獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

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愛し子と樹海の王

草原のお茶会

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「結界?」

「王都を囲んでんのか? そんな大規模な結界なんて可能なのか?」

『魔晶石を使えば、不可能ではあるまい。実際結界は張られて居るしの」

「魔晶石ですか・・・・ですが、魔力が続かないでしょう?」

 尤もな疑問を呈すマークに、クレイオスは頷いて、何故かレンの頭を撫でた。

『魔晶石の魔力は、簡単には尽きんじゃろうな』

「巨大な魔晶石なのですか?」

「それなりじゃの。だが魔力が供給され続けて居れば、大きさなど関係あるまい?』

「魔力の供給? 王都には魔素の水脈でもあるのか?」

 モーガンに目を向けられたエーグルは、首を横に振った。

「そんなものがあれば、この国はもっと発展していたはずです。質の良い魔晶石の鉱脈が、見つかったという話も聞いたことが在りません。皆さんのお話を聞いていて分かったのですが、帝国で一般的な市民が利用しているような魔道具でさえ、この国では普及していないのです」

「そんだけ、魔石、魔晶石が足りてないって事か?」

「ゲオルグ団長の仰る通りです、唯、貴族の宝物庫には、それなりに蓄えが有ると思います」

「だよなあ」

 いまいち納得いかない表情で、髪をかき混ぜるセルゲイを横目で見たモーガンは、仕方のない奴とでも言いたげに溜息を吐いた。

「クレイオス殿、魔力の供給元は何ですか?そもそも結界を破る方法はあるのですか?」

「あの魔法陣を見るに、結界を壊す方法は主に2つ、其方らが良くやる様に力尽くで破壊するか、魔晶石を壊すかじゃな、後の一つは条件付きだの」

「ならなんも問題ないよな?バーン!ドーン!っていつも通りだろ?」

『・・・・・アレクサンドル。こ奴が騎士団長で本当に良いのか?』

 クレイオスの呆れ声に、俺は頭を抱えたくなった。

「クレイオス、あんたの言いたいことは分かる。セルゲイ少し黙って居ろ」

 俺達の会話に納得できないセルゲイは、文句たらたらだったが、話が進まないので無視だ無視。

「破壊は出来るが、供給元に問題があるのだな?」

『そういう事だの』

「で? 供給元はなんだ?」

 クレイオスは、ここまで黙りこくっているレンの頭を、宥めるようにもう一度撫でた。

『魔法陣を壊すのは簡単だ。だがの無理に壊して、魔力を供給させられている、王都の民が無事で済めばいいがの』

「王都の民?・・・・・まさか、ヴァラクの魔法陣か?!」

『其方達が、大厄災と呼んで居る、あの魔法陣に似ているな。あの時は義孝を蘇らせる反魂の術だけじゃったがな?今回はそれに結界が付随して居るようじゃの』

「その割には、魔法陣の規模が小さくないか?」

『義孝は愛し子ぞ。そこらの有象無象と一緒にするでない!』

「そうなのか?」

 カップを口に付けたまま、微動だにしないレンに目を向けた。

「そんな事、ある訳無いじゃないですか。確かに私達の体は、アウラ様の特製ですけど、命は命。みんなと同じです。私ずっと考えてたんですけど、王か神官、若しくはその両方が、誰かを蘇らせようとしているのは、間違いないと思います」

『それが其方の考えか?』

「えっ?」

 レンはポカンとした顔でクレイオスを見上げ、その後気まずそうに眼を逸らした。

『ふむ。続けなさい』

「あ・・・はい・・・あの、ヴァラクは大神殿の地下に、隠し部屋を作って迄、自分の日記を保管していました。それは曖昧になって行く、自分の自我を保つためでもあったのでしょうが、基本的にあの人は、記録魔だったのではないかと思うんです」

『ほう?何故そう思う?』

「あそこの実験記録を、読んでみたのですが、驚くほど細かく記録されていて、病的なものを感じる程でした。ヴァラクがこの国の成り立ちや、その後についても関与していたのは間違いないです。だとすれば、あの魔法陣の記録が残っていてもおかしくないし、実際に誰かに教えていた可能性もあります」

『順当な考えだの』

「もし、それに手を加える事の出来る、魔法師が居れば、王都を囲む、結界を張る事も可能です。・・・・そしてその結界は、反魂の術が終わるまでの、時間稼ぎなのだと思います。王都の人達は、反魂の為に全てを搾り取られるのではないでしょうか」

 ”あってますか?” とクレイオスに確かめる姿は、全く似ていないのに、本当の親子のように見えた。

『うんうん。我の子は賢いの。どこぞの煩いばかりの騎士団長とは、雲泥の差だの』

 この発言に関しては、セルゲイ以外の全員が同意だ。

『して、其方は誰を蘇らせると思う?』

「う~ん。エーグル卿、ゴトフリーには伝説になるくらい強い人っていましたか?」

「特にはいません。前にもお話しましたが、我々獣人の伝説的なお方は、愛し子様ですし、それ以外でしたら、やはり建国の王ゴトフリーになります」

 エーグルの返答に、レンは一つ頷いた。

「反魂の術で蘇らせようとしているのは、初代ゴトフリー王だと思います。神殿から御神体を移動させようとして居た事も在りますし。愛し子へ対抗しようとしたら、御子をもってきたくなりますよね?」

『我もその意見に賛成じゃの。だがここで一つ問題がある。何かわかるかの?』

「反魂の術を成功させるためには、蘇らせたい相手の魂が必要な事でしょうか?」

『正解じゃ。やはりレンは賢いの。では図体ばかりの騎士団の者たちに聞くが、魂の無い状態で、肉体を蘇らせたらどうなる?』

「んなもん。グールになるに決まってるだろ?」

 以外にも、逸早く答えたのはセルゲイだった。

『おう。其方は唯の脳筋かと思っておったが、そうでも無かった様だの。そこで問題なのだが、我が空から観察した結果、王都の大神殿から瘴気が湧いて居った。これが蘇った初代の所為なのか、全く別物なのかは、ハッキリせなんだ』

「成る程よく分かった。だが結界を破る方法はどうする?無暗に破壊すれば、王都の民が犠牲になる。それを恐れ、反魂が終わるまで待っていても同じだ」

『その事なら問題ない。大厄災の時と同じじゃな。我が魔法陣を書き換えてやろう』

 どうだと言わんばかりに胸を張っているが。あの時は、国民が死なない程度にするのが精いっぱいだったよな?

『なんじゃ、その顔は? 言っておくが、この魔法陣を展開させた奴は三流だ。ヴァラクの様な複雑且つ緻密な、性格の悪い魔法陣ではない」

「成る程?」

 何も言っていないのに、ムキになるとは。
 ヴァラクの魔法陣を完全に破れなかったことを気にしているのか?

『但し! 我には制約がある故、今のままでは手は貸せん』

「はあ?ケチくせえな」

「クレイオス殿、何か条件が有るのなら、仰っていただければ、我等も手を尽くしますが」

 セルゲイとモーガンは、其々こんな事を言っているが、クレイオスにとって重要な制約は一つだけ、レンの助けになるかどうかだけだ。

『条件は有る。だが其方達ではどうにも出来ん』

「ではどうすれば」

 真面目なモーガンを不安にさせるなよ。
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