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愛し子と樹海の王

コーヒーブレイク

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 side・レン


 リリリ・・・・・・リーーーン。


 ああ。
 この鈴の音。

 懐かしくて、澄んだこの音色は、アウラ様に呼ばれたの?

 アウラ様は元気になって、お庭に戻ったのかな?

 このまま、目を開けたら、アウラ様に会える?

 でも・・・・凄く眠い。
 なんで・・・・こんなに眠いの?


 ん~~?
 頭を撫でてくれてるのは、だぁれ? 

 ”眠りなさい・・・ゆっくり眠って、心と体を癒しなさい”

 早く起きなきゃ・・・アレクさんが心配しちゃう。

 ”大丈夫。何も心配しないで。もう少し寝てていいよ”

 本当に?
 じゃあ、後ちょっとだけ・・・ちょっとだけね。

 ふわふわ・・・
 あったかくて気持ちいい

 後もうちょっとだけ・・・・

 アレク・・・・あと・・・ちょっとだけ。


 ◇◇◇


 あれ・・・・・・・?

「・・・・・・ここ・・・どこ?」

 辺り一面真っ白・・・?

 ベットの御布団も。
 天蓋の幕も・・・・カーテンも?

 病院・・・?
 では無いわよね?

 とっても明るいけど、お日様でも、蛍光灯の明かりでもない。

 わぁ! 風を孕んで揺れるカーテンが、優雅だこと。

「そうじゃなくて。 だ・か・ら! ここどこっ?!」

 勢いよく布団を跳ね上げて、ベットから降りようとしましたが、何故か足に力が入らず、へなへなと床に座り込んでしまいました。

「え~~っと。これは、どうしたもんでしょう」

 なんか、すっかり足が弱ってる?
 熱が有るのか、体がだるくで、頭もぼーっとした感じで、気持ち悪い。

 私、何やってたっけ・・・・・?

「はっ!! ドラゴニュート!!」

 そうよ!
 アレクさんと一緒に、瘴気溜まりを確認しに行って、瘴気が襲って来て。
 真っ黒なドラゴニュートが現れて・・・。
 黒い風が・・・・・・。

 ・・・なんか変な模様が・・・・腕に。

 その後は・・・・?

 その後の記憶が全くありません。
 って事は、あの後私は、気を失うかなんかして、現在に至る。って感じですかね。

 袖をまくってみたら、やっぱりへんな模様が腕に浮かんでいます。

 もう!なんなのこれ?!

 婚姻紋といい、この変な模様といい。
 なんか、タトゥー愛好家みたいになっちゃってる。

 ここが何処だか分からないし。
 歩けないし。
 アレクさんは居ないし。

 素敵なベットで寝かされてたって事は、拉致監禁・・・っとは違うわよね?

 それに・・・・アウラ様の鈴の音を聞いたような・・・・。

 アウラ様のお庭に、建物はなかった筈だけど。

 こうなったら最後の手段です。

「すみませーーーん!! だれかぁー!! アーレークーー!! いないのーー?!」

 アレクが傍に居ないなんて、絶対おかしい。そんな事在り得ない。

 拉致られたのでもなんでも、現状確認必須です。
 その為には、人と話さなきゃ!

「だぁーーれーーかぁーーー!! いませんかぁーーーーーッ!!」

 かぁ・・・かぁ・・・か・・・。

 まさかの、脳内エコーじゃない木霊が、室内から帰って来るとは・・・。

 シーーーーン・・・・・・。

 って・・・何この静寂?
 本当に誰も居ないの?

 どうしましよう。
 ベットに戻る事も出来ないのに・・・・。

 ・・・・まいっか。

 監禁されてるわけじゃなさそうだし、その内誰か来るでしょう。
 幸いお部屋は暖かいし、カーペットはふっかふか。

 御布団も枕も、手が届く。
 誰か来るまで、二度寝を決め込んだっていいですよね?

 寝相が悪くて、ベットから落ちた、と思われたら恥ずかしいけど。

 それはそれ。これはこれ。

 体調は最悪。
 それなのに大声を出したせいで、目の前がグルグル回りはじめています。

 ここが何処で、自分に何が有ったにせよ、体調の回復が最優先。
 いざという時、走って逃げられるくらいには回復しておかないとね。

 ・・・・今アレクさんは傍に居ない。
 念話も通じない・・・・。
 だったら自分で、何とかするしかないじゃない。

 私は大人の女なの!
 アレクさんが居ないからって、寂しくて泣いたりしないんだから!

