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千年王国

おいでませサンドワーム

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 アレクさん達が、飛び回るキラービーを倒そうと一所懸命頑張ってくれています。
 でも、彼が言っていた通り、動きが早くてみんな苦戦しているみたい。

 躰に取り付かれなければ、モシャモシャされたり、刺されたりはしなくてすんでいるけど、外郭の内側に入り込まない様に、結界を張ったり、氷や土で壁を造ったしているから、みんな魔力の消耗が激しくて、大変そうです。

 こんな状態で、更にサンドワームが出てきたりしたら、どうなっちゃうのかしら。

「ねぇ。アレクみんな大変そうよ?私も浄化を・・・」

「さっき倒れそうになったばかりだろ」

「でも・・・ちょっとだけ」

「駄目だ」

「あっはい」

 こういう時のアレクさんに逆らうと、夜が怖いのよね。
 しょうがないから、今はお口チャックで、周りを観察する事にします。

 ふむ。
 ロロシュさんが話していた通り、獣系の魔物は結構遠いところから、こっちを見ているだけですね。

 でも、端っこの方は西とか東に移動したりしているみたい。

 魔物がこっちに寄って来ない境界線は、クレイオス様のブレスの跡あたりかな。

 そのクレイオス様は、西側で絶賛怪獣大戦争中なのだけど、ここでも濛々とした土煙が見えているから、まだ戦闘中なんだと思う。

 あ~西から戻ってくる魔獣が居るから、あれは巻き添えにならない様に、逃げて来たのかな。

「レン様~」

「おくってきたよ~」

 頭の上からクオンとノワールの声が聞こえて、上を見上げると、二人は人型に戻ってふわりと歩廊の上に舞い降りてきました。

「ありがとう。時間が掛かったみたいだけど、何かあった?」

「ううん。だいじょうぶ」

「さいしょのかぞくみたいな人がいたの」

「だから、その人たちもおくってきた」

「そう。2人とも偉いわね。ありがとう」

 アレクさんの腰に、抱き着いて来た2人の頭を撫でて上げたら、スリスリしてきて。ほんと可愛い。

 アレクさんは動きづらそうにしてるけど、良い事をしたら、ちゃんと褒めて上げなくちゃね。

「おい。動きづらいぞ。離れろ」

 あら?
 叱られちゃった。
 のんびりできる状態じゃないから、仕方ないわね。

「いーだ!」

「アレクのばーか!」

「あっこら。そんな事言っちゃ駄目でしょ。アレクはあの虫をやっつけなくちゃいけないの。お仕事の邪魔はしちゃだめよ?」

「ふ~ん」

「あの虫やっつければいいの?」

「2人が疲れてなければ、お願いできる?」

「いいよ~」

「つかれてな~い」

「じゃあ、お願いね。あっだけど地面の下にサンドワームが居るみたいなの。危ないから、地面には降りないでね」

「もこもこ~」

「いっぱ~い」

「え゛? いっぱい?」

 サンドワームって、結構大きいって聞いたけど。

 それがいっぱいって・・・・。

「えっと。2人は何匹位いるか分かるの?」

「ん~なんとなく~?」

「10ぴきくらい~」

「嘘だろ」

「・・・そんなに?」

 クオンとノワールは事の重大さが分かっていないのか、のんびり喋っていますが、私とアレクさんは、思わず顔を見合わせてしまいました。

「2人とも、教えて欲しいんだけど。大公城の行き帰りで、外郭の中にサンドワームは居た?」

「「わかんな~い」」

「これは、入り込んでないと思って良いのかしら」

「恐らく。それにしても10匹か、多いな」

「それが地面に穴を掘って来ているのでしょ?この壁大丈夫なのかしら?崩れちゃうんじゃない?」

「ううむ・・・どうしたものか」

「ねぇ。キラービーをサクッとやっつけて、サンドワームに対応した方が、良いと思うんだけど」

「それは・・そうなのだが」

「ん~、じゃあ、こうしたらどう?」

「また君は、無茶をしようとしているな?」

「え~~?信用無いなぁ。取り敢えず話だけでも聞いてくれない?」

「・・・話だけだ。さっきみたいな無茶をするなら即却下だぞ?」

「ははは。マジで信用されてない感じ。えっとね。やることはさっきと一緒なんだけど、今回は、魔力切れにならない様に、浄化はしません。その代わり、捕まえたキラービーを、あの魔物達が入ってこない所の、真ん中あたりに落として、サンドワームをおいでませしたらどう?」

