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千年王国
大公と侯爵
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有事の際、騎士である俺達に惰眠は許されない。
それでも案じていたよりも簡単に、レンと仲直りが出来たし、仲直りの行為はいつにも増して、素晴らしかった。
互いに深く愛し合い、夢のような時間を共に過ごした番を、腕に抱いて眠れば、交代迄の短い睡眠であろうと、気力体力共に完全復活。
思考もスッキリと。
どんな問題でも解決できそうだ。
レンが云う処の ”バッチ来い” とは、こういう感じかもしれない。
「おや?お休みだったのでは?」
「あぁ、充分休んだ」
「そうですか。レン様のお加減は如何ですか?」
「問題ない、アウラに回復して貰ったそうだ」
「アウラ神に?・・・・そういう話を、サラッと言われると、愛し子とは、と言うべきか、レン様だからなのか、神の存在がグッと身近に感じますな」
「レンだからだろ?歴代の愛し子の中で、レン程アウラから愛された者は居ないらしいからな」
「でしょうなぁ。うちのリアンもレン様にすっかり懐いているようで、レン様のお戻りを首を長くして待っております。手紙が届くたびにレン様のお戻りは何時かと、聞いて来るのですが、少しは父親の心配もして欲しいですよ」
「父親を信頼している証ではないか?よもや侯爵が遅れを取る事ないだろう、とな?」
「だと良いのですがね。しっかりしているようで、あれもまだ子供ですからな。それに、侯爵と言っても、オーベルシュタインは、土地が広いだけの、ただの田舎ですから。田舎者のリアンが、中央で遣って行けるか。本当に王配としてやっていけるのか、心許ないのです」
「レンはリアンの事を聡明で賢いと褒めていた。アーノルドと二人で上手くやって行くと思うが?」
「そう言っていただけると、気が楽になります。まあ、中央の洗練された所作は、ロイド様がしっかり仕込んで下さるでしょう」
父親の顔で笑っていたオーベルシュタインだが、部下の1人が被害状況の報告に来ると、厳格な指揮官の顔に戻った。
「辛うじて壊滅状態は免れたと云う処ですな。しかしこれから直ぐに冬が来る。それまでにどの程度の復旧が出来るか・・・」
「被害は王都だけか?セルゲイは戻ったのか?」
「ゲオルグは先ほど戻って来ましたが、荒れてますよ」
「荒れてる?やられたのか?」
「逆てす。まったく相手にされなかった様だ」
「なるほど、構って貰えなくて拗ねているのか」
そういう事だ。と侯爵は苦笑いだ。
「ゲオルグは王都の外に出た奴らを追って行ったが、相手にされず途中で逃げられたそうで」
「逃げた?どこに向かったのか分からんのか?」
「どうやら転移魔法を使ったようでな、光りが走ったと思ったら、跡形もなく消えていたそうだ」
「ふむ・・・・」
別の街に行ったのか、ヨナスに呼び戻されたのか。
後者であってくれれば良いが。
「広場での様子を私は全部見て居たが、あれはいったい何なのだ?」
「モーガンから聞いていないか?」
「モーガンも昨日から一睡もしていなくてな、報告は後で良いから、取り合えず休むように言ったのだ。私は外に出るなと言われてしまってな」
「ふむ。それにしても、よくあいつらの狙いが人族だと、直ぐに気付けたな」
感心して言う俺に、オーベルシュタインは苦笑いを浮かべた。
「気付くも何も、奴らが自分でそう言ったからな」
「言葉を交わしたのか?」
「門衛が、ですがね。あいつ等は城の門でここに人族は居るか。その人族を信用しているか。と聞いて来たらしい。魔物が口をきいた事には驚いたが、敵意は無いように見えた事から、城に人族は数人いるし、信頼していると、答えたら。門衛を押しのけて、中に入って来たのだよ」
「モーガンが、臭いで確かめていたと言っていたな」
「そうらしいな。私は人語を解す魔物が、人族を探しているから、部屋から出るなと言われてしまってな。完全に蚊帳の外だ」
「了解した。あれが前に話したドラゴニュートだ」
「そうかあれが、神話時代の遺物か」
「遺物というには物騒な存在だが、少なくとも獣人に危害は加えない」
「その割には、とんでもない被害を出しているぞ?」
「あれは、人族の根切りを命じられたそうでな」
「攻撃する相手を選んでいたのか。道理でゲオルグが相手にされない訳だ」
「となると、この後連れて行けと騒がれるな」
「連れて行く?何処へ」
「ドラゴニュートの隠れ里だ。クレイオスが封印したのが6割、レンがティムしたのが1割。残りの3割と、あれらの創造主が残っているからな」
「創造主?・・・魔族との混血の・・・え~と・・・」
と侯爵は、記憶を引き出すために、指でこめかみを叩いている。
ボケ防止のためにも、ここは自力で思い出してもらうとしよう。
「ト?・・・ヨ?・・ヨナス!・・・ヨナスと言ったか?」
おお!
