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エンドロールの後も人生は続きます

新婦の鬱憤 side・レン

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 それにクレイオス様が与えてくれた加護のお陰で、私は病気知らず。
 怪我をしても直ぐに治るって言ってましたよね?

 そりゃね。魔力経路の損傷は、パフォスさんが驚くほどの速さで治りましたよ?
 けど、そもそも、加護の効果があれば、魔力経路が傷ついたりしないと思うのだけど。

 違うのかしら?

 蜜月に入ってすぐに、熱を出したり、魔力経路の損傷の所為で寝込んでしまって、楽しみにしていた新婚旅行は中止になっちゃうし・・・・。

 中止になっても、アレクさんと一緒に居られたら良かったのに、クレイオス様と旅行だなんて、しかも二人っきりで一か月も!!

 幻獣退治だったとしても、ひどいっ!!!

 クレイオス様だけズルい!!
 私だって、アレクさんと旅行したかった!


 そんな、気落ちしている私を気遣ってか、お忙しい時間を割いて、ロイド様が柘榴宮を頻繁に訪れてくれるようになりました。

 それを申し訳なく思っていると ”腹に一物な貴族の相手で草臥れるから、息抜きに来ているだけ” と笑って居られます。

 一応私とロイド様は、嫁姑の関係になるのですが、本当にいつもお優しくて、私も、こんな恰好良い大人になりたいと、憧れてしまいます。

 見た目はね。背が高くてシュッとした、クールビューティーなロイド様と、チンクシャな私とでは、生物としての在り方が違いすぎて、真似なんて出来ないけれど、精神の在り様とか、物事に対する姿勢だとか、そう云う処が、ちょっとでも近づけたらなって思うのです。

 だって、ロイド様は、10年以上、上皇陛下と離れ離れで暮らしてきたのに、不平とか不満とか、一切仰らない。

 まぁ、ご機嫌取りで上皇様から、ものすっごい! 物を贈られていましたけど?

 ロイド様は、普通の事、だなんて、しれっと仰るけど、私だって宝石とかお洋服とならなんとなく理解出ます。
 でも、この世界のお金持ちって、スケールが大きすぎて、現代日本のバリバリ庶民な私には、ちょっと理解出来なかったりするのよね。

 そんなこんなで、気落ちして若干ご機嫌斜めな私を慰めに、今日もロイド様がいらして下さってます。

 本日のお題は、王配候補の皆さんとの、お茶会&交流の場(社交場)で身に着ける、衣装とその生地、その他装飾品や靴等の小物類。
 要はトータルコーディネート一式を、20着も選ぶことになっているのです。

 早朝から宮には生地や装飾品、小物類の数々が大量に運び込まれ、侍従さん達を始め、宮の使用人のみんなが浮足立っています。

 それもその筈。
 皇宮内でお勤めの皆さんは、自由に皇宮の外へお出掛けは出来ないし、お買い物もお休みで外出できた時か、内宮での販売会の時。あとは高位貴族の方に仕えている侍従さんなら、仕えている貴族の方が個人的に、商会や商人を呼んだときに、購入するしかないのです。

