氷の華を溶かしたら

こむぎダック

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88話 ** 

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性的な表現が有ります。

苦手な方は飛ばしてね!



期待で先走りを迸らせ、ヒクヒクと蠢くシェルビーに、キャニスは、手にした香油をたっぷりと垂らした。

「あ・・・・」

「冷たかったですか?私は手で触れられませんから、ご自分で全体に塗って下さい」

「自分で?キャニスが手伝ってくれるんじゃ・・・」

「私が手伝うのは、その後です。さあ、はやく塗って」

不安そうにキャニスを見上げ、自身の猛りに香油を塗って行くシェルビーは、最初は見られている羞恥からか、おずおずとしていた手付きが、次第に大胆なものへと変わって行った。

端正な顔は頬が紅潮し、薄く開いた唇からは、荒い息と微かな喘ぎが漏れ始めた。

「一度、ご自分で出しますか?」

「・・・・いや・・・」

懇願する潤んだ瞳に、キャニスの背中がぞくりと震えた。

 これは癖になりそう。

 お母様の気持ちが、少しだけど理解出来ちゃったかも。

心の中で呟きながら、キャニスは手にしたタオルをシェルビーの頭に結び付け、目隠しをすると、髪に結んでいたリボンをほどき、手の中で香油を染み込ませた。

「なにを・・・何も見えないぞ」

「シー。黙って、この方がより強く快感を拾えます」

耳元で囁く声に、シェルビーの肩は震え、天を衝く猛りがビクビクと脈打った。

シェルビーの開いた足の間に膝を付いたキャニスは、香油を染み込ませたリボンを、猛りの根元に緩く巻き付け、様子を見る様にそっと動かした。

「キャ、キャニス?・・・あっ!」

キャニスは巻き付けたリボンをゆっくりと左右に動かし、下から上へと扱いて行く。
そして雁首に到達すると、今度は根元に向かって扱いて行った。

それを数度繰り返し、シェルビーの好む部分が分かると、其処を重点的に攻め、焦らす様に離れて行った。

やがて、引き締まったシェルビーの腰がビクビクと跳ね、喘ぎ声が切羽詰まって来た所で、キャニスはリボンの動きを早くした。

「あぁ!! イッ・・・逝く! 出るっ!!」

「見てあげます。さあ出して。いって」

手の動きを止める事無くキャニスが囁くと、シェルビーの陰茎がググっと膨らみ、次の瞬間、溜め込まれた精が関を切ったように、ビュービューと噴き出した。

「あ・・・あ・・ぁ・・」

 うわぁ・・・。
 どうしよう。止まらない・・・・。

 それに・・・・小さくならない・・・。
 一回じゃ無理・・・だよね・・・。

 娼館に居た頃、媚薬の所為で、何度も酷い目に遭った。 

 それに若い子たちが、仕事に堪えられなくて、媚薬に頼りきりになって。
 おかしくなって行くのを、只見ているしかなかった。

 媚薬なんて、本当に悪趣味だ。
 必要としている人達も、居るのかも知れないけど。もっと厳しく、取り締まるべきじゃないのかな?

