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千年王国
飛来
しおりを挟む「もう良いのか?」
「うん。アウラ様にお願いして、クレイオス様と連絡を取ってもらったの」
「クレイオスを呼んだのか?」
「ううん。一応来れたら来てって、お願いしたけど。クレイオス様が来てくれたら、とても安心でしょ? でも忙しそうだから、無理なら、カルに戻ってくるように伝えてもらうだけでもって思って。カルはアウラ様の声が聞こえないから」
「そういう事か。他にアウラは何と言っていた?
「うふっ。面倒事を押し付けてごめんって」
神の謝る様子を思い出したのか、レンは笑っているが、俺としては謝罪よりも、騎士全員に加護を施してもらいたいのだがな。
「自覚があるなら、自分達で何とかしてくれんものかな」
「それね。でもウジュカを併呑出来たら、後で良い事があるって言ってましたよ?」
「併呑? 俺は侵略に来た訳では無いぞ?」
「そうなんですけどね。ウジュカ公国は、他所で知られていないけれど、その成り立ちから、色々あるらしくて」
「色々?」
思わず疑いの声が出てしまったが、レンも困ったような顔で頬を掻いている。
「私も詳しい話は教えて貰えていないので、ものすっごく、アレクの言いたいことは分かります。でも、神託の件もあるし、ウジュカにとても大事な何かがあるって言うのは、本当の事だと思う。私はレジスさんのお墓が鍵になるんじゃないかって、思っているのだけど。後は大公殿下が、何処まで話してくれるか、なのよね?」
「ふむ。ではさっさと魔物を片付けて、首都に入らねばならんな?」
「そうね・・・・ママンがカルはすぐに戻るって言ってたのに。まだかしら?」
と空を見上げるレンだった。
「幾ら龍やドラゴンでも、そんなに早く戻って来られるか?」
「だって龍ですよ? マッハで飛べるんだから、よっぽど遠くに行っていなければ、直ぐに戻って来られるでしょ?」
「マッハ・・・隠形を使っていたら、見えないだろ? ずっと上を見ていたら首が痛くなるぞ?」
「うん。でもね。この戦闘にはカルが居なきゃだめだと思うの」
レンは、俺よりもカルを頼りにしているのか?
確かにカルは龍で、俺よりも強い。
強いが。
レンは俺の事を、人類最強だと言ってくれたじゃないか。
それなのに・・・。
レンは俺よりカルの方が良いのか?
「ん? えっ? やだ違いますよ?!」
急に慌てだして、余計に怪しい。
わざとらしく取り繕おうとして、益々怪しい。
神託や秘宝の事で、相談があると言われても、二人きりになどするんじゃなかった。
「別に俺は何も言っていないが? 何が違うのだ?」
「もう! こんな時に拗ねないで!」
「俺は大人だ。拗ねたりしない」
充分大人気ないと分かってはいる。
しかし、こればかりは・・・。
「拗ねてるじゃない!あのねカルは」
「ワイバーンだッ!!気付かれましたッ!!ワイバーンが来ます!!15匹ですッ!!」
「バリスタと投石器の準備は!?」
「完了してます!!」
「クオン!ノワール!!」
「は~いッ!」
「レン様。あれやっつける?」
「お願いできる? 他にも飛んで来る魔物がいっぱいいるから気を付けて。それと、バリスタと投石器から、槍とか石とかが飛んで来るから。当たらない様に気を付けるのよ?」
「うんっ!」
「わかった!!」
「それと危ない、無理だって思ったら、すぐに戻って来てね」
「だいじょうぶ~」
「レン様の事はボクたちが、まもるからねっ!!」
なんともしまりの無い返事だが、ドラゴン達はやる気満々だ。
「怪我をするなよ。 レンが悲しむからな」
「い~~だっ!!」
「ば~か。ば~か! アレクのあまえんぼう」
「なっ?!お前達なにを!?」
ドラゴンの幼体達はドラゴンへと姿を戻し、言いたい放題好き勝手な事を言い捨てて空へ舞い上がってしまった。
「早く行きましょう?」
「あぁ。いや、だが」
「拗ねてる暇なんて有りませんよ?」
「・・・・拗ねてない」
「はいはい。分かったから。みんな待ってますよ?」
「う、うむ」
解せん。
この俺が、子ども扱いされている気がする。
「ワイバーン。射程に入りました!!」
「まだだ!! もっと引き付けろッ!!」
梃子を使い、バリスタの弦を引き絞る音が、悲鳴の様だ。
「今だ! 放てッ!!」
ギャンッ!! ギャンッ!! ギャンッ!!
