上 下
248 / 523
エンドロールの後も人生は続きます

挙式前夜 side・レン

しおりを挟む
『どれ、うまく行った様だの』

「えっ? 今のなんですか? ノワールの時も光ってましたよね?」

 そしてノワールに名前をつけるように言ったのも、クレイオス様だ。

「ひょっとして何か企んでます?」

 つまんだ顎を人差し指で撫でながら、美麗なお顔で見下ろされると、目のやり場に困ってしまいます。

 慣れて来たとは言え、誰も彼もイケメンすぎて、目と心臓に優しくない。
 特に完璧超人のクレイオス様なんて、ほんとに、もう・・・ね。

 はぁー。何処かに目に優しい平凡、塩顔の人っていないのでしょうか?
 
 偶には、劣等感を感じないで話せる相手が欲しい、と思ってしまうのは、贅沢でしょうか。

『ふむ。企んではいるが。其方の為だぞ?』

「はい?」

『其方、スキルに魅了が付いたであろう?』

「確かに、レベルUPで魅了って付きましたけど・・・なんでクレイオス様が知ってるんですか?」

『ふふん。これでも神の眷属ぞ?』

 うわぁ。またドヤってる~。
 なんだろ、今日はそういう日なのかしら?

「あぁ。はい。そうですね。でも魅了と言っても、今の所変化はないみたいですよ?」

『其れは、其方がまだ生娘だからだ』

「はあ? きっ・・きっ・・?」

 やだ、セクハラ!? 最低~!!

 そんな私に気付いているのか、居ないのか。クレイオス様はお構い無しに、話しを続けています。

『其方と王が交尾をすると、体が変化するわけだが、そうすると、其方の体臭も変わって来る。その変化した体臭に魅了効果が有る、と言う訳だな』

「えぇ~?!」

 そんな臆面もなく。
 とんだエロおやじだ!

『人、動物、魔物、その全てではないが、其方の香りに誘われ、魅了されるものが増えるだろう。其れこそ、満開の花に群がる羽虫の様にな?』

 羽虫?  言い方!!
 せめて蝶とか蜂とか!

「結婚した後に、誰を魅了しろって言うんですか?そんなスキル入りません!元に戻して下さい!!」

『そうは言っても、我にはどうも出来んぞ?其れにアウラにも、考えがあっての事だろうし』

「ただ、面白がってるだけだと思いますけど? わらわら寄ってこられて、逆ハーでも作れって言うんですか?! 絶対無理!!お断りです!!」

『ふむ・・・樹海の王の性格を考えたら。逆ハー設定は無いと思うが・・・』

 じゃあ、なんの為の魅了なのよ?!

 って言うか、なんで逆ハー設定とか、普通に話が通じてるの?
 まさかアウラ様と一緒に、TLとか読んだわけ?
 ヤベちゃんの薄い本とか、読んだりして無いよね?

「アレク以外いりません!!」

『魅了と言っても、恋愛感情とは限らんだろ。治世において、絶対的な服従が必要ではないのか?』

「そんな、魔法とかスキルとかで操られた精神こころに、なんの価値があるんです?其れに私は、王様でもないし、世界征服とか、考えて居ないので」

『ふむ、ならばアウラに直接頼めば良い。まぁ、一度与えた加護を取り上げるのは容易なことでは無いし、あれの性格からして、無駄だと思うがな?』

「そんなぁ」

『兎に角、そのスキルがある以上、種族関係なく、有象無象が寄って来るようになる。その虫除けにノワールとクオンが必要だ』

「虫除けって・・・」
 
 さっきから羽虫とか・・・虫から離れてくれないかな。

『其方はクオンとノワールに名を与え、あれらは名を受け入れた。あの光は其方の眷属になるという魔法契約なのだ』

「眷属・・・? 私、人ですよ?」

『人だが、愛し子だ。それも歴代最強のな。アウラに魅了を消させたとして、眷属の契約は取り消せん。可愛がってやるのだぞ?』

「・・・・・」

 クオンもノワールも、元々可愛いから、そこは全然問題ないですよ?

 でもなぁ・・・・。
 
 クレイオス様もアウラ様に頼めって言ってたし、これは直接文句を言った方がいいですよね?

 あれ? って事は・・・。

「アウラ様と、お話しできるのですか?」

『うむ・・・あれは今、全能の神の座すおわす本殿にて治療と、再教育を受けている。だが、其方と樹海の王は、世界を救った最大の功労者で有るからな、特別に面会が許可されたのだ』

「面会許可・・・?」

 入院してる様なものかしら?

