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☆Greed in the mirror☆~物語はここから始まる~
第16話
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突然後ろから声を掛けられ、ビクンと体が強張ったように固まった。
「何かお探しものですか?」
柔らかい透き通ったその声に、俺はハッとして振り返った。
そこには綺麗な銀髪の青年が立っていた。
緑色の透き通った瞳。
外人か、もしくはどこかの国の血が混ざっているのだろう。
俺は頭が混乱しながらも、相澤のことを確認したくて話し始めた。
「これ、この人を探している。この店に来たはずなんだ。ここにコレが落ちていた」
「…………」
生徒手帳を見せながら話す俺をちらりと見た後、じっと鏡と生徒手帳とを見比べるだけで青年は黙って何も答えない。
「あの……見ませんでしたか?」
難しい顔をしている青年を見上げながら俺はじっと青年の反応を待った。
「えぇ、見ましたよ。昨日ですけど」
彼はそう言って顎に手を当て何かを考えているようだった。
「昨日?」
今日は?っと聞こうとすると、今度は彼が話し始めた。
彼の話はまるでおとぎ話かファンタジーのようだった。
「彼はきっと鏡の中の世界に行ったんだと思います。コレがそこに落ちていたのがその証拠でしょう。普通は私がお手伝いしないと鏡の中には入れないのですが……。彼は危ないかもしれない。一度入っているし、鏡に取り込まれてしまうかもしれない……」
話の意味が全く分からない。
鏡の中に入るだって?
……え? 鏡の中?
さっき見た光景を思い出した。
相澤はまるでどこか部屋にでも入るように消えていった。
あれは、鏡の中に入ったっていうのか?
アイツが消える前、この辺りが光っていたように見えた。
もしかしたら鏡が光っていたのかもしれない。
アイツが消えた後は光も消えてしまった。
「どうしたらいい……」
俺は呟くように話していた。
「アイツはどうなるんだ? 鏡に取り込まれるってどういう意味だっ?」
だんだん腹が立ってきて、俺は立ち上がると青年に向かって怒鳴りつけていた。
「鏡に取り込まれてしまうと……体も魂も砕け散ってしまいます。その瞬間、彼のこちらでの存在も消えます。全ての人の記憶から彼という存在が消えるのです。そして砕け散った彼の魂は浄化されることなく永遠に鏡の中で彷徨う――」
「ふざけるなっ! そんなのっ……」
冷静に答える青年の胸倉を掴み、俺は必死で怒鳴っていた。
アイツの存在が消えるっ!?
そんなの……そんなの許せるかっ!
バッと青年から手を離し、俺はそのままギュッと唇を噛んで俯いた。
考えを巡らす。
どうすればアイツを助けられるんだ?
鏡の中?
そうだっ!
俺はある方法に辿りついた。そして顔を上げる。
「俺がこの中に入ってアイツを助けるっ!」
鏡を指差して青年に俺の考えを話す。
「無理です」
「何でだよっ!」
さらりと答えた青年を思い切り睨み付けて反論した。
「あなたがここに入っても、そこはあなたの欲望の世界でしかない」
「欲……望?」
彼の言葉に呆然とする。
この鏡は一体何なんだ?
「これはその人の欲望を引き出し、叶える鏡なのですよ。彼は今、彼の欲望に支配され、取り憑かれかけています」
淡々と話す青年の言葉が信じられなかった。
一体なんなんだ?
