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千年王国

強いのはレンだった

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「あ!クレイオス様だ!」

「ほんとだ、戻って来られたんだ」

「レン様が恋しくなったんだろ?」

「それなぁ!あの人全然、子離れできてねぇもんな」

「でもさ、肩に担いでんの、あれなんだ?」

「・・・・アーロンさんじゃないないか?」

「ぐるぐる巻きで、蓑虫みたいだな」

「あの人来たばっかで、何仕出かしたんだ?」

「どうせ、レン様に失礼なことしたんだろ?」

「はは。なんかやりそ~」

「龍だからな」

「龍だもんな」

「それより、クレイオス様の腹みろよ」

「・・・・・うわぁ~~」

「創世のドラゴン相手に、すげぇ勇気だな」

「あんなことすんのって、閣下じゃね?」

「閣下だろ?」

「閣下だな」

「「「「・・・・・」」」」

「仕事しよっか?」

「そうだな」

「仕事!仕事!」

「あ~~~忙しい。忙しい!!」

 ひよこめ。
 今日も無駄口が多い。
 それに、何故、考察が的確なのだ。
 腹立つ。

「クレイオス様?」

「閣下、それは・・・アーロン殿ですか?」

「あんた、その腹どうしたんだよ。くっきり足跡がついてんぞ?」

 ロロシュ。
 見て見ぬふり、と言う言葉を知らんのか?

「マーク。シッチンは今どこに居る?」

「シッチンなら、レン様が指摘された場所に向かいましたが」

「俺達は、一番近い魔晶石に向かう。誰かシッチンを呼びに行かせて、そっちに来るように伝えろ」

「了解しました。ですが、その、アーロンさんはどうされたのですか?」

「気にするな。それよりカルが誘拐された可能性がある」

「はあ?誰があんなでかい雄を攫うってんだ?第一カルは龍だろ。そんな簡単・・・・に?」

「道々話す、とにかくシッチンを呼べ。それと首都全域に警戒態勢。ロドリックとショーンに、外郭の東西南北、四か所を起点に、騎士を配置させろ。あと大公子に伝令を出し、住民を大公城の城郭内に入れさせて、治安部隊と護衛兵に守りを固めるように伝えるんだ」

「結界が消えるという事ですか?」

「かも知れん」

「了解です。ロロシュ。大公子への伝令はあなたの方が通りが良いでしょう。私はロドリックと話して来ます」

「了解。なんか一気に雲行きが怪しくなって来たな」

 ぶつくさぼやきながら去って行くロロシュだが、実際アーロンが呼び寄せた雨雲の所為で、さっきまでの晴天が嘘のように、今はどんよりと曇っている。

 雨の臭いはまだしないが、空気も湿り気を帯び始め、何時雨粒が落ちて来てもおかしくない。

「タイミングは最悪だな」

「何が?」

 きょとんとした顔で見上げる番は、やっぱりかわいい。

「ん?雨だよ」

「どうして?」

「何も起きなければ、恵みの雨だが。討伐中の雨は、足元を取られるし、魔法の加減が難しくなるからな」

「炎系が効きづらくなるとか。そういう事?」

「まあ。そうだな」

「ふ~~ん。鉄砲水にも気を付けなくちゃいけないし。確かに面倒かも」

「てっぽうみず?」

「あ、こっちに鉄砲は無いんだった。え~と、土石流って言えば分かります?」

「それなら分かる。だが何故、土石流に気を付けねばならんのだ?」

「土地が乾燥しているからです」

「乾燥していたら、土に染み込むだけじゃないのか?」

「ええ、少しならそうなんですけど。私も詳しくは無いのだけど。乾燥しすぎて、木や草が生えていない所に急激に雨が降ると、土が雨を吸い込み切れなくて、表面の土ごと流されちゃうんですって。向こうの世界でも、何年も干ばつに苦しんでいる国が有ったのだけど、そうやって栄養の多い土が流されちゃうから、雨が降っても草木が生えなくて困ってるって言うのを、テレビで見たことが有るんです」

