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千年王国
良い仕事しましたね
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side・レン
「レン準備はいいか?」
「は~い!今行きま~す!」
首都への突入を前に、抜丸と破邪の刀の点検をしていた私は、アレクさんに呼ばれて、刀を鞘に戻しました。
此方の剣とは違う、刃紋の美しさや刀が立てる チャキって音は、いつ聞いても心が落ち着きます。
刀のお手入れ用の打ち粉が無くて、困っていたのですが、アレクさんの剣に使う、使い古しの砥石を貰い、それを砕いて粉にして、打ち粉を作ることが出来ました。
錆止めの丁子油の替わりは、こちらの剣に塗って居るのは動物性の脂だったので、サニーという、クローブに似た植物の脂を利用しているのですが、これが結構優れもので、お陰様で、二振りともピッカピカです。
昨夜、戻って来た途端喧嘩を始めた3人は、一度揃って出かけた様でしたが、夜遅くに戻ってきて、順番に謝ってくれました。
けど、怖い思いをしたのは、私より周りで見ていた騎士さん達の方だし、マークさんはクレイオス様に髪を切られても居ます。
だからクレイオス様には、マークさんに必ず謝る様に、とだけ言って、後は笑って許すことにしました。
喧嘩はしたけど、困難な状況に駆け付けて?飛んで来てくれた事に変わりはりません。
それだけでも有り難いもんね。
アウラ様のお菓子が降って来た時には、私も内心ビックリだったけれど、アウラ様がちゃんと見守ってくれているのだと感じて、少し嬉しくも有りました。
それに街の人に配った物資の分の補給だと考えれば、アウラ様にはサムズアップでGJと言ってあげたいです。
マジで、タイミングぴったりの、いい仕事だったと思いますよ?
それに、クッキー缶が頭に当たった時の、カルの間抜けな顔。
プククッ!
普段すましているから、余計に笑っちゃう。
マークさんの斬られてしまった髪は、左の顔の横髪が顎のあたりですっぱりと切れてしまっていました。これがもしマークさんの顔だったらと思うと、ぞっとして震えてきてしまいます。
それに片方だけ短いのは、バランスが悪く・・・も無い?
これがその辺の大学生だったら、どうしたぁ。って聞きたくなるかもしれませんが、美人なマークさんだと、アシンメトリーな感じが、モデルさんかな?と言いたくなります。
でも本人が、バランスが悪いと言って、せっかく伸ばした白銀の綺麗な髪を、ナイフでざっくり切ろうとしていたので、私は全力で止めました。
ええ。そりゃぁもう。涙を流さんばかりに懇願しましたとも。
その甲斐あって、マークさんの髪は私が整えることが出来て、出来上がったのは、白銀キラキラ、サッラサラの姫カット。
やっぱあれですよ。
モデルが良いと、何をやっても似合っちゃうのよね。
まぁ、右側の髪を シャキーン と切っただけなんですけどね?
でも、これが思いの外、マークさんが気に入ってくれて。
ウキウキとエーグル卿に自慢している姿が、もう可愛らしいというか。
それをニコニコ聞いているエーグル卿と二人、並んだ姿の尊さよ。
良い物を見せて貰いました。
こんな尊い生き物を創ってくれた、ご両親とアウラ様に感謝!!
これから向かう先は、魔物が犇めく戦いの場です。
見たくないものを色々と見なければいけないのだから、このぐらいの楽しみは、許してもらえますよね?
「お待たせしました!」
「うむ。刀の手入れは完璧か?」
「はい!バッチリです!」
うふふ。
微かに緩んだ目元の笑い皺が、今日も素敵。
この人はゲラではないけれど、偶に大笑いした時の楽しそうなお顔も好き。
でも、やっぱり。こういう時の優しい目が一番好きだなあ。
「じゃあ、行こうか」
腰に回した力強い腕に攫われて、今日もブルーベルちゃんに二人乗りです。
なんとなくアンが不満そうに見えるけど、こればっかりはね。
とある漫画のフェンリルさんは、人の言葉をペラペラしゃべって居たから、アンもその内喋れるようになるかもね?
そうしたら、どんな文句を言われるのか、想像するとちょっと怖い気もします。
ステーキ食わせろー!! とかだったら全然welcome,Ok!OK!なんだけど。
そんなこんなで、あっという間に昨日の丘にたどり着きました。
「うわあ~~・・・・・」
昨日同様と言うか、一日でまた数が増えてないですか?
特に昨日ワイバーンとハーピーの群れを倒したのに、更に飛行タイプの魔物が増えている気がします。
「ねえアレク、飛んでる魔物が増えてない?」
「グウウ」
あっ。これはかなりヤバイ状況って事?