そして俺は自分の考えたことが不可能なこと、相澤を助ける方法が他に思いつかなかったことに愕然としていた。
「……そうだ。ひとつだけ方法があります」
突然彼が思いついたように話し始めた。
「えっ?」
彼の言葉にハッとして顔を上げ、彼を見つめる。
「その手帳。彼の物ですよね?」
そう言って俺の手の中の相澤の生徒手帳を指差した。
「あぁ……そうだ」
俺は早く答えが聞きたくて、じっと彼の答えを待った。
「それが使えます。通常ならあなたを鏡の中へ送り込んでもあなたの欲望の世界に行ってしまうから『彼』には会えない。でも、それを使えば彼の世界への道ができる」
「じゃあ、アイツを助けることができるんだなっ!」
ギュッと生徒手帳を握り締め、俺は彼に詰め寄った。
「私ができるのは、あなたを鏡の世界に送ること。彼を助けるのはあなたと、彼次第ですよ。私は一度、彼を引き戻していますし、それに今回は彼の意志で行ってしまった。私は手出しができない。そして、あなたが行うことは鏡の世界の規律に背く行為です」
俺はじっと彼の言葉を聞いていた。
彼は真剣な表情で話を続ける。
「そしてあなたの行為は鏡の番人に知られないようにする為、制限時間は2時間です。通常、この世界に戻る為の制約は24時間。それを超えると先程話したように鏡に取り込まれてしまいます。しかし、あなたが鏡の中にいられるのは2時間。それを超えたら間違いなく鏡の番人に見つかり、あなたは処罰されます」
「処罰?」
眉間に皺を寄せながら青年に尋ねる。
「あなたの体、そして魂は引き裂かれ、痛みと苦しみを永遠に感じながら鏡に食われていくのです。取り込まれるのとは違う。取り込まれた時は彼らは何も感じない。取り込まれたことにも気付かない。ただ、存在がなくなるというだけ……。でも、あなたは違う。存在がなくなるだけでなく、永遠に苦しみ続けることになるのですよ? あなたにその覚悟はありますか? それでも彼を助けに行きますか?」
青年はじっと俺を見つめている。
その瞳の奥では『お前にはその覚悟などないだろう』そう言われている気がした。
だからじゃない。
俺は、アイツを忘れたくなんかない。
それだけだ。
アイツを助けたい。
まだ……何も伝えていない……。
「ああ。行くよ。どうすればいい?」
ハッキリとした口調で、睨み付けるように青年を見つめる。
「分かりました。では、お手伝いしましょう」
彼は優しく笑った。
「何かお探しものですか?」
柔らかい透き通ったその声に、俺はハッとして振り返った。
そこには綺麗な銀髪の青年が立っていた。
緑色の透き通った瞳。
外人か、もしくはどこかの国の血が混ざっているのだろう。
俺は頭が混乱しながらも、相澤のことを確認したくて話し始めた。
「これ、この人を探している。この店に来たはずなんだ。ここにコレが落ちていた」
「…………」
生徒手帳を見せながら話す俺をちらりと見た後、じっと鏡と生徒手帳とを見比べるだけで青年は黙って何も答えない。
「あの……見ませんでしたか?」
難しい顔をしている青年を見上げながら俺はじっと青年の反応を待った。
「えぇ、見ましたよ。昨日ですけど」
彼はそう言って顎に手を当て何かを考えているようだった。
「昨日?」
今日は?っと聞こうとすると、今度は彼が話し始めた。
彼の話はまるでおとぎ話かファンタジーのようだった。
「彼はきっと鏡の中の世界に行ったんだと思います。コレがそこに落ちていたのがその証拠でしょう。普通は私がお手伝いしないと鏡の中には入れないのですが……。彼は危ないかもしれない。一度入っているし、鏡に取り込まれてしまうかもしれない……」
話の意味が全く分からない。
鏡の中に入るだって?
……え? 鏡の中?
さっき見た光景を思い出した。
相澤はまるでどこか部屋にでも入るように消えていった。
あれは、鏡の中に入ったっていうのか?
