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幸福の定義は人それぞれ
休暇は続く
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その、エスカルの護送は今の所順調なようだ。
公表こそされていないが、エスカルは愛し子へ不敬を働いた罪人として、母国へ送還される。
他国の王族であろうが、エスカルは罪人だ。
罪人の護送にポータルが禁止されている以上、ゴトフリーとの国境へ奴が到着するまで、このまま順調に進んでも、あと二月近くは掛かる。
その間ゴトフリー側がどう出るのか。
俺なら、自分の息子が害されたと知った瞬間に、騎士を集め、敵国の王の首を取りに行くが・・・・まぁ誰にでも出来る事ではないからな。
王子の引き渡しギリギリまで準備をし、突然親子愛に目覚めた体を装いつつ、戦争の為にかき集めていた兵を、国境の警備軍と合流させ配備。
送還された王子の様子に憤った武官が、帝国側と小競り合いを起こし、なし崩し的に帝国へ攻め入る。と言った処だろうか?
東の辺境を守護するオーベルシュタイン侯爵は、南のアーべライン侯爵程の勇猛さは無いが、その分知略に優れている。
それに侯爵自身の性質に関係なく、辺境を守護し続ける騎士達は、強者ぞろいだ。
知と武を併せ持つオーベルシュタインと、邪な信仰に踊らされ、まともな判断を下せなくなったゴトフリー。
万が一にも遅れを取る事は無いだろうが、さて、オーベルシュタイン騎士団のお手並み拝見だな。
戦には金も掛かるが、それ以上に兵糧の確保が重要だ。
国民が食うのもやっとの国が、どうやって兵糧を確保するのか・・・・。
当てにしている兵糧が、手に入らなかった時、彼の国の王はどんな顔をするのだろうな。
「・・・ク?・・・・アレク?」
「ん?」
「大丈夫? ものすごく悪い顔で笑ってたけど、何かあったの?」
番が二匹のドラゴンの頭を撫でながら、心配そうにこちらを見ていた。
戦の話をしているだけに、不安にさせてしまったようだ。
「あ・・・あぁ、すまん。報告に問題はなかったぞ」
「なら良かった。それで、明日からどうするの?直ぐに皇都へ帰るの?」
「何故だ?休暇はあと8日も残っているぞ?」
「えっ? そのまま休んでて良いの?」
そう言ってレンは嬉しそうに破顔した。
守るべき番を、戦場に連れ出そうとしている俺に、変わることなく明るく接してくれるのだ、この程度の喜びも与えられなくてどうする?
「君が疲れて居なければ、この後、街の散策にでも行ってみるか?」
「わぁ。行く行く!! マークさんの予定がなかったら、一緒にミメットパールに行ってみませんか?」
「あぁ、良いのじゃないか? セルジュ、マークの予定を聞いてきてくれ」
セルジュは微妙な顔で出て行ったが、それはそうだろう。ロロシュとローガンが耐えられなかったマーキングに、わざわざマークが挑むとは思えないからな。
予想通り ”事後処理で多忙につき、今回のお誘いは見送らせて頂きたい” ”明日以降なら、是非お供させていただきたい” とマークはセルジュに伝言を頼んでいた。
まぁ、俺はレンとの時間を邪魔されたくはなかったし、マークはそれを正しく理解した。
そう云う事だ。
レンも特に気にした様子も無く、俺達は二人で街に散策に出かけ、楽しい時間を過ごすことが出来た。
その後も、マリカム滞在中は、買い物や食事に出掛けたり、伯爵に案内され、真珠の養殖場や加工工場を見学させてもらい、有意義な時間を持つ事も出来た。
そんなある日、レンがローガンとセルジュだけではなく、護衛騎士も全員連れて、アメリア伯爵の私有地にある浜へ、遊びに行こうと提案してきた。
「まさか、泳ぐつもりか?」
「泳ぎたいのは山々ですが、水着も無いし、皆さんの前で泳いだりしませんよ?」
みずぎ?
それがあったら、他人の目があっても泳ぐのか?
