獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

文字の大きさ
上 下
447 / 605
千年王国

カルと私2

しおりを挟む
 side・レン


「ねぇ、カル?」

『なに?』

「何度見ても、これって、魔晶石じゃ無いわよね?」

『違うね』

「じゃあ、何だと思う?」

『さあ・・・なんだろうね』

 なんでしょうか、このワザとらしい、すっ惚け振りは?
 こんな風に、惚けて見せるのは、ドラゴンの常套手段なのかしら?
 絶対知ってますよね?
 知ってて、教えたくないって感じでしょうか?

 それとも隠さなくちゃいけない、理由が有るの?
 
 クレイオス様もそうだけど、言いたくない事がある時の隠し方が、二人とも本当にそっくりで嫌になっちゃう。
 何か、ヒントくらいくれても良いのにな。

「まあいいや。ウジュカの大公殿下なら、何か知っているだろうし、私が知っていい事なら教えてくれるでしょう?」

『多分ね。そうじゃない?』

「・・・・なんか、当たりがきつくないですか?」

『そう? 気のせいだと思うよ』

 いや絶対きついって。
 出会ったばかりの頃は、もっと優しかったような気がするんだけどなぁ。
 私カルに嫌われるような事、何かしたのかしら?
 う~ん。
 でもどっちかって言うと、嫌われてるって言うより、カルが拗ねているような気がするのよねぇ・・・。

「それじゃあ、また仕舞って置いてくれる?」

『うん。いいよ。でもこれ、あまり外に出さない方がいいと思うよ』

「そうなの? なんで?」

『なんでも、だよ』

「・・・教えてくれるつもりは」

『ない』

「・・・・・・」

 ふ~ん。
 そうですか。

「カルとクレイオス様の、その謎空間って本当に便利ですよね。中の収納の仕方とかってどうなってるの?」

『考えたことが無いな。いつも適当に放り込んで、必要なものを思い浮かべたら勝手に出て来る」

「何それ?チート過ぎる」

『ちーと?』

「厳密には違うんですけど、便利すぎて狡いって事です」

『それを言うなら、君の存在自体がちーとだと思うけどね?』

「それを言われると、反論出来ないですね。アウラ様のくれたバフが、えげつない事になってますし」

『そこ、認めちゃうんだ』

「元の世界では、私は唯の地味な社畜喪女でしたから。分不相応な能力を頂いた自覚はあるのですよ」

『そこまで卑下しなくてもいいんじゃないの?』
 
「卑下じゃなくて事実ですよ?私の能力はアレク達みたいに、命がけの研鑽で手に入れたものでは無いんです。人より多くの物をアウラ様からもらっただけの、ズルなんですから」

『クレイオスが、君の事を自己肯定感の低い子だって言ってたけど本当みたいだね』

「それよく言われます。でもね、みんなにも言ってるけど、自意識が過剰にライジングしちゃった様な、勘違いの痛い子よりはマシだと思っているのですよ。ねぇカル?いきなり私がそんな人間になったらどうします?」

『それって君が、自分大好き我儘っ子になるって事?』

「簡単に言えばそうですね」

『う~ん。想像できない。でももし・・・・あり? いや、なしかな?でも・・・』

 何を想像しているのか知りませんが、そんなに真剣に考える事なのでしょうか?

「はいはい。お巫山戯はここまでにして、真剣な話です」

『まだ何かあるの?』

「有りまくりです。クレイオス様が戻れない以上、相談できるのはカルだけなんですから、頼りにしているのよ?」

『頼りにね・・・ふ~ん。そうなんだ』

 あっ。
 これは失敗したかも。
 なんか悪い顔になってます。
 でもここは気付かない振りで。
 イケメンの悪だくみなんて無視、無視。

『それで相談って?』

「神託の話しなんですけど、"蒼き森深く 緑海の王墓に封じられし者解き放ち、その標となりて、慈愛と平安を齎さん" ってとこなんですけどね?ウジュカの秘宝は、ヨナスさんのお墓に隠してあったじゃないですか。だから、あの秘宝が ”王墓に封じられし者” かな?って一瞬思ったのですが、なんか違う気がするんですよね」

『どうして?』

「ん~~~。あの秘宝って、なんとなく鉱物って感じがしないから、あれでも当たりなのかもしれないけど。”者”って言うからには、人とか生き物だと思うの」

『・・・・続けて』

「それで、前のアウラ様と話していた時に、アウラ様がポロっと、ウジュカにとっても大事なものが有る。みたいなことを言ってたの。それに前にも話したけど、ヨナスさんは王様じゃなかったでしょ?カルにもエストの王様が誰だったか考えろって言われたし」