「てれびとは、動く絵を見るものだったか?」

「それです。映像を残せる魔道具を作ったでしょ?テレビはそれを、世界中に放送出来るんです。ニュースや情報番組は、世界中の出来事を放送してたんですよ?」

「なるほど」

 仕組みはさっぱり分からんが、便利な道具だと言うのは分かる。

「しかしここは平地だから、問題なさそうだが」

「でもここに来る前に、干乾びちゃってたけど川が有りましたよね?って事は高低差はあるって事だから、土石流が起こる可能性はゼロじゃないですよ?」

「ふむ・・・クレイオス。今のを聞いていただろ?あの雨雲、今から消せないのか?」

『一旦呼び寄せてしまったからな。消せんことは無いが、自然に手を加えすぎると、何処かに必ずしわ寄せが出る』

「バランスが崩れちゃうって事?」

『そういう事だ。我の子は本当に賢い』

 始まったよ。
 何なんだよ、このデレっぷりは?

「おい。レンに触るな」

『親が子の頭を撫でて、何が悪い?』

「聞いたぞ?幻獣が逃げ出したのも、世界中で魔物が増えたのも、あんたの所為だってな。その所為で苦労しているのはレンなのだ。あんたは先ずそこをレンに、謝るべきじゃないのか?」

『・・・・ばらしちゃったのか?』

 何レンに助けを求めてんだよ。
 親振るなら、最後まで貫けよ。

「つい。ポロッと。でも、自分でちゃんと説明はした方が良いと思います」

「レンの言う事が正しい。レンに悪いと思うなら、今からでもあんた一人で、外の魔物を駆逐してきたらどうだ?」

『ううむ』

「あんた達の尻拭いで、どれだけの命が散って行ったと思っている?何故あんたの所為でレンが身を削らねばならないんだ?後どれだけ、俺は部下や仲間が傷つき、死んでいくのを見なければならない?いい加減うんざりなんだよ」

『しかし・・』

「神の制約とか言うなよ?今回のこれは、ヴァラクの様に人が引き起こした物でも、自然発生的なものでも無い。あ・ん・た・が・引き起こした事だ、なら最後まで責任を持てよ」

『・・・アウラと相談するから待て』

「結界が何時まで持つか分からん。急げよ。それと早くカルも見つけないと。アーロン、お前も息子の行方が知りたければ、大人しくしていろ。俺達はあんたの息子を助けようとしているのだ。それを忘れるな」

『ヴウーー!!ウヴヴ!!』

「・・・何を言っているか分からん。クレイオス轡を外してやれよ」

『こ奴は昔から、憎まれ口ばかりで煩いのだが、仕方がない』

 クレイオスが小さく指を振り、アーロンの口を塞いでいた光りの縄が消されると、途端にアーロンがクレイオスに噛みついた。

『クレイオス!!我に与えた予言には、我の子の事は一言も触れていなかっただろう?!』

『お前・・・アウラの言葉を何一つ信じなかったであろう?アウラの言う事を素直に聞いて居れば良かったものを、身から出た錆だ。それにな、カエルレオスには、別にアウラの予言を与えてある。信じる信じないは、其方らの勝手だが。その結果は、お前達自身に還るのだ』

『神の座を拒んだお前が、神の言葉を語るのか?!』

『それは我とアウラの問題だ。其方の様な子供が、知った風に口出しするな』

『偉そうに・・・』

『我は神ではないが、その眷属だ。其方よりは偉いと思うが?』

 蓑虫状態のアーロンが、いくら凄んだ処で、なんとも情けない絵面だが、漏れ出した魔力は剣呑としか言い様がない。

 そろそろ止めるべきか?
 と考えていると、先にレンが口を開いた。

「2人とも、過ぎた事で喧嘩するなら、後で好きなだけやって下さい。今はカルと、この国に住んで居る人達の方が優先です。それが分からなくて騒ぐだけなら、アーロンさんは邪魔なので、一人でお好きにどうぞ。クレイオス様も、意地悪な事ばかり言っているなら、もうダディとは呼びませんよ?」

『レン?!そんな悲しい事を言うな?!こ奴はムカツクが、レンが言うなら仲良くする努力をしないでもないからな?』

 それは仲良くする気が無いって事だよな?

『・・・・愛子。その言い方、アウラにそっくりだな』

「何言ってるんです?アウラ様は、私よりずっとお優しいですよ?それより大人しく出来るの?私達急いでいるんですけど?」

 腕を組み蓑虫を睥睨するレンに、アーロンは降参の意を表した。
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