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愛し子と樹海の王

反省してます

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「レッレン様!! 何とかしてくださいっ!!」

「ごめん!! 今は無理~~~~ッ!!」

 バキバキバキバキッ!!
 バッカーーーン!!

 何がどうなったのかは分かりませんが、三重に覆った氷の上部が吹き飛んで、解体途中の元内宮に、魔法か斬撃か分からないものが直撃。三階部分が、綺麗さっぱり、跡形も無く消えてしまいました。

「もう!! やだぁ~!! まだ決着つかないの?!」

「まだの様です!!」

「なんで二人とも笑ってるのよ!?」

 氷の壁の中から、アレクさんの高笑いと、カルの楽しそうな笑い声が聞こえてきます。

 でも遣ってる事えげつないからッ!!

 物事には加減って物が有るでしょう!

 二人とも馬鹿なの?!

「ノワール!上から中がどうなってるか見て!!」

「は~~い!!」
 
 人型のまま バサッ と翼を出したノワールが、氷壁の上部に飛んで行き、穴の周りを一周ぐるりと回って、戻ってくると中の様を教えてくれました。

「なか、すごいことになってる~」

「すごいじゃ、わかんないだろ!」

 クオンに怒られたノワールは、口を尖らせながら追加の情報をくれました。

「中ねぇ~。真っ赤かの、ドロッドロ」

「なにそれっ!?」

「う~んと・・・火山のふんか? ようがんみたい!」

 マジかぁ・・・・。
 いい年した大人が、何やってるのよ。
 カルなんて、2万歳よ?!

 もう!! 知らないっ!!

「クオン!ノワール!! 結界を代わって!!」

「すぐやぶられちゃうよ?」

「10秒、10セルでいいから!! ミュラーさんも手伝って!!」

「レン様!何をなさる御積りですか?」

「やんちゃ坊主の躾!!」

「しつけ? 了解。 おい!お前達も手伝え!!」

 みんなの結界が、練武場全体にいきわたったのを確認した私は、氷壁に向けていた魔力を両手に溜め、空へと解き放ちました。

 一点俄かに掻き曇り。

 とはこういう事でしょうか。
 私の頭上に雷雲が渦巻き、雲の中で稲光がパパッと光っては消えていきます。

 その時、魔力の供給の無くなった氷壁が粉々に砕かれ、ドラゴンキッズとみんなが張ってくれた、結界にヒビが入りました。

 そして結界の中から聞こえてくるのは、アレクさんの高笑い。

 お前は魔王かっ!!
 
 雷雲棚びく曇天に走る稲光りと、アレクさんの笑い声に、シューベルトの魔王が脳内再生中です。
 
「いい加減に・・しなさぁ~~~いッ!!!」

 両腕を振り下ろすと同時に、数えきれない稲妻が、バリバリバリバリッ!! ドドドーーーーンッ!!と降り注ぎ、結界の中から 

 ”おぅわっ!?”  ”うわあぁ!!” 

 と間抜けな声が聞こえて来たのでした。


 ◇◇


「それで? 思う存分力を振るえる相手が出来て、楽しくなって羽目を外し過ぎたと?」

「その通りです」

「兄上・・・子供じゃないんだから」

「・・・すまん」

「まったく・・・今日は偶々、偶々ですよ!解体業者が休みで、人が居なかったから良かったものの、下手をすれば人的な被害が出ていたかも知れない。民を護るべき騎士の貴方が、何をやっているのです」

「本当に申し訳ない」

「兄上、レン様が止めて下さらなかったら、如何なっていたか、分からないのですよ?」

「返す言葉もない」

「貴方達二人の所為で、練武場はこの世の終わりみたいな有様です。何を如何したら、地面が溶けて、穴が空いたりするの?」

 ううぅ。怖い
 ロイド様のミスリルの扇が、こんなにビシビシ手の平で鳴っているのを初めて見ました。
 
 めちゃくちゃ怒ってます。

 そりゃそうよね。
 解体作業中とは言っても、元内宮だった建物の、3階部分が綺麗に無くなっちゃったんだもの。

 怪我人が出なかったのが奇跡よね。

「このお馬鹿な二人に、手合わせを勧めたのは、レン様なのですって?」

「・・・・はい」

 うっひゃ~!
 今度は私の番かぁ・・・。

「こうなると予想できなかったの?何故、手合わせを勧めたの」

「その、カル、カエルレオスさんがとても強かったので、アレクと戦ったら如何なるか、好奇心に負けてしまって」

 うわぁ。
 呆れられちゃった。
 怖いよ~。
 ロイド様の目が冷たいよ~。

「あのね、レン様。この二人を止められるのは、レン様しか居なかったと思いますよ?でもね、止めるにしても他の方法は無かったの?」

「すみません。夢中だったので・・・」

「はあ~~~。気持ちは分かります。分かりますけど、レン様の魔法の爆風で、第2騎士団の詰所は半壊。内宮から練武場までの道の半分と庭園の一部が黒焦げって、いくらなんでもやり過ぎでしょう?」

