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エンドロールの後も人生は続きます

初夜だもんね*

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 ベットにクタリと手足を投げ出した、レンの頬を摩って、正気付かせる。

「う~~ん・・・だいじょうぶぅ・・」

「本当に? なんともないか? 水飲むか?」

「・・・のむ」

 事後の倦怠感からか、ぼんやりとしているレンを抱えて、胡座をかいた足の間に座らせ、水を飲ませた。

「痛むか? かっ回復薬のむか? 治癒師の方がいいか?」

 シーツを巻いた体から、俺の放った欲と、レンの血の匂いがする。

 水を飲んで意識がハッキリしたのか、レンは涙目でオロオロする俺に気付いて、驚いている。

 傷つけたのは、俺なのに。

「あれ? アレク? どうしたの?」

「すっすまない。君を傷つける気は無かったんだ。気持ち良すぎて、つい調子に乗ってしまった」

「えっ? えぇ? なに? なんの話し?」

 項垂れる俺に、レンは寄り添って頭を撫でてくれた。

「どうしたの? 言ってくれないと分かりませんよ?」

「出血している・・・酷いことをしてしまった」

 本当にすまない、と抱きしめると、レンは何かに納得したように息を吐き、俺の背中を撫でてくれた。

「あ~。えっと、アレクは何も悪く無いですよ?」

「そんなことない! 俺の配慮が足らなかった、勝手すぎたんだっ!」

 俯き膝の上で握った拳に、レンの小さな手が重ねられた。

「悪いのは、きちんと説明しなかった私です。アレクは女性の体の事を知らなくて当然なんですから、ね?」

「だが・・・君を傷つけてしまった」

 俯いたままの頬に、優しく添えられた手の平が暖かかった。

「こっちを見て? 私怒ってないでしょ? 彼方では、常識だったし、恥ずかしくて説明を省いちゃって、ごめんね」

「常識?」

「そう。これは破瓜の血と言って。その、私の様な、性的経験の無い、しっ・・・処女が初めて男性とこういう事をした時に、多くの女性が体験するものなんです。だからアレクは何も悪く無いのよ?」

「はか・・の血?」

「そう、初めての証です」

「初めて・・・そうか、そうだよな。俺が初めてなんだよな?」

「はい。出血をしない人もいるのですけど、そうすると処女性を疑われるくらい、普通のことなんです」

 俺が酷く扱って、傷つけた訳じゃ無いのか。

「よかった・・・・」

 レンの話しに安心して、気が抜けてしまった。

「それに、あの、初めての時は、ものすっっっごく痛い、って聞いてたんですけど、アレクが優しくしてくれたから、あまり痛く無かったし・・・その・・すごく・・・」

「すごく?」

「・・・・良かったです」

 恥ずかしがりの番は、 “良かった” の一言を言うにも、勇気が必要だったのか、言い終わると、プシューっと音が聞こえる程、赤くなり、両手で顔を隠してしまった。

 それを聞いた俺は、嬉しすぎて、番をギュウギュウと抱きしめ、キスの雨を降らせた。

「俺もすごく良かった。初めてだったから、君を喜ばせられるか、不安だった」

「は?・・・・はじめて?」

 キョトンとしているが、無理はない。
 普通この歳まで、経験が無いとは思わんだろうからな。

「忘れたのか? 俺は醜男で怖がられて居るんだぞ?」

「・・・その割には、大変お上手で」

 若干棒読みで、呟いた番は、 “そっかぁ、はじめてかぁ。イケメンは、その道もハイスペックなんだぁ” と、独り言を繰り返している。

 はいすぺっく とは?

 文脈からすると、貶されてはいない。
 むしろ褒められて居る気がするから、ここは敢えて何も聞くまい。

「あの、私は大丈夫ですけど、アレクは平気なの?」

「俺?」

 レンは性的な知識だけは有る様だが、まさか襲った側も、初めてだと何か不都合が有ると、勘違いして居るのか?

「なんともないが・・・そうだな、幸せすぎて死にそうなくらいか?」

「もう! 新婚なのに死なれたら困ります」

「はははっ!」

「でも、お耳とお尻尾が出てますよ?大丈夫なの よね?」

「あ?」

 やってしまった。

 どれだけ余裕がなかったんだ?

 いや!
 初めてだったのだから、これは不可抗力。

 仕方なかった・・・と思いたい。

「すぐ、仕舞うから」

「どうして? 私はそままのアレクも好きよ?」

「あ~」

 どうする?
 このまま黙っておくか?