アイツが消える前、この辺りが光っていたように見えた。
もしかしたら鏡が光っていたのかもしれない。
アイツが消えた後は光も消えてしまった。
「どうしたらいい……」
俺は呟くように話していた。
「アイツはどうなるんだ? 鏡に取り込まれるってどういう意味だっ?」
だんだん腹が立ってきて、俺は立ち上がると青年に向かって怒鳴りつけていた。
「鏡に取り込まれてしまうと……体も魂も砕け散ってしまいます。その瞬間、彼のこちらでの存在も消えます。全ての人の記憶から彼という存在が消えるのです。そして砕け散った彼の魂は浄化されることなく永遠に鏡の中で彷徨う――」
「ふざけるなっ! そんなのっ……」
冷静に答える青年の胸倉を掴み、俺は必死で怒鳴っていた。
アイツの存在が消えるっ!?
そんなの……そんなの許せるかっ!
バッと青年から手を離し、俺はそのままギュッと唇を噛んで俯いた。
考えを巡らす。
どうすればアイツを助けられるんだ?
鏡の中?
そうだっ!
俺はある方法に辿りついた。そして顔を上げる。
「俺がこの中に入ってアイツを助けるっ!」
鏡を指差して青年に俺の考えを話す。
「無理です」
「何でだよっ!」
さらりと答えた青年を思い切り睨み付けて反論した。
「あなたがここに入っても、そこはあなたの欲望の世界でしかない」
「欲……望?」
彼の言葉に呆然とする。
この鏡は一体何なんだ?
「これはその人の欲望を引き出し、叶える鏡なのですよ。彼は今、彼の欲望に支配され、取り憑かれかけています」
淡々と話す青年の言葉が信じられなかった。
一体なんなんだ?
そして俺は自分の考えたことが不可能なこと、相澤を助ける方法が他に思いつかなかったことに愕然としていた。
「……そうだ。ひとつだけ方法があります」
突然彼が思いついたように話し始めた。
「えっ?」
彼の言葉にハッとして顔を上げ、彼を見つめる。
「その手帳。彼の物ですよね?」
そう言って俺の手の中の相澤の生徒手帳を指差した。
「あぁ……そうだ」
俺は早く答えが聞きたくて、じっと彼の答えを待った。
「それが使えます。通常ならあなたを鏡の中へ送り込んでもあなたの欲望の世界に行ってしまうから『彼』には会えない。でも、それを使えば彼の世界への道ができる」
「じゃあ、アイツを助けることができるんだなっ!」
ギュッと生徒手帳を握り締め、俺は彼に詰め寄った。
「私ができるのは、あなたを鏡の世界に送ること。彼を助けるのはあなたと、彼次第ですよ。私は一度、彼を引き戻していますし、それに今回は彼の意志で行ってしまった。私は手出しができない。そして、あなたが行うことは鏡の世界の規律に背く行為です」
俺はじっと彼の言葉を聞いていた。
彼は真剣な表情で話を続ける。
「そしてあなたの行為は鏡の番人に知られないようにする為、制限時間は2時間です。通常、この世界に戻る為の制約は24時間。それを超えると先程話したように鏡に取り込まれてしまいます。しかし、あなたが鏡の中にいられるのは2時間。それを超えたら間違いなく鏡の番人に見つかり、あなたは処罰されます」
「処罰?」
眉間に皺を寄せながら青年に尋ねる。
「あなたの体、そして魂は引き裂かれ、痛みと苦しみを永遠に感じながら鏡に食われていくのです。取り込まれるのとは違う。取り込まれた時は彼らは何も感じない。取り込まれたことにも気付かない。ただ、存在がなくなるというだけ……。でも、あなたは違う。存在がなくなるだけでなく、永遠に苦しみ続けることになるのですよ? あなたにその覚悟はありますか? それでも彼を助けに行きますか?」
青年はじっと俺を見つめている。
その瞳の奥では『お前にはその覚悟などないだろう』そう言われている気がした。
だからじゃない。
俺は、アイツを忘れたくなんかない。
それだけだ。
アイツを助けたい。
まだ……何も伝えていない……。
「ああ。行くよ。どうすればいい?」
ハッキリとした口調で、睨み付けるように青年を見つめる。
「分かりました。では、お手伝いしましょう」
彼は優しく笑った。
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