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愛し子と樹海の王

ここはどこ?

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 side・レン


 え~~と。
 ここは何処でしょう?

 ざっと見まわして、天井まで15mくらいある、30m四方の、洞窟遺跡・・・かな?

 柱とか壁の装飾は、ギリシャとかローマの大理石っぽい感じです。

 外界に通じる窓も無し。
 松明や燭台がある訳でもないのに、明るいのは、天井近くで発光している魔晶石と、建材は不明ですが、壁自体が光っているからですね。

 何に邪魔されているのかは、分かりませんが、アレクさんとの念話も不通。

 ダメもとで試した、アウラ様とのボイチャは呼び出し音すら鳴りません。

 これは困りました。
 ここが何処なのか、誰が、なんのために転移させたのか、全く分かりません。

 こう言うのって、転移した先で、悪の秘密結社的な人が、怪し気なローブ姿で、手にはランタンとか、蝋燭の灯った燭台を持って、待ち構えてるものじゃないの?

 あ~もう! こんな事になるなら、ゴトフリーの王様と会うのだって、もっと気を付けたのに!!

 って、後悔は後でするから後悔なのよね。


 ◇◇


 私達は予定通り、クレイオス様に魔法陣を書き換えて貰い、結界をこじ開け、王都へ入りました。

 結界の中に入った瞬間、私とクレイオス様は、神殿から湧き出す瘴気が放つ悪臭に悩まされることになりました。

 途中で我慢しきれなくなったクレイオス様は、 ”臭過ぎてかなわん! ちょっと行って掃除しれくる故。其方達はこのまま、王城へ向かうのだ!“

 神殿に向かうクレイオス様を見送り、私達は、王城へ直行。

 アレクさん達が、場内を制圧している間、私は危険だからと言われて、アンに乗ったまま、太郎と次郎に乗った、クオンとノワールに挟まれ、更にその周りを護衛の騎士さん達にぐるりと囲まれて、王城の前で待機していました。

 予想通りと言うか、アレクさんと騎士団の皆は、あっという間に王城内を制圧してしまいましたが、アレクさんに呼ばれ、私が王城に入れたのは、陽が傾きかける頃でした。

 脚を踏み入れた城内は、装飾過多で、お世辞にも、センスが良いとは言えない建物でしたが、お金を掛けているのは分かります。

 そして、お城の中を進む私とクオン達は、アンと太郎と次郎に乗ったままなのですが、シッチンさん曰く。

「城には秘密通路があるのが常識です、何時死角か襲われるか分かりませんから、団長の所につくまでは、安全の為、フェンリルに乗ったままでいて下さい」だそうです。

 シッチンさんに案内されて、進むお城の中は、あちこちに焼け焦げと、血しぶきの痕が見えました。

 多分、迎えに来るのが遅れたのは、私に見せたくない物を、片付けてくれていたからなのだと思います。

 シッチンさんが案内してくれたのは、お城の謁見室。
 玉座の前にはアレクさんが立っていました。

 半日ぶりに見るアレクさんは、少し疲れているように見えました。
 
 それでも、私が謁見の間に入ると、足早に迎えてくれたアレクさんは、いつもの様に私を抱き上げてくれました。

 そして、これからゴトフリーの王様の話を聞くところだと言って、私を玉座に座らせてくれたのです。

 それから少しして、ゴトフリー王家の全員が、騎士さん達に引き出されて来たのですが、何と言うか、ゴトフリーと言う国では、偉い人は小太りがデフォらしいです。

 そして、この王家の人達は、大変目に優しい仕様となっておりました。


 引き出された王家の人達は、怯えて青い顔をしていましたが、一旦口を開いたら、しゃべること喋る事、しかも男の人なのに、裏返った甲高い声でピーチクパーチク。

 コケコケ、コケコケと。
 ここは養鶏場ですか?

 普段私の周りに居る人達は、イケボのイケメンばかり。

 心地良い声に慣れ過ぎてしまった私は、耳障りな王様達の声で、頭が痛くなってきてしまいました。

 それにしても、自分はアウラ様の御子だ、なんてよく言えますよね?

 アウラ様も、クレイオス様も、目が潰れるんじゃないかって言うくらい、お美しい方なのに、そのDNAを全く感じませんが?

