と呟くと、淡々と俺の問いに答える。
「うちだってクリスチャンじゃないし。つか、どっちかっていうと仏教徒な感じだけど、ツリーは飾ってるよ。普通そうじゃないの?」
 海斗の答えに納得いかない俺は、ちょっとムキになって言い返した。だって、クリスチャンなんてそんないないでしょ?
「そうか? うちは昔からクリスマスなんて祝ったことはないぞ? 他人の家の事情は知らないし、ツリーなんて店とか外でしか見たことねぇな。ま、興味もないけど」
 また淡々と答える海斗。

(ええー! じゃあ、豪勢な夕飯とか期待できないじゃん!)

 なんかガッカリした俺は口を尖らせながら海斗の横に座った。
「なんだよ優希。そんな顔して」
 海斗は首を傾げながら俺の頭をそっと撫でてくれた。
 ちょっと嬉しい。海斗に頭を撫でられるのは結構好きだ。
「うちは家族が揃うとか、ほとんどなかったからな。お祝い事とか、親父の会社関係とかで人が集まってパーティしたりとかはあったけど、家族で何かするとかはなかったんだ。クリスマスや正月もないし、誕生日も何もなかったな」
 突然海斗が話し始めた。俺が拗ねてるの分かったのかな?
 でも、海斗の話す内容に俺は驚いた。だって、クリスマスだけじゃなくて正月や誕生日もお祝いないの? そんなのありえねぇよ……。
 俺はなんだか悔しくて唇をキュッと噛んだ。
「優希が気にすることはない」
 海斗は俺の様子に気が付いて、俺の頭に手を置いてじっと俺の顔を覗き込むようにして見てきた。
 ちょっとドキドキする。顔が熱くなる。
「でもっ」
「寂しいとか思ったことはないよ?」
 言い掛けた俺を遮るように海斗が話す。
「でも……」
 海斗が良くてもなんだかやっぱり俺は納得いかない。どんだけ家族を顧みない父親なんだよ。俺の父さんは普通のサラリーマンだし、家はとても裕福とはいえないけど、昔からすごく可愛がってくれたし、お祝い事はいつもどんな時でも母さんと一緒に何かしらしてくれていた。普通だと思ってた。うちが普通じゃないのか?
「優希?」
 黙り込んでしまった俺に、海斗が話し掛けてきた。じっと顔を覗き込んで。
「あ、ごめん。なんでもないっ」
 慌てて頭を横に振ると、にこって笑ってみせた。
「あ、そうだっ! じゃあさ、これからは俺と一緒にお祝いしようよ。クリスマスも正月も誕生日もさっ! って、そういえば、海斗って誕生日いつだっけ?」
 思い立った俺は、海斗に向かって一気に話す。そうだ、俺がお祝い一緒にすればいいんじゃん。今までは今までだ。これからが大事だもんな。
 話し始めてから、海斗の誕生日を知らなかったことに気付いた。そういう話とかしたことなかったし。学校で話題になることもなかったしな。よく女子は海斗に聞いてた気がするけど、海斗がなんて答えてるのかはいつも聞いてなかったし。今までは……。
 今だったら気になっちゃうかな……なんて。
「あぁ。言ってなかったっけ?」
 海斗は少し上を見るようにして俺から視線を逸らした。
 なんだろう。なんか意味深に感じるのは気のせいか?
 すると、急に海斗は俺をじっと見つめてきた。

(な、なんだよ?)

 ちょっとドキドキする。
「今日だよ」
 海斗はにっこりと微笑みながらそう答えた。
「えっ? ええっ!?」
 ビックリした。思ってもみなかった答えが返ってきたから。

(今日? 今日だって? なんで教えてくれなかったんだ……)

 驚きと悔しさでなんとも言えない気持ちに襲われた俺は、なんとなく海斗から目を逸らした。分かっていたら誕生日プレゼントとか用意もできたのに。って今日もクリスマスプレゼントとか用意してないけど……誕生日は別じゃんか。
「なにむくれてるんだ? 優希」
 海斗はくすっと笑うと、口を尖らせながら横を向いてる俺の右の頬にそっと左手を当てる。
 一瞬ビクッとなって体が固まる。そして顔を中心に体がかぁっと熱くなって海斗の手を払い除けた。
「べ、別にっ! つか、なんで教えてくんなかったんだよっ!」
 『別に』とか言いながら、俺はやっぱり悔しくて海斗に思いをぶつけた。
「ん? 優希の誕生日は重要だけど、俺のは別にどうでもいいし」
「はぁ!?」
 平然と答える海斗の顔を俺は目をまん丸にしながらじっと見つめた。
 どうでもいいとかって……自分の誕生日なのに。
 なんかまた悔しくなってきた。半分冗談で言ってるのかもしれないけど、自分が生まれた日をどうでもいいなんて……そんなの言っちゃダメだ。必要ないみたいに……。
 ちょっと泣きそうになって海斗から顔を逸らした。