「本当に申し訳ありません。力加減を間違えました」

「それなのに、兄上達は無傷なんですよね」

「頑丈過ぎて、笑えませんよ」

 額を押さえて溜息を吐くロイド様に、一瞬面白がる様に、瞳を光らせたアーノルドさん。

「折角、この二人から守るために結界まで張ったのに、結界の外まで雷撃を落として如何するの?」

「すみません」

 こう言う時はやっぱり土下座?
 土下座で謝ったほうがいい?

「それから、貴方、カエルレオスと言いましたか?」

『はい、以後お見知り置きを』

「今は、挨拶など如何でもいいのです。貴方、クレイオス様のご友人のドラゴンなのですって?」

『ええ。クレイオスとは旧い友人です』

 もう!
 カル態度が偉そうよ?
 今怒られてる最中だから。
 お願いだから、しおらしくしてよ!

「貴方がドラゴンであろうが、クレイオス様のご友人だろうが、特別扱いは出来ません。それに、人には人の暮らしと、決まり事があるのです。貴方がこれからも、レン様やアレクサンドルと共に有るなら、人の法に従ってもらいます」

『ふむ。まぁ、当然だな』

 “カル! カル! 口の利き方に気を付けて!”

 袖を引いて注意したのに、なんでにっこり笑ってるの。
 そんな場合じゃないからね。
 今怒られてるのよ?

「はあ~~。アーノルド、私は貴方が極々普通に育ってくれたことを、今日ほど感謝した事はありませんよ」

「ははは・・・。褒め言葉としては微妙ですね」

「あぁもう。頭が痛くなって来ました。この3人の処分は貴方が決めなさい」

「僕ですか? 承りました。・・・・そうですねぇ・・・」

 アーノルドさんは、肘掛けに頬杖をついて考え込んでいます。

 どうしましょう。
 どんな罰が言い渡されるのかしら?
 
 見方によっては、私たち皇宮を爆破したテロリストよね?

 鉱山送りとか、言われちゃうのかしら?

 ドキドキし過ぎて、耳の中に心臓があるみたい。

「それでは、3人の処分ですが、兄上とレン様は、半年間俸給と品格維持費を五割に減額。兄上には練武場と庭園の修繕費用を、全額を持って貰う。と言うことで如何ですか?」

 とロイド様に同意を求めていますが、本当にそれだけで良いのでしょうか?

 強制労働とかしなくて良いの?
 ロイド様も不服そうよ?

「たった半年?カエルレオスは如何するの?」

「だって母上。ドラゴンの彼に賠償は難しいでしょう? 人的被害も有りませんでしたし、これは訓練中の事故ですよ? それに、兄上が内宮の3階を吹き飛ばしてくれたお陰で、解体費用がかなり浮きます。 それらを相殺したら、このくらいが妥当じゃないでしょうか」

「・・・・・仕方ありませんね。貴方の考えに従いましょう。ですが・・・二人に与えた課題の期日は、明日に変更です」

 助かった~!
 鉱山送りじゃなかった。

 でも、課題が明日までなんて、どうしましょう。

「あの、ロイド様? こんな時にあれなんですけど、グリーンヒルさんとの面談は・・」

「グリーンヒル?」

 ヒィッ!!

 睨まれちゃった!
 メッチャ怖い!!

「そう言えばそんな約束もしていましたね。賠償金の支払い手続きも有ります。そのついでに、話を聞きたければそうしなさい」

「あ・・ありがとうございます」

「アーノルド、貴方から他に言う事は?」

 まだ何か怒られるの?
 反省してるから、これで終わりにしてくれない?

 うあぁ・・・メッチャ見てる。
 アーノルドさんに、ガン見されてます。

 あ・・・なんか苦笑いされちゃった。
 呆れられちゃった?
 そうよね。
 こんな騒ぎを起こしたのだもの、呆れるわよね。

「兄上、こんなこと僕が言うのは烏滸がましいですが、レン様がお優しいからと言って、あまり甘え過ぎるのは、如何なものかと思いますよ?」

「・・・反省している」

 え?なんで?
 甘やかされているのは、私の方なのに。
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