獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

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エンドロールの後も人生は続きます

魅了*

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 はあ~~~~。

 またやってしまった・・・・。

 どうして俺はこうなんだ。

 初めてだったとは言え、見境もなくレンを貪ってしまった。

 発熱でぼんやりと潤んだ瞳も、熱を持ち紅潮した肌も、すべて俺が与える快楽によるものだと、都合のいい様に、解釈してしまった。

 あそこでロイド様が来なければ、本当にレンを死なせてしまったかもしれない。

 レンの温かく柔らかい身体は、俺の無理な要求も、どんな体位も受け止め、応えてくれた。

 俺が開き暴いた秘所は、俺の猛りに絡みつき、熱くうねりながら奥へと引き入れ、締め付けられて、全てを搾り取られる様だった。

 甘い吐息も、鼻にかかった喘ぎも愛しくて。
 快楽に跳ねる腰、絶頂に反らされガクガクと震える背中。

 何度精を放っても、その全てに煽られ、際限なく欲情してしまった。

 吐き出した欲でレンの中を満たす度、二人の間で巡る魔力が、俺の体を回復させた。

 まさに疲れ知らず。
 それどころか逆に力が漲ってくるのだから・・・・。

 てっきりレンも同じだと思っていたが、俺だけが、レンの全てを貪り喰っただけだったとは・・・・。

 それでも、熟れた果実のような胸の蕾や、花の様に蜜を溢す秘所を思い出すだけで。

「クッ!ウゥーーーー」

 反省したばかりなのに。

 頭の中は、ベットの中のレンの媚態でいっぱいだ。

 ふとした瞬間に、濃密なレンの香りを思い出すと、それに釣られて、縋り付いてくる、細い腕の感触が蘇る。

 その度に、俺の中心は熱を持ち昂って。

「これでは、ただのケモノだな」

 大切な番は、高熱で苦しんでいると言うのに、元凶の俺が節操なく、発情し盛っているのだから、本当に始末が悪い。

 まるで種馬にでもなった気分だ。

「はあ~~~~」

 この後も、清拭と着替えの為に、番の元へ行くのだと思うと気が重い。

 侍従やマーク達の、冷えた視線は耐えられる。

 自分の愚行が招いた結果だ。
 彼らの憤りも理解できる。

 レンの世話が嫌になる訳もなく。
 唯、番に触れ、あの甘い香りを嗅いだ瞬間、湧き上がってくる、凶悪な欲望が恐ろしい。

 こうしてレンから離れていれば、己の愚かさを、冷静に考える事ができると言うのに・・・。

 これ迄は、我慢できていた。

 1日でも早く、番と交わることを夢見てきたが、レンの肌に触れ、その甘さに酔うことはあっても、最後の一線を超えることなく、耐え抜いてきた。

 それがどうだ?
 たった一度の交わりで、箍が外れ、大事な番を思いやることも出来ないほど、求めてしまうとは。

 俺が望んでいたのは、番との、穏やかな暮らしだ。
 それは心と身体、どちらが欠けても成り立たないものだ。

 にも関わらず、俺のやった事は、インキュバスの如く、番を貪っただけ。

 まるで自分じゃ無いみたいだ。

 何故、ここ迄執拗にレンを求めてしまうのか。

 今も、レンの香りに酔いしれた日々の、一つひとつが・・・・・・かおり?

 そうだ!
 レンの香りだ!!
 婚姻前と違うもの、変わったのはレンの香りだ。

 初夜の時に、レンが言っていた、伴侶の営みを持つと、香りが変わり、レンの意志に関係なく魅了が発動すると。

 そんなものが無くとも、とっくに俺はレンの虜だ。
 それ故、俺は特に変わることは無いだろうと、思っていたのだが・・・・。

 もしも、俺のこの状態が、魅了の効果だとするなら。

 まずい! 拙いぞ!!

