White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

文字の大きさ
上 下
18 / 226
☆Greed in the mirror☆~物語はここから始まる~

第17話

しおりを挟む
 ドスンと腰を打ちつけた。

「いってぇ……」

 顔を顰めて腰を摩る。
 上体を起こした状態で周りを見回した。
 自分の下にはたくさんの枯葉。
 頭上、そして周りにはたくさんの木が見える。
 一瞬林か森かと思われたが、少し離れた所から聞こえる犬の声にふと横を見る。
 よく見ると、まばらに植えられている木の間から開けた場所が見える。
 ゆっくりと立ち上がってもう一度周りをよく見ると、そこは学校近くにある公園だった。

 ――桜ヶ丘公園。
 春になると公園の周りに植えられている桜が満開になり、中央の芝生広場にはたくさんの花見客でいっぱいになる。

 あー……春になったら花見にでも来たいな。
 ふと考えた時に思い出す。
 そうだ、相澤っ!

 俺は体のあちこちに付いている枯葉を手で払い落とすと、まずは学校へと向かった。
 アイツがどこにいるのかが分からない。時間がない……。



 ☆☆☆



『もう一度説明しますね。あなたに与えられる時間は2時間です。その間に彼を探し出して連れ戻してください。ただ、彼がこちらに戻りたいと願わなければ連れ戻すことはできません。それともう1つ。彼が鏡の世界のどこにいるかは私にも分かりません。あなたが探し出してください。……ただ、彼はあなたと関わっています。あなたがここに来たのですから』

 俺は学校への道を走りながら、あの青年の言葉を思い出していた。

 どこへ行けばいいんだ。相澤っ、どこにいる?

 息を切らせながらも走り続ける。
 そして、彼の最後の言葉が気になっていた。

 俺があの店に行ったことに何か理由があるっていうのか?
 相澤は俺と関わっている?
 いや、同じクラスなんだし、関わってても不思議じゃない……けど?

 頭の中が混乱している。
 でも、今はそんなことを考えている余裕などない。
 時間は限られている。
 それまでに相澤を探し出して連れ戻さないと。

 相澤っ、どこだっ!

 俺は心の中で必死に叫んでいた。



 ☆☆☆



 長い緩やかな坂を上り、学校へ続く道が見えてきた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 坂の1番上まで上りきったところで一旦止まる。
 そして膝に手を付いて少し息が落ち着くのを待つ。
「ふぅ……」
 呼吸を整えて、再び学校へ向かって走り出す。

 相澤っ、頼むっ、いてくれっ!

 心の中で必死に願いながら校門を抜け、下駄箱まで辿り着く。
 もし、校舎の中にいるとしたら下駄箱の中には靴が入っているはずだ。
 必死に相澤の名前を探す。
 同じクラスだから探すのにはそんなに時間は掛からなかった。
「あった……」
 走ってきたせいもあって、鼓動が速い。
 緊張しながら『相澤』の名前の入った下駄箱を開ける。
 ……ない。
 そこには上履きしかなかった。
 学校にはいなかった……。
 どうしたらいい?
 アイツの家か?

「あれ? 藤條?」

 俺が必死に考えを巡らしていた時、ふと横から知った声が聞こえた。
 ハッとして声がした方向を見る。
「足立……」
 そこには不思議そうに首を傾げている同じクラスの足立がいた。
 今から帰るところなのだろう。
 左の脇に鞄を挟んで、上履きを脱いで右手に持ったまま俺を見ていた。
「なんだ、忘れ物か?」
 足立は上履きを右の中指と薬指で器用に持ち、親指と人差し指で自分の下駄箱を開ける。
「あ……いや。……あっ、足立。相澤を見なかったか?」
 最初なんて答えたらいいか分からずに曖昧に返事をしてから、ふと相澤のことが浮かんだ。
 いや、もう学校にはいないかもしれないけど、いつ帰ったとかくらいなら分かるかもしれない。
「へ? 相澤? 何言ってんの? 随分前に一緒に帰ってたじゃん。何? お前だけ戻ってきたわけじゃねぇの? 相澤と一緒に戻ってきたのか? はぐれたのか? もしかして喧嘩~?」
 足立は俺の質問にギョッとすると、早口で逆に問い返してきた。
 一気に捲くし立てられて俺は混乱していた。
 いや、その前に一緒に帰っただって? 俺と相澤が?
 ますます頭が混乱する。どういうことだ?
「なんだよ? 固まっちゃって……もしかして図星か?」
 足立は面白そうにニヤニヤとして俺を見ていた。
「……俺と相澤の関係って、何?」
 辿り着いた言葉に、俺はどうしても確認したくて、少し癪だがコイツに聞いてみた。
「はっ? 何言っちゃってんの? 今更……それともお前ら付き合ってるわけじゃないのか?」
 キョトンとして答える足立の言葉に、俺は思った通りの答えを聞いたにも関わらず唖然とした。

 俺と相澤が付き合っている?
 まさかっ!

 ふと、俺の脳裏にあの店の青年の言葉が浮かんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...