「キラービーを、サンドワームをおびき出す囮に使うのか?」

「うん。地面に隠れて見えないのより、出て来てくれた方が、対処しやすいでしょ?」

「まあ、そうだな」

「みんなの攻撃は一旦中止して、キラービーが中に入り込まない様に、結界に集中して貰っています。そこを私がガサッと捕まえて、あっちに放り込む。って感じなのだけど、どう?」

「うむ・・・・マーク、どう思う?」

「私はレン様のお考えに賛成です。ただレン様のご負担が増えない様に、私と閣下もお手伝いした方が、良いのではないでしょうか」

「そうだな・・・・エーグルはまだ壁の補強か?」

「いえ。さっきこちらに合流したようです・・・・あっあそこに居ます。今炎が噴き出した処です」

 おお。
 なんかエーグル卿の、魔法の威力が跳ね上がっています。やっと本気の出し方が分かって来たのかな。

 ポテンシャル高めって聞いたけど。
 まだまだ、アレクの方が全然強いもんね!

「よし。エーグルを連れてこい。あいつは魔力操作が上手い。すぐに出来なくとも、後学のために、近くで見せた方が良いだろう」

 いやあ~~ん!
 どんな時でも部下の教育を忘れない。
 これぞ上司の鏡よね。
 はあ~~。
 素敵♡
 ほんと、こういうとこ好き!!
 
 私がニマニマ、によによしてる間に、マークさんに呼ばれたエーグル卿が駆け寄ってきて、マークさんから作戦を教えられています。

 そのエーグル卿が、私の事をチラチラ見て来るのは、心配してくれているからでしょうか?

 私も、アレクさんに叱られたくはないし、さっきみたいに人前で、何度もキスされたら、恥ずか死んでしまうので、今回は無茶な事はしませんよ?

 エーグル卿への説明と、騎士の皆さんへの伝達も済んで、私とアレクさん、マークさんの3人で作戦にとりかかる事になりました。

 私が真ん中。
 アレクさんとマークさんには、それぞれ私の左右をお任せです。エーグル卿は取り敢えず、見学してもらい、もしできそうなら、私達の取りこぼしを手伝って貰う。と指示されています。

「いいか?絶対無理はするな?」

「分かってますって。では!サクッとやっつけちゃいましょう!」

 アレクさんとマークさんが応と答え。
 私達はそれぞれ、魔力を練って行き、騎士さん達が張り巡らせた結界の外側に、更に魔力の膜を作って行きました。

「行きますよッ!!せ~~の!!」

 私の掛け声と同時に、魔力で造った網でキラービーの群れを捕獲。

 私のイメージは、虫取り網でバサッといく感じでしたが、アレクさんは投網を投げる感じで、マークさんは蛇腹を広げる感じで、其々キラービーを捕まえる事に成功しました。

「ぐぬぬぬ・・・・・おりゃ!!」

 魔力の網をぎゅっと絞って、ぎっちぎちに捕まえたキラービーを、網ごと地面に投げ捨てると。

 逃げ場のない蜂たちが、網の中で大暴れです。

「どうかな?」

「もう少し様子を見て・・・」

 その時です、パリパリに乾いた地面がズモモと持ち上がったと思ったら、次の瞬間、サンドワームの群れが、一気に地面からズアーーッ!と飛び出して来ました。

「うッ?! うっひゃ~ッ!!」

 こっこわい、怖い、こわい!!

 サンドワームの口ってこんな感じなの?
 丸く開いた口の中いっぱいに、ギザギザの歯がびっしり生えてるし。

 唾液?粘液?がダラダラ垂れてるし。

 頭の下あたりに帯みたいな模様があって、体も鱗が生えてるのに、なんかぬらぬらしてて。

 なんか・・・ピンクだし・・・これって。
 
 ミミズじゃん!! 超巨大ミミズ!?
 
 ウェ~~~ッ!!
 気持ち悪い~~~!!
 ぞわぞわする~~!!

 やだ、もう~~~!!
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