私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako

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第1章 私はただ平穏に暮らしたいだけなのに!

6 夕食とその後

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 縫い物を2時間くらいやって終了。
 片付けをした後、夕食の準備をする。

 基本的に夕食は昼食の残り物ですます。昼のスープの残りを温めなおすだけ。
 あとは昼食と同じパンと豆。

 夕食の準備を女の子達としていると、畑の手伝いから男の子たちが帰ってきた。

 「お腹すいた~!」
 「ごはんの前に井戸で汚れを落としてきなさい!食事はそれからよ!」
 「ええ~」

 いつものように不満を言いながら、男の子たちは裏の井戸へ行き、水を汲んで顔や手を洗い、泥を落とす。元気な子は上半身裸になって頭から水をかぶっている。
 乾いたタオルを渡してあげて、汚れを落とすのを手伝ってあげる。そうしないと、部屋の中はすぐに泥だらけになってしまう。

 男の子たちが綺麗になったら、席に着かせて、孤児院長に全員揃ったことを報告する。孤児院長が席に着いたら夕食の始まり。

 夕食後は子供たちはすぐに自分の部屋へ行き、就寝。

 私は夕食の片付けと明日の朝食のカースの下準備をする。
 そのあと、孤児院長室へ行き、今日一日の仕事と子ども達の様子の報告。報告後、他に何か仕事があれば手伝いをするが、何もなければ勉強をする。文字の読み書きや計算、孤児院で必要なもの、必要なことなどを孤児院長から教えてもらう。

 文字は英語に似た形で子音と母音で表記するアルファベットと絵文字のような象形文字の2種類ある。市民はアルファベット、貴族は象形文字を使うので、アルファベットを一般文字、象形文字を貴族文字と呼ぶ。
 例えば、「わたし」を一般文字だと「WATASHI」だが、貴族文字だと雪だるまのような○と◎が上と下にくっついた絵文字で表す。

 この世界の人の識字率は低い。義務教育がなくて、下級や中級階級の人間が通える学校は存在しない。だから、普通の人は自分の名前すら書けない。
 さすがに村長くらいになると一般文字くらいは、簡単なひらがなを読めるレベルで読み書きができる。それを村人全員に教えようという考えはなく、後継ぎの男の子にだけ村長が教えているというのが現状だ。

  孤児院のシスターは農民ではなく、領主に雇われている領の準役人という立場になるので、農民よりも多くの知識と高い教養を必要とされる。

  領主への報告書を作成したり、孤児を貴族の屋敷の下働きとして奉公に出したりする。そのため、文字の読み書きは完璧に習得しなければならない。

 一般文字の習得は然程苦もなく出来たが、貴族文字の習得に手間取っている。

 貴族は貴族文字がどれだけ綺麗に美しく芸術的に描けるか、ということで教養を示す。

 文字がどれだけ芸術的に描けようが描けまいが、文字なのだから読めれば問題無いだろうと非常にバカバカしく思う。しかし、自分のせいで貴族とのやり取りを失敗して子ども達の就職先を潰すことになっては申し訳ない。私は毎晩、必死に貴族文字を覚え、芸術的に描けるように練習している。

 孤児院では孤児のみんなに一般文字を教える。文字の読み書きができれば、それだけ良い就職先を見つけられる。途中で養子に行く子は完全な読み書きができなくても困らないが、養子に行けずに就職先を探す子は12歳までに簡単な読み書きができるレベルまで教える。

 私は勉強が好きで、知らない文字を覚えて、色々な単語や文章が読めたり書けるようになるのが嬉しくて、楽しみながら黙って大人しく勉強していた。しかし、他のみんなは勉強が嫌いで、大人しく座って文字を黙々と覚える作業というのは苦痛らしく、なかなか覚えられなかった。

  私がシスター見習いになって、読み書きを教えることになったとき、何とか楽しみながら勉強して欲しいと思って色々考えた。英語のアルファベットの歌や有名な音階の歌の替え歌を作って歌いながら覚えるようにしたら、みんな楽しんでアルファベットを覚えてくれた。
 最初、孤児院長は「勉強は遊びではない」と歌いながら勉強することに難色を示した。しかし、遊びながら勉強するほうが、明らかに子ども達のやる気と習熟度が上がったので、今では何も言わずに私のやり方を受け入れてくれている。

 紙は貴重品なので、表面が柔らかめの平らな木の板に尖った木の棒で削りながら文字を書いて練習している。一面全部書き終えたら、表面を薄く削って、再び使う。文字が書けなくなるまで何度も使い続ける。使えなくなったら最後は火にくべて薪にする。

  私は孤児院長が書いてくれた手本の紙を見ながら、木の板に手本の字と同じように綺麗に優雅に芸術的に描けるように練習した。手本には貴族に対する簡単な季節ごとの挨拶の文章が一般文字と貴族文字の両方で描かれている。
 同じような意味なのに、季節によって使う文字が異なるから覚えるのが大変だ。
 描き難い木の板にみっちりと3枚に貴族文字を描き、完成したら孤児院長に確認してもらう。

 「シスタールリエラ、ここの文字とこちらの文字が間違っています。ここは下をもっと水が流れているように描かなくてはいけません。こちらはもう少し上の部分と下とのバランスを良く見てください。これでは美しくありません」
 「…はい、気を付けます」
 「今日はこれで終わりにして休みましょう。今日も一日お疲れ様でした。良い夢を」
 「本日もありがとうございました。孤児院長も良い夢を」

 2階にある孤児院長室を辞して、階段を上がって3階へ行き、3階の子ども部屋の廊下を静かに歩いて渡る。廊下の端にある薄暗く人がやっと通れるくらいの幅の急な階段を登り、4階へ。ガランとした何もない広い空間の先に2つの扉がある。4階は屋根裏でその無駄に広いホールと小さな部屋が2つあるだけで、そのうちの1つが私の部屋だ。

 私は扉を開けて自分の部屋に入った。

 疲れているから、このまま着替えてベッドに横になりたいと思うけれど、私の時間はこれからだ。寝ている場合ではない。

 私は部屋の窓を開けて、そこから飛び降りた。
 

 
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