 しかし、加護の影響で、今まで以上にレンは雄達を引き寄せるらしい。

 何かあってからでは、遅い。

 それに、いつか子をもうけた時、人と獣人の間には、通常八割がた獣人の子が産まれる。
 レンは、能力が高い。それを加味すると五割程度の確率で、獣人の子が産まれるだろう。
 何も知らず、子の尾と耳を触りまくったら、子供が可哀想だ。

 やはり、説明するなら今しかない。

「実は、レンに黙っていたことが有る」

「なんですか?」

「あのな。獣人の耳と尾なんだが、大事な場所でな?」

「そうですね。ワンちゃんと猫ちゃんも、触ると嫌がる子がいますから・・・もしかして、触られるの嫌でしたか?」

 アワアワと謝る、番に “俺は別に気にしない” と告げると、レンは若干訝しみながらも、落ち着いてくれた。

「だがな、その・・・なんだ・・・獣人の耳と尾はな、あ~。性感帯の獣人が多くてな? そこに触れるのは、性的な意味が強いのだ」

「せい・・・? 性・・・・感帯?」

 番の瞳が驚きで丸くなり、滑らかな頬が紅潮していった。

「最初に話しておくべきだったのだが、レンがあまりにも嬉しそうに、俺の尾を触るから、言いそびれてしまってな」

「じゃあ、ウィリアムさん達が笑ったのって」

「まぁ、そう言うことだ」

 シーツを体に巻いただけのレンは、剥き出しの肩をがくりと落とした。

「レン? 俺はレンが触りたいと言うなら、いつでも触らせてやりたいのだが、人前で大人が、尾や耳を出したままにするのは、はしたないと言われてしまう。それに良くも悪くも、俺たちの周りは、他人の目が増えてしまったからな、今後は人前で触るのは控えた方がいい」

「な・・・なんで・・・なんでもっと早く教えてくれないんですかぁ!?」 

「いて」

 本当は全然痛くない。

 握った拳で、俺の肩をポカポカ叩く姿が可愛くて、調子を合わせただけだ。
 
「もう!もう!! とんだ赤っ恥じゃない! 人前でそんな場所、モフリまくったなんて。変態だって思われちゃう!!」

「いててて・・・。俺が悪かった。あの二人は、俺が困ってるのを見て笑っただけで、レンを変態だなんて思ってないから」

「っで でも、アレクは困ってたんでしょ?!」

 肩を叩く手首を捕まえ、引き寄せて、腕の中に閉じ込めた。

「そんなに叩いたら、手を痛めてしまうぞ。確かに兆してしまって困ったが、レンが俺の尾を気に入ってくれて嬉しかった」

「ううぅぅ・・・」

「だからもう許してくれないか? 俺達は、正式に伴侶になった。二人きりの時は、いくらでも触っていいし、触って欲しい」

 番の体に尾を巻き付け、尾の先で顎の下をくすぐり、誘惑する。

「な?」

「む~~~」

 ほらほら。
 大好きな尻尾だぞ~。
 
 モフモフは正義と言い切るレンが、この誘惑にどこまで耐えられるかな?

 理性と欲望の狭間で、両手がワキワキと動いている。

 ほんと、かわいい。

「なでて?」

 耳元で囁くと、レンのなかで何かが振り切れた気配が。

「もう!もう、もう!! ほんとにずるいんだから!!」

 そう叫んで、ガシ と、俺の尾を掴んだレンは、尾の先に頬ずりを始めた。

「うぅ~。もふもふ・・・どうせ私は変態です。お猫様の下僕ですよ」

 下僕・・・。
 そこまで極端でなくとも・・・・。
 だが・・・・侍従服のレン・・・
 “ご主人様” なんて呼ばれたら。

 クッ!
 結構いい・・・グッとくる。

 先っぽとは言え、尾は尾だ。
 根本を掴まれたら瞬殺だが。
 先を撫でられるだけでも、じわじわ来る。

 初めての交わりで、さらに甘く濃くなったレンの香気が、俺の雄を刺激する。

 花の香りに吸い寄せられる蝶の様に、首筋に浮かんだ婚姻の証を甘噛みし、舌を這わせた。

「あっ」

 肩を震わせる、柔らかい胸をやわやわと揉むと、番の唇から熱っぽい吐息が漏れた。

「ん・・・・さっき、したばかっりでしょ?」

「愛しい番。今夜は初夜だぞ?」

「やっ、あの、でも」

「俺の尾に触れて、煽ったのは君だろ」

 レンにとっては、とんだ言い掛かりだろうな。

「そんな・・・だって・・・これは」

 ふふ。
 そんなに、慌てて可愛いな。
 だが、今更手を離しても、もう遅いよ。

「ひゃっ!!」

 首を擡げた熱を、柔らかい尻に擦り付ける。

 それだけで、得も言われぬ快感が走り抜け、俺の熱が一回り大きく育った。

冬の夜は長い。

蜜月も始まったばかりだ。
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