「ローガン!! セルジュ!! 誰か居ないか?!」

 数ミーロ先の、レンの自室の扉は開け放したまま、護衛といえど、家族でも伴侶でも無い人間と、二人きりにならない為の、基本的な配慮だ。

 廊下の先から駆けてくるセルジュと、レンの部屋から顔を出す、マーク。

 二人とも俺の大音声に、驚いているようだ。

「マーク! 部屋の中に誰がいる?!」

「侍従が一人、居りますが」

「今直ぐ、そいつを引っ張り出せ!! セルジュ! お前はなんともないか?!」

「なんとも? はい、普通ですが」

「なら、ローガンを呼んで来るんだ。それと、俺とマークが良いと言うまで、侍従をレンの部屋に近づけさせるな!」

「はい? 今レン様に危険なのは、閣下なのでは?」

 コイツ、一丁前な口をきく様になったな。

「説明は後だ! 早く行け!!」

 俺の剣幕にセルジュは踵を返し、階下へと走っていった。

 そしてレンの部屋からは、 ドサッ と何かが倒れる音に続き、床を引きずってくる音が聞こえてきた。

「レンは無事か?」

 気を失った侍従の襟を無造作に掴み、引き摺りながら廊下に出来てきたマークに、レンの安否と確認する。

「この者が、レン様に触れようとして居りました」

 レンに触れようと・・・・。

 魅了の影響だろうが、この場でコイツの腕を、斬り落としてしまいたい。

「・・・レンは・・・・気付いて居ないな?」

「眠っておられます。閣下これはどう言う事でしょうか?」

「取り敢えず、そいつはローガンに任せて、詰所からロロシュとミュラーを呼んでくれ。説明は皆が揃ってからだ」

 そこへ、セルジュとローガンが、バタバタと走り寄ってきた。

 何があったのかと、問うてくるローガンに
 “侍従がレンに触れようとして、マークに捕まった。どこかに閉じ込めておけ” とだけ話しすに留めた。

 しかし、これだけは先に確認しなければならない。

「お前達、レンのそばに居て、何か変わった事はないか?」

「変わった事、と言うと?」

 何を言っているのか分からない、と言いたげに3人とも首を傾げている。

「そうだな・・・レンのそばに居たい。触りたい。レンには自分が必要だ。逆にどうしてもレンが必要だ。自分の物にしたいと言う邪な恋慕の気持ち。そんな感じだ」

「私はいつも通り、レン様を敬愛いたしておりますが」

 マークは、捕縛用の紐で、侍従を縛り上げながら答えた。

「お前達はどうだ?」

「私は、畏怖と敬愛、恋慕は感じませんが」

 ローガンはレンに貰った銀縁メガネを押し上げた。

「僕・・・私も、尊敬と敬愛だと思います。でも・・・いつもよりレン様から、良い香りがしますよね?」

 セルジュの言葉にマークとローガンも、“たしかに” と頷いている。

 やはり香りか。

 この3人は、レンの魅了の影響をあまり受けて居ないらしい。
 原理は分からんが、ひとまず安心だ。

「相談したいことが有る。書斎に集まってくれ」

「レン様のお世話は、如何いたしますか?」

「レンが目覚めて、人を呼んだら、ローガンかセルジュが対応するように。他の者は、レンに近づけるな」

 ここ迄の話で、レンにとって重大な問題が起こったのだ、と理解したらしく、3人の顔が引き締まった。

 ◇◇

「魅了・・・ですか」

「神様も、また余計なもん寄越しやがったな」

「レンは、クレイオスとアウラに、“こんな加護はいらない、元に戻せ” と直談判したのだが、絶対に必要になるから、加護は消さない、と言われたそうでな」

「今更ですが、創世神と友達感覚で会話できるのは、世界広しと言えど、レン様だけでしょうな」

 ミュラーの言葉に皆が、まったくだ と頷いている。

「レンは、自分の意志に関係なく、有象無象が寄って来ると、俺やお前達に迷惑がかかると心配していた。だから今日の事も、レンが知ると気に病むだろうから、内密にしたい」

「それは、今までと変わりませんので、構いませんが」

「問題はそこじゃねぇだろ? 魅了なんて嫌がらせみたいな能力、なんのために必要なんだよ」

「それが・・・その先はまだ聞いて居ないのだ」

「はあ? 初夜から一週間は経ってんだぞ?あんたがちびっ子監禁してたのは5日だ。5日間、腰振ってただけかよ!?」

「ロロシュ。言い方!」

「いや、ロロシュの言う通りだ。面目無い。俺も加護の効果が、これほど強いとは思って居なかった」

「本当に加護の所為かぁ?」

「ロロシュ!黙って!!」
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