 どっちかって言うと、通勤電車の中のおじさん達に近いと思うのは、気の所為じゃないと思いますけど?

 大体ですね。
 獣人族の事を、汚らわしい獣だとか?
 理性の欠片も無い、人族より劣った種族だとか?

 言いたい放題言ってますけど、自分がやって来た事は人としてどうなのよ?

 あんまり頭に来たから、ミニ雷撃を王様のすぐ横に、バチバチッ って落としてやりましたとも。

 あぁ。いけない、いけない。
 また大人の女の余裕を忘れてしまいました。

 でも、余りにも、聞くに堪えない暴言ばかりなんですよ?

 この人からは、有益な話なんて聞けそうもないですね。

 なので早々に、お引き取り頂いた方が良いと思います。

 アレクさんも同じ気持ちだったのか、騎士さん達に連れて行くように指示を出していました。

 その時立ち上がった、王様達の足元で魔法陣が浮かび上がり、邪法特有の紫色の光がどんどん強くなって行きます。

 異変を目にした、アレクさんと騎士さん達が、王様に駆け寄った瞬間。

 私の体も同じ光に包まれました。

 これヤバイかも!!

 そう思ったと同時に、スクロールと同じ、体の中が裏返るような感覚と、私を呼ぶアレクさんの悲痛な声を最後に、気付けば私は、この場所に飛ばされて居ました。

 幸い、と言っていいのでしょうか。

 魔法陣は玉座の周囲2m位を、転移の対象としていた為、玉座の両脇に立っていたクオンとノワール。私の後ろでお座りしていたアンと、足元に伏せていた太郎と次郎も一緒に転移してきています。

 一人ぼっちで、何処かも分からない場所に飛ばされるのよりか、何億倍もマシだし、とっても心強いですが、アレクさんと離れ離れ、しかも念話も通じないなんて・・・・。

「・・・心配してるだろうな」

「れんさま、だいじょうぶ~?」

「アレク、いなくてさみし~の?」

 いけない。 
 ドラゴンとは言っても、まだ子供の二人に心配かけちゃダメよね?

「アレクが居なくて寂しいけど、大丈夫よ?でも、ここが何処だか分からないけど、早くお外に出ないとね?」

「「は~い!」」

 はあ~~~。
 うちのキッズは、なんでこんなに可愛いのかしら?
 こんな、訳の分からない状況なのに、そろって手を上げて、元気にお返事してくれるなんて。

 ほんと、良い子!

 あれ?
 どうしたのかしら?
 2人ともなんだか急に、困ってるみたいだけど

「2人ともどうしたの? 怖くなっちゃった?」

「ちがうよ!」

「こわくないよ!」

 あらら。怒られちゃった。
 プライドを傷つけちゃったのかしら?

「ごめんね。何を困ってるの?」

「おそとが、どっちかわかんない」

「え?」
 
 そりゃね。明り取りも無い、洞窟っぽい岩壁に囲まれて、ギリシャっぽい柱が岩に直接彫り込まれてる部屋に、いきなり放り込まれて、どっちが外か、なんて分かる人はいないわよ?

「そうね? 私も分からないのよ?」

「でも! ぼくたちはドラゴンだから!」

「すご~~く とおくにいても、みやがどっちにあるか、いつもわかるのに、なんにも、わからないんだ」

 所謂 帰巣本能 って、やつでしょうか?
 帰巣本能って、地磁気を感知するのよね?
 
 それが感知できないって事は、この場所はそういう類をブロックするって事? その所為で、アレクさんとの念話も、ボイチャの呼び出しも、出来ないのかしら?
 
 やだな、この壁から変な電波とか出ているのでしょうか?
 アルミホイルの帽子を、被った方が良いのかしら?

 って、映画の見すぎですね。

「そっかあ。じゃあ、みんなで探検してみよっか!」

「たんけん?」

「たんけん、ってなあに?」

 あれ~?ちょっと難しかった?

「え~とね。何があるかなあ?どんな所かなあ?って見て回る事よ? 探検したら外への出口も見つかるかもしれないし、宝箱もあるかもしれないわね」

「たからばこ?」

「キラキラいっぱい?」

 凄い食いつき。

 そう言えば、ドラゴンって金銀財宝を、寝床に溜め込むのが好きなんだっけ?

「キラキラが、いっぱい有るといいねぇ~」
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