僕はまだキスがしたい。

椿英-syun_ei-

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第3話

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「もう、会わない方が良さそうだね。」

 そう話を切り出したのは僕からだった。

 さっきまでこれからも会いたいなんて思ってたのに、静かに自分の中の図々しさがポッキリと折れてしまった。

「まぁそうだな。少なくとも今の関係のままじゃまずいかもな。」

 髪をセットするためにタケルが立ち上がる。僕はまだ手に取った服をうまく着れずにいる。

 洗面所に行ったタケルが少し声を張り上げて言った。

「エッチとかはなしで、友達として会わないか?」

「エッチなしでどうやって時間潰すんだよ。」

「何言ってんだよ。映画行ったり、ドライブしたり、たまに行ってるだろ。」

「そういうのは彼氏と行けよ。」

「友達とだって行くって。」

「俺は無理。たぶんヤりたくなる。」

 短い沈黙が降りる。やがて、「そっか。」という溜め息ともつかない返事が帰ってきた。

 身支度を終えたタケルが顔を覗かせる。

「じゃあ、性欲が湧かない時にでも呼んでくれよ。」

「そんなのジジイになるまで有り得ない…よ!」

 そばにあったタオルを投げつける。ぶつかった瞬間、二人の笑いが弾けた。

 ほら、ふざけていれば、ごまかせる程度の恋なんだ。

 そう言い聞かせるように自分とタケルの笑い声を耳に焼き付けた。

 会わなくなってからもSNSでタケルの様子を見ていた。

 見ていたというより、隠れて覗いていた。

 どんな顔をして受け止めればいいか全然分からなかったから、時々来るメッセージにも当たり障りない返事をした。

 タケルの彼氏の話に繋がりそうなことはとにかく避けていたのに、どんなに頑張っても、予想しない場所からその話題に行き着いてしまう。

 そのことに気付いてからは、メッセージのやり取りもおざなりになっていった。

 僕はまた、快楽の中で、孤独を埋めようと彷徨っている。

 会ったこともない、文字でしか会話をしない、そんなやり取りの中で、タケル以上の存在に出会うことはできるだろうか。

 たった一人を忘れることがこんなにも難しいなんて、僕は知らなかった。

 ただセックスをしていればよかった、あの頃に戻りたい。

 面倒な人になった僕を、ただのバカに戻してください。

 そんな出会いを待っています。

 連絡先は××××0212@×××.com
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