獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

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愛し子と樹海の王

カタコンベ

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「意味が違うのは分かってますが、なんとなく変態チックな臭が醸し出されてるので、本気でやめた方がいいと思いますよ?」

『へッ!へんたい?!』

「カルへんたい!!」

「カルくさ~い!」

『お、お前達!酷いじゃないか!?』

「この子達に意地悪するからですよ?」

 私の小言に、美貌の龍神様は。
 なんとも言えない、渋~いお顔をしたのでした。

「色ごとに関して、絶対なんてあり得ない。というのが私の持論です。特によく知らないイケメンの言う事は、話し1/3ぐらいで信じないようにして居るので、暫くこの子達に、ちょっかい掛けるの下さいネ?」

『やだな、最後の方もう棒読みじゃない。それじゃあまるで私が節操無しみたいじゃない? 誤解も甚だしいよ』

 さも嫌そうに、且つ呆れたような態度のカルですが、子供だって、されて嫌な事は沢山あるけど、大人はそれを忘れがちです。カルは揶揄っているだけかもしれないけれど、それがこの子達の、心の傷になる事だってある。

 過保護と言われようが何だろうが、ノワールの様に、辛い記憶のある子供には、劇甘で甘やかしてくる相手が、一人くらい居ても良いと思うのです。

「誤解でもなんでも、イケメンだからって、なんでも許される訳じゃないんですよ?この子達の嫌がる事はしないで下さい」

 ぎゅうぎゅうと抱きついて来る、キッズ達の頭を撫でながら、カルの目を見つめ返します。するとカルは、フイっと 横を向いてしまいました。

 これは私の勝って事で良いのよね?
 やったぁ!
 顔面偏差値の圧に負けず、言い負かすことが出来ました!
 よしよし、私もちゃんと成長してるって事ですよね?

「なんだかなぁ・・・多分そっちじゃないと思うんだけどなぁ・・・」

「? 今、何か言いましたか?」

「いえ・・あの、レン様は文句を言いながら、相手を褒めるのだなぁって・・・」

「ふ~~ん?」

 私、いつカルを褒めたかしら?

 なんとなく誤魔化された気分で、首を捻っていると、処置室の扉が開き、アレクさんがうっそりと出てきました。

「もういいの?」

「ああ、済んだ・・・」
 
 私を抱き上げようとしたアレクさんは、クオンとノワークが腰に抱き着いて居るのを眼に留めると、苦笑いを浮かべながら、3人纏めて抱き上げてくれました。

 もう!大好き!
 ロロシュさんとカルに足りないのって、こう云う処なのよ。

「どうした? カルに虐められたか?」

 アレクさんは腕の中で、もちゃもちゃしている私達に、優しく聞いてくれます。

 カル。ちゃんと見てますか?
 こういう処ですよ?
 この包容力ですよ?

「ううん。カルがキッズを揶揄い過ぎて、嫌われたところ」

「ククッ・・・ゴホッ。それはいかんな」

 笑いたいのを噛み堪えてる、目じりの笑い皺とか・・・。
 メチャクチャ尊い・・・。
 はうぅ。今日も、素敵。
 この人、毎日格好良くなって行ってない?
 これ以上格好良くなったら、人間国宝に指定しなくちゃいけない気がします。

「あ~あ~。うっとりしちゃって」

「完全に二人の世界ですね」

「羨ましいっす。自分の番は何処にいるんでしょうか?」

「さあな。経験上探してる時には、見つからん様だぞ?なあ、あれ。ドラゴンも一緒に抱き上げてるって、認識してるのか?」

「どうですかね。お2人に構っていると、予定が終わりません。さっさと行きますよ」

「仲がいいとは思っていたが・・・いつもこうか?」

「そうですね。基本はこんな感じです。ですが遣るべきことは、きっちりなさいますので、放って置いても大丈夫ですよ」

 なんか、散々な言われ様ですけど。
 お仕事はちゃんとやりますよ?
 それに、みんなの話しも聴こえてますからね?

『結局、こっちの2人も連れていくのか?』

 カルの声の方を見ると、顔に青痣を拵えた、小柄な二人のおじさんが、後ろ手に拘束されて立っていました。

 どうやら処置室の中で作業していたのはこの二人の様です。

「整備はされて居るようだが、古い区画は、案内が必要だろう?」

『古いと言っても、200年かそこらだろ?』

「人にとっては、充分古いのだよ」

 アレクさんは一言でカルを黙らせ、カタコンベの奥へと進んで行きます。

 拘束されて居いる二人の説明によると、地下聖堂に近い場所から、奥に進むにつれて、時代が遡って行くのだそうです。

「でも普通に考えたら、入り口から掘り進めていくなら、奥の方が新しいのではないの?」

「普通は、そうなんですがね。ほら、あそこを見てください」

 促された先には、先程とは違う地下聖堂が姿を見せました。

「昔はこの聖堂が、入り口だったんですよ。ここで使っていた共同墓が満杯になったんで、こっからさっきの入り口の聖堂までを掘り進めて、そこを共同墓にして、新しい石室墓に、教皇猊下の柩を移動したんですわ」

「じゃあ。ここの入り口は何処になるの?」

「今の宿坊の裏庭です」

「お前達そこから入り込んだのか?」

「はあ、ですが遺体を放って置く事も出来ませんから」

「現在は神殿の全ての活動は、監視対象だ。神殿に所属する者には、活動を報告する義務がある。お前達はそれを無視し、勝手に埋葬の処置をしようとしていた。処罰対象だという事を忘れるな!」

「ですが、俺達は神官じゃないんで。なあ?」

 同意を求められた相方さんも、うんうんと頷いています。

「お前達が神官では無いなら、何故埋葬前の処置をしていたのだ?」

「それが俺達の仕事だからですよ。ここの神官・・・この国の連中は、面倒な事や汚れ仕事は、奴隷に丸投げすんのが常識らしいんで」

「お前達は、奴隷だったのか?」

「俺達は、タランの犯罪奴隷なんで」

 それを聞いたマークさんが、二人の袖を捲り、腕に刻まれた刻印を確認して、アレクさんに頷いています。

「そういう事で、死ぬまでここで、働かなきゃなんねぇんですわ」

「刑期は?」

「死刑にならなかっただけ、ありがてぇこって」

「そうか・・・だがここも閉鎖中だ。勝手に埋葬されては困る」

「ですがね旦那。人は死にますよ?病でも事故でも。年くってもね」

「死んだら放置は出来ねぇです」

 このおじさん達の言い分は尤もだと思います。

 だけど・・・

「ねぇ。犯罪奴隷ってなぁに?」

「ん? あぁ、君は知らないだろうな。帝国には無いのだが、他国は強制労働の刑罰を、犯罪奴隷として刑期の年数働かせることが多いのだ」

「へぇ~。そうなんだ」

「彼らの様に刑期が定められていない場合。なにをしたのかは知らんが、彼らの所為で、少なくとも3人以上が命を落としたという事だろう」

「・・・・」

 アレクさんの肩越しに眼が合ったおじさんは、申し訳なさそうに頷いています。

 何と言うか、人は見かけに寄らないと言うか。とても気の良さそうな、おじさん達なのにな・・・。

「この辺りは、何年前くらいだ?」

「そうですね・・・ここ等は150年位前になります。あそこに紅く染まった頭蓋骨が見えますか?」

「あぁ。とても自然の色とは思えんが」

「でしょうな。あれは当時使われ始めた、毒薬の所為で、あんな色になったそうで。今でもたまに、あんな色の骨が出て来る事があるのですわ」

「ふむ・・・骨一つからでも、判ることはあるのだな」

 そっか、こっちでは法医学なんてないのよね。って事は、結構冤罪とかも多かったりするのかも・・・。
 う~ん。これもアーノルドさんに、お手紙出して、相談してみようかな?

「その顔は、また何か思いついたのか?」

「えへへ。ちょっとね」

 じっとしていることに飽きたノワールたちを下に降ろした、アレクさんですが。私の事も下ろしてくれるのかと思ったら、私だけ抱き直されてしまいました。
 
 そろそろ、自分で歩かないと、足が弱ったままに成りそうです。

 自分で歩きたいのだけど・・・・。
 歩かせて、くれないかなぁ?

 あッそうですか、駄目ですか・・・。
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