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☆Greed in the mirror☆~物語はここから始まる~
第15話
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少し走って再び相澤の少し後ろをキープできた。
間に合った……。
軽く息を吐く。
そこへふと不思議な建物が目に入った。
ん? あんなの前からあったか?
普段あまり歩いて通らない道だ。
見落としていても不思議ではない。
ただ、その雰囲気が俺を更に不安にさせた。
さっきよりもゆっくり歩く相澤。
そして、ピタリと再び止まる。
そこは……あの建物の前だ。
「あっ!」
思わず声を出してしまって、慌てて口を押さえた。
ついてきているのを気付かれたくはない。
しかし、俺の声に気付くことなく相澤はその建物の中へと入っていった。
「マジかよ……」
この町には似つかない古びたヨーロッパ風の建物。
何かの店だろうか?
雑貨とか……アンティークとかか?
俺の不安は更に大きくなっていった。
それがなんなのかは分からない。
建物の目の前まで来た。じっと入り口を見つめる。少し汚れたガラス。
そこから中を覗くと、置物や机、椅子のようなものが見えた。
やはりアンティークショップか何かか。
相澤は買い物にでも来たのだろうか?
俺は不安を打ち消すように勢いよくその店の扉を開けた。
――優希編――
また……来てしまった。もう忘れようって決めたのに。
これが現実だって分かっているのに。でも、もう一度会いたい……海斗。
あの店の前で俺は少し迷っていた。
入ったらダメだって分かってる。でも、海斗の笑顔や優しい言葉が忘れられない。
またちゃんと戻ってこればいいんだ。そうだ、大丈夫。戻ってこれる。
自分にそう言い聞かせて店の扉を開けた。
――ガランガラン
なんだかこのドアベルの音が懐かしくも感じる。
そして……入って右奥。
目的のあの大きな鏡がある。
ゆっくり歩いて鏡の前に立った。
「海斗……」
俺は心の中で願っていた。もう一度、あの海斗に会いたいと……。
あの青年はいないがちゃんと行けるのだろうか?
少し不安にもなったが、海斗に会いたくてたまらない。
もうこの気持ちは止められない。
俺はゆっくりと鏡に触れた。
――海斗編――
――ガランガラン
ドアベルの音だろうか?
鈍い鐘の音が扉を開けるのと同時に聞こえた。
薄暗い店内。
これが本当に店なのだろうか? もしかして休みとか……。
そう思いながら店内を見回した――その時、右の奥の方で何かが光っているのが見えた。
ふとそちらを見た瞬間、俺は叫んでいた。
「相澤っ!」
俺が見たのはまるでどこか部屋に入るかのような……相澤だと思ったんだが、あれは本当に相澤だったのか?
見えたのは制服の裾が消える瞬間だった。
アレは何だ? あの向こうに部屋が?
周りが薄暗くてよく見えない。
俺はゆっくりとその光景が見えた方へと進んだ。
そこは――開けた空間でもあるのかと思ったが、そこにあったのは、ただの古びた大きな鏡だった。
「鏡? ……そんな、バカな……」
俺は愕然とした。
確かにこっちに消えたはずだ。
そしてあれはきっと相澤だ。確信はないが、自信はあった。
コツンと靴のつま先に何かが当たった。
「ん?」
しゃがんでその当たった物を確認する。四角いカードくらいの大きさの物。
「これは……」
うちの学校の生徒手帳だった。中を開く。
「やっぱりっ!」
『2年6組 相澤優希』の文字と相澤の写真が貼ってある。
「なんで……」
全く意味が分からなかった。
相澤は一体どこへ行ったんだ?
どこへ消えた? 鏡の中? まさかっ!
鏡を見つめたまま混乱する俺の後ろからコツンコツンと靴音が聞こえた。
「あまり覗くと取り込まれますよ?」
若い青年の声がした。
間に合った……。
軽く息を吐く。
そこへふと不思議な建物が目に入った。
ん? あんなの前からあったか?
普段あまり歩いて通らない道だ。
見落としていても不思議ではない。
ただ、その雰囲気が俺を更に不安にさせた。
さっきよりもゆっくり歩く相澤。
そして、ピタリと再び止まる。
そこは……あの建物の前だ。
「あっ!」
思わず声を出してしまって、慌てて口を押さえた。
ついてきているのを気付かれたくはない。
しかし、俺の声に気付くことなく相澤はその建物の中へと入っていった。
「マジかよ……」
この町には似つかない古びたヨーロッパ風の建物。
何かの店だろうか?
雑貨とか……アンティークとかか?
俺の不安は更に大きくなっていった。
それがなんなのかは分からない。
建物の目の前まで来た。じっと入り口を見つめる。少し汚れたガラス。
そこから中を覗くと、置物や机、椅子のようなものが見えた。
やはりアンティークショップか何かか。
相澤は買い物にでも来たのだろうか?
俺は不安を打ち消すように勢いよくその店の扉を開けた。
――優希編――
また……来てしまった。もう忘れようって決めたのに。
これが現実だって分かっているのに。でも、もう一度会いたい……海斗。
あの店の前で俺は少し迷っていた。
入ったらダメだって分かってる。でも、海斗の笑顔や優しい言葉が忘れられない。
またちゃんと戻ってこればいいんだ。そうだ、大丈夫。戻ってこれる。
自分にそう言い聞かせて店の扉を開けた。
――ガランガラン
なんだかこのドアベルの音が懐かしくも感じる。
そして……入って右奥。
目的のあの大きな鏡がある。
ゆっくり歩いて鏡の前に立った。
「海斗……」
俺は心の中で願っていた。もう一度、あの海斗に会いたいと……。
あの青年はいないがちゃんと行けるのだろうか?
少し不安にもなったが、海斗に会いたくてたまらない。
もうこの気持ちは止められない。
俺はゆっくりと鏡に触れた。
――海斗編――
――ガランガラン
ドアベルの音だろうか?
鈍い鐘の音が扉を開けるのと同時に聞こえた。
薄暗い店内。
これが本当に店なのだろうか? もしかして休みとか……。
そう思いながら店内を見回した――その時、右の奥の方で何かが光っているのが見えた。
ふとそちらを見た瞬間、俺は叫んでいた。
「相澤っ!」
俺が見たのはまるでどこか部屋に入るかのような……相澤だと思ったんだが、あれは本当に相澤だったのか?
見えたのは制服の裾が消える瞬間だった。
アレは何だ? あの向こうに部屋が?
周りが薄暗くてよく見えない。
俺はゆっくりとその光景が見えた方へと進んだ。
そこは――開けた空間でもあるのかと思ったが、そこにあったのは、ただの古びた大きな鏡だった。
「鏡? ……そんな、バカな……」
俺は愕然とした。
確かにこっちに消えたはずだ。
そしてあれはきっと相澤だ。確信はないが、自信はあった。
コツンと靴のつま先に何かが当たった。
「ん?」
しゃがんでその当たった物を確認する。四角いカードくらいの大きさの物。
「これは……」
うちの学校の生徒手帳だった。中を開く。
「やっぱりっ!」
『2年6組 相澤優希』の文字と相澤の写真が貼ってある。
「なんで……」
全く意味が分からなかった。
相澤は一体どこへ行ったんだ?
どこへ消えた? 鏡の中? まさかっ!
鏡を見つめたまま混乱する俺の後ろからコツンコツンと靴音が聞こえた。
「あまり覗くと取り込まれますよ?」
若い青年の声がした。
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