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☆Greed in the mirror☆~物語はここから始まる~
第9話
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向かった先は屋上だった。
屋上で昼飯?
藤條はガチャッと屋上へ続くドアを開ける。
あれ? ここのドアの鍵……壊れてたんじゃなかったっけ?
不思議に思い、俺は藤條に問い掛けた。
「鍵……なんで開くんだ?」
「……優希、ほんとに記憶が抜けてるんだな。前に試しに開けてみたら開いたんだよ。だから誰も知らない。2人だけの秘密だよ」
振り返った藤條は最初少し怒ったような表情をしたが、すぐに優しく笑った。
今日、何度も見ているコイツの笑った顔。
今までこんな顔、見たことなかった。
こんな表情もできるんだな。
俺は藤條を見上げながら、また少し不思議な気持ちになっていた。
屋上はそんなに広くはない。
校舎からポツンと飛び出たような小屋のようになっている出入り口が真ん中にあって、たぶん広さから言うと、教室3つ分プラス廊下分ってくらい。
俺達は出入り口の反対側に回る。
そこで藤條は俺の腕を離し、小屋(って言うのかどうか)を背にすとんと座り込んだ。
俺も仕方なく横に座る。もちろんちゃんと距離を置いた状態で。
藤條は袋の中からでかい箱のようなものを取り出す。
重箱?
風呂敷のような何かの布で包まれたその箱のようなものを、結んである布をほどき取り出す。
やっぱり重箱だった。
黒塗りのツヤツヤとした重箱。
弁当か?
3段になっている重箱を並べる。
中にはこれまた一瞬おせち料理かと思われるような豪勢な料理が入っていた。
「うわっ! うまそうっ!」
思わず俺は目を輝かせてしまった。
たぶん橘さんが作ったんだろう。
コイツが作ってたら……イヤだ。まぁありえないけど。
中にはエビフライ、からあげ、玉子焼き。ブロッコリーとか人参とか野菜も入っている。
牛肉で包んだえっと……ごぼう巻き? 名前がよく分かんない。そんなのも入ってる。
種類がありすぎてよく分からん。
1つの箱にはおにぎりが入っていた。中身なんだろう?
俺が覗き込んでいると藤條が嬉しそうに話し掛けてきた。
「うまそうだね。……でも……」
何か言い掛けて止まる。
でも? 何?
気になって藤條を見た。
で、また失敗。
「うわっ! こらっ!」
気がついたら押し倒されていた。
なんでこの状況っ!?
「ちょっ、どけよっ!」
睨み付けながら叫ぶ。
抵抗もむなしく、藤條は俺の両手を自分の両手でぐいっと俺の頭の上にやって押さえつける。
身動きが取れない。
「はっ、離せよっ!」
俺の上に乗っかっている藤條を思いっきり睨み付けた。
「優希……」
一瞬悲しそうな顔をする藤條。
俺はなぜだか動揺してその瞬間油断した。
「んっ……」
またキスされた。
しかも今までになく強引に。
はーなーせーっ!
もがこうにも動けない。
手は押さえつけられ、足も……藤條が上に乗ってるから動かせない。
重い……。
いや、体重はそんなにかけてないとは思うけど、俺には重い。
そして激しいキス。
頭が真っ白になってぼーっとしてきた。
……コイツ、ムカつくけど、上手いんだよな……。
流されて……ぼーっとしすぎたっ!
気がつくと、藤條は俺の制服のシャツのボタンを外していた。
しかも、俺のズボンのベルトまでっ!
足をぐいっと開かされ……。
ちょっと待てーっ!
何する気だぁ!
はたと気が付いた俺は、必死に抵抗する。
手はいつの間にか自分のネクタイで縛られていた。なんとか逃れようとジタバタと暴れる。
そして――気がつくと俺は思いっきり藤條を蹴っていた。
「うっ……」
ちょうど俺の膝が藤條の腹の辺りに入ったらしい。
ざまぁみろっ。
咳き込んでいる藤條を睨み付け、俺はグイグイと手を動かしてなんとか縛られたネクタイから手を抜いた。あまりキツク結ばれてはいなかったみたいだ。
体を起こしてベルトを締めて、シャツのボタンもはめる。
「いってぇ……」
藤條は苦しそうに腹を押さえていた。
ふっ、ふんだっ。自業自得だっ。
ちょっとだけ気にはなったけど知るもんか。
座ったまま俺は藤條に背中を向ける。
「……何も蹴らなくても……」
後ろから恨めしそうな声がしたけど無視だ無視。
「今日はずっとお預けなんだから……ちょっとくらい……」
「ふっ、ふざけんなっ! 十分だろがっ!」
藤條の言葉に体中が熱くなって振り返って怒鳴った。
「……はぁ。ほんとなんで記憶おかしくなっちゃったんだろな……」
俺に睨まれても藤條は残念そうに溜め息をつく。
俺がおかしいんじゃなくて、おかしいのはお前の頭だっ!
「まぁいいか。抵抗する優希も可愛いし。はい、あーん」
再び溜め息をつくと、藤條はいつの間にか箸で取っていた玉子焼きを俺の口の中に放り込む。
思わず口を開けてしまった俺も俺だけど。
「うまい?」
嬉しそうに笑う藤條。
「……うまい」
もぐもぐと口を動かし飲み込むと、仕方なく答える。
なんか調子狂うんだよな……普段と違いすぎて……。
俺、どうなっちゃうんだろ……。
屋上で昼飯?