 ふわふわ、スベスベの上掛けを体に巻き付け、カーペットの上で丸くなっても、体の半分が冷えて冷たい。

 アレクのばか。
 どこに居るの?
 一人だと寒くて、寂しいよ。


 ◇◇


「・・・・起きて・・・レン」

「ん~~~もうちょっとぉ」

「なんで床で寝てるの? 寝るならベットで寝なさい」

「ふぇ・・・・・・・?」

 肩をゆすられて、薄目を開けると、長い睫毛に縁どられた、銀色の瞳が目の前に。

「あ?・・・・アウラ様?! えっ? あれ? 夢?」

 ウルウル、キラキラの瞳の中に、間抜けな顔の私が写っています。

「寝ぼけている? まだ具合が悪いの?」

 額に手を当てられて、心配そうに瞳を見つめられ・・・・。
 肩から流れ落ちた、サラサラの銀髪が頬をくすぐって・・・。

「本・・・・物・・・?」

 すっかり痩せてしまわれたけど、本物のアウラ様です。

「うぅ・・・」

「どうしたの? やっぱり調子悪い?」

「うぇ・・・・うぇ~~~~ん!! アウラ様だぁ~~~!!」

「あぁ・・よしよし。心配をかけてしまったね」

 目の前の銀髪に縋りつき、子供みたいに声をあげて泣く私を、アウラ様はそっと抱き上げて、背中を撫でてくれました。

 でも、何時までもエグエグと泣き止まない私に、アウラ様も困ってしまったのでしょう。ベットの上に私を下ろすと、あれやこれやと、世話を焼き始めてくれました。

「もう泣かないの。可愛い顔がべちょべちょじゃない。ほら、お鼻チーンして」

 何処からともなく取り出した、ティシュを渡してくれましたが。

 絶世の美貌の神様が、お鼻チーン ってお母さんでしょうか?

 顔面と言動のギャップが・・・・。

 その後も顔の腫れを取って、水分補給が大事と果実水を出してくれたり、ベットを整え直してくれたりと、それはそれは、まめまめしくお世話してくれました。

「ごぺんださい・・・アウラ様ぼ具合が悪いどに・・・」

「いいから。 もう、また泣いて・・・もう一回チーンして」

「ヴぁい・・・グスッ・・・ここどこですかぁ」

「何処って、私の庭だよ? 君のダメージが大きいって聞いて、部屋を用意したんだ」

 ” ほら ” とアウラ様が手を振ると、優雅なカーテンと白い壁が消え、見慣れたお庭に姿を変えました。

「ホントだぁ。一度起きた時、誰も居ないし、呼んでも返事が無かったから、誰かに拉致られたのかと思いました」

「拉致って・・君、自分の状況分かってないの?」

「私なんでここに来たんでしょうか? アウラ様が呼んだんですか?」

「お互い万全な状態では無いし、良いものが有るから、一服しながら話をしよう」

 アウラ様がとても懐かしく、豊潤で芳しい香りがたつカップを、差し出してくれました。

「こっこれはッ!!」

「フフ・・・。ヴィースでは、何故かコーヒー文化が育たなくてね。お茶ばかりで飽きたかな、と思って」

「文化が育たないって事は、コーヒーがあるんですか?」

「あるよ。タランと、帝国の南の辺境で細々と栽培しているね」

「やった。・・・・カフェラテ、エスプレッソ、アイスコーヒー、コーヒーゼリー。寝起きの一杯、徹夜のお供」

「楽しそうだね?」

「ええ。ワクワクします。うふふ。美味しい」

「さて。喜んで貰った処で、まじめな話をしよう」

 久しぶりのコーヒーを啜る私に、アウラ様は今の私の体の状態や、呪いを受けた原因と、呪いを解くために、アレクさん達が何をしようとしているのか、を説明してくれたのでした。

「呪い、ですか」

「呪いと言っても、私に掛けられている、怨みつらみとは違う。魔法契約に違反した罰則は、私やクレイオスでも、解呪は出来ないんだよ」

「内容だけでも、分からないの?魔法契約って、アウラ様に誓うんですよね?」

「君、契約内容をベラベラ喋る、弁護士とか司法書士を知っている?」

「・・・分かり易い説明、ありがとうございます。でもアウラ様、私に嘘つきましたよね?嘘つきな弁護士は、悪徳弁護士って言いませんか?」

「嘘? なんの事かな?」

 しらばっくれて。
 目が泳いでるじゃないですか。
 身に覚え、有りまくりですね?

「ヨシタカ様 結婚してましたけど? またうっかりとか言って、誤魔化すんですか?招来の時のあれ、確信犯ですよね?」

「あはは・・・何か勘違いしたかなぁ」

 はぁ・・・。
 この神様、絶世の美男子さんなのに、なんか残念なのよね。
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