『そうだね。それで何か考え付いたの?』

「緑海って言うのはウジュカの事で、王様は、ヨナスさんのお父さん。樹海の王って言われてた、レジスさんの事かなって。レジスさんのお墓ってウジュカに有る?」

『うん。概ね正解かな』

「概ね?」

『私も正解を知っている訳じゃないからね。ヨナスの昔話と私の推測を合わせると、概ね正解だとしか言えないんだ。王墓の場所も、何が封じられているのかも、私は知らないし』

「あぁ。そういう・・・」

 まだ、何か隠していそうな気がするけど・・・・。
 クレイオス様は、カルには神との制約が無いから何でも聞けって言ってたけど、カルにはカルの事情で、話せない事もあるみたい。

 長生きした分柵が多いって事なのかしらね?
 ん?
 1万年も引きこもってた人が、しがらむ程人付き合いしてたの?
 あっ違うか。
 外に出なくなったのは、ゴトフリーが出来てからか。

『今凄く失礼な事考えてたでしょ?』

「そんな事ないですよ?それより、エストってどのくらいの大きさだったの?」

『そうだねぇ。ヨナスも話を盛りたがるお爺ちゃんだったから、何処までが本当か分からないけど、この大陸全部って言ってたな』

「大陸全部?」

『原初の頃はそうだったのかも知れないよ?でもヘルムントの領地は、大陸の中心から北寄りだったらしいし、レジスが治めていたころは、今のゴトフリーからウジュカを通って北の海岸線までだったみたいだね』

「それはまた、盛りましたね」

『若い頃はどうだったか知らないけれど、私が知っているヨナスは、冗談が好きなほら吹き爺さんでね。彼の語る昔話は面白くて、子供達の人気者だった』

 懐かしそうに語るカルの瞳は、何処か嬉しそうで、それでいて悲しそうな。
 ちょっと複雑な色に染まって居ます。

「私のお爺ちゃんとは正反対です」

『君のお爺ちゃんは厳しい人?』

「それはもう! ”時代劇のお侍さんか” って、ヤベちゃんが笑うくらいの人で。でも優しい人ではあったし、なんだかんだで、おばあちゃんには頭が上がらなかったみたい」

『あ~、それはなんとなく分かるかな。魔族にもそんな夫夫が結構いたから・・・・だけどさ。前から思っていたんだけど、君の話を聞いていると。異界の夫夫って役割分担がきっちり分かれているように聞こえるね。それってなんの違いなの?」

「それ聞いちゃいます?」

『聞いちゃいたいね』

「ん~~~。実はですね」
 
 ここで私は、自分と異界の性別の違いについてカルに説明しました。
 カルは最初驚いていたし、何故隠しているのかと不思議がって居ましたが、招来されたばかりの頃は、神殿のちょっかいが煩くて。神官達に世界でたった一人の女性だと知られたら、色々と危険だろうという事で、隠していたのだ、と話すと納得していました。

「今は神殿も解体されて、再編成の途中ですし、アレクとも正式に伴侶となったので、今度の戴冠式に合わせて、公表する予定なんです」

『ふ~~ん。正式な伴侶ね』

 何かしら。
 私とアレクの婚姻関係に文句でも?

「何が言いたいの?私とアレクが結婚してるからって問題ある?」

 気色ばむ私に、カルは苦笑いを浮かべています。
 でも私はこう言う含みを持った言い方が、好きではありません。

「言いたいことが有るなら、ハッキリ言って」

『そんなに怒る事ないでしょ? 君たちがあんまり仲が良いから、ちょっと意地悪したくなっただけだよ』

「そりゃね。私達は二つ名の誓いを立てた伴侶同士ですから」

『えっ? 二つ名の誓いを立てたの? 魔法契約より縛りがきついんだよ?』

「知ってますけど?誓いを破るつもりは更々ないのだから、問題ないですよね?」

『まぁ・・・そうなんだけど・・・・あっ!痛っ!』

 考え込むカルの頭に、アウラ様からのお菓子の包みが、ばらばらと振ってきて、この話は有耶無耶になってしまいました。

 でも、なんとなく最近のカルは、絡み方がうざいと言うか、意地が悪いと言うか。
 やっぱり引きこもりの龍の考えはよく分からないです。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道

Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道 周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。 女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。 ※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛
恋愛
 ある日現実世界で車に撥ねられ死んでしまった主人公。    しかし、目が覚めるとそこは好きなゲームの世界で!?  しかもその悪役令嬢になっちゃった!?    困惑する主人公だが、大好きなヒロインのために頑張っていたら、なぜかヒロインの兄に溺愛されちゃって!?    不定期です。趣味で描いてます。  あくまでも創作として、なんでも許せる方のみ、ご覧ください。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...