「優希」
 ふと俺の耳元で、そっと海斗が囁くように俺を呼んだ。
 ゾクッと体が震える。
 海斗の低い声はまるで体の奥を撫でる様に俺の名前を何度も繰り返す。
「か、海斗っ」
 かぁっと顔が熱くなって思わず海斗の顔を見る。
「優希」
 そしてはっきりとした声で名前を呼ばれる。そして俺の右の頬をそっと撫でる。
 更に熱くなってる俺の顔に近付く海斗の顔。
 そっと唇が触れる。俺は思わず目を瞑った。
 それを合図のようにして、海斗は深くくちづけをしてくる。
「んんっ……」
 俺は思わず右手で海斗のシャツを必死で掴んでいた。舌が絡み合ってどんどん深くなる。今までにない熱いキス。貪るように繰り返し舌を絡めてくる。
「ふっ……んっ……」
 激しいくちづけに俺の思考が奪われそうになっていく。海斗のシャツに必死にしがみつく事しかできない。口の端から唾液が溢れてくる。それでも尚、海斗はキスをやめない。
 いやらしい音が響く。俺の脳内は恥ずかしさと快感で埋め尽くされていく――。
 頭の中が真っ白になって、一瞬意識が遠のいた時、ふわりと体が動いた気がして目を開ける。
 いつの間にか唇は離れ、海斗は俺の顔をじっと見つめていた。
 そして俺のパーカーの裾をそっと掴んで捲り上げる。
「ちょっ!?」
 慌てて海斗の手を掴む。そこで初めて気が付いた。俺はいつの間にかソファに押し倒されていた。ソファの肘掛に頭が乗っていたんだ。
 さっき感じた感覚は海斗が俺を押し倒した瞬間だったんだ。

(いつの間にっ!)

 俺は海斗を睨み付けた。全く効き目がないように海斗はくすっと笑っている。
「俺の誕生日を祝ってくれるんだろ?」
 余裕顔で俺にウィンクしてみせる海斗。ムカつく。
「祝うって言ったけど、これは関係ないだろっ!」
 まだパーカーの裾を掴んでいる海斗の手を振り払おうと必死になる。でもビクともしない。
「じゃあ優希、俺の誕生日プレゼントは用意してる?」
「してるわけないじゃんっ! さっき知ったんだからっ!」
「だから……ね?」
 怒鳴る俺を余裕の笑みで跳ね除ける海斗。そう言うと、ほとんど強引に俺のパーカーを脱がしにかかる。
「『ね?』じゃねぇーっ!」
 必死に暴れてみるが、力で海斗に敵うはずもなく……いや、力以外でも敵う訳もないないんだが……簡単にパーカーを脱がされ、俺の上半身が顕になった。
 もっと着込んでこれば良かった……。
 体温の高い俺は寒さには平気というか、たくさん着込むこともなかったんだ。パーカーの上にダウン着ちゃえば外でも全然平気だった。
 海斗の所に来る時は脱がしにくい格好で来なきゃ。
 今更後悔しても遅かった。
 海斗は俺を無視してそっと俺の体にくちづけを繰り返す。
 めちゃくちゃ恥ずかしい。
「優希の体はいつも熱いけど、更に体温上がってるな」
 そう言いながら俺の乳首をぺろりと舐める。

(ギャーッ)

 やっぱりめちゃくちゃ恥ずかしい。もうイヤだ。せめて電気を消してくれー!
「感じてる優希、可愛いな」
「バカっ!」
 俺の胸のところからそっと顔を上げて俺を見つめてくる海斗。もう顔から火が出そうだ。
「猫のくせに寒がりじゃないし」
「誰が猫だっ!」
 そう言って俺を油断させたんだな。海斗の作戦にまんまと引っ掛かる俺。
 あっさり下着ごと、ジーパンまで脱がされた……。ベルトしてたのにっ!
「やっ……」
 太腿から徐々にその付け根の方へと海斗のくちづけが移動する。舐められて体がビクンと波打つ。
「はっ……やだっ……」
 恥ずかしくて両手で顔を隠す。どれだけ抵抗しても無駄なのは分かってる。
 それに……。
「優希……好きだよ」
 囁くように繰り返される海斗の声。
 もう何も考えられない。俺の中を海斗の長い指がゆっくりと確かめるように入ってくる。
「ん……やっ……やめっ……」
 もう、漏れるような声しか出てこない。体中が熱くて海斗を求めてる。こんな自分が恥ずかしい。
 そして海斗もシャツを脱いだのが分かった。そしてベルトを外す音も……。
 ぐいっと両足を広げられ、更に顔を隠していた俺の両手も外される。
「顔が見たい」
 さっきまでの余裕顔じゃない。真剣な顔の海斗がそこにいた。全部見られてるみたいで恥ずかしかったけど、それ以上に海斗のその表情にドキドキと心臓が速くなっているのを感じていた。
「優希……」
 海斗の両手で俺の太腿がぐいっと持ち上げられる。ドクンと心臓が大きく波打った。
 その時――。

 ガチャッ

「海斗様、食事の用意ができました」

 橘さんだった……。

 3人一斉に固まってしまった。
 でも、すぐに橘さんはゴホンと咳払いをすると、
「失礼いたしました……。また後程……」
 そう言って部屋を出て行った。
「……………………」
 しばらく固まったまま時間が過ぎる。

「じゃあ、優希。続きを――」
「バカぁっ!」

 再び余裕顔でにっこりと微笑んだ海斗の顔を思い切り引っ叩いた。

 最悪だ……。二度と海斗の誕生日なんて祝ってやるもんかっ!
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