立て続けに3本の槍が解き放たれ、轟音を上げワイバーンに襲い掛かった。
風を切り、空へ解き放たれた槍が、空を舞うワイバーンの羽を切り裂き、突き破った。
空中でバランスが取れなくなったワイバーンが、叫び声を上げ、螺旋を描いてゆっくり地面に落ちて来る。
「爪の毒に気を付けろッ!!」
「「「うおおーーーーッ!!」」」
「投石ッ!! ドラゴンに中てるなよ!! 放てっ!!」
バンッッ!! ビューーーッ!
「全弾命中!!」
「焦るなッ!! 確実にとどめを刺せ!!」
「ドラゴンが2匹仕留めました!!」
「あいつらの邪魔はするな!!」
「閣下!! 別の魔物が来ます!!」
「別とは何かッ!! 報告は正確にしろッ!!」
「すみません!!・・・・ハーピー!? ハーピーが来ます!!」
「数はッ?!」
「おッおよそ・・・50! 50です!!」
「クソッ 厄介だな」
「どうしたの?」
「あいつ等は。臆病で群れで移動し、弱い者を狙う。普通なら武装した人間には近づかないのだが、一度興奮し戦闘態勢に入ると、しつこく追って来る。しかも奴らは幻惑魔法を使うんだ」
「幻を見せるって事? どんな幻を見せるの?」
「なんでも、絶世の美青年に言い寄られるらしいぞ?」
「美青年・・・・」
「自分好みの美青年に言い寄られ、デレて鼻の下を伸ばした所で、がぶりと食われる」
「っこわ!! でも、うちの騎士さんに効果あるのかしら?」
「何故だ?」
「だってマークさんが居るのに」
「あ・・・・・」
確かにレンやマークを見慣れていれば、半端な美形には反応しないかもしれんな。
「だがまあ、好みは人ぞれぞれだから」
「それで、どうするの? あまり近寄らせたくないんでしょ?」
「まとめて、魔法で片付けるしかないな」
「弱点の属性はある?」
「特には無い。飛べなくして落下による激突で仕留めるのが一般的だ」
「えげつないのね」
「命がけだからな?」
「・・・・・」
「おい!ひよこの4人を連れてこい!!」
「はいッ」
「ひよこ?」
「ほら、例のあれだ。おしゃべりの」
「あ~!ピヨちゃんズの事?」
「ピ・・・それだ。あいつ等の魔法は射程距離が長い」
「なるほど・・・・」
「閣下!! 上からきますッ!!」
「む?・・・あぁ」
上空から俺達目掛け、急降下してくるワイバーンを、氷漬けにしてやった。
氷で体積が増えた分落下速度が上がり、地面に激突したと同時に、ワイバーンは、粉みじんに砕け散った。
「鬱陶しい」
「アレク、言い方」
「あ・・・すまん」
そうだったこの人は、例え相手が魔物であっても、命に敬意を払う人だった。
「閣下!お呼びですか?」
「来たか。もう直ぐハーピーの群れが来る、お前達撃ち落とすのを手伝え」
「「「「了解しました!!」」」」
”でもさ。閣下の手伝いって言っても。ほとんど打ち漏らしなんてないだろ?”
”さっき、レン様に怒られてた、っぽいから、二人だと気まずいんじゃないか?”
”え~~?閣下があ?”
”閣下もかっこつけたいんだろ?”
「おい!聞こえてるぞ!」
「うはっ!」
「すみません!!」
「うふふ・・・皆さんお名前は?」
「はいっ! ヤンです!!」
「グローデルヒです!」
「ブレナンと言います!」
「リードです!」
「「「「よろしくお願いします」」」」
「よろしくね。でもおしゃべりしすぎると、また素振り増やされちゃうわよ?」
「ハッ!!俺達の事知ってたんですか?」
「感動です!!」
「オレ、今日のこの日を、我が家の記念日にします!」
「一生レン様について行きます!!」
「おいっ!調子に乗るな!」
極小の礫を、ひよこたちの鼻先に飛ばしてやった。
「あっ!」「いてっ!」「ぐはッ!」「キャン!!」
キャン?
小鳥のくせに。犬みたいに鳴くなよ。
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