「着衣泳は、慣れないと溺れたりしますから、向こうでは泳ぐときは、基本水着着用ですよ? 海水浴場もプールも沢山人が来ますけど、みんな水着を着てます」
水着とはどんなものかが気になって聞いてみると、レンは絵をかいて説明してくれたのだが、こんなものは裸と同じではないか?!
こんな破廉恥な格好で、屋外を歩き回るなど、彼方の倫理観はどうなっているのだ?!
「ん~。100年前とかは、もっと体を隠すデザインだったみたいだけど、それだと泳ぎにくいですからね?」
「利便性の問題か?」
「多分?競泳用の水着は、もっとぴっちり体にフィットした作りだし」
これ以上体の線がはっきり分かるのか?!
「こちらには無い文化なのは理解してますから。アレク意外とは、泳いだりいないから安心して?」
「それなら良いが・・・・」
だが、宮にぷーるとか言う池を造ってたよな?
「だ・か・ら、泳ぐのはアレクとだけ。周りに塀も立てて、外から見えない様にするから大丈夫ですって」
だからと言って、安心出来るものでも無いのだが・・・。
「それは取り敢えず置いといて、今日はビーチでBBQです!」
そう宣言したレンは、何日か前から用意していたという、食料と酒を大量に馬車に積み込み、騎士達を引き連れ、伯爵から使用許可を貰った浜へ向かった。
浜に到着すると、レンは土魔法で竈をいくつも作って火を起こし、騎士達を総動員して、食事の下準備が出来ると、今度はゲームをしようと言い出した。
優勝者にはレンから賞品が出ると聞き、騎士達も俄然やる気になって居る。
最初は ”すいか割り” というゲームだった。
目隠しをした騎士を、その場でぐるぐる回したあと、浜に置いた瓜を棒で割る。という、簡単なゲームなのだが、目隠しで回されたうえに、周りを囲んだ同僚から ”右だ!” ”いや、もっと左だ!” 等とやじられて、瓜の場所を特定するのも難しいようだ。
瓜とは、遠く離れた見当はずれな場所を叩く者、あと一歩で届かない者、その結果に皆が大笑いで喜んでいる。
意外にもこのゲームの優勝者はローガンだった。
侍従と言うものは、いつ何時でも冷静に周囲を観察し、主人に不便を掛けないよう、探知能力の高さも必要だ。
とは、優勝を攫ったローガンの弁だ。
レンが用意した優勝賞品は、レンのお抱えテーラー、ルナコルタが経営する、ボッカサローネでの仕立券と、皇都で有名なレストランの食事券だった。
しかも仕立券と食事券は、上限金額無し。
掛かった分だけ、幾らでもレンが支払うという、騎士や使用人からすれば、信じられない高額な賞品だ。
氷魔法で冷たく冷やしたエールを片手に、暢気にゲームを楽しんでいた部下達は、更にヒートアップ。
次のゲームは何かと、闘志を燃やす騎士の群れに、レンが出したお題は、砂の彫刻を作る事だった。
制限時間は約2時間。
昼食用の煮込み料理が完成するまでだ。
騎士全員にシャベルとヘラ、固めた砂が崩れないようにする為の、水に溶かした糊を配り終えると、レンの掛け声と共に、むくつけき雄共が、必死で砂の山を作り、なんだかよく分からない彫刻に取り組み始めた。
しかし芸術とは無縁な騎士達は、脱落者が続出。
最後まで、砂の彫刻を作り上げられたのはわずか5人。
しかし出来上がった作品は、城を模した物、動物や人を象った物など、其々見応えのある出来栄えだった。
完成した彫刻の品評は、芸術に造詣が深いマークが担当した。
マークが選んだ砂の彫刻の優勝者は、意外にも騎士団の中で俺の次に、体のでかい熊の獣人の騎士だった。
コイツは、見た目の厳つさからは想像できないが、木彫りの彫刻を趣味にしているのだそうだ。
それを聞いたレンは "木彫りのクマさん、北海道かっ!" と1人でクツクツと笑っている。
何を連想したのか知らんが、番が楽しそうで何よりだ。
楽しそうに笑うレンとは逆に、熊の騎士は、騎士仲間から、繊細な趣味を理解されない事も多かったらしく、優勝賞品を受け取る時には大泣きで喜んでいた。
因みに優勝賞品は、すいか割りと同じ、仕立券と食事券だった。
公表こそされていないが、エスカルは愛し子へ不敬を働いた罪人として、母国へ送還される。
他国の王族であろうが、エスカルは罪人だ。
罪人の護送にポータルが禁止されている以上、ゴトフリーとの国境へ奴が到着するまで、このまま順調に進んでも、あと二月近くは掛かる。
その間ゴトフリー側がどう出るのか。
俺なら、自分の息子が害されたと知った瞬間に、騎士を集め、敵国の王の首を取りに行くが・・・・まぁ誰にでも出来る事ではないからな。
王子の引き渡しギリギリまで準備をし、突然親子愛に目覚めた体を装いつつ、戦争の為にかき集めていた兵を、国境の警備軍と合流させ配備。
送還された王子の様子に憤った武官が、帝国側と小競り合いを起こし、なし崩し的に帝国へ攻め入る。と言った処だろうか?