藤條はガチャッと屋上へ続くドアを開ける。
あれ? ここのドアの鍵……壊れてたんじゃなかったっけ?
不思議に思い、俺は藤條に問い掛けた。
「鍵……なんで開くんだ?」
「……優希、ほんとに記憶が抜けてるんだな。前に試しに開けてみたら開いたんだよ。だから誰も知らない。2人だけの秘密だよ」
振り返った藤條は最初少し怒ったような表情をしたが、すぐに優しく笑った。
今日、何度も見ているコイツの笑った顔。
今までこんな顔、見たことなかった。
こんな表情もできるんだな。
俺は藤條を見上げながら、また少し不思議な気持ちになっていた。
屋上はそんなに広くはない。
校舎からポツンと飛び出たような小屋のようになっている出入り口が真ん中にあって、たぶん広さから言うと、教室3つ分プラス廊下分ってくらい。
俺達は出入り口の反対側に回る。
そこで藤條は俺の腕を離し、小屋(って言うのかどうか)を背にすとんと座り込んだ。
俺も仕方なく横に座る。もちろんちゃんと距離を置いた状態で。
藤條は袋の中からでかい箱のようなものを取り出す。
重箱?
風呂敷のような何かの布で包まれたその箱のようなものを、結んである布をほどき取り出す。
やっぱり重箱だった。
黒塗りのツヤツヤとした重箱。
弁当か?
3段になっている重箱を並べる。
中にはこれまた一瞬おせち料理かと思われるような豪勢な料理が入っていた。
「うわっ! うまそうっ!」
思わず俺は目を輝かせてしまった。
たぶん橘さんが作ったんだろう。
コイツが作ってたら……イヤだ。まぁありえないけど。
中にはエビフライ、からあげ、玉子焼き。ブロッコリーとか人参とか野菜も入っている。
牛肉で包んだえっと……ごぼう巻き? 名前がよく分かんない。そんなのも入ってる。
種類がありすぎてよく分からん。
1つの箱にはおにぎりが入っていた。中身なんだろう?
俺が覗き込んでいると藤條が嬉しそうに話し掛けてきた。
「うまそうだね。……でも……」
何か言い掛けて止まる。
でも? 何?
気になって藤條を見た。
で、また失敗。
「うわっ! こらっ!」
気がついたら押し倒されていた。
なんでこの状況っ!?
「ちょっ、どけよっ!」
睨み付けながら叫ぶ。
抵抗もむなしく、藤條は俺の両手を自分の両手でぐいっと俺の頭の上にやって押さえつける。
身動きが取れない。
「はっ、離せよっ!」
俺の上に乗っかっている藤條を思いっきり睨み付けた。
「優希……」
一瞬悲しそうな顔をする藤條。
俺はなぜだか動揺してその瞬間油断した。
「んっ……」
またキスされた。
しかも今までになく強引に。
はーなーせーっ!
もがこうにも動けない。
手は押さえつけられ、足も……藤條が上に乗ってるから動かせない。
重い……。
いや、体重はそんなにかけてないとは思うけど、俺には重い。
そして激しいキス。
頭が真っ白になってぼーっとしてきた。
……コイツ、ムカつくけど、上手いんだよな……。
流されて……ぼーっとしすぎたっ!
気がつくと、藤條は俺の制服のシャツのボタンを外していた。
しかも、俺のズボンのベルトまでっ!
足をぐいっと開かされ……。
ちょっと待てーっ!
何する気だぁ!
はたと気が付いた俺は、必死に抵抗する。
手はいつの間にか自分のネクタイで縛られていた。なんとか逃れようとジタバタと暴れる。
そして――気がつくと俺は思いっきり藤條を蹴っていた。
「うっ……」
ちょうど俺の膝が藤條の腹の辺りに入ったらしい。
ざまぁみろっ。
咳き込んでいる藤條を睨み付け、俺はグイグイと手を動かしてなんとか縛られたネクタイから手を抜いた。あまりキツク結ばれてはいなかったみたいだ。
体を起こしてベルトを締めて、シャツのボタンもはめる。
「いってぇ……」
藤條は苦しそうに腹を押さえていた。
ふっ、ふんだっ。自業自得だっ。
ちょっとだけ気にはなったけど知るもんか。
座ったまま俺は藤條に背中を向ける。
「……何も蹴らなくても……」
後ろから恨めしそうな声がしたけど無視だ無視。
「今日はずっとお預けなんだから……ちょっとくらい……」
「ふっ、ふざけんなっ! 十分だろがっ!」
藤條の言葉に体中が熱くなって振り返って怒鳴った。
「……はぁ。ほんとなんで記憶おかしくなっちゃったんだろな……」
俺に睨まれても藤條は残念そうに溜め息をつく。
俺がおかしいんじゃなくて、おかしいのはお前の頭だっ!
「まぁいいか。抵抗する優希も可愛いし。はい、あーん」
再び溜め息をつくと、藤條はいつの間にか箸で取っていた玉子焼きを俺の口の中に放り込む。
思わず口を開けてしまった俺も俺だけど。
「うまい?」
嬉しそうに笑う藤條。
「……うまい」
もぐもぐと口を動かし飲み込むと、仕方なく答える。
なんか調子狂うんだよな……普段と違いすぎて……。
俺、どうなっちゃうんだろ……。
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