待ち焦がれてラブ・バージン 職なしパテシエールと訳あり御曹司の甘くおかしなプライマリー

（76）

　ジェイダンの気持ちに気づかされてから、アンナは揺らぐ自分自身に戸惑いを感じていた。
　ジェイダンの気持ちを素直に受け止めたい。
　そう感じるようになっていた。
　これまで恋人のいなかったアンナにとって、ジェイダンと過ごした時間は喜びや興奮に満ち溢れ、そしてアンナのために講演会の席を用意してくれたことやアンナの好みにぴったりと合うドレスをプレゼントしてくれたことに対して感謝もしていた。
　そしてあの店で起こった恐ろしい事件の後、恐怖にかられ心細いアンナの心境は自然とジェイダンの助けを求めた。
　ジェイダンの腕に守られ、その声で大丈夫だよ、と声をかけてもらいたい。
　この困惑と不安の入り混じった気持ちをジェイダンに受け止めて欲しいと感じた。
　そうすれば胸に喜びと安らぎが戻ってくるのをアンナはわかっていた。

(どうしよう……。わたしジェイダンに恋してる……)

　アンナは今はっきりと自覚した。

　戻ってきたジェイダンはアンナに水の入ったグラスを手渡した。

「ありがとう」

　アンナは薬を飲み、息を小さく吐いた。