『ヴァラクの呪いの所為で、面倒なことになっての』

「大丈夫・・・なんですよね?」

『神とその眷属が揃って、害された訳だからの、色々とな・・・暫くは、様子を見る他ないのだよ』

 だから、クレイオス様は、アウラ様の元に帰らないと言うか、帰れなかったのね。

『今からでも、アウラは呼びかけに応えると思うが、どうする?』

「では、直ぐにお話ししたいです」

 魅了を抜きにしても、アウラ様とは沢山お話したい事が有るのです。時間を無駄にしたくありません。

 クレイオス様は一つ頷くと、指を鳴らし、カウチを一台出してくれました。

『床に跪くより、この方が楽であろう? クオンとノワールはここに残して行くが、誰にも邪魔はさせぬ故。存分に語らうが良い』

 クレイオス様に促され、カウチに横になると、アレクさんとは違う大きな手が、私の額と両眼を覆い隠しました。

『眼を閉じて、アウラの元へ導いてやろう』

「アウラ様に伝言は?」

『・・・早く逢いたいと』

 リリ・・・リィン・・・・
 懐かしい鈴の音が・・・・・・・。

 ◇◇


「・・・ン・・・レン・・・」

「・・・・・・あ?」

 ぼんやりと開いた目に映るのは、真っ白な空間。
 アウラ様のお庭じゃないのね。

「レン? レン起きた?」

「はっ! アウラ様!?」

 腹筋でガバッと起き上がった、目の前に、アウラ様の美麗なお顔が有りました。

「どうしたの?」

 神様なのに、なんでこんなに窶れちゃって居るのでしょうか?
 サラサラ、とぅるんとぅるんだった髪も、パッサパサじゃないですか。

「うっ・・」

「う・・・?」

 首を傾げたはずみで、アウラ様の髪が、パサリと肩から、胸に落ちて来ました。

 その一房に手を伸ばし、掬い上げ・・・。
 
 サラサラじゃない。

 その窶れたお姿が悲しくて。

「うぅ・・・うぇ・・うぇぇーーーん!!」

 アウラ様の薄くなってしまった体にしがみ付き、私は子供の様にぎゃん泣きです。

「レン?・・・ごめんね。辛かったよね」

「ううぇぇーーーちっちがうぅっぅ」

「嗚呼、こんな私の為に泣いてくれるの?どうしてこの子は、こんなに優しいのだろうね」

 優しいのはアウラ様です。
 ギャン泣きで、鼻水まで流し放題の私の背中を、落ち着かせるように、アウラ様は何度もトントンと叩き、撫でてくれます。

 子供の頃、親無しと虐められ、おばあちゃんの前で泣いた時みたい。
 
「もう泣かないで、レンの話を聞かせてくれる?」

「ゔぇ・・・ばぁい・・・」

 アウラ様が、何処からか取り出したティッシュで鼻をかみ、タオルでべしょべしょの顔を拭ってもらっても、次から次へと涙が溢れてきて止まりません。

 つっかえつっかえ、マイオールから皇都での出来事を話し、何度もアウラ様に話しかけたのだと、訴えました。

「グレイオスざばぼ~ばやく会いたいってぇ。私もしっん、心配してたんですぅぅ、」

 ズビズビと鼻を鳴らす私の頭を、アウラ様は優しく撫でてくれました。

「アヴラ・・・ざまの様子・・が変だったから・・・」

 顔はぐちゃぐちゃ、鼻が詰まって、まともに話せない私の言葉を、アウラ様は辛抱強く聞いて下さいます。

「すまなかった。あの時は呪いの影響が大きくてね。本当に心配をかけたね」

「いまっ今は?」

「ずいぶん良くなったよ。ありがとう。でも暫くは、クレイオスにあの世界の事を、任せるしかなさそうだ」

「良くなりますか?」

「ちょっと時間が掛かるけどね。全能の神。大神様にも叱られてしまった。危うく降格される所だったよ」

 降格?
 会社員みたいに?

「ふふふ。でもレンと樹海の王を見出した功績で、見逃してもらえた感じかな?」

「アレクさんと私?」

「そう。次代の神様候補を見つけたからね」

「神様・・・? えっ?」

「天地を創造し、世界を大きく広げるのは、私たちの大事な仕事。新しい世界を創造する神候補を探すのもね」

 天界は 絶賛 神様募集中! とか、巫山戯てる場合ですか?

「そんな・・・・・無理・・・です」

「そう? 私でも出来たよ? 色々足りないところはあるけどね? 其れに今直ぐに、と言う訳でもない。あくまで候補だから。あとは大神様次第かな」
 
「いや・・・無理ですって」

「ふふふ。ゆっくり考えてって、言いたいところだけど、これは天界の秘密だらか、このことは帰ったら忘れてしまうよ?」

 窶れていても、相変わらず目に優しくない、綺麗な笑顔だ事。

「そう・・・なんですね?」

「そう。だから他に聞きたい事はある?」

 ほか? 他に聞きたいこと・・・。

「はっ! 魅了! 魅了のスキル消して下さい!!」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。 父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。 彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。 子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。 ※完結まで毎日更新です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

処理中です...