私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako

文字の大きさ
上 下
25 / 261
第1章 私はただ平穏に暮らしたいだけなのに!

24 後悔に似たもの

しおりを挟む
 私が目を覚ましたのはジョシュアを助けた日から3日後の昼過ぎだった。

 孤児院長と話した後、医者に改めて診察をしてもらったり、メイドさんにお風呂に入れてもらったり、軽く食事をしたりして、今後の選択についてゆっくりと考えることができるようになったのは完全に日が暮れてからだった。
 
 もう半日しか考える時間がない。
 早く考えて答えを出して選択しなければならない。
 私は焦っていた。今後の一生を決める大事な決断だ。真剣に自分の将来のことも考えて決めなくてはならない。
 そう分かっているのに、長いこと何も考えることができないでいた。

 考えなくてはいけないことがいろいろあるのに、様々な感情や思いで頭と心の中がぐちゃぐちゃで考えが纏まらない。いろいろな思いが私の中に渦巻いている。

 まずはそれを片付けない限り何も考えられない。

 正体不明の苦くて重いものが胸につかえてるような、喉に小骨が引っ掛かっているような、胃で消化不良を起こしているような、何かが気道に詰まって上手く呼吸ができないような、そんな中途半端に苦しい気分だ。とても苦しいのに、原因が分からない。

 これは後悔なのだろうか?私は後悔しているのか?後悔しているとしたら何を後悔しているのか?

 あのとき鳥の雛を助けなれば……、あのときジョシュアを助けなければ……、そういう後悔は無い。むしろ、助けなかったら今もっと酷い後悔に苛まれていただろう。
 助けたことは一切後悔していない。自分がしたことについて「やらなければ良かった」とは全く思わない。
 助けなければよかったとは思わないし思えない。私は私自身に対して間違ったことは何一つしていないと胸を張って宣言できる。

 アンヌに理術が使えることを教えなければという後悔もない。
 あのとき雛を巣に戻さなかったら、巣のある木の傍を通るたびに親鳥の下に雛を帰さなかった自分を責めるだろう。理術を使えばできたのに、しなかった自分を責めるだろう。
 理術を使わずに雛を巣に戻せるなら、そうするのが最善だったが、物理的にどうやっても無理だった。
 アンヌが雛を保護するなら、親元に帰せなくても自分自身を納得させることができたら良かったが、自分がそれでは納得できなかった。雛を巣に、親元に帰したかった。
 あの時、アンヌになら知られても構わないと思った。他人に言いふらしたりしないと信用していた。
 自分の判断に何も後悔はない。雛は無事に巣に帰した。アンヌに知られたけど、問題は無いと思っていた。

 アンヌが信用を裏切ったことを恨む感情は一切ない。
 家族が危険な状態にあり、救えるかもしれない可能性があるなら縋ってしまうのは当たり前だ。私でもあの状況で逆の立場ならアンヌに縋る。藁にもすがる状況で、藁よりも丈夫な他人がいたら縋らずにはいられないだろう。アンヌを責める気は全くない。あの状況なら仕方なかったと納得できる。

 むしろ、アンヌに私の力を知ってもらっていて良かった。アンヌが知らないままならジョシュアを助けられなかったかもしれない。ジョシュア以外の村人が犠牲になったかもしれない。結果としては文句なしに最良の結果だった。

 私は自分がやったことに何一つ後悔はしていない。それでも、この後悔にも似た感情に苛まれるのは何故だろうか?この苦しみと悲しみはどこからきているのか?