 好意を持ってくれた人とか、恋人や番からの贈り物は、沢山貰うらしいのですが、やっぱり、自分で選んでお買い物するのって、楽しいですものね。

 それに、外部の人が宮に来ると、護衛や警護の騎士さんたちが増員されるので、お目当ての騎士さんと、お近づきになれるチャンスです。

 それもあって、宮の中は2.3日前から、みんながソワソワ、ウキウキ、ちょっとしたお祭り気分のようです。

 落ち着いていたのは、ローガンさんとセルジュさん、人の風習に興味のない、クオンとノワールの4人だけ。

 斯く言う私も、普段手放しで褒めてくれるアレクさんが居ないので、テンションだだ下がりです。

「ほらほら、元気出して。こっちの生地なんて、レン様によくお似合いだと思いますよ?」

「そうでしょうか・・・・」

「勿論です。そこのあなた、お名前はルナコルタでしたか?あちらの生地も見せて頂戴」

 そのあともロイド様や、ルナコルタさん侍従の皆さんも一緒になって、生地を合わせる度、褒めてくれたのですが、やっぱり気分は上がってきません。

 いつまでも陰気な顔をしている私に、みんな困っているのは分かっていて、申し訳ないな、とは思うのですが、こればっかりは、自分でもどうにも出来なくて・・・・。 

「ねぇレン様?私は子供たちの伴侶となった方と、衣装選びをするのが夢だったのです」

「ロイド様の夢ですか?」

「だって、皇帝や皇太子の服装は様式が決まっていて、選ぶ楽しみが無いでしょ?アレクサンドルは社交に興味がないし、年中騎士服でしょう?」

 ロイド様の言う通り、アレクさんは騎士服が基本だし、普段着もシャツとパンツのラフなものが多いから、選ぶって感じではないか・・・。

「それでね。夫夫がそろって社交の場に出る時は、お揃いの衣装を着ることが多いのだけれど、アレクサンドルはそういう事に疎いというか、興味がないでしょ?いい機会だから、レン様の好みで仕立ててみない?」

「私の好みでアレクの服を?」

「そう!あの子が着ないようなヒラヒラな服でも、レン様のような異界風でもいいし。クレイオス殿のような南国風もいいですね。アレクサンドルに拒否権は与えません。レン様の思うままに仕立てていいのですよ?」

「本当にいいのですか?」

「レン様。貴方は帝国を救ってくださった愛し子なのですよ?そして公爵という地位にあり、伴侶は皇兄のアレクサンドル・クロムウェル大公。そんな貴方に文句を言う者など居りません。万が一居たとしたら、不敬罪で地下牢に直行です」

「文句を言っただけで、牢屋行きなのですか?」

「程度にもよります。間違った行いに対しての非難なら、𠮟責で済むでしょう。けれど立場を弁えない中傷は看過できません。そして残念なことに、貴族の社交に中傷は付き物なのです」

「・・・皆さん暇なのですね」

「ひま?」

 あれ?私変なこと言ったのかな?

「? 遣ることがいっぱい有ったら、他人ことになんて構っていられないと思うのですが」

「そうね・・・確かに暇なのかもしれないですね」

 と、ロイド様の手の中で、ご愛用の扇がギリギリ鳴っています。
 私、地雷を踏み抜いてしまったのでしょうか。

「あ?あぁ、ごめんなさいね。ちょっと嫌なことを思い出してしまいました。兎に角、レン様の思い通りにしてくれて良いのです。ルナコルタ、其方もレン様の要望に全て答えられますね?」

「勿論でございます、不肖ルナコルタ。これまでもレン様の画期的なアイデアに感銘を受けてまいりました。愛し子様のご要望でしたら、如何なる困難にも打ち勝って見せます」

 ルナコルタさんの大袈裟な答えに、ロイド様は膝を打ち ”その言や善し” と喜んでいます。

 そんな二人に煽てられ、アレクさんの衣装のデザインを描いているうちに、単純な私は、お揃いの衣装を考える事に没頭していました。

 あちらに居た時はヤベちゃんに、こちらに来てからは、アレクさんに着るものを選んでもらうことが多くて、私が誰かのお洋服をコーディネートするなんて初めての体験で、生地を見ながら、ああでもないこうでもないと頭を捻るのはとても楽しかった。

 社交用の衣装二人分で40着。
 とても一日で、決められるものではなくて、一日10着、4日掛けて満足のいく衣装を決めることが出来ました。

 数が数なので、さすがに一括納品は不可能なので、お茶会用の衣装から、出来上がり次第納品ということになりました。

 アレクさんは喜んでくれるかな?
 それとも驚くのかな?
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