White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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☆Greed in the mirror☆~物語はここから始まる~

第8話

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「ちょっと藤條君」

 クラスの皆の視線を避けながら俺が席へと移動しようとした時、後ろからよく知る女の声がした。
 振り返ると、藤條を睨み付けている麻生由里あそうゆりがいた。
 由里は俺の幼馴染だ。
 小・中・高校とずっと一緒だ。ある意味腐れ縁?
 クラスもずっと一緒で……そういや一度、中2の時だけ違ったっけ?
 俺は昔を思い出しながら由里と藤條とを交互に見た。

「何?」
 藤條は冷めた目で由里を見下ろしている。
 そんな藤條の態度に更に由里の怒りは強くなってるみたいだった。
「何じゃないっ。どういうこと? 聞いたよ。桜子を振ったんだってね」
 怒り狂ったように早口で喋る由里の言葉にハッとして固まった。
 桜子? 由里の言ってる桜子、恐らく早河桜子はやかわさくらこのことだろう。隣のクラスの子だ。
 可愛い感じで大人しくって……あぁ、そういや由里と同じ図書委員だっけ?

「は? だから?」
 藤條は面倒臭そうに由里に問い返している。

 うわっ。その態度はヒドイ……っていつもだけどさ。
 あれ?

「だからじゃないっ! 桜子はすっごい勇気出して言ったんだよ? 酷すぎるじゃないっ!」
「意味分かんねぇこと言ってんなよ……。結果は見えてることだろ? それをわざわざ言ってくるのがおかしいんだ」
 藤條は面倒臭そうにそう言うと、そのまま踵を返し、席へと向かう。
「ちょっと待ちなさいよっ! だからって、言い方ってもんがあるでしょっ! 桜子泣いてたんだからっ!」
 由里は藤條を追い掛けて、腕をぐいっと掴んで声を上げる。

 由里も怖いもの知らずだよな……。

「じゃあ、どう言えば良かったんだ? 『興味ない』それ以外に言い方なんてないだろ? 俺が興味があるのは優希だけだ」

 ひっでぇこと言うなぁ……なんて思ってたら……。
 うわっ! ちょっと待てっ! そこで俺の名前がなんで出るっ!
 矛先がこっちに向くだろがっ!

 ギョッとして2人を見ていたら、ちらりと由里がこちらを見てきた。

 うわー……。

 なんとなく、どうしていいか分からずに、俺は苦し紛れに笑ってみた。

「……知ってるわよ。……はぁ。ほんっと、藤條君って優希以外には冷たいよね」
 再び藤條を見上げると、由里は溜め息を付きながらそう言った。

 え? どういうことだよ?

 俺は由里の言った意味が分からなくてポカンとしていた。
 そして、それと同時に予鈴が鳴った。



 ☆☆☆



 俺の席は廊下側の2列目の1番後ろ。結構いい位置。気に入ってる。
 んで、藤條は……2列隣の……後ろから3番目。俺から見ると斜め左。
 つまりほぼ教室の真ん中辺りだ。
 俺の席からは横顔がちょっと見える。

 今朝から、学校に来て……さっきまでのことを思い出していた。
 全く何がなんだか分からない。
 目が覚めたら藤條の家にいて、(たぶん)一緒に寝てて……キ……うわー!
 それはもう置いておこう。
 で、橘さんに学校まで車で送ってもらって、下駄箱で加納に会って……なぜだか俺と藤條が一緒にいるのが当たり前みたいなこと言われて。
 教室来るまではいっぱい人に見られるし、教室に来たら藤條と足立が揉めて……。
 更に由里とまで揉めて……。桜子が藤條に告白したって話聞いて。俺の話が出て……。
 うー……分からない。
 藤條と俺は付き合っていて? んで、皆知ってて、しかも公認の仲ってことか?

「…………」

 うぎゃーっ!!!!

 思わず叫びそうになっていた。
 頭をガシガシと掻き回す。
 夢だ。絶対夢だ。現実なわけないっ。いや、この世界が嘘なんだーっ!

 ぐるぐると頭の中が回っていると、急に腕をぐいっと掴まれた。

「えっ?」

 見ると藤條だった。
 俺の反応を待つことなく、俺を立たせドアへと向かう。

 えっ? どこ行くんだよ? 授業中にっ!?

 意味が分からなくて目を白黒させていたら……あれ?
 とっくに授業は終わっていた。
 いや、それどころかどうやら昼になっていたらしい。
 俺、どこまで頭悩ましてたんだ……。授業の記憶がねぇ……。

 ショックを受けてる間も、藤條は俺の腕を掴んだまま廊下を歩いていた。
 そして階段へと向かう。
 3階、4階……え? どこまで行くんだ?

「ちょっ、藤條? どこ行くんだよ? 昼飯はっ?」
 藤條の行動の意味が分からなくて、引っ張られながらも必死に声をかける。
 ぴたりと藤條が立ち止まった。
 そして振り返る。
「だから、昼飯食べに行くんだよ」
 俺を見下ろし優しく笑う。そして右手に持っていた袋を俺に見せた。

 食べに行くって……どこに?

 再び俺の頭の中を不安が過ぎった。
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