65 / 150
(64)
しおりを挟む蓋を開けてみると、実際、和泉の家は予想以上に荒れ果てていた。庭の花々は雑草に覆われ、木々は枝を伸ばしたい放題。白い外壁はくすみ赤茶の瓦屋根にも蔦が絡んでいる。室内も相当ひどい。床はきしまないところを探して歩くのが難しいし、壁紙はそこら中がはげかかっている。カーテンは日に焼け、クロスの下の調度品はひどく懐かしくはあったが、その分古びて塗装がはげていたり、脚が緩んでいたりした。
「さて、どこから手をつけたらいいのか……」
さすがのアンナもしばらく途方にくれてしまった。
ついついぼんやりとしていると、アンナのポケットの携帯電話が鳴った。
「あら、マリヤ」
「アンナ、聞いてよ!」
アンナは久しぶりにマリヤの口癖を聞いた気がした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる