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愛し子と樹海の王

ママンとトゥギャザー

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 side・レン


「ママン! 見た? 何あれ、忍者? 仕事人?!」

「壁の中に入ったように見えたけど、どうやって移動してるのかな?」

 只今、アウラ様と私は、ドラゴニュートとアレクさん達の戦闘を観戦中。

 野球中継かッ?!

 なんて、心の中で、散々悪態をついていた私ですが。
 いざ1回戦のロロシュさんの戦闘が始まると、大みそかの総合格闘技の生放送みたいに、鏡に映し出される、ロロシュさんの戦闘技術に、齧り付きの釘付けで。

 ママンと二人、キャーキャー!ワーワー! 言いながらの観戦です。

 あっママンと言うのは、アウラ様の外見が ”ママ” よりも おフランスな ”ママン”の方が似合いそうだし、こっちの方が、なんとなく恥ずかしくないので、これからは ”ママン” と呼ばせて貰う事に成りました。

 それはさて置き。物凄く不謹慎だと分かってはいるのですが、TV越し・・(じゃなく特大の鏡ですが)での観戦だと、危機感が足りなくなるみたいで、気分はすっかりスポーツ観戦です。

 頑張ってくれいている皆。
 心配してくれているのに
 申し訳ない!本当にごめんなさい。

「あれって、土魔法?それとも空間魔法でしょうか?」
 
「両方の合わせ技の様だよ?彼は面白い事を考えるね。まるでセッコみたいだ」

「あ~~。確かに・・・・ってなんで知ってるんですか?!」

 分かる私も、大概なんですけどね?

「そこは、大神の所に居る時に色々と・・・」

 とカステラの空き皿に目を向けています。
 あっちの神様のお見舞い的な?
 入院中にマンガ全巻一気読み。的な?

「ロロシュさんって、実は凄い人だったんだぁ。見直しちゃった」

 いつも腰につけているアイテムバックも、支給品って言ってたけど、もしかしたら自分で作ってたのかも。

「そうだねぇ・・・あ~~~上手いなあ」

 ママンが感心する気持ちに、私も同意です。

 ピンポイントで、顎先を打ち抜くのって、簡単そうで、実は難しいのよね。

 砂漠の端に建つ小屋を挟んで、右側にアレクさん達。
 左側にドラゴニュートの皆さんが、待機しています。

 戦闘を終えたロロシュさんは、真っ直ぐアレクさんの所に戻って、何かを話していますが、その声までは拾えないようで、ちょっとがっかり。

 アレクさんの、低くて甘い声が聴きたかった・・・。

「次は・・・マークさんの番みたいです」

「彼も強いのでしょ?」

「はい。大変お強いです。 見た目がああなので、忘れられがちですけど」

「ふふん。楽しみだ」

 そう言いながら、ジョッキ片手に、イカ焼きをモリモリ食べる神様・・・・。
 この美貌で、やってることが、週末のお父さんとは・・・・。

 まぁ、いいのだけど。

 そうこうする内に、マークさんが戦闘の舞台に進み出ていきます。

 凛々しく引き締まったお顔は、更に美しさに磨きが掛ったように見えます。

「ほんと美人! 見てみて! ドラゴニュートさん達が、ため息漏らしてますよ」

「私はレンの方が、綺麗だと思うけど」

「それは、流石に贔屓が過ぎますよ?何処からどう見ても、マークさんの方がお美しいです」

 深蒸し茶を啜る私の顔を、ママンはまじまじと見て、悲しそうに首を振りました。

 私は、何を間違えたのでしょうか?

「好みの問題もあるけど・・・どうしてこんなに、自己肯定感の低い子に育っちゃったのかな」

「うーん?確かに高くはないですけど、自分を客観的に見ているだけです。それに、自分大好きすぎて、勘違いした痛い子よりかは、マシじゃないですか?」

「それはそうだけど」

「そんなこと言うなら、なんでアレクが醜男なんですか? アレクって、メチャクチャかっこいいですよね?」

「それを言われると、困っちゃうな」

「ですよね? あっマークさんの試合が始まりますよ!!」

「・・・・・速い!」

「わあぁ!! 瞬殺っ!!」

 開始と同時に、相手のドラゴニュートさんが、カッチコチの氷漬けです!