 それとも、これも必要悪なんだろうか。
 
 でも被害に遭ったのが、王太子じゃあ。
 洒落にならない。
 侯爵は、閉門だけじゃ済まないだろうな。

次を強請るシェルビーだったが、キャニスは淡々と、汚れてしまった体を流し、筋肉の塊のような体を湯に浸からせて、解毒作用のあるジュニパー茶を飲ませた。

それでも治まる様子の無いシェルビーに、キャニスは娼館時代に培った、あれやこれやの技で、散々喘がせ翻弄し、シェルビーの全てを搾り取った。

最後は湯の中でぐったりと手足を伸ばし、呆然と天井を見上げる王太子の姿に、キャニスは額に浮かんだ汗を手の甲で拭い、勝利の溜息を吐いた。

「媚薬の効果は抜けたようです。流石に私も汗をかいたので、一度着替えに戻ります。後はごゆっくり」

後ろ手に浴室の扉を閉めたキャニスへ、あー。とか、うーとか。言葉にならない返事を返したシェルビーだった。

 すごい・・・・。
 凄すぎる。

 こんなの知っちゃったら
 もう自分でなんて満足できない。

 キャニスの白い指は、一度も肌に触れることは無かった。

 それなのに。

 キャニスに弄ばれた気分だ・・・。

 どうしよう。
 俺・・・。
 キャニス以外の、お婿になんて行けない。

両手で顔を覆い、湯の中でモダモダともだえるシェルビーは、婿を取るのは自分の方だ、という事を、すっかり忘れてしまっていた。

初めての快感に溶けた頭では、こんな事を考えるのが精一杯だったのだ。

 はあ・・・・。
 
 あんなに綺麗は顔で、こんな淫らな。
 しかも顔色一つ変えず、淡々と・・・・。
 
 ・・・みっともなかったよな。
 何回も強請って・・・・
 軽蔑されてたらどうしよう。

 でも・・・。
 あの冷えた眼差しが、ぞくぞくする。
 俺・・・カラロウカ公爵と一緒かも。

 媚薬の所為で、新しい扉が開きそうだ。

 ・・・・媚薬・・・媚薬?

 そうだ媚薬だ!!

 キャニスは中和剤を持っていた。

 という事は、キャニスも媚薬を盛られていたという事だ!!

「クソッ!!」

 侯爵を拘束する様に命じた気はするが、薬の所為で記憶が曖昧だ。

 早く確認しないと。

湯船から出たシェルビーは、体を拭くのも、もどかしく、髪から水滴を零しながら部屋に戻った。

キャニスが用意してくれたのか、使用人の誰かは知らないが、ベットの上に綺麗に畳まれた、着替えが一式置かれていた。

ぽたぽたと落ちる雫を無視して、用意された着替えに袖を通し、キャニスに脱がせてもらった服は、あの女に触れられた記憶と一緒に、暖炉へ放り込んだ。

立てかけてあった剣を腰に下げ、部屋を出ようとした時、扉の向こうから訪いの声が聞こえて来た。

「失礼いたします。殿下、お加減は如何でしょうか?」

 この声は、キャニスの侍女だったような。

「誰だ?」

「キャニス様の侍女で御座います。主より伝言を預かってまいりました」

「入れ」

護衛騎士が開いた扉から入って来たのは、確かに、キャニスの傍を守っている侍女だった。

「キャニスは、何と言っている?」

「一階の舞踏ホールへ、お越しくださいと」

「ホール?何故だ?」

「坊ちゃんの指示で、侯爵を始めとする、屋敷の全員を拘束いたしました。ですが、薬を盛られたキャピレット卿の意識が戻らず、今後のご指示を、殿下に仰ぎたいとの事です」

「サイラスが?」

 道理で何時まで経っても、顔を出さない筈だ。あのサイラスが、俺を揶揄う絶好のチャンスを逃すはずが無い。

 侯爵の奴。
 本気で王家に盾突く気だな。

「団長達は、どうしている?」

「私は詳しい事は存じませんが、体調不良を訴えている方が、幾名かいらっしゃるそうです」

扉の前に立つ騎士に眼を向けると、頷き返して来た。

 この使用人の言う事は、本当らしい。
 
 それでキャニスが、指示を出したのか。

キャニスが待つホールに向かうと、侯爵を始めとし、下男下女に至るまで、侯爵の屋敷で暮らす全員が集められていた。

しかし、侯爵家の使用人にしては、人数が少ない。集められた殆どが、夕食のときに見た顔だった。

これだけを見ても、侯爵の困窮具合が分かるという物だ。

団長達の話しを聞いていたキャニスは、シェルビーの姿を見つけると、静かに礼を取り、場所を明け渡した。

先程迄の情事・・・と呼べるかは定かではないが。とにかく気恥ずかしさを覚えていたシェルビーは、普段と変わらぬキャニスの様子に、拍子抜けする想いだった。

一抹の寂しさを感じはしたが、今の優先順位は、別の事だ。

団長達の中で、顔が見えないのは、体調不良を起こした者達だった。

集まった団長達の話によると、体調不良の原因は、その症状から媚薬ではなく、睡眠剤が用いられたのではないか。との事だ。

サイラスは、王太子の専属護衛でもあり、侯爵家長女の "王太子のお世話中" に邪魔をされないよう、特に強い薬が盛られたらしい。

サイラスの胃の洗浄は終わっているが、行軍に同行している医師達にも、彼がいつ目覚めるのか、判断できないそうだ。
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