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Episode0: サンドプレイシュミレーション
一、マキリウ領(1)
しおりを挟むこの世のすべての大地とすべての海をいだく強大なる「居神国」。
居神国はさる惑星における人類の平行世界。
最も近しい例を上げれば、日本国における弥生時代にも似た原始国家である。
大きく違うのは、徹底した女系王が管理する女性優位の社会であること。
政治的権力と社会的優位性を持つこと、また継承できるのは女のみ。
男は子種をもたらすだけの家畜である。……
居神国に属するマキリウ国。
ここに生きるタカタという男がこの物語の主人公である。
タカタの前に見目麗しい少女が立っていた。
「お前が新しい"種"か?」
「タ……タカタと申します」
膝をつき首を垂れたその横面をいきなり蹴とばされた。
口の中に血の味が広がる。
伏した体勢で見上げれば、甲冑を身にまとった女がタカタを見下ろしていた。
「皇子様のお許しなく勝手に口をきくな。この下郎者」
「……お、お許しを……」
よいのじゃ、と皇子が艶めく髪を左右に振って、兵士を諫めた。
「宮中に来たばかりでなにもわからんのじゃろう。
よいから、口をゆすがせて、はよ母様の元へ連れて行け」
「ははっ」
恐る恐る見上げると、まるでこの世のものとは思われぬほどの美しい笑みが返ってきた。
(う、うわさには聞いていたが、なんと美しい……。このお方が、皇子さまだ……)
顔を蹴り上げられた痛みと恐怖、しかしながらそれにまさる緊張と興奮もあってか、タカタはまったく辛さを感じなかった。
それどころか、左右どちらをむいても美しい女ばかり。
幾重にも重なる艶やかな着物。
見たこともない白や緑の丸い玉飾り。
一糸の乱れもない黒い川のような髪。
柔らかそうな白い肌。
それに、なんと心をくすぐる良い香りがするのだろう。
体格のいい兵士でさえ、やはり平勤めの兵士とはわけが違う。
強さと厳しさの中に、品格と凛々しさが滲んでいる。
自分では意志盤石だと思っていたが、もはやタカタは夢見心地だった。
あの美貌の女に白い足で蹴られたことに興奮すら覚えていた。
(ここが、夢にまでみた、お宮……。ついにきた、おれはついにきたんだ……!)
タカタは仕度係の女にひしゃくを渡され口をゆすぐと、改めて着物を整わされた。
張りのある上等な生成りの下着に、藍染めの衣。
下履きの裳はしゃりっとしてすがすがしいまでに心地いい。
まさか自分までもがこのような良い着物に袖を通せるとは思ってもみなかった。
これが、"種"の暮らしなのだと思うと、小鼻が自然と膨らんだ。
(おれは運がいい。いや、努力もしてきた。このめぐまれた顔をきずつけることなく、少ない食料のなかでも体をきたえ、おれが有能な種であることをしめしてきた。その努力がむくわれたんだ)
確かにタカタは容姿に恵まれていた。
はっきりとした目眉。
力強く通った鼻すじ。
くっきりと丈夫なあご。
額の形も広さもよく、ほお骨も高すぎず低すぎず、納まりの良い骨格をしていた。
体つきもマキリウ国の中では大きい方で、鍛えてきたというだけあって着物の上からでもはっきり体の厚みが見て取れる。
男根は鼻すじに似て存在感があり、またその精力もみなぎっていた。
仕度をする際、三人がかりで湯あみをされたときには、女たちの細く柔らかい手の触れられただけで何度も放ってしまったほどだった。
彼は選ばれるべくして"種"に選ばれたのである。
(おれは選ばれた。子をのこしてもいい種として、選ばれたんだ……!)
タカタの自尊心は最高潮を極めていた。
子孫を残すことを許されず、果てていく男たちの情けない顔が頭に浮かぶ。
あいつらとは違うと思うと、性的な興奮ではないなにかが大いに心をくすぐる。
タカタは幼いころからそうした優越感を持っていた。
周りの誰より優れた外見をしていたし、いちもつにも自信があった。
その優越感がタカタの顔に少しばかりの高慢さをにじませたのは驚くべきことではない。
タカタはこの国の男にしては珍しく、確固たる己への未来と可能性を信じる者であった。
「宮様、種を連れて参りました」
案内された場所は幾重にも御簾が下げられた広い部屋であった。
促されるままに一枚目の御簾の中に入ると、奥の御簾のその奥に、これまで見た女たちの誰よりも鮮やかな衣を着た女がそこに座っている。
はっきり顔は見えないが、もはや輪郭とその色合い、鼻をくすぐる高い香りが、絶世の美女であろうと確信をさせた。
「ほう、なかなかの面構えじゃ」
「お気に召しましてございますか?」
「ああ、よかろう。名はなんと申す」
思わずぱっと口を開きかけたが、押し黙って頭を下げた。
先ほど蹴られたことを思い出し、同じ失態は二度も繰り返しはしないとすぐに気を引き締めた。
案内の女が答える。
「タカタと申します」
「すぐに準備いたせ」
側用人の女が目くばせすると、左右から女が出てきて、タカタの両脇に立った。
すぐに女たちがタカタの着物を解き始める。
あっという間に紐解かれ、タカタは一糸まとわぬ姿でそこに立った。
「おや、なかなか」
ふふと、宮が笑う。
いつの間にか後ろの戸が閉められ、辺りに明かりが灯った。
揺らめく炎の影のなか、空間を隔てていた御簾がするすると上がっていく。
中央には中年の女が、その両脇には側用人の女たちが座っていた。
歳は四十か五十か。
かなり年季のいった様子ではあったが、髪や肌の色つや、あるいは化粧の塩梅でかなりの美しさを保っている。
しかし、それにも勝る匂いたつような色気。
ぐらっときた。
「ふはは……、元気だのう」
下を見ると、我が分身はすでに頭をつきあげていた。
「しばし待っておれ」
いわれたとおりにそのまま立って宮を見ていると、側用人の女たちが宮の着物を解き始めた。
思わず、ごくりと喉が鳴る。
揺らめく火の中に現れた女の肢体の、なんとまろやかな美しさ。
曲線とその柔らかそうな肉感とがタカタの男の本能を魅惑した。
もはや、立っていられないとばかりに、吸い寄せられて前にのめっていた。
「待っておれというておろうが」
はっとして身をすくめたが、宮は妖しくほほ笑んで視線で一か所を指し示した。
側用人の女たちが、怪しい手つきで、宮の体をさすり始めたのである。
白い肌の上をくねくねと女の細い指が這いまわる。
ぞくっと背筋にしびれが走る。
見たこともない、感じたこともない衝動であった。
女の手つきが次第に宮の秘所に差し掛かり、やわやわとその割れ目を愛撫する。
宮の口から湿ったようななんともいえない吐息が漏れた。
びくんと根が一段と強くせり上がった。
(いけない……! 堪えなければ!)
局部に緊張を強いて、顔をそらせようとしたが、本能がそれを許さない。
次第にしどけなく体をくねらせ、荒く息をする宮。
宮の上下する胸の線に連動するかのように、自分の性がドクンドクンと脈を打つ。
もはや頂点まで上り詰めてしまいそうな勢いである。
両手で強くいちもつを握りしめた。
ここまでやってきたというのに、ここでそそうをしたら、首をはねられて終わりかもしれない。
そのとき、宮のしっとりと濡れた声が降ってきた。
「もうよいぞ。お前のそれをここへ差し込んでみよ」
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