思い出せたか。
まだボケる心配はなさそうだ。
「そう。ヨナスだ」
「しかし、ヨナスは大昔に死んだと・・」
「そうではなかったらしい。ヨナスはウジュカでも色々とやってくれてな。奴には物申したい事が山ほどあるのだ」
「・・・・レン様も連れて行くのか?」
「連れて行きたくはないが、従魔契約をしたドラゴニュートはレンの言う事しか聞かん。それにドラゴニュートは世に放って良い生物では無い。となるとクレイオスの封印は必須だ。しかしクレイオスはレンが居なければ、ついては来ない」
「うむ・・・・いかんなあ。あの方は、こんな荒事は似合わんだろう」
「それには俺も同意だ。愛し子と言うものは、もっとのんびりとした存在だと認識していたのだがな。苦労ばかり掛けて・・・」
「閣下・・・しかし、まあ。レン様は閣下と一緒に居る時が、一番楽しそうだからな。番冥利に尽きると思って、しっかりお守りしてくれ」
言わずもがなの事を、わざわざ言うなよ。
「無論だ。ところで伯父上の姿も見えないが?」
「住民の避難と、消火に当たられていたが、今は炊き出しの手配をしている処だ」
「伯父上が炊き出し・・・似合わんな」
鎧の上にエプロンを付け、三角巾を被ったシルベスター侯爵を思い浮かべてしまい、その悍ましさに背筋が震えて来た。
「確かに・・・これがレン様だったら、有難味も倍増だろうが、実際はむさい騎士が飯を配るのだよな」
「災害時と変わらんからな」
レンが寝ている間で良かった。
炊き出しをすると聞いたら、レンは一から料理を始めてしまいそうだ。
「それで、その隠れ里にはいつ出発される御積りか」
「レンが目を覚ましたら、早急にだな。今回はモーガンも同行したいと言っている。セルゲイに隠し通すのは無理だろうから。2人とも同行する事になるだろう」
「騎士団を全員連れて行かれるのか?」
「いや。最低限の人数で向かおうと思う。大隊を率いていくには、あそこは狭すぎるし、こっちの方が人手が必要だ。第2の者も好きに使ってくれた構わんぞ」
「そう言ってもらえると助かる。遺体の回収と処理の心配はなさそうだが、火災の後始末は、それなりに手間がかかるからな」
「それに金もな。ここはゴトフリーの貴族達に奮発して貰わんと」
「法のギリギリであくどく溜め込んでいるから、絞り甲斐があるな」
「まったくだ」
俺とオーベルシュタイン侯爵は、ニヤニヤしながら、ドラゴニュートに構って貰えず、不貞腐れているセルゲイの元に向かった。
シエルが慰めてくれて居れば、問題ないが。
アイツの求愛の進捗状況も、合わせて確認しないとな。
それでも案じていたよりも簡単に、レンと仲直りが出来たし、仲直りの行為はいつにも増して、素晴らしかった。
互いに深く愛し合い、夢のような時間を共に過ごした番を、腕に抱いて眠れば、交代迄の短い睡眠であろうと、気力体力共に完全復活。
思考もスッキリと。
どんな問題でも解決できそうだ。
レンが云う処の ”バッチ来い” とは、こういう感じかもしれない。
「おや?お休みだったのでは?」
「あぁ、充分休んだ」
「そうですか。レン様のお加減は如何ですか?」
「問題ない、アウラに回復して貰ったそうだ」
「アウラ神に?・・・・そういう話を、サラッと言われると、愛し子とは、と言うべきか、レン様だからなのか、神の存在がグッと身近に感じますな」
「レンだからだろ?歴代の愛し子の中で、レン程アウラから愛された者は居ないらしいからな」
「でしょうなぁ。うちのリアンもレン様にすっかり懐いているようで、レン様のお戻りを首を長くして待っております。手紙が届くたびにレン様のお戻りは何時かと、聞いて来るのですが、少しは父親の心配もして欲しいですよ」
「父親を信頼している証ではないか?よもや侯爵が遅れを取る事ないだろう、とな?」
「だと良いのですがね。しっかりしているようで、あれもまだ子供ですからな。それに、侯爵と言っても、オーベルシュタインは、土地が広いだけの、ただの田舎ですから。田舎者のリアンが、中央で遣って行けるか。本当に王配としてやっていけるのか、心許ないのです」
「レンはリアンの事を聡明で賢いと褒めていた。アーノルドと二人で上手くやって行くと思うが?」
「そう言っていただけると、気が楽になります。まあ、中央の洗練された所作は、ロイド様がしっかり仕込んで下さるでしょう」
父親の顔で笑っていたオーベルシュタインだが、部下の1人が被害状況の報告に来ると、厳格な指揮官の顔に戻った。
「辛うじて壊滅状態は免れたと云う処ですな。しかしこれから直ぐに冬が来る。それまでにどの程度の復旧が出来るか・・・」
「被害は王都だけか?セルゲイは戻ったのか?」
「ゲオルグは先ほど戻って来ましたが、荒れてますよ」
「荒れてる?やられたのか?」
「逆てす。まったく相手にされなかった様だ」
「なるほど、構って貰えなくて拗ねているのか」
そういう事だ。と侯爵は苦笑いだ。