 マークさんの周囲を、白く凍った冷気が渦を巻き、光りを反射してキラキラと。
 氷の精霊王が居たら、こんな感じじゃないかな。

 ほんと~にお美しい。
 そして強い。

「ッ!! イヤーーン!! エーグル卿が見惚れてる~~~! 顔真っ赤っ! なんか照れる~~! こっちが恥ずかしい~!!」

 枕を抱えて、モダモダ照れる私。
 ママンの生温い視線を感じます。

「レン? ちょっと落ち着こうか? ほらほらコーラだよ?」

「えっ!?  コーラッ?!」

 コーヒーに続き、久々のコーラッ!!

 はしたないとは思いつつ。
 抱いていた枕を投げ捨てて、コーラの入ったグラスに、手を伸ばしてしまいました。

「う~~~~ッ!! シュワシュワァ~~~」

 炭酸が体に染みるぅ~!
 出来る事なら、今年の猛暑の最中に飲みたかった!!

 これだと落ち着くどころか、テンション爆上がりです!!

「喜んでくれて嬉しいよ。じゃあ、取って置きも出しちゃおうかな。コーラと言えばこれでしょう?」

 ママンが出してくれたのは、某お鬚のおじ様で有名な、チキンフライのバーレルでした。

「なんで、このコラボが好きだって、知ってるんですか?」

「親と言うものは、我が子の事なら、大概の事は知っている物でしょ?」

「わが・・・こ?」

 ママンと呼んだら、実子扱い?
 色々飛ばし過ぎでは?

「うふふ・・。親って楽しいね!」

 何と言うか、突っ込み処満載な気が。

 でも今は、ママンが楽しそうだし、懐かしいチキンのお味と、コーラの炭酸・・・。

 はあ~~。
 やっぱ染みるわぁ!!

「次はイスメラルダって子だね。彼は強いの?」

 チキンの脂で汚れた指を、ぺろりと舐めながら、ママンが聞いて来ました。
 さっき迄イカ焼きを、モリモリ食べていたのに。

 まだ食べるんですね?

 思ったよりお元気そうで、良かったのよね?

 うん。
 大分痩せちゃったから、沢山食べて体をもとに戻さないと。

 御持たせだけど、たんとお食べ?

「モグ・・・よく分かりません。彼が本気になった所を、見たことが無いんです」

「へぇ~。そうなの? レンの予想は?」

「お強いとは思います。獣人隊の隊長さんでしたし、討伐でも活躍していたそうですよ?」

「そう楽しみだね」

 ニッコリと笑ったママンの唇は、チキンのオイルで、つやっつやのテッカッテカ。

 大変な事に成っています。

 でもまあ。
 チキンフライって、そういう食べ物よね。

 食べ終わったドラムの骨を脇に避けたママンは、今度はどれにしようか迷っている様子。

 私が紙ナプキンで包んだリブを差し出すと、ママンはそれは嬉しそうに受け取りました。

 遠慮はいらない、たんとお食べなさい。

 私が買った、チキンじゃないけどね!

そして開始されたエーグル卿の試合は、見ているだけで、ドキドキ、ワクワクするような。そんな戦い方でした。

 エンタメ性が強いというか。
 まるでサーカスを、見ているみたい。

「見ていて飽きないけれど、レンは不満そうだね?」

「不満なんて、そんな烏滸がましい事、考えてません。ただ、エーグル卿らしくないなぁ、って思っただけです」

「らしくないの?」

「はい・・・。ちょっと聞いただけでも、彼の人生は壮絶な物です。けれど、エーグル卿には、そういう事を感じさせない、大らかさと強さが有って。彼は真っ直ぐで、実直な人なんです。こういう見世物的な戦い方は、性格的に違う気がします」

「レンは相手をよく見ているのだね。じゃあ、彼はわざと、そう演じているのかも知れないね」

「お芝居みたいに?」

「習い性か、サービス精神かは、分からないけれど。見た感じ慣れている様だよ?」

「言われてみれば、そうかも」

 でも、彼は目立ちたがりでもないし。
 彼が演じる事に慣れるまで、何が有ったのでしょうか。
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