東の辺境を守護するオーベルシュタイン侯爵は、南のアーべライン侯爵程の勇猛さは無いが、その分知略に優れている。
それに侯爵自身の性質に関係なく、辺境を守護し続ける騎士達は、強者ぞろいだ。
知と武を併せ持つオーベルシュタインと、邪な信仰に踊らされ、まともな判断を下せなくなったゴトフリー。
万が一にも遅れを取る事は無いだろうが、さて、オーベルシュタイン騎士団のお手並み拝見だな。
戦には金も掛かるが、それ以上に兵糧の確保が重要だ。
国民が食うのもやっとの国が、どうやって兵糧を確保するのか・・・・。
当てにしている兵糧が、手に入らなかった時、彼の国の王はどんな顔をするのだろうな。
「・・・ク?・・・・アレク?」
「ん?」
「大丈夫? ものすごく悪い顔で笑ってたけど、何かあったの?」
番が二匹のドラゴンの頭を撫でながら、心配そうにこちらを見ていた。
戦の話をしているだけに、不安にさせてしまったようだ。
「あ・・・あぁ、すまん。報告に問題はなかったぞ」
「なら良かった。それで、明日からどうするの?直ぐに皇都へ帰るの?」
「何故だ?休暇はあと8日も残っているぞ?」
「えっ? そのまま休んでて良いの?」
そう言ってレンは嬉しそうに破顔した。
守るべき番を、戦場に連れ出そうとしている俺に、変わることなく明るく接してくれるのだ、この程度の喜びも与えられなくてどうする?
「君が疲れて居なければ、この後、街の散策にでも行ってみるか?」
「わぁ。行く行く!! マークさんの予定がなかったら、一緒にミメットパールに行ってみませんか?」
「あぁ、良いのじゃないか? セルジュ、マークの予定を聞いてきてくれ」
セルジュは微妙な顔で出て行ったが、それはそうだろう。ロロシュとローガンが耐えられなかったマーキングに、わざわざマークが挑むとは思えないからな。
予想通り ”事後処理で多忙につき、今回のお誘いは見送らせて頂きたい” ”明日以降なら、是非お供させていただきたい” とマークはセルジュに伝言を頼んでいた。
まぁ、俺はレンとの時間を邪魔されたくはなかったし、マークはそれを正しく理解した。
そう云う事だ。
レンも特に気にした様子も無く、俺達は二人で街に散策に出かけ、楽しい時間を過ごすことが出来た。
その後も、マリカム滞在中は、買い物や食事に出掛けたり、伯爵に案内され、真珠の養殖場や加工工場を見学させてもらい、有意義な時間を持つ事も出来た。
そんなある日、レンがローガンとセルジュだけではなく、護衛騎士も全員連れて、アメリア伯爵の私有地にある浜へ、遊びに行こうと提案してきた。
「まさか、泳ぐつもりか?」
「泳ぎたいのは山々ですが、水着も無いし、皆さんの前で泳いだりしませんよ?」
みずぎ?
それがあったら、他人の目があっても泳ぐのか?
「着衣泳は、慣れないと溺れたりしますから、向こうでは泳ぐときは、基本水着着用ですよ? 海水浴場もプールも沢山人が来ますけど、みんな水着を着てます」
水着とはどんなものかが気になって聞いてみると、レンは絵をかいて説明してくれたのだが、こんなものは裸と同じではないか?!