「ゲオルグは王都の外に出た奴らを追って行ったが、相手にされず途中で逃げられたそうで」
「逃げた?どこに向かったのか分からんのか?」
「どうやら転移魔法を使ったようでな、光りが走ったと思ったら、跡形もなく消えていたそうだ」
「ふむ・・・・」
別の街に行ったのか、ヨナスに呼び戻されたのか。
後者であってくれれば良いが。
「広場での様子を私は全部見て居たが、あれはいったい何なのだ?」
「モーガンから聞いていないか?」
「モーガンも昨日から一睡もしていなくてな、報告は後で良いから、取り合えず休むように言ったのだ。私は外に出るなと言われてしまってな」
「ふむ。それにしても、よくあいつらの狙いが人族だと、直ぐに気付けたな」
感心して言う俺に、オーベルシュタインは苦笑いを浮かべた。
「気付くも何も、奴らが自分でそう言ったからな」
「言葉を交わしたのか?」
「門衛が、ですがね。あいつ等は城の門でここに人族は居るか。その人族を信用しているか。と聞いて来たらしい。魔物が口をきいた事には驚いたが、敵意は無いように見えた事から、城に人族は数人いるし、信頼していると、答えたら。門衛を押しのけて、中に入って来たのだよ」
「モーガンが、臭いで確かめていたと言っていたな」
「そうらしいな。私は人語を解す魔物が、人族を探しているから、部屋から出るなと言われてしまってな。完全に蚊帳の外だ」
「了解した。あれが前に話したドラゴニュートだ」
「そうかあれが、神話時代の遺物か」
「遺物というには物騒な存在だが、少なくとも獣人に危害は加えない」
「その割には、とんでもない被害を出しているぞ?」
「あれは、人族の根切りを命じられたそうでな」
「攻撃する相手を選んでいたのか。道理でゲオルグが相手にされない訳だ」
「となると、この後連れて行けと騒がれるな」
「連れて行く?何処へ」
「ドラゴニュートの隠れ里だ。クレイオスが封印したのが6割、レンがティムしたのが1割。残りの3割と、あれらの創造主が残っているからな」
「創造主?・・・魔族との混血の・・・え~と・・・」
と侯爵は、記憶を引き出すために、指でこめかみを叩いている。
ボケ防止のためにも、ここは自力で思い出してもらうとしよう。
「ト?・・・ヨ?・・ヨナス!・・・ヨナスと言ったか?」
おお!
思い出せたか。
まだボケる心配はなさそうだ。
「そう。ヨナスだ」
「しかし、ヨナスは大昔に死んだと・・」
「そうではなかったらしい。ヨナスはウジュカでも色々とやってくれてな。奴には物申したい事が山ほどあるのだ」
「・・・・レン様も連れて行くのか?」
「連れて行きたくはないが、従魔契約をしたドラゴニュートはレンの言う事しか聞かん。それにドラゴニュートは世に放って良い生物では無い。となるとクレイオスの封印は必須だ。しかしクレイオスはレンが居なければ、ついては来ない」
「うむ・・・・いかんなあ。あの方は、こんな荒事は似合わんだろう」
「それには俺も同意だ。愛し子と言うものは、もっとのんびりとした存在だと認識していたのだがな。苦労ばかり掛けて・・・」
「閣下・・・しかし、まあ。レン様は閣下と一緒に居る時が、一番楽しそうだからな。番冥利に尽きると思って、しっかりお守りしてくれ」
言わずもがなの事を、わざわざ言うなよ。
「無論だ。ところで伯父上の姿も見えないが?」
「住民の避難と、消火に当たられていたが、今は炊き出しの手配をしている処だ」
「伯父上が炊き出し・・・似合わんな」
鎧の上にエプロンを付け、三角巾を被ったシルベスター侯爵を思い浮かべてしまい、その悍ましさに背筋が震えて来た。
「確かに・・・これがレン様だったら、有難味も倍増だろうが、実際はむさい騎士が飯を配るのだよな」
「災害時と変わらんからな」
レンが寝ている間で良かった。
炊き出しをすると聞いたら、レンは一から料理を始めてしまいそうだ。
「それで、その隠れ里にはいつ出発される御積りか」
「レンが目を覚ましたら、早急にだな。今回はモーガンも同行したいと言っている。セルゲイに隠し通すのは無理だろうから。2人とも同行する事になるだろう」
「騎士団を全員連れて行かれるのか?」
「いや。最低限の人数で向かおうと思う。大隊を率いていくには、あそこは狭すぎるし、こっちの方が人手が必要だ。第2の者も好きに使ってくれた構わんぞ」
「そう言ってもらえると助かる。遺体の回収と処理の心配はなさそうだが、火災の後始末は、それなりに手間がかかるからな」
「それに金もな。ここはゴトフリーの貴族達に奮発して貰わんと」
「法のギリギリであくどく溜め込んでいるから、絞り甲斐があるな」
「まったくだ」
俺とオーベルシュタイン侯爵は、ニヤニヤしながら、ドラゴニュートに構って貰えず、不貞腐れているセルゲイの元に向かった。
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