 私はこの力のことがシスターマリナにバレたら、力を使うことを禁止されて二度と飛べなくなることを恐れていた。

 危惧するべきなのはそんなことではないだろう!
 今なら自分にツッコミを入れられるくらいに自分の勘違いぶりを理解出来る。

 ただ、自分の覚悟が足りなかった。
 大した力ではないから、アンヌに知られても問題無いと思っていた。自分の力を軽く考えていた。こんな大事に、このような二択を迫られることになるとは夢にも思っていなかった。全く想像できなかった。
 私は自分の力についてもっと真摯に真剣に向き合って考えるべきだった。自分の中だけで完結させるならその必要は無かったが、他人に教えるなら、その力の影響をもっと考えるべきだった。

 力のことが村人にバレたら、私の平穏で平和で平凡な幸せな日々を失うことになるとまで考えていなかった。この力がそれだけ異質なものだと理解出来ていなかった。
 少し考えたら分かりそうなものなのに、完全に失念していた。
 私は力に対する覚悟が全く無かった。
 私は自分の愚かさと覚悟が足りなかったことに苦しめられている。後悔はない。ただ、自分の愚かさと浅慮さと覚悟不足を反省したい。

 今の平穏で平和で平凡な幸せな生活を全て失う覚悟が無かった。自分のすることがそれだけ危険だと自覚できなかった。

 失ってしまったこと自体には後悔はない。ただ、その覚悟が足りなかった、それだけの思慮が足りなかった自分自身に対して残念に思っている。

 大切なものを失うことがわかっていたとしても私は助けた。助けることができた。だから、後悔は無い。もう二度と前の生活に戻れないけれど、後悔は無い。ただ、寂しくて悲しいという気持ちはある。それは覚悟が足りなかったから。
 誰が悪いわけでもない。ただ、自分の覚悟が足りなかったことが問題なだけ。そこだけが、自分の心に引っかかっていた。

 アンヌに自分の力を見せたとき、友達を驚かせたい、自分の力を自慢したい、という気持ちが全く無かったと言えば嘘になる。子どもっぽい虚栄心が確かにそこにはあった。そんな考え無しなところも反省しなければならない。

 私は今の生活を失う可能性があることが分かっていてアンヌに自分の力のことを伝える覚悟は無かった。あの時はそこまで考えていなかった。そこまで考えていたら、私は雛を巣には帰さず、アンヌに託したままにしただろう。
 でも、今の生活を失うことになったとしても、私はジョシュアを助けた。それはどれだけ考えても変わらない。
 あの時、アンヌに私の力を伝えていなければ、アンヌは私に助けを求めなかっただろう。そうなると私はジョシュアを助けられなかっただろうし、ジョシュアは助からなかったかもしれない。
 だから、あの時アンヌに私が理術が使えることを伝えたこと、雛を助けたことは愚かなことではなかった。
 それら全てのことが合わさって私はジョシュアを助けることが出来た。
 ジョシュアを助けたことには何の後悔もない。だから、私がしたこと全てに後悔はしていない。

 後悔はしていないけど、反省はしなければならない。
 それがこの後悔に似たものの正体だ。

 反省してもし足りないが、反省するばかりでは何も考えられず、このままでは選択できない。
 思考を邪魔するものは取り除けた。この反省を活かして今度こそ私は自分自身と真剣に向き合わなければならない。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オカン公爵令嬢はオヤジを探す

清水柚木
ファンタジー
 フォルトゥーナ王国の唯一の後継者、アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレは落馬して、前世の記憶を取り戻した。  ハイスペックな王太子として転生し、喜んだのも束の間、転生した世界が乙女ゲームの「愛する貴方と見る黄昏」だと気付く。  そして自身が攻略対象である王子だったと言うことも。    ヒロインとの恋愛なんて冗談じゃない!、とゲームシナリオから抜け出そうとしたところ、前世の母であるオカンと再会。  オカンに振り回されながら、シナリオから抜け出そうと頑張るアダルベルト王子。  オカンにこき使われながら、オヤジ探しを頑張るアダルベルト王子。  あげく魔王までもが復活すると言う。  そんな彼に幸せは訪れるのか?   これは最初から最後まで、オカンに振り回される可哀想なイケメン王子の物語。 ※ 「第15回ファンタジー小説大賞」用に過去に書いたものを修正しながらあげていきます。その為、今月中には完結します。 ※ 追記 今月中に完結しようと思いましたが、修正が追いつかないので、来月初めに完結になると思います。申し訳ありませんが、もう少しお付き合い頂けるとありがたいです。 ※追記 続編を11月から始める予定です。まずは手始めに番外編を書いてみました。よろしくお願いします。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...