こんな破廉恥な格好で、屋外を歩き回るなど、彼方の倫理観はどうなっているのだ?!
「ん~。100年前とかは、もっと体を隠すデザインだったみたいだけど、それだと泳ぎにくいですからね?」
「利便性の問題か?」
「多分?競泳用の水着は、もっとぴっちり体にフィットした作りだし」
これ以上体の線がはっきり分かるのか?!
「こちらには無い文化なのは理解してますから。アレク意外とは、泳いだりいないから安心して?」
「それなら良いが・・・・」
だが、宮にぷーるとか言う池を造ってたよな?
「だ・か・ら、泳ぐのはアレクとだけ。周りに塀も立てて、外から見えない様にするから大丈夫ですって」
だからと言って、安心出来るものでも無いのだが・・・。
「それは取り敢えず置いといて、今日はビーチでBBQです!」
そう宣言したレンは、何日か前から用意していたという、食料と酒を大量に馬車に積み込み、騎士達を引き連れ、伯爵から使用許可を貰った浜へ向かった。
浜に到着すると、レンは土魔法で竈をいくつも作って火を起こし、騎士達を総動員して、食事の下準備が出来ると、今度はゲームをしようと言い出した。
優勝者にはレンから賞品が出ると聞き、騎士達も俄然やる気になって居る。
最初は ”すいか割り” というゲームだった。
目隠しをした騎士を、その場でぐるぐる回したあと、浜に置いた瓜を棒で割る。という、簡単なゲームなのだが、目隠しで回されたうえに、周りを囲んだ同僚から ”右だ!” ”いや、もっと左だ!” 等とやじられて、瓜の場所を特定するのも難しいようだ。
瓜とは、遠く離れた見当はずれな場所を叩く者、あと一歩で届かない者、その結果に皆が大笑いで喜んでいる。
意外にもこのゲームの優勝者はローガンだった。
侍従と言うものは、いつ何時でも冷静に周囲を観察し、主人に不便を掛けないよう、探知能力の高さも必要だ。
とは、優勝を攫ったローガンの弁だ。
レンが用意した優勝賞品は、レンのお抱えテーラー、ルナコルタが経営する、ボッカサローネでの仕立券と、皇都で有名なレストランの食事券だった。
しかも仕立券と食事券は、上限金額無し。
掛かった分だけ、幾らでもレンが支払うという、騎士や使用人からすれば、信じられない高額な賞品だ。
氷魔法で冷たく冷やしたエールを片手に、暢気にゲームを楽しんでいた部下達は、更にヒートアップ。
次のゲームは何かと、闘志を燃やす騎士の群れに、レンが出したお題は、砂の彫刻を作る事だった。
制限時間は約2時間。
昼食用の煮込み料理が完成するまでだ。
騎士全員にシャベルとヘラ、固めた砂が崩れないようにする為の、水に溶かした糊を配り終えると、レンの掛け声と共に、むくつけき雄共が、必死で砂の山を作り、なんだかよく分からない彫刻に取り組み始めた。
しかし芸術とは無縁な騎士達は、脱落者が続出。
最後まで、砂の彫刻を作り上げられたのはわずか5人。
しかし出来上がった作品は、城を模した物、動物や人を象った物など、其々見応えのある出来栄えだった。
完成した彫刻の品評は、芸術に造詣が深いマークが担当した。
マークが選んだ砂の彫刻の優勝者は、意外にも騎士団の中で俺の次に、体のでかい熊の獣人の騎士だった。
コイツは、見た目の厳つさからは想像できないが、木彫りの彫刻を趣味にしているのだそうだ。
それを聞いたレンは "木彫りのクマさん、北海道かっ!" と1人でクツクツと笑っている。
何を連想したのか知らんが、番が楽しそうで何よりだ。
楽しそうに笑うレンとは逆に、熊の騎士は、騎士仲間から、繊細な趣味を理解されない事も多かったらしく、優勝賞品を受け取る時には大泣きで喜んでいた。
因みに優勝賞品は、すいか割りと同じ、仕立券と食事券だった。
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