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地獄に行かなかっただけ、まだましだ。
いや、そもそも存在していないと言うのなら、話は別だが。
俺は少女の体から降りると、自分の足で室内をぐるりと一周した。
そこで、六畳あるかないかくらいの、決して広くはない空間なのに、猫の体だと一周はかなりの距離だと言うことを実感した。
そして、再びベットの上へ戻る。
今度は、少女の乗っていない隙間部分で丸くなった。
桃色をした花柄の、いかにも幼女趣味なセンスだな、と思いながらも、前世よりはるかに良くなった眼輪で、周囲の毛玉を数え始めた。他にすることがなかったのだ。
そして、視界に入る毛玉を全て数え切った頃に、俺はある重大な未練を思い出した。
ゲーム、そうだ、ゲームだ。
俺の全てをかけて、全力でプレイしていたゲームはどうなったのだろうか。
(まさか持ち主もろとも潰れてしまった、なんてことはない…よな?)
前世最後の、死ぬ間際の記憶を絞り出す。
あの時、確かスマホは俺の体の下敷きになっていたような気がする。
この記憶が正しいなら、スマホは、今頃きっと、データごと全て破壊されてしまっているだろう。
脳裏に、粉々に砕け散り、ただのガラスの塊と化してしまった自信の命が浮かび上がった。
悪い想像は、たちまち悪質な妄想へと変わっていった。
自身の全てが、壊れた。
それも皮肉にも自分の下敷きとしての職を全うしたからなのだ。
せめて、直前に遠くへ投げていれば、助かったのか?それとも…
そう葛藤しているうちに、やっと俺は、不本意ながらにも、残酷な現状を思い出した。
(そうだ、俺は今、猫なんだ)
この姿では、たとえスマホが無事だったとしても、それ以上ゲームステージを進行させるのは不可能だろう。
がっくりと頭を垂れて項垂れる。
しかし、それと同時に人間だった頃への未練が薄まっていった。
命だったゲームがなくなった今、人の姿に執着する理由はないのかもしれない。
とすると…?

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