でも、今日はカルとクレイオス様が居るから楽勝・・・かな?
「何が飛んでるのかしら?」
「あれは・・・グリフォンとヒッポグリフとガルーダも居るな」
「こんな遠くなのに、見えるの?」
「ん?あいつ等は飛び方に特徴があるから、遠目でも分かりやすい。グリフォンとヒッポグリフは、似たような魔獣なのだが、両方とも体がでかいから、同じ場所に留まろうとすると、一回羽ばたく毎に体が沈み込むんだ」
「はーー。なるほどぉ。確かに上下に揺れてますね。じゃあ、ガルーダの方は?」
「あいつ等は飛んでいる時に、時折毒をまき散らすから、周りが紫っぽく霞んで見える」
「おぉ。本当だ。なんかプファって出たね。毒々しいやつ」
「他の小さいのは、よく分からんが、動き方からすると昆虫系じゃないかな」
「その違いは?」
「同じ位置に留まっているが、動きにブレが無い、それに群れているだろ?」
「群れって事は、キラービーみたいな蜂とかでしょうか?」
「多分な。甲虫が居ると面倒だ」
「甲虫ってカブトムシとかクワガタとか?」
「レンが言っているのが、どんな虫か分からんが、硬い外骨格を持った虫だな」
「やっぱりカブトムシね。なにが面倒なの?」
「魔法があまり利かないんだ。硬い外骨格に弾かれてしまうからな」
「ふ~ん。ねえアレク、甲虫ってお腹の辺りに呼吸器官が有るって知ってる?」
アレクさんは記憶を辿っているのか、顎を摘まんで考え込んでいます。
こんな姿も素敵って、リリーシュ様と上皇陛下は、いい仕事しましたね!
「いや、初耳だ」
「向こうと同じかどうか分からないけど、甲虫ってお腹の周りが濡れると、溺れて死んじゃうんだって」
「ほぉ~。それは良い事を聞いた。マーク。他の連中にも伝達しておいてくれ」
「了解しました」
きびきびと、将校さん達が集まっている場所に向かったマークさんですが、心持ち緊張しているように見えるのは、首都の中にいるはずのロロシュさんを、心配しているからだと思います。
マークさんの為にもチャッチャと片付けて、首都に入らなくちゃね。
「レン準備はいいか?」
「は~い!今行きま~す!」
首都への突入を前に、抜丸と破邪の刀の点検をしていた私は、アレクさんに呼ばれて、刀を鞘に戻しました。
此方の剣とは違う、刃紋の美しさや刀が立てる チャキって音は、いつ聞いても心が落ち着きます。
刀のお手入れ用の打ち粉が無くて、困っていたのですが、アレクさんの剣に使う、使い古しの砥石を貰い、それを砕いて粉にして、打ち粉を作ることが出来ました。
錆止めの丁子油の替わりは、こちらの剣に塗って居るのは動物性の脂だったので、サニーという、クローブに似た植物の脂を利用しているのですが、これが結構優れもので、お陰様で、二振りともピッカピカです。
昨夜、戻って来た途端喧嘩を始めた3人は、一度揃って出かけた様でしたが、夜遅くに戻ってきて、順番に謝ってくれました。
けど、怖い思いをしたのは、私より周りで見ていた騎士さん達の方だし、マークさんはクレイオス様に髪を切られても居ます。
だからクレイオス様には、マークさんに必ず謝る様に、とだけ言って、後は笑って許すことにしました。
喧嘩はしたけど、困難な状況に駆け付けて?飛んで来てくれた事に変わりはりません。
それだけでも有り難いもんね。
アウラ様のお菓子が降って来た時には、私も内心ビックリだったけれど、アウラ様がちゃんと見守ってくれているのだと感じて、少し嬉しくも有りました。
それに街の人に配った物資の分の補給だと考えれば、アウラ様にはサムズアップでGJと言ってあげたいです。
マジで、タイミングぴったりの、いい仕事だったと思いますよ?
それに、クッキー缶が頭に当たった時の、カルの間抜けな顔。
プククッ!
普段すましているから、余計に笑っちゃう。
マークさんの斬られてしまった髪は、左の顔の横髪が顎のあたりですっぱりと切れてしまっていました。これがもしマークさんの顔だったらと思うと、ぞっとして震えてきてしまいます。
それに片方だけ短いのは、バランスが悪く・・・も無い?
これがその辺の大学生だったら、どうしたぁ。って聞きたくなるかもしれませんが、美人なマークさんだと、アシンメトリーな感じが、モデルさんかな?と言いたくなります。
でも本人が、バランスが悪いと言って、せっかく伸ばした白銀の綺麗な髪を、ナイフでざっくり切ろうとしていたので、私は全力で止めました。
ええ。そりゃぁもう。涙を流さんばかりに懇願しましたとも。
その甲斐あって、マークさんの髪は私が整えることが出来て、出来上がったのは、白銀キラキラ、サッラサラの姫カット。
やっぱあれですよ。
モデルが良いと、何をやっても似合っちゃうのよね。
まぁ、右側の髪を シャキーン と切っただけなんですけどね?
でも、これが思いの外、マークさんが気に入ってくれて。
ウキウキとエーグル卿に自慢している姿が、もう可愛らしいというか。
それをニコニコ聞いているエーグル卿と二人、並んだ姿の尊さよ。
良い物を見せて貰いました。
こんな尊い生き物を創ってくれた、ご両親とアウラ様に感謝!!
これから向かう先は、魔物が犇めく戦いの場です。
見たくないものを色々と見なければいけないのだから、このぐらいの楽しみは、許してもらえますよね?
「お待たせしました!」
「うむ。刀の手入れは完璧か?」
「はい!バッチリです!」
うふふ。
微かに緩んだ目元の笑い皺が、今日も素敵。
この人はゲラではないけれど、偶に大笑いした時の楽しそうなお顔も好き。
でも、やっぱり。こういう時の優しい目が一番好きだなあ。
「じゃあ、行こうか」
腰に回した力強い腕に攫われて、今日もブルーベルちゃんに二人乗りです。
なんとなくアンが不満そうに見えるけど、こればっかりはね。
とある漫画のフェンリルさんは、人の言葉をペラペラしゃべって居たから、アンもその内喋れるようになるかもね?
そうしたら、どんな文句を言われるのか、想像するとちょっと怖い気もします。
ステーキ食わせろー!! とかだったら全然welcome,Ok!OK!なんだけど。
そんなこんなで、あっという間に昨日の丘にたどり着きました。
「うわあ~~・・・・・」
昨日同様と言うか、一日でまた数が増えてないですか?
特に昨日ワイバーンとハーピーの群れを倒したのに、更に飛行タイプの魔物が増えている気がします。
「ねえアレク、飛んでる魔物が増えてない?」
「グウウ」
あっ。これはかなりヤバイ状況って事?
でも、今日はカルとクレイオス様が居るから楽勝・・・かな?
「何が飛んでるのかしら?」
「あれは・・・グリフォンとヒッポグリフとガルーダも居るな」
「こんな遠くなのに、見えるの?」
「ん?あいつ等は飛び方に特徴があるから、遠目でも分かりやすい。グリフォンとヒッポグリフは、似たような魔獣なのだが、両方とも体がでかいから、同じ場所に留まろうとすると、一回羽ばたく毎に体が沈み込むんだ」
「はーー。なるほどぉ。確かに上下に揺れてますね。じゃあ、ガルーダの方は?」
「あいつ等は飛んでいる時に、時折毒をまき散らすから、周りが紫っぽく霞んで見える」
「おぉ。本当だ。なんかプファって出たね。毒々しいやつ」
「他の小さいのは、よく分からんが、動き方からすると昆虫系じゃないかな」
「その違いは?」
「同じ位置に留まっているが、動きにブレが無い、それに群れているだろ?」
「群れって事は、キラービーみたいな蜂とかでしょうか?」
「多分な。甲虫が居ると面倒だ」
「甲虫ってカブトムシとかクワガタとか?」
「レンが言っているのが、どんな虫か分からんが、硬い外骨格を持った虫だな」
「やっぱりカブトムシね。なにが面倒なの?」
「魔法があまり利かないんだ。硬い外骨格に弾かれてしまうからな」
「ふ~ん。ねえアレク、甲虫ってお腹の辺りに呼吸器官が有るって知ってる?」
アレクさんは記憶を辿っているのか、顎を摘まんで考え込んでいます。
こんな姿も素敵って、リリーシュ様と上皇陛下は、いい仕事しましたね!
「いや、初耳だ」
「向こうと同じかどうか分からないけど、甲虫ってお腹の周りが濡れると、溺れて死んじゃうんだって」
「ほぉ~。それは良い事を聞いた。マーク。他の連中にも伝達しておいてくれ」
「了解しました」
きびきびと、将校さん達が集まっている場所に向かったマークさんですが、心持ち緊張しているように見えるのは、首都の中にいるはずのロロシュさんを、心配しているからだと思います。
マークさんの為にもチャッチャと片付けて、